第31章 遠征3日目③
バックヤードにたどり着いたが、ここで問題だ。
出口が――シャッター。しかも閉まっている。
大型の搬入用通路だったのだろう。
救いは、手動で開けられるということ。
だがこの鉄製のシャッター、開ければ必ず音が出る。
奴らは今、俺の爆竹の誘導で、店内奥の売り場にいる。
ここでシャッターを持ち上げて、音がなったとして、奴らがここまで辿り着くまで、約十五秒くらい。
……十五秒あれば、シャッターを開けて、くぐって、落として逃げられるはずだ。
シャッターはしっかりした鉄製で、かなり重厚だ。
閉めてさえしまえば奴らも、この鉄を突き破るのは無理だろう。
幸い奴らに持ち上げて開けるという動作はできない・・はずだ。
あの特殊個体ですら壁に手をかけて登る行為はできなかった。
なので最悪シャッターにロックがなくても、この重量そのものが壁になる。
俺は鈴木を見る。
「いくよ」
鈴木が頷く。
俺は取っ手に手をかけ、一気に持ち上げようとする。
ガラガラ、と音が鳴り――ガタッ。
詰まった。
錆びで動かないのか、何かが詰まったのかわからない。
ただ動かない・・
そしてそもそも、このシャッターはすごく重い。
想像の倍重い。腕が即、悲鳴を上げる。
ただ手を離せば落ちるタイプのやつだ・・・。
横を見ると、巻き取りのレバーの穴がある。
あの穴にレバーを入れて回せばスムーズに上がるのだろう。
――だが、もう遅い。
一度手をかけた以上、音は鳴った。
今更、一度おろしてレバーを探す時間もない。
こちらに向かう大量の足音が聞こえる。
奴らが、こちらに走ってくる音。
やばい……!
しかも気づく。
このシャッター、ロックがない。
途中で挿したりして、止める固定金具がないのだ。
つまり、今これを支えているのは俺の腕だけで、一番上まであげれないと固定しないタイプ。
おわた・・。
上まであげたいが、錆かつまりかで上がらない。
上がっても途中で保持できないため、俺がこちら側に残らないとこのままでは、くぐれない。
鈴木が焦った目で周囲を見わたす。
その時、床に落ちていた木の棒を掴んだ。
「これをつっかえに!」
鈴木が棒をシャッターの下へ突っ込む。
が、少し長いため入らない。
「田中さん、もう少し持ち上げて!」
この小娘、言いよる!
しかし、あげれないと死ぬ。
今こそ「力こそパワー」の出番だ!
俺は全力で引き上げる!
骨がミシミシとなるがそんなことお構いなしだ。
重い・・・・頭の血管が切れそう・・・
その時ーーー
ガコッ!という音と共に少し上がった
「今だ、つっかえ棒を!」
鈴木が即座に棒を差し込んだ!
高さは膝くらいでギリギリ潜れる。
ーーーその時
津波のような勢いで奴らが後ろに現れる。
5,60体が一気に傾れ込んできたもんだから、出口に入るカーブで全員でドミノのように転がり、勢いのまま踏み潰されている感染者までいる。
一瞬止まる感染者たち。
それでもしっかりとこちらを獲物と捉えた瞳。
一瞬感染者たちと目が合い・・・そして、一気に走り出す!
「くぐれーーー!」
俺が叫ぶ。
鈴木が腹ばいになり、転がるように潜り抜ける。
俺も腹ばいになって続く。
俺が潜り切る直後、背後で、感染者がシャッターにぶつかる音!
ドンッ! ドンッ!
このままでは潜られる。
俺は咄嗟に鈴木に叫ぶ!
「蹴れ!」
鈴木が、木の棒を思いきり蹴った。
ガキンッ!
棒が外れ、次の瞬間――
ドォォォンッ!!!!
ものすごい音と共にシャッターが落ちる。
かなりの重厚な鉄が、地面に噛み合う。
あれを持ち上げていた俺ってすごい・・
そんなことを一瞬思ったその時、隙間に手を突っ込んでいた感染者の腕がシャッターの重さでもげたのか、目の前に飛んでボタッと落ちた。
なんてグロテスク・・・
だが気にしてはいられない・・
俺たちはシャッターから距離を取る。
内側から、バンバンと叩く音がしばらく続く。
鉄が震える。
だがこの重さと厚みだ。破られる気配はない。
やがて音が止んだ。
諦めて索敵モードに入ったのだろう。
ただ安心はしていられない。
動くなら今だ。
このシャッター音でも外側に感染者が現れないところを見ると、今この町のほとんどの感染者を、このスーパーに誘い込んだはずだ。
ここからホームセンターは近い。
通りの向こうに大きな看板が見える。
奴らがスーパーにいるのならば、そこまでの道のりはいない可能性がある。
油断はしない。
ただ大きな山場は切り抜けた。
感染者が元の定位置に戻るまでに俺たちは急いでホームセンターに向かう。
佐藤が生きていれば、そこにいるはずだ。




