雨音
ぼくは誰のことも歓迎する、最悪の彼、最高の彼女、間違い電話。誰ひとりいないじぶんしか息をしてない部屋も歓迎するし、あの橋の上からあの子が落下するのを目の当たりにするとしても歓迎するし、何かを売りつけようとしている手、変装にもぼくは目をつぶれる。だっていつでも誰でも歓迎しているから。ぼくは開く。ぼくは読み上げる。ぼくは暴れるものを押さえつける。常に朗らかな態度、謎もそのままにしておくし、彼が長い手紙を作成するのにも夜明けまで付き合う。ぼくはそういうことを、時間を歓迎する。大歓迎だ、なぞるすくい上げる求めるそして求められること。嬉しく思う、何をされてもぼくはいいと思う、何度でもやってくれていいと思う、よろこんで膝をつく、いつだって。いつだってぼくはそうだ、ぼくは常時ぼく、ぼくは叩きのめされ、押し開けられ、拡張され、飲まされる、鳴かされてから泣かされる。何度でもやってくれていいと答えるぼくは、それは何度めのことなのか何十回めなのかも分かっていないに違いないのだけど、だけどやっぱりぼくにはそれすら歓迎すべき事態だ。得ることそれ自体が、体がそこにあったことそれ自体が、好ましかった。
いつも、限られている。
いつも、差し込まれている。
いつも、踏みぬく。
見られ、見せられた。こちらから差し出した全部は最後にはいつも叩きつけられた、結末はいつも同じものだった。
いつだって捕まる、どんな涙だって一滴残らず捕まる。
見渡せない、それは甘い。
古びてくる。何かに似てくる。
きみに、さようならの言葉をいえない、いつまでもいつまでも。いいいい方なんて分からないし、なんでそんなことぼくまでいわなきゃならないのか分かっていないんだ、ぼくは未だにぼくだったから。
電話越しの声がいった、俺には聴こえる気がするんだけどこれ何の音。
ぼくの一部がそれに応じていった、こっちの街は雨が降りだしてる、その音だ、急にひどい雨がきたんだ。




