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懐古調
君が手土産用に買ってくるあの鯛焼き屋の鯛焼きがどこのか僕は知らない。結局またしても、僕は知ろうとしなかったし、今じゃ知る術もなくなった。それどころかだ、僕の目にはあの糞ゲーじみた街での暮らしの一部ってだけで、鯛焼きなんてどうでも良いとしか映らなかった。あの街から、君と二人でいた部屋たちから遠く離れたこの場所で僕は、引っかかりを覚えるようになっている。今になって、やっと。
今になって、僕のところには君の声がしっかり届くようになっている。一緒に出かけようという声。一緒に食べようという声。君がいつの時点からか僕用に買ってくるようになったのは、なかにクリームチーズとつぶあんが入ったやつ。こちらからは何もいったりしなかったはずなのに。こちらからは何も見せまいとしているのに、そうだった。君はいつもそうだった。
もしまた君と一度でも再会できるのなら、話がしたいと僕は思う。
立ってではなく、ちゃんと座って話がしたい。たくさんのことを、君と。
だけどその時の君は、長い間があった後でようやく口を開いて君ならこういうに違いない。
「そうそう、こんなだったっけ。きみってそういう人間だったねたしか。きみはいつもそうだった」




