愛知県バトロワ Ep.1 提示部
初投稿作です。
Ep.1
岐阜「愛知さんが危篤やげ。」
部屋が一気に緊迫感に包まれた。動揺が波紋のように広がる。
阿久比「そ、それってどういうこと…?」
岐阜は一度、言葉を探すように目を伏せ、それから続けた。
岐阜「愛知が気を失う前に行った言葉が、『もうすぐわいは死ぬ。だから私の光景を私の子どもたちが争って決めてほしい』と言ってたんやわ。」
その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が凍りついた。
「争って決めてほしい」
――その響きが、やけに重い。
北名古屋「争うって、どういうことだが?」
田原「多分さ、最後まで勝ち残ったやつが次の愛知になるってことじゃない?」
中区「バトロワじゃん! ちょっとワクワクするんだけど!」
小牧「おい、正気か?俺ら同士で殺し合えって話だぞ……あの愛知さんがそんなこと言うか?」
ざわめきが怒号に変わりかけた、その時。
ずっと黙っていた名古屋が、低く、腹の底から絞り出すように言った。
名古屋「やってやろうじゃねぇか…」
春日井「ちょ…名古屋…本気…?」
豊田「甘ったるいこといってんなぁ!そんなんだったら最後まで生き残れんぞw」
豊田が笑った瞬間、車の排気ガスみたいな重たい存在感が場に漂う。
北名古屋「僕、名古屋さんについていく。兄弟、どうする?」
豊山「うちは…春日井かな…」
小牧「そこは小牧って言えやゴラァ!」
小牧が冗談まじりに言ったその瞬間。空気が割れた。
長久手「あれ?まだみんななんにもやってないのぉ?もううち、イオンで戦闘品集めてきたんだけどぉ?」
長久手は楽しそうに微笑み、視線を尾張旭へ向ける。
長久手「あさひん、覚悟はできてるねぇ♡」
尾張旭「\(^o^)/」
次の瞬間、 乾いた破裂音が室内に響いた。
誰かが息を呑み、 誰かが叫び、 誰かが咄嗟に身を伏せる。
赤い雫が床に散り、 それを見た全員が理解した。
――――――――始まってしまった、と。
「尾張旭市:脱落」
部屋
ほとんどの市区町村は、我先にと部屋を飛び出していった。
それぞれの「領地」へ、疑心と覚悟を抱えながら散開していく。
部屋に残ったのは、
名古屋市。県庁所在市という名の重みを背負った、今回最大の駒。
そして豊田市。エンジンの鼓動で愛知を支える、大盤石。
名古屋「豊田ァ…今回愛知様がそんなこと言ったと思うか?」
豊田「いやwwwwありえないっしょw」
名古屋「おまえ戦い入るか?」
豊田「俺はもちろん入るぜw岡崎とタイマンしたいしw」
名古屋「そうか、俺の区たちは協力してくれるかな?」
豊田「わかんねぇよw」
名古屋「…。そうだよなw」
豊田「まあ一旦俺等も家に帰るか」
名古屋「そうするか」
二人は無言で立ち上がり、
それぞれの戦場へと戻っていった。
西尾張
飛島「なんでこんなことになってんだ?本当に…」
弥富「殺し合うって…正直、グロすぎだって…」
愛西「俺等は名古屋についてくしかないだろよ。」
飛島「私は単独でも戦える財力はあるが……」
津島「てかさっきの長久手見た?やばくねwあの二人付き合ってたんじゃなかったん?」
あま「ああ、尾張旭と長久手ねw喧☆嘩☆別☆れ」
蟹江「長久手メンヘラ気質だしな…w」
愛西「変なゴシップ話題にそれてるけど今は、一宮に対抗しないと…」
稲沢「一宮いつ攻めてくるかわからないから怖すぎる…絶対負けるじゃん…(泣)」
愛西「だったら連合だ。西尾張連合、組むぞ。入る人!」
弥富、津島、あま、蟹江、稲沢、大治「ハイっ!」
飛島「どうしようか…」
愛西「よろしくぅっ!」
飛島「わかった。その作戦乗った!」
愛西「よっしゃあぁ!!西尾張連合締結!」
全員「エイエイオー!!!」
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一宮「……南が騒がしいな。連合か……面白ぇ」
北尾張
北尾張の空は低かった。
雲が落ちてきそうで、息を吸うたびに胸が詰まる。春日井、小牧、犬山、瀬戸、北名古屋、豊山。
かつては尾張の背骨。今は、爆弾を抱えた静脈。
小牧「よぉ、春日井。」
小牧が春日井に近寄る。
春日井「なんの用?言っておくけどあなたとは連合組む気はないからね。」
小牧「チッ…でもな、悪いことは言わねぇ。俺と組め。北尾張で“強い”のは、俺とおまえだろ?」
春日井「少なくとも、私はあなたよりは強いよ。」
小牧「ふん。そんじゃぁまた、戦場で」
春日井「せいぜい私にやられるまで生きろw」
小牧はかつかつと足音を立てながら去っていった。
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犬山城は、静かだった。
城は昔から、争いを見下ろしてきた。
犬山「……愚かだな、人は」
隣で、瀬戸が腕を組む。
瀬戸「北尾張、割れるね。多治見が予言したとおりだ。」
犬山「私達はどうするか」
瀬戸「僕は春日井についていくよ。」
犬山「私はとりあえずは戦況を見極めようかな。」
瀬戸が何かに気づいたかのように立ち上がった。
そこには疲れ果てた丹羽郡の二人がいた。
扶桑「いいよ、君たちに攻撃しても勝てないからね…」
大口「そうさ…」
犬山「どうしたんだ?」
二人は顔を見合わせ、肩をすくめた。
扶桑「江南と、岩倉が…一宮にやられた。」
大口「この目で見たんだ!」
その時、防災無線が耳をつんざく轟音で響いた。
『江南市、岩倉市:脱落』
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庄内川の河川敷。春日井のもとには4人が集まっていた。瀬戸、守山、豊山、北名古屋だ。
世界が一度、瞬きをした。
4人は消え、そこには、膨張し、羽が生えたように見える春日井の影だけが、象徴のように揺らめいていた。
――――春日井郡、覚醒。
東尾張
いつもの公園は異様なほど静かだった。
日進「……誰も、いない」
長久手「そりゃあ…そうだよ♡うちがあさひんを殺したの、みんなに知られてるんだからぁ♡」
日進「―なんでそんなことしたんだ!」
大声で叫んだからか、長久手はたじろいだが、すぐにいつもの調子を取り戻し、
長久手「だってぇ…ウザかったんだもん?」
日進「―そんな…理由で殺したのか!」
冷徹な顔つきになった。
長久手「お前も、ウザっw 早く死んでくださ〜い♡」
日進「は?なんだって?」
長久手「ふふっ♡『愛・地球終焉♡』」
森が、震えた。地面も割れだした。
長久手「早く死にやがれ…♡ウザウザwww」
日進の中に、なにかの感情が蠢いた。
これは、怒りだ。それとも、なんだろう、なにか大きな力が日進を突き動かした。
日進「―――お前の方が…100倍ウザいんだよ!!!!」
ドガァァン!!
風が、止まった。 長久手は、元いた場所から5mほどのところに、転がっていた。
長久手「―――この―野郎―――覚えてろ…」
「長久手市:脱落」
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青白くなった長久手を見つめている日進のもとに、東郷と豊明が近づいてきた。
東郷「ありがとな、日進wあのメンヘラ野郎倒してくれて。」
豊明「ほんとその通りだ」
日進「ありがとう、だけどなんかおかしくないか?名古屋と豊田の影が見えないってのは」
東郷「確かに、ここなんて名古屋の裏庭だし。」
豊明「豊田も普通なら俺らから殺すんじゃないか?」
東郷「まあ僕らには知る由もないよ」
日進が急に言った。
日進「名古屋に、会いに行こうと思う。君たちはどうする?」
東郷「行くしかないっ!豊田よりは名古屋にやられるほうが…」
日進「馬鹿、殺されに行くんじゃねえんだよ、」
日進「殺しに行くんだ。」
知多
海は恐ろしいほどに平穏で凪いでいた。
港には知多半島の10自治体が集まっていた。
東海「さあどうするよ。」
阿久比「西尾張は連合組んだそうだよ、僕達も組まない?」
半田「そうすべきか…」
港の潮の匂いが、重たく漂っていた。
常滑は、防波堤にもたれながら、海の向こうを睨んでいた。
常滑「……連合か。簡単に言うなぁ。」
大府「どうせ組んでも、最後は裏切り合いだろ?まったく、笑えるぜ…」
美浜「そんな言い方しなくてもいいじゃん……」
東浦は、スマホを握りしめたまま呟く。
東浦「でもさ……このままバラバラだったら、名古屋か西三河に飲まれるよ。」
知多「……。」
今まで黙っていた知多市が、ゆっくり口を開いた。
知多「俺は……港も工場も、全部守りたい。」
半田が、小さく頷く。
半田「……俺もだ。」
南知多「じゃあ、決まりだね。」
その瞬間。
沖合で、水面が――揺れた。
ボートの音が近づいてくる。
美浜が双眼鏡を覗き込みながら言う。
美浜「西尾だ…」
全員が振り向く。
空気が、一気に張り詰めた。
阿久比「……もう、始まってる。」
常滑は、拳を握った。
常滑「…なあ…知多連合……組むぞ。」
全員「……ああ。」
静かな港で、
もうひとつの同盟が、生まれた。
名古屋市内
ネオンきらめく繁華街。円卓を囲んでいる名古屋市と15区がいた。守山は何故か来ていない。
しびれを切らした中村が机を叩いた。
中川区「おい!守山はまだかよ!遅ぇな!なにやってんだよ!」
中区「守山ってざこ♡だからもうやられちゃったんじゃない?」
北区「ふっざけんな!変なこと言うんじゃねぇ!守山だって俺らの仲間だろがよ!」
北区が椅子を吹き飛ばすほどの勢いで立ち上がった。
中区「ほんとーに北くんは守山のことすきだね♡」
北区「はぁ?!おまえ…舐めやがって!もう帰るわ、こんな会議!」
名古屋「何を考えているんだ?席に座れ、北。」
名古屋に言われて(渋々)北区は椅子に座った。
名古屋「守山はどうしたんだ?調べてくれ、熱田。」
熱田区「わかった。草薙様、宜しくお願いします!」
熱田が手をパチンと叩くと、熱田の周りに緑のオーラが発生した。
数秒後、熱田は静かに目を開け、言った。
「春日井に、吸収された。」と。
ざわめきと動揺が広がった。
名古屋が、口を開く。
名古屋「……そうか。熱田、弔っておけ。」
熱田区「わかりました。帰社したら弔っておきます。」
昭和区「でも、なんで春日井が守山を吸収するんだ?」
熱田区「わからないが、どうやら瀬戸と豊山、北名古屋も吸収されたようで、吸収した後、春日井から大きな羽が生えてきていましたよ。」
名古屋が、何かに気づいたように、言った。
名古屋「おそらく、春日井の奥義、『春日井郡覚醒』だ。旧春日井郡構成区、すぐに安全なところへ逃げろ!」
北区が逃げようと立ち上がった、その時。
北区、千種区、中村区、西区、名東区、東区の旧春日井郡構成区6区が、
―――消えてしまっていた。
西三河
煙突から煙がたなびく工業地帯には、既に夜の帳が下りようとしていた。
刈谷「尾張、割れてるそうだね。」
みよし「だろうなw」
知立「僕達、どうすべきかな?」
刈谷「西尾は知多狩り行ったしなw」
碧南「でも連合は難しいと思うよ…」
高浜「そりゃそうだよ、豊田と岡崎がわかり会えるはずないのよ」
その時、遠くから歩いてくる人影があった。
岡崎「みんな集まってんな?」
刈谷「噂をすれば、なんとやら。」
みよし「うあw本命登場w」
みよしが刈谷に耳打ちする。
岡崎「豊田はまだか?」
刈谷「まだだよ」
そう言った刈谷の顔を眩しいハイビームが照らした。
静かなエンジン音に包まれて、一台のハイブリッド車が現れた。
高浜「出たよ、王」
ハイブリッド車は、音もなく滑るように止まった。
ライトが落ちる。
夜の工業地帯に、静寂が戻る。
そして、ドアが開く。
革靴が、アスファルトを踏んだ。
豊田だった。
作業服ではない。
だが、どこか“工場長”みたいな雰囲気をまとっている。
豊田「……遅れた。」
碧南「なんか映画みたいな登場だね。」
みよし「Directed by Michael Bayでクッソwww」
豊田と岡崎が向かい合った。
岡崎「よう、豊田。」
二人の間に火花が走った、ような気がした
豊田「久しぶりだな。」
みよし「でた、西三河の火薬庫だよ…orz」
木枝が揺れた。
―――ドスッ!
そこには葉っぱまみれの安城が倒れていた。
安城「イテッ…」
知立「安城、いないと思ったら…」
安城「ご、っ、ごめっ、こわかった、からっ…」
岡崎「それでも愛知7位の自治体か?」
安城「あ、あ、っ、そ、そうだねぇ、え?」
豊田はため息混じりに安城を見る。
豊田「相変わらずだな、お前は」
安城「ぼ、ぼくは、レーダーだからっ!みんなに危害が加わることがないようにっ!」
みよし「自称レーダーktkr」
雰囲気を紛らわすように刈谷がわざとらしく手を叩いた。
刈谷「本題、入るぞ。」
そう言い、刈谷はでっかい地図を広げた。
刈谷「俺が事前に交渉しておいた、港区からの情報によると、今、春日井が急速に勢力を伸ばしているらしい。豊田、瀬戸見なかっただろ?」
豊田「お、おう。」
知立が声を潜めて安城に聞く。
知立「え?カスガイ…?って…どこ?」
安城「ふぁ?!」
岡崎「どうした?!安城?!そんな声出しちゃって?!」
知立が頬を赤らめた。
豊田「聞こえてたぞ、知立。名前に「知」が入ってるのにお前の「知」は「無知」の「知」かw」
豊田が続ける。
豊田「まあ位置的に言うと、名古屋の北だ。安城、おまえよく知ってるだろ?」
安城がビクリとする。
安城「う、うん。僕の1位上だから…うん。」
岡崎が口を開いた。
岡崎「名古屋に会いに行こう。おそらく春日井のまず一番の標的は名古屋だ。」
豊田「そうだな、俺らで張り合うのはやめよう。岡崎、決闘はまた後でな。」
岡崎「わかった。準備しとけよw」
ハイビームライトが点いた、その先にいたのは、
ちまみれになった西尾がいた。
東三河
奥三河の山林は光度0。しかし、山々の中にポツリと、光が灯った。
設楽「焚き火点いたに!」
東栄「お前焚くの下手やなw」
豊根「それでも山の男か?」
焚き火がパチっと弾けた。
豊根「キャビア食うか?」
東栄「いただきィ!」
設楽「贅沢of the イヤーw」
遠くで、微かにサイレンが鳴った。
……西…尾…s…だt…落……
設楽「……なんや、あれ。」
東栄「こんな山奥まで?」
豊根はキャビアの缶を閉じた。
豊根「……下、荒れとるな。」
設楽「……帰る?」
東栄「いや。」
東栄は焚き火を見た。
東栄「今日は、ここや。」
炎が、風に揺れた。
木が揺れた。
―――誰かが落ち葉を踏む音がする。
焚き火に照らされた日焼けした泥だらけの顔が浮かび上がる。新城だ。
新城「やあ片田舎暮らし三人集…ここはわいの山やぞ?」
東栄が何やら古そうな地図を広げた。
東栄「ここはガッツリ設楽の山だに?何をいっちょるんや?」
新城「うっせぇ、死ね!雑魚三人衆!」
その瞬間。
―――パンッ。
乾いた破裂音が、山に反響した。
設楽「……は?」
東栄「今の……銃声?」
次の瞬間、背後の木に銃弾が当たる。
ドンッ。
樹皮が弾けた。
新城「チッ……外したか。」
設楽「おいおいおい!?戦国時代!?」
東栄「いや、令和だで!?令和だで!?」
新城「今度は外さんぞwわいの猟銃が火を吹くぜ!」
―――パンッ。パンッ。
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路面電車のにおい。いつものここちよい揺れ。しかし、アナウンスが絶対的に。違った。
「設楽町、東栄町、豊根村:脱落」
おそらく新城の仕業だろう。
―――あのクソ田舎野郎も意外にやるな。まあ相手が雑魚三人衆だからだろうが。
薄っすらと豊橋はそう思う。
路面電車の、減速。慣性が、働く。
暗い部屋
暗い部屋。
無数のモニター。
そこに映るのは、各地で殺し合う自治体たち。
揺れる檻。
軋む鉄。
中で、何かが――息をしている。
すべてが、計算通りだった。
私の描いた盤面は、一つも狂っていない。
嬉しい。
楽しい。
面白い。
この世界は、あまりにも、単純だ。
―――ついに、野望が叶う。
【???】は、そう思った瞬間、小さく息を吐いた。
???「……いや。」
油断は、死を呼ぶ。
【???】の瞳が、わずかに揺れた。
檻が、激しく震える。
金属が、悲鳴を上げる。
でも、
それは、問題ではない。
ここからは、 誰も、逃げられない。
檻からは――
絶対に、出られない。
Ep.1:完
Ep.2は近日投稿します
伏線だらけなのでどう回収していこうか…




