フィリスの秘密
「なんか凄い子だったね……」
「えぇ……そうね……」
フィリスはさっきまでの明るい雰囲気ではなく、少し落ち込んだような 感じだった。やっぱり、さっきの子の言っていたことが気になるのかな……
そう思って、私はフィリス話しかけてみようと口を開こうとしたら、フィリスが先に口を開いた。
「前にもね、あの子に言われたことがあるの。会長は諦めろ、お前と会長は釣り合わないってね」
「えっ!?あの子フィリスにそんな事を言ったの!?流石に失礼すぎるよ!?」
「まぁ、そう思いますよね」
そう言ってフィリスはクスクスと笑い、また話し始めた。
と言うか……あのフィリスにそんな失礼な口を利けるだなんて……あの子一体何者……? 私は、心の中でそう思いながらも、フィリスの話に耳を傾けた。
「その時は、変な子に絡まれたなぁ……と思って、その事はいつの間にか忘れていたのですが………さっきので思い出しました」
そう言って、フィリスは遠くを見るように空を見た。
フィリスが今何を考えているのか分からないけれど、けれどあの子の事を
考えているんだろうなと思ったら、何だか少しムカついた。
「そんな変な事言う子の事なんて気にしなくて大丈夫だよ………!!」
「沙羅……?どうしたの?怒ってる?」
「そんな事ないけれど……なんかフィリスがあの子の事考えてるんだな………って思ったら……」
「ふふっ、沙羅は可愛いですね」
そう言って、フィリスは私の頭を撫でてくれた。
恥ずかしかったけど、嫌じゃなかったのでそのまま受け入れていると、 フィリスの手が私の頬に触れて来てびっくりした。
フィリスの顔を見ると、優しく微笑んでくれていて、それがとても綺麗だった。
「やきもち焼いてくれたんですね……」
フィリスは私の耳元まで顔を近づけると、囁く様にそう言った。
私はびっくりして、思わず目をギュッと閉じてしまった。
すると、私の額に何か柔らかいものが当たった。恐る恐る目を開けると、フィリスが私にキスをしていた。
「ふぃ……フィリス……!?ななな……なにしてるの!?」
「ふふっ、ちょっとしたおまじないです」
「おまじない……?」
「そうです、沙羅が元気になるようにって……」
フィリスは、自分の唇に手を当てながらそう言った。
それを見て、私は顔が熱くなっていくのを感じた。
そんな私を見て、フィリスはクスクスと笑っている。
そして、もう一度私に近づいてきて、またキスされる……そう思っていたら、フィリスの動きがピタッと止まった。
不思議に思っていると、フィリスの視線は私の後ろに向かっていた。
振り返ってみると、そこには会長さんが立っていた。
会長さんは、いつものように優しい笑みを浮かべながらこちらに歩いてきた。
「随分と仲良しそうですね?フィリス……」
「生徒会長……」
フィリスが会長さんの方を向きながら、小さな声で呟いた。
それを聞いて、会長さんは悲しそうな表情をした。
会長さんは私達の前で立ち止まると、真剣な眼差しでフィリスを見つめていた。
「ねぇ?昔みたいに私の事名前で呼んでくれないの?」
「貴女の名前なんて呼びたくもないわ……行きましょう沙羅」
「えぅ?えっ?」
「あら、今度はその子があなたの玩具になったのね」
「おもちゃ……?」
「うるさい!!行くわよ沙羅!!」
「あっ……あの、失礼します……」
「ばいば~い、また会いましょうね、高木沙羅さん」
「えっ……?」
沙羅に腕を引っ張られながら、私は裏庭を後にした。
あの人は……どうして私の名前を知っているのだろうか……
いや、会長なら生徒の名前ぐらい知っているかとか、フィリスとあの人の関係とか色々気になる事は沢山あるけれど、今はフィリスに付いて行くだけで精一杯だった。
「ねぇ……フィリス……あの人の言っていたおもちゃって……」
「沙羅は気にしなくて大丈夫です」
フィリスはそう言って笑うけれど、その笑顔は何処か胡散臭くて、私はそれ以上聞くことができなかった。




