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21・ヴェラの心配事

ヴェラのことを両親に相談してから数日が経った。


「お兄様……」


晩御飯の時元気がないな、と思っていたらヴェラが夜中に僕を訪ねてきた。


「どうしたの?」


丁度まだ眠くなかったので、今日学園で習ったことの復習をしてそれが終わったから本を読むところだった。


「お兄様に相談があって」


少ししょんぼりした様子のヴェラにもしかしてと思った。

今日学園に言ってる間に父様と話したんだろうか。


「わかった。こっちにおいで」


僕はソファの右側を空けるとヴェラを誘うようにぽんぽんとソファを叩いた。

ヴェラは頷くと僕の隣に座る。


「どうしたの?」


「……、お兄様は…私のこと聞いた?魔法が使えない体質かもしれないって…」


「…、うん、知ってるよ」


ヴェラが僕の顔をじっと見た。

どうしたらいいか分からないというような顔だ。


「魔法が使えなくて、周りの魔法も使えなくするかもしれないって言ってた……、パパ……お父様が…」


「うん」


「魔法学園に入学出来ないのかなあ…」


ヴェラがしょんぼりと肩を落とす。

まだ11歳のこの子には、大人の事情とかそういうのは分からないから、まずそう思うのも当たり前だ。


「それはまだ分からないよ」


「…、わからないの?」


ヴェラが首を傾げて問いかけてくる。

その角度、殺人級にかわいい…!じゃなくて…


「まだ入学までは四年あるでしょ。四年の間にそれを治せる方法が見つかるかもしれない」


見つけなきゃいけない。


「大事なのはとりあえず四年間ヴェラがどうするかだよ。父様に何か言われなかった?」


「ええと、周りに体質がバレないように…なるべくお兄様のお友達に魔法をお願いしたりしないようにって……」


「うん、そうだね、それが大事だ」


ヴェラが安心出来るように優しくソファの上のヴェラの手に手を重ねた。


「それだけじゃないけど、絶対他の人に体質がバレないようにして。15歳になるまでは魔法を使えないのは当たり前だからお友達といる時は大丈夫だけど、15歳以上の人と居る時は気をつけて…、それから、周りの魔法を使えなくするのは半径5メートルだから、その距離も覚えておいて」


「半径5メートル……ってどのくらい?」


ヴェラがそう言うので僕はすっと立ち上がるとヴェラからだいたい5メートル離れてみせた。


「このくらいかな」


「分かった」


ヴェラが真剣に頷いた。

どうしてバレたらいけないのか、と聞いてこないあたり一応その辺の話は父様からしっかり聞いたのだろう。


「どうしてバレたらダメかは聞いたかい?」


ソファの方に戻りながら一応問いかけた。


「危ない目に遭うかもしれないって」


「うん、その通りだよ」


僕は元の通りヴェラの隣に座ると、ヴェラの頭を優しく撫でる。

そうするとヴェラは少しだけ嬉しそうな顔をした。

めちゃくちゃかわいい。


「魔力がありすぎて体調が悪くなったりする人がヴェラの体質を知ったら欲しいと思うだろ。ウチは王族筋の公爵家だからヴェラが欲しいからって強硬手段に出る人は少ないだろうけど、完全に安全とは言えないから…、ヴェラが家族と引き離されて帰って来れなくなるかも」


さすがに口には出せないけれど、他の貴族は牽制できたとしても王族がヴェラを無理矢理、王太子か第二王子の婚約者にしてヴェラを王宮に住まわせるよう命令してくる可能性もある。

そうなったらヴェラの気持ちは無視だし、ヴェラの幸せは遠ざかってしまう。

王命を断ることは出来ないから知らなかったフリをして隠し通すしかない。


「お兄様やお父様…お母様たちと会えなくなるってこと?」


「下手したらそうなるかも」


「それはやだ……」


ヴェラが再びしょんぼりしてしまった。

本当はこんな顔させたくないんだけど、ヴェラの為には仕方ない。


「そうでしょ?だからバレないようにして。ヴェラが学園に入れるように、体質を治すために僕も父様たちも頑張るから…」


もう一度ヴェラの頭を撫でる。

ヴェラはしょんぼりしたまま、再び頷いた。


「お兄様が治してくれる?」


縋るようにヴェラは僕を見上げた。


ウッ、上目遣い、めちゃくちゃどちゃくそかわいい……ッ!!!


「ヴェラの為に、頑張る」


僕がそう言うと、やっとヴェラに笑顔が戻った。

それにほっとして、僕もヴェラに微笑む。


「ありがとう、お兄様…。やっぱりお兄様だいすき…」


ヴェラがギュッと僕の腕に抱きついた。

父様もヴェラには真剣に優しく言ったに違いないだろうけどそれでもヴェラは不安だったんだろう。

難しく説明されても分からないだろうし。


「僕もヴェラが大好きだよ」


大切な妹だから。絶対守るから。


前世でも妹だったかもしれないヴェラ。

現世での血の繋がりだけじゃない、大事な繋がりがある。

今度こそ絶対死なせないし、幸せにしたい。


「でも、魔力で体調悪くなる人も少し可哀想です。ヴェラが力になれるなら、なれたら良かったのに…」


天使か???????


自分が危ないかもしれないのにこんなに他人を思いやれる天使いる?????

いるよ僕の妹が天使。


「んん…ヴェラは1人だからね…そういう人はたくさんいるから……みんなの力になるのは難しいし…そうなると独り占めしたい人が出てきてそういう人がヴェラをさらって閉じ込めちゃうかもだし…」


体調が悪くなるどころじゃなく、魔力の暴走が起きたら最悪死ぬかもしれない。

そのことに言及しなかったのはどうやら正解だったな、と思った。

ヴェラは知ったらもっと気にするかもしれない。

今でさえ、そっかあ…と少し落ち込んだ様子を見せている。


「ヴェラの体質の秘密が分かれば、その人たちも助かるかもしれないね」


結局は、病気の原因が分からないと治しようもないしね。

その過程で副産物として魔力の暴走を止める手は見つかるかもしれない。


「ほんと?」


「うん。ヴェラの体質を治すなら分かるかもしれないよ。もし分かったら僕がなんとかするからヴェラはそんなに心配しないで」


ヴェラがそんなに顔も知らない他人の為に心を砕くことなんてない。

この子は本当に優しすぎる。


「ありがとう…」


ヴェラがお礼を言うことじゃないのに。


それからたくさんたわいもない話をすると、さすがにヴェラも眠くなったのかあくびをし始めたので部屋にヴェラを帰した。


ヴェラが居なくなった部屋で僕はひとり、改めてヴェラを絶対に守らなきゃと決意をした。


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