第14話 【回想】
僕を呼ぶ声が聞こえる。必死に僕の名前を呼んでいる。何故だろう、前にもそんなことがあった気がする。ずっと前にも。
僕が深く沈んでいく。みんなの声が聞こえなくなる。みんなから離れていく。
やがて誰の声も聞こえなくなり、僕の目の前には青い光だけがあった。この青い光も、どこかで見た気がする。
青い光を見ていると、何か思い出せそうな気がして、思わず青い光に手を伸ばす。
青い光はパチパチと光だし、その光に僕は飲み込まれる。遠い、遠い場所に連れて行かれるような、そんな気がした。
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『今日も楽しかった?』
『うん、楽しかったよ!』
お母さんに手を引かれ、僕はいつもの帰り道を歩く。辺りはすっかり夕焼け色だった。
『今日は何して遊んでたの?』
『え! えーとね、今日はみんなで隠れんぼしてた』
お母さんの質問に、僕は内心ドキドキしていた。だって本当は、お母さん達に内緒で、お化け屋敷に行っていたから。大人達が危ないから行っちゃ駄目と言っていたあの場所に。
少し怖かったけど、僕にとっては大冒険。そこでみんなで遊んだ隠れんぼは、いつもと違って楽しかった。
『そっかそっか。あれ? 和也、膝どうしたの? 擦りむいてるじゃない』
『え? あ、えと、遊んでた時に転んだ!』
『本当? 和也、何か隠し事してないわよね?』
『本当だよ、何も隠してない!』
本当はお化け屋敷で転んだなんて言えない。お母さんに怪しまれて、僕の心臓はバクバクしていた。どうかバレませんように。
『なんか怪しいけど、帰ったらちゃんと手当てしようね』
『うん!』
一応バレなかったみたい? とりあえず一安心だ。
『あれ……』
『どうしたの?』
ない、僕はポケットの中を漁る。やっぱりない。お母さんから貰った大切なお守りがどこにもない。ポケットに入れていたお守りが失くなっている。
『和也?』
きっとあの時だ。お化け屋敷で板に躓いて転んだ時。あの時に落としたんだ。
どうしよう、お母さんにお化け屋敷に行ったなんて言えないし。でも僕の宝物が……。
『お母さん、ちょっと待ってて! 僕公園に忘れ物した! すぐに取ってくる!』
『ちょ、和也!』
僕はお母さんの手を振り解く。そんなに遠くないからすぐに戻って来れる。きっと大丈夫。すぐに見つけて、お母さんの元に戻って。
『和也っ!!』
最後に覚えているのは、お母さんの叫ぶような声と、青い、青い信号機。青い信号機を、最後に見たのを覚えている。そしてその後、僕は──。
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気がついたら僕はここにいた。どうしてここに居るんだろう。深く考えようとすると、頭が痛くなる。確か、信号機を見たんだ。どうして僕は信号機を見たんだっけ。
そうだ、僕はここに戻って来たんだ。探しに来たんだ。僕の大事な宝物。お母さんから貰った大切なもの。探さなきゃ、見つけなきゃ。
僕はお化け屋敷の中を探し回る。探して、探して、ずっと探して、探し続けて。それでも、僕の宝物は見つけられなかった。
宝物を見つけるまで、僕は帰れない。
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僕は公園に居た。何故だか僕一人だとあのお化け屋敷から出られなかったから、たまたま通り掛かった子の後を付いて行った。
僕は今日も探し続ける。もしかしたら公園にあるかもしれない。僕の宝物を探し続ける。他の子達の楽しげな声が聞こえてくる。いいなぁ、楽しそうだなぁ。みんな楽しそうに遊んでる。
羨ましいなぁ。
寂しいなぁ。
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どうして僕は一人なんだろう。寂しい。どうして僕はこんな所にいるんだろう。寂しい。僕は何でここにいるんだっけ。寂しい寂しい。何をしてたんだっけ。寂しいな。
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どうして僕はみんなみたいに自由になれないんだろう。今日も楽しげな声が聞こえてくる。
我慢できなくて、僕はとうとう声を掛けた。でも、誰一人として僕に返事をしてくれる子はいなかった。
どうしてみんな僕を無視するんだろう。みんな僕を嫌いになった?なんで?どうして?僕、まるで透明人間にでもなったみたい。
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誰も僕を見ない。
誰も話してくれない。
僕だけずっと仲間外れ。
僕だけずっと一人ぼっち。
ボクって何だっけ。
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今日はここに友達を連れてきた。
楽しい、楽しい。
ずっとここに居ればいいのに。
外からチャイムの音が鳴る。
あの音は嫌いだ。
みんないなくなるから、嫌い。
どうして行っちゃうの。
もっと遊ぼうよ、ここに居てよ。
君も居なくなるの。
もットこコニいテよ。
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あぁ、そうか……。全て思い出した。僕に起こったこと、僕がしたかったこと、僕がしてしまったこと。全部、全部思い出した。
青い光は目の前で輝き続ける。
「和也くん!」
僕を呼ぶ桔平さんの声が聞こえる。声の聞こえる方へと手を伸ばす。体がゆっくりと上へ向かって行く。
声はすぐ側に。




