【番外編】『身長185cmの私が再び出会ったら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜日本での再会②〜』
異世界での出来事から日常に戻ったヨウコ。
けれど、運命はまだ終わっていなかった。
カフェで出会った二人の帰国子女風の青年――
彼らの名乗りと視線に、胸の奥に眠る記憶が揺さぶられていく。
笑いと涙が交錯する、再会の第二幕。
女神ルミエールはまたも気まぐれに、舞台裏で微笑んでいる――。
カフェの閉店作業を終えたころ。
片付けをしていた私の前に、二人の青年が並んで立っていた。
一人は背が高く、得意げに胸を張り、にやりと口角を上げている。
もう一人は落ち着いた雰囲気で、兄を少し制するように肩をすくめていた。
「……初めまして、って言うべきかな」
背の高い方――その得意げな青年が名乗る。
「俺は羽柴トウジ、18歳。で、こっちが――」
「羽柴ヨウヘイ、17歳です。兄さん、急に押しかけたら困るでしょ」
「兄さん」という呼び方に、思わず胸がざわめく。
兄弟。トウジとヨウヘイ。
でもその響きと同時に、私の頭の中では――別の名前がよぎった。
……ギルヴァント。……イザーク。
私の困惑を見て、ヨウヘイが静かに言った。
「実は……僕らもさっき君を見て、一気に思い出したんだ。前の世界でのこと」
「……前の、世界?」
「僕はイザークで、兄さんはギルヴァントだった」
その言葉に、息が詰まった。
頭では理解できないのに、胸の奥が熱くなる。
トウジは腕を組み、にやりと笑った。
「名前が変わっても俺は俺だ。ギルヴァントだろうがトウジだろうが、魂は同じだからな」
強引な物言いなのに、涙が込み上げる。
彼らは確かに、あの世界で出会った二人だった。
「でも……どうして、私は全部思い出せないんだろう」
つぶやいた瞬間、二人は顔を見合わせた。
トウジがふっと笑う。
「女神様の気まぐれじゃねーの? あの人、絶対楽しんでるだろ」
「兄さん……」ヨウヘイが小さくため息をつく。
「でも、そうかもしれないな。ルミエール様なら、“少しずつ思い出していく方が面白い”って思ってそうだ」
思わず笑ってしまった。
私の涙をからかうような軽口なのに、不思議と心が軽くなる。
その瞬間、カフェの窓から差し込む光の中に、柔らかな影が揺れた。
女神ルミエールは、頬杖をついて微笑んでいた。
「ふふ……気づかれちゃった? だって、一気に全部思い出したらつまらないもの。少しずつ、彼らと一緒に思い出していく方が――ずっと甘くて、ずっと面白いでしょう?」
彼女の声は聞こえない。
でも、確かに心の奥に染み込んでくる。
「……あの、二人とも」
私は震える声で言った。
「今はまだ全部思い出せないけど……でも、懐かしいって思えるの」
ヨウヘイは静かにうなずく。
「それで十分です。急ぐ必要はありません」
トウジは、にやりと笑った。
「ま、いずれ絶対思い出すさ。俺のことを忘れられるわけがない」
「兄さんはほんと自信家だな」
「事実を言ってるだけだ」
二人のやりとりに、思わず笑みがこぼれる。
懐かしくて、少し切なくて、でも温かい――。
そしてこの瞬間が、きっと新しい物語の始まりなのだと感じていた。
ヨウコはまだ完全に思い出せない。
けれど、羽柴兄弟――イザークとギルヴァントの魂を宿す二人と再会し、少しずつ運命は再び動き出した。
女神ルミエールの気まぐれは、どんな未来を紡ごうとしているのか。
それは、まだ誰も知らない。




