恋愛関係
田舎者の手が、田舎の冬の海辺で動きを止める。
都会育ちの手が、田舎者の手へと近づいてゆく。
田舎育ちの、一番かゆいところ。図書館に縁がないところ。好きな色を口に出していえないところへ。
都会育ちの手が、田舎者の手に届く。
田舎者の手の震えが、都会育ちの手に包まれて余計に止まらなくなる。
田舎者の手の震えと、包まれた都会育ちの予感。
田舎者の足が、汚い海のほうへ向かって進みたがる。
田舎者の、寝癖とも、風に乱されたのかももはや見分けられない乱れた髪。
田舎者の脚が、全力疾走し、しかし、都会育ちの脚も、全力疾走し、しかし、しかし、田舎者の脚が、走って逃げれば、都会育ちの脚では、はやくも無理だ、ぐんぐん遠ざかる、田舎者の背中、田舎者の怯え、田舎者のただの田舎者の予感にすぎないもの。
そして、かつて田舎者だった者の足が、田舎の冬を走って逃げることに、またしてもなる。
そして、かつて都会育ちの手だったものが、かつての冬の田舎者の背を、走っていく遠ざかる背を追いかけようとして、伸ばされ、届くことはなく、脇に下ろされることに、またしてもなる。
けれども、ただの手は届く。
今ここにはいない、もう見えていない手ならば尚のことそうなる。
ただの手が、ただその手をつかむ。
強く、強く、ここにいてほしい。




