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一軒家
朗報とは一軒家をもらえるという話であった。
近くに住む祖母が老人ホームに転居するから、この家をあげると言うのだ。突然の話に私は驚いた。
私の両親は共働きだったので、小さい頃は毎日のように祖父母に世話になっていた。祖父は孫に対しても厳しい人で正直怖かった。そして祖母はいつも優しかった。
祖父は三年前に亡くなっていて、今は祖母が一人で一軒家に暮らしている。そんな家に私は就職してからも週に一回はご飯を食べに寄っていた。
その日、祖母は松葉杖をついていた。何もない廊下でつまずいてしまい足の指を骨折してしまったそうだ。そのとき、老人ホームへの転居を考えたという。打ちどころが悪くて誰にも気づかれずに死んでしまうことが不安だということであった。
その老人ホームは少し遠くにあるので、会いに行きづらくなる。なので私は反対したが、祖母の決意は固いようだった。
私情を挟むのではなく前向きに考えることにした。
老人ホームに入るとなると健康管理もしてもらえるので安心であること。会いに行けるのは距離が遠くなっても、気持ち次第であるということ。
一番は、好きにできる一軒家が手に入ること。




