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奇怪怪々浄化奇譚  作者: 七尾 一場
第2章 新天地
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第14話 【回想】

 僕を呼ぶ声が聞こえる。必死に僕の名前を呼んでいる。何故だろう、前にもそんなことがあった気がする。ずっと前にも。


 僕が深く沈んでいく。みんなの声が聞こえなくなる。みんなから離れていく。


 やがて誰の声も聞こえなくなり、僕の目の前には青い光だけがあった。この青い光も、どこかで見た気がする。


 青い光を見ていると、何か思い出せそうな気がして、思わず青い光に手を伸ばす。


 青い光はパチパチと光だし、その光に僕は飲み込まれる。遠い、遠い場所に連れて行かれるような、そんな気がした。


 ♦︎


『今日も楽しかった?』

『うん、楽しかったよ!』


 お母さんに手を引かれ、僕はいつもの帰り道を歩く。辺りはすっかり夕焼け色だった。


『今日は何して遊んでたの?』

『え! えーとね、今日はみんなで隠れんぼしてた』


 お母さんの質問に、僕は内心ドキドキしていた。だって本当は、お母さん達に内緒で、お化け屋敷に行っていたから。大人達が危ないから行っちゃ駄目と言っていたあの場所に。


 少し怖かったけど、僕にとっては大冒険。そこでみんなで遊んだ隠れんぼは、いつもと違って楽しかった。


『そっかそっか。あれ? 和也、膝どうしたの? 擦りむいてるじゃない』

『え? あ、えと、遊んでた時に転んだ!』

『本当? 和也、何か隠し事してないわよね?』

『本当だよ、何も隠してない!』


 本当はお化け屋敷で転んだなんて言えない。お母さんに怪しまれて、僕の心臓はバクバクしていた。どうかバレませんように。


『なんか怪しいけど、帰ったらちゃんと手当てしようね』

『うん!』


 一応バレなかったみたい? とりあえず一安心だ。


『あれ……』

『どうしたの?』


 ない、僕はポケットの中を漁る。やっぱりない。お母さんから貰った大切なお守りがどこにもない。ポケットに入れていたお守りが失くなっている。


『和也?』


 きっとあの時だ。お化け屋敷で板に躓いて転んだ時。あの時に落としたんだ。


 どうしよう、お母さんにお化け屋敷に行ったなんて言えないし。でも僕の宝物が……。


『お母さん、ちょっと待ってて! 僕公園に忘れ物した! すぐに取ってくる!』

『ちょ、和也!』


 僕はお母さんの手を振り解く。そんなに遠くないからすぐに戻って来れる。きっと大丈夫。すぐに見つけて、お母さんの元に戻って。


『和也っ!!』


 最後に覚えているのは、お母さんの叫ぶような声と、青い、青い信号機。青い信号機を、最後に見たのを覚えている。そしてその後、僕は──。


 ♦︎


 気がついたら僕はここにいた。どうしてここに居るんだろう。深く考えようとすると、頭が痛くなる。確か、信号機を見たんだ。どうして僕は信号機を見たんだっけ。


 そうだ、僕はここに戻って来たんだ。探しに来たんだ。僕の大事な宝物。お母さんから貰った大切なもの。探さなきゃ、見つけなきゃ。


 僕はお化け屋敷の中を探し回る。探して、探して、ずっと探して、探し続けて。それでも、僕の宝物は見つけられなかった。


 宝物を見つけるまで、僕は帰れない。


 ♦︎


 僕は公園に居た。何故だか僕一人だとあのお化け屋敷から出られなかったから、たまたま通り掛かった子の後を付いて行った。


 僕は今日も探し続ける。もしかしたら公園にあるかもしれない。僕の宝物を探し続ける。他の子達の楽しげな声が聞こえてくる。いいなぁ、楽しそうだなぁ。みんな楽しそうに遊んでる。


 羨ましいなぁ。


 寂しいなぁ。


 ♦︎


 どうして僕は一人なんだろう。寂しい。どうして僕はこんな所にいるんだろう。寂しい。僕は何でここにいるんだっけ。寂しい寂しい。何をしてたんだっけ。寂しいな。


 ♦︎


 どうして僕はみんなみたいに自由になれないんだろう。今日も楽しげな声が聞こえてくる。


 我慢できなくて、僕はとうとう声を掛けた。でも、誰一人として僕に返事をしてくれる子はいなかった。


 どうしてみんな僕を無視するんだろう。みんな僕を嫌いになった?なんで?どうして?僕、まるで透明人間にでもなったみたい。


 ♦︎


 誰も僕を見ない。

 誰も話してくれない。

 僕だけずっと仲間外れ。

 僕だけずっと一人ぼっち。

 ボクって何だっけ。


 ♦︎


 今日はここに友達を連れてきた。

 楽しい、楽しい。

 ずっとここに居ればいいのに。


 外からチャイムの音が鳴る。

 あの音は嫌いだ。

 みんないなくなるから、嫌い。


 どうして行っちゃうの。

 もっと遊ぼうよ、ここに居てよ。

 君も居なくなるの。


 もットこコニいテよ。


 ♦︎


 あぁ、そうか……。全て思い出した。僕に起こったこと、僕がしたかったこと、僕がしてしまったこと。全部、全部思い出した。


 青い光は目の前で輝き続ける。


「和也くん!」


 僕を呼ぶ桔平さんの声が聞こえる。声の聞こえる方へと手を伸ばす。体がゆっくりと上へ向かって行く。


 声はすぐ側に。

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