【番外編】ナディールとエレクの帝国物語 〜女神ルミエールの小さな悪戯〜
ヨウコ、イザーク、ギルヴァントが異世界を去ったあとも、帝国には物語が続いていた。
今回は、そんな帝国で新たな道を切り開く二人――ナディールとエレク――のお話。
女神ルミエールのちょっぴり意地悪な悪戯が、二人の人生にほんのり彩りを添える番外編です。
ヨウコたちが去ったあと、ナディールは街で行商人として奮闘していた。
「おっと、今日は何だかいい品が揃ってるぞ!」
そんな偶然も少しだけ、女神ルミエールの悪戯だった。ナディールが密かに思いを寄せるマティの好みにぴったりの紅茶や雑貨が、いつの間にか店に並んでいたのだ。
本人は気づかないけれど、女神様の小さな手助けが、彼の商売にほんのり彩りを添えていた。
マティはナディールの妻となり、二人は小さな幸せを噛みしめながら街で暮らした。
一方、エレクはギルヴァントの侍従として鍛えられた経験と、もともとの才能でメキメキと出世を重ね、ついに帝国の宰相に。
その腕前は皇帝にも認められ、帝国を支える立場として日々国務に奔走した。
エレクの妻はパティとベティの二人で、王宮に残りながらも、エレクと共にその能力を発揮していった。
帝国は、反逆者ガラントとアレクサンドラを許さず、厳格に幽閉した後、処刑した。
そして、年若い第3皇子スレイマンが即位し、新たな時代が始まった。
それでもナディールとエレクは、ヨウコ、イザーク、ギルヴァントの帰還をいつまでも心の奥で待っていた。
「いつか、また会える日が来るだろう」
街や王宮の風景の中、二人の胸には希望がそっと灯っていた。
もちろん、女神ルミエールはそんな二人のことを、どこかで微笑みながら見守り、時折ほんの少しだけ悪戯をしている――そんな気配が残っていた。
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今回は、ヨウコたちの物語の影で活躍したナディールとエレクの番外編でした。
二人の努力と絆、そして女神ルミエールの小さな悪戯が、少しでも読者の皆さんの心に残れば嬉しいです。
 




