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あるよ、風情ならあるよいつもここに

 





 春といえと誰かがいって春になった季節に謎の転校生がわたしたちのクラスに入ってきた。少年のその横顔に恋をしたがったり、瞬きもしないままで夢をみようとしてみたり。風に膨らんだカーテンの振りをしたカーテン。あるいは、イヤホンを分け合い知らせ合ったプレイリスト。ただでさえ朧なのに朦朧となってみたり。犬かきで向こう側に渡っていったり。女子全員、春の中だった。なんてったって何もかも放課後の教室になっていて。夕暮れとの区別がつけられないイヤホンをした耳から流れ出すのは、「砂漠のきみへ」。避難経路の貼り紙で目立つのは、キスマーク。そこはだって2人が出会うべき場所だから。読み終わりそうにない古典英文学の分厚な一冊の、その表紙に永遠に置いていたんだ、手を。その上に、落下すること以上に涙と呼ばれるものがあるとしたらどういう涙があるんだろう? 繋がった電話のむこうの沈黙、それはどこまでも白い冬。受話器ごしに吹雪いてきて、わたしたちはそっとそれを置く。すでにじぶんたちは選んだのだと、ちゃんと知るのかもしれないと思う。だけど、転校生の正体がベールに包まれたままならいいのに。この世界が席替えが禁止の場所ならいいのに。明日が昨日を抱き締めようとするのを邪魔するためだけに、わたしたちはここにいた。













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