694/715
灰色の朝
ある男がネクタイの締めすぎで死んだ。第一発見者が若い恋人の女性でなくて一先ず安心、といったところだろうか。この世にこれ以上女子のトラウマ持ちが増えたって、彼女たちは始めから少しも美しくはないし、世界という場所ももはや悪くなりようがないのだし。
発見したのは男性の弟だったという。
それは物語だね、と思い、僕はそれをそのまま声に出していった。
「物語だ」
その新聞紙を僕は折り畳み、あわせて朝も折り畳む。馬鹿みたいなコーヒーを千切って、靴に恋の背中を漬ける。伸びをする。知らない窓を開けると、ベランダに人生を投げ下ろす。




