49話 尊い人々
改めて目の前の二人を見る。
お嬢様と呼ばれた子は身長が150いくかいかないかくらいの身長の女の子だ。身長からも容姿からもそれほど年齢は高くないと思う。良くて中学生くらだろう。
格好はかなり高そうな服とズボンそれにマントという格好で防具の類は何も身に着けておらず手には杖というかステッキのようなものを持っている。
スキル構成が見えた。
『水魔術』3.1
『風魔術』2.8
『混成魔術』1.2
『魔力操作』2.1
『魔力探知』1.8
おそらくは魔術師なんだろうが魔術系のスキルをこんなに持っているのは初めて見る。
さっき蟹を倒した魔術はおそらくこの子がやったんだろう。見た目は小さな女の子に見えるが相当強い。
女騎士さんの方はお嬢様と対照的に背が高く俺より大きいか同じくらいだ。お嬢様の方が身分的に上なので上位者のふるまいをしているが実年齢的には女騎士さんのほうが相当上だろう。
そして女騎士さんの方は全身鎧とまではいかないが銅や手足そして頭などの部分部分に金属製の鎧を付けていて手には長剣と盾を持っている。
身に着けている装備はどれも細かい模様が入っていてとても高そうだ。
女騎士さんのスキル構成はこうだった。
『剣術』3.2
『盾術』2.1
『怪力』1.8
騎士ぽい能力編成だが一つだけ変なのがある。ドンにもあるやつだがあれって人間でもとれるのか。
「あなたのその後ろにいるのはゴブリンかしら?なんだか大きいけれど・・・後はロバにそれに・・・犬?」
お嬢様たちの事を見ていたら向こうから話しかけて来た。
「は、はい。こっちの3匹がゴブリンでこれが荷物持ちのロバ、後はこれが洞窟犬です。」
もっとちゃんと紹介したかったが焦っているので雑になってしまっている。
「へえ、これが、書物では読んだことがあったけど見るのは初めてね。」
そう言ってお嬢様がギンに近づいて触れようとする。
「お嬢様!」
女騎士さんがそれを制止するがお嬢様の方は気にしたそぶりもなくそのままギンを撫で始める。
「ほら大丈夫よ。おとなしい子だし。」
そう言いながら両手で本格的にギンを撫で始めた。
「はっはっはっ。」
ギンも気持ちよさそうに撫でられるがままになっている。
「はい大丈夫です。ギンは賢いので噛みついたりはしないです。」
「・・・・・・」
女騎士さんは無言でギンとお嬢様を見ている。ガン見だ。
もしかしたら少しでも怪しい動きをしたら斬る!とかそんな感じなのかもしれない。
まあ考えすぎか、いつの間にか剣や盾はしまっているし両手はフリーになっているのでちょっとおいたしたら直ぐ捕まえるくらいだろう。
「なるほどなるほど思ったよりも毛はサラサラしているし気持ちいいものね。」
女騎士さんの方を見ながらお嬢様はそう言ってくれた。
そうだろうそうだろう、その毛並みを出すために割と頻繁に洗ってるんだぜ。
そうだ更にギンの可愛い所を見てもらおう。
そう思い、俺は荷物の中からブーメランを取り出す。
これは前に飛び道具用として『飛行』を付けたブーメランだ。
ブーメランの形を説明して特注で作ってもらった上に『飛行』を3.0も付けた逸品だ。
ただし実践では大した威力がないので今ではゴブリンとギンのおもちゃ専用だ。
「ちょっといいですか?」
「何かしら?」
ギンを撫でていた手を止めてこちらを見てくる。
「今からこのおもちゃで遊ぶのでちょっと見ててください。良しギン行くぞ。」
そういうとギンの前にブーメランを出し、そのままブーメランを投げる。
「わんわん。」
ブーメランが飛んでいくとギンはすぐさま走り出す。
ブーメランはこちらに戻ってくるそのタイミングでギンはブーメランに追いつきそしてジャンプ一番、空中でブーメランをキャッチした。
ブーメランをキャッチしたギンは嬉しそうに尻尾を振りながら帰ってくる。
帰ってくるなり咥えていたブーメランを離し渾身のドヤ顔でこっちを見る。褒めろのサインだ。
「よし良くやった。」
そうギンを褒めながら頭を撫でていく。
このブーメランキャッチは取る姿も可愛いのだが帰って来てのドヤ顔が最高に可愛い。
これを見るためにブーメランを投げていると言っても過言ではない。
「どうですやってみます?」
そう言いながらブーメランをお嬢様に差し出す。
お嬢様はブーメランを受け取ると真剣な表情でブーメランを手に取って色んな角度から見ている。
ブーメランが珍しいのだろうか、そういえば販売店の人もブーメランを知らなかったな。
こっちでは珍しい物なのかもしれない。
お嬢様の足元ではギンが早く早くとせかす様に尻尾を振っている。
それに気づいたお嬢様はブーメランを両方の手のひらの上に置いた。
そしてそのままブーメランをじっと見ている。
さっき投げて見せたからやり方は分かったかと思っていたが駄目だったみたいだ、もう一度手本を見せてあげよう。
そう思い、声をかけようとした瞬間。
ブーメランがお嬢様の手のひらの上で回転を始めそのまま飛んでいっていく。
なんだありゃ。そういや『風魔術』があったなと思い出す。
わざわざブーメランを飛ばすために使ったのか流石魔術士派手だな。
飛んで行ったブーメランは待ってましたとばかりに走りだしたギンがそのままキャッチして戻ってくる。
ギンはお嬢様の足元でブーメランを離すとドヤ顔を決めた。
「よしよし良くやりました。」
お嬢様もそう褒めながらギンを撫でていく。
これでお嬢様もギンのドヤ顔の虜だな。良きかな良きかな。
「気に入ったわ。これいくら?」
ギンを指さしながら値段を聞かれてしまった。
結構前の事で記憶があいまいだ。ギンっていくらで買ったんだっけ?
「えーと・・・確か20万か30万かそのくらいです。」
「じゃあ40万で買うわ。」
「あ、でもこの子を買った時はまだもっと幼い時だったから今ならもっと高いかも。」
「じゃあ100万くらいかしら?」
「多分それなら買えると思いますよ頑張ってください。」
「え?」
「え?」
なんか微妙に話がかみ合ってない。
もしかしてギンを売ってくれって事か?
普通、値段を聞いたらその物の値段を聞いているのであってそのまま売れって事にはならないだろう。
友達にその携帯いくら?て聞かれたら買った時の値段を聞かれているのであってその携帯売ってくれよと言う意味にはなんないだろう。常識が違う。
「この子はだめです。もううちの家族なんで売れません。」
慌ててギンが売れないことを伝える。
「家族って・・・そうこれでも?」
そういうとお嬢様はステッキを持ち上げ俺の目の前にかざす。
そのステッキの先端には金属製の綺麗な細工が施されている飾りが付いている。。
なんかのマークなのか複雑な模様を立体で作っていて如何にも魔法が使えそうなステッキだ。
だがそれだけだ。ステッキを掲げたままでそれ以上なにも起きない。
何も派手な事は起きないがこのまま模様を見ているとギンを売りたくなるそんな催眠術的な魔法が発動するのかもしれない。
だが俺は負けない。俺は催眠術が使いた過ぎて咽び泣いてしまうぐらい催眠術が使いたいのだ。そんな俺が催眠術に負けたとなると一生催眠術が使えないそんな気がする。
俺は催眠術なんかに負けない、負けるもんか。催眠術に打ち勝って催眠術を手に入れるんだ。
そんな気合を入れて杖の先を見る。見る。見る。
ちなみに催眠術を使ってどんなことをするのかはもちろん内緒だ。
「どう売る気になったかしら?」
「全然。」
「なら200万だしましょう、それでどう?」
「無理です。」
これもう催眠術に勝っただろ。つまりもう俺は催眠術を克服して催眠術を使えるようになったんじゃね?
「逆にそっちが服を脱ぎたくなる。」
「はあ!?」
はいそんな訳なかったです。向こうは凄い汚物を見るような目つきでこちらを見ています。
女騎士さんはいつの間に抜剣して剣を構えております。
「すみません言い間違いました。犬は売っている所を知っているのでそこで買えます。本当です信じてください。」
特に女騎士さん信じてください。冤罪です出来心なんです信じてください。あと出来たら感度100倍になってください。
「あなた、あの発言がどういう物か分かっているの?」
「分かっています。すみませんすみません。」
ここは謝るそれしかない。
「・・・なるほど分かりました。ならこの子を譲ってくれたらさっきの失言はなかったことにしてさしあげます。」
「それは無理です。ギンはうちの子なので。それ以外だったらなんでもしますので許して下さい。」
今なんでもって言った?すみません自重します。
「あなた、自分の立場がどういうものか本当に分かってないのね。これが最後よ私にあの犬を譲りなさい。」
「無理です。」
お嬢様からの殺気というかなんか圧力みたいなのが発生しているのを感じる感じる。
更にそれ以上に女騎士さんの圧力が凄い。
なんか皆がオコで超怖い。
「そう、あなたは私が子供だからってと思って高を括っているでしょう?」
「いえ、滅相もありません。私は子供でも差別をしない主義です。」
言われてみれば女の子だから結構気さくに喋れてるしあんまり危機感がないのかも。
「あなた私を完全に馬鹿にしてるわね。」
お嬢様からの圧が膨れ上がる。
凄い空気がピリピリしている。
やばいゾクゾクしてきた、何かの扉が開きそう。
「ふぅ、ならしょうがない。でしたら先ほどの木の魔道具で手を打ってあげましょう。」
お嬢様は発していた圧力を収めると、そう言ってニヤリと悪そうな笑顔を浮かべてきた。
木の魔道具ってなんだ?と考える。
ブーメランの事かな。おもちゃを欲しがるだなんてやっぱ子供だな。
「これの事ですか?」
「そう、それよ。それでなら許してあげるわ。」
「じゃあ、はい。」
ブーメランお嬢様に渡す。ブーメランなんて安いものだし大して使ってないから別に痛くもかゆくもない。
「え?」
「え?」
なんか凄い驚かれている。
「このブーメランを差し上げますのでこれで許して下さい。」
気が変わらないうちに畳みかけよう。
「・・・なら分かったわ。先ほどの事は許しましょう。」
「はは、ありがたき幸せ。」
「やっぱ、あなた馬鹿にしているわね。」
いえいえ滅相もない。
「お嬢様そろそろ帰った方が良い時間です。」
女騎士さんがそういう。
「そうねもう結構な時間ね、でもまだ少しなら大丈夫でしょう。」
そう女騎士さんに返してこっちを向く。
「さっき少し言ってた犬が買える所について教えなさい。」
そう聞かれたのでギンを買った奴隷商の事を教える。
名前は忘れたので大体の場所を説明した。聞き役は女騎士さんだ。
一方お嬢様はブーメランを手のひらの上で回転させていたかと思うとそのまま自分の周りを飛ばしてうちのギンと遊んでいる。
ギンはギンでブーメランを追いかけて追いかけてでも捕まらないのが楽しくてしかたないようだ。めっちゃ尻尾を振りながら走り回っている。
そんな光景を横目に見ながら女騎士さんに奴隷商の場所を説明する。
なんか貴族はあまり行かない場所らしく説明するのが凄い難しかった。
共通で知っている店が少ないのと俺が通りの名前を知らないからだ。
なんとか大まかな場所を説明出来た時には結構な時間が経っていた。
「お嬢様、場所は大体分かりました。後、時間です。」
「そう残念ね。もう少し遊んでいたかったけど。じゃあまたどこかでお会いしましょう。」
そう言ってお嬢様たちが去っていく。
俺達が帰る方向とは別なのでルートは違うらしい。
そんな風にお嬢様を見送りったあと気が付く、蟹片付けていってないじゃん。
倒した蟹をそのままにしてお嬢様たちは去っていってしまったのだ。
しょうがないので俺達というかギンに穴を掘らせてそこに埋めておく。
少々蟹を貰ったがこれは手間賃と考えておこう。
蟹の後処理が終わったら俺達も良い時間なのでこのまま帰る事にする。
お嬢様が何気なしに使っていた風魔術が凄いかっこよかった。
俺も魔術を使いたいそう思った。
何に入れていいか分からないのとまた失敗したらまた取ればいいやという訳に行かなかったのでかなり慎重になっていた『水魔術』だがそろそろ何かに入れて使おう。
そうするとまずは魔術についてちゃんと調べないとな。
そんな事を考えながらこの日は終わるのであった。




