表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂人ダイアリー ~大正浪漫幻想活劇~  作者: アザミユメコ@書籍発売中
番外の幕【日常ダイアリイ】其の弐
109/143

一 メイド服の丈小咄(おまけ)

──虎丸の知らない、その後の小咄(こばなし)



 着替えもあって、(コウ)は最後まで部屋に残っていた。茜が着ていたロングスカートを眺め、ぼそっとつぶやく。


「なんだ……。これ、茜の背丈に合わせてたのか。じゃ、おれには長すぎて当たり前だよなぁ」


 想い人の八雲がロングがいいと言うならば、着てみたかったのが乙女心。

 はあ、とため息を吐いて衝立(ついたて)の奥から出る。メイド服を元あった場所に掛けていると、誰もいないと思っていた室内で声がした。


「紅、着替え終わったのですか」

「わっ、びっくりした。八雲ぶちょー、まだいたの!?」

「皆がまとめてがやがやと解散したので、乗り遅れました」

「そっか。そろそろお昼だから、早く食堂に──」

「言い忘れてましたが、似合っていましたよ。あなたには短い丈が健康的で可愛いと思います」


 娘の小さな頭をぽんと叩いて、青年作家は先に衣装室を出て行った。



「オゥララ、なんてことだ……」



 耳まで真っ赤に染めて固まっている紅を見守るのは、仲間内でもとくに目敏(めざと)いふたり。

 十里(じゅうり)と茜が廊下に張りついて聞き耳を立て、一部始終を目撃していた。


「紅の周囲にハァトが舞ってるのが見える……。せっかく虎丸くんの株が少しばかり上がったのに、最後の最後で八雲部長にぜんぶ持ってかれちゃったよ~」

「あらあら。八雲さんはそういうとこあるわよね」

「そうなんだよ。わざとじゃないんだろうけれど、そういうとこあるんだよ~。伊志川(いしかわ)化鳥(かちょう)時代は、何人もの女の人の家を渡り歩く住所不定のジゴロで有名だったからねぇ」

「それはちょっと知りたくなかったわ……」

「まあ、虎丸くんの好感度に関しては下がらなかっただけ良しとしよう。それよりさ~、きみはいいのかい?」


 十里が暗に示しているのは、『おみつに言ってあげなくていいのか』という意味だ。

 これから昼食の準備がある茜は少し迷っていたが、たった一言で姉の紅があれほど嬉しそうにしている姿を見たためか、意を決したように長いつけ毛を外した。



「……ちょっとだけ男の恰好に着替えてくる」

「うん、行っておいで」



 次話は男だらけの執事服編──

 ではなく、アンナが主役である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ