31話 当てるんじゃない当たるまで引くそれがガチャ
魔鉄鉱石を求めて2階で発掘作業を始めて8日目。
魔鉄鉱石はいくつか出た。
魔鉄鉱石は直ぐに分かったスキル容量が5.1で断トツで高かったからだ。
だが出るには出たが本当に鉄鉱石に混じって少しだけ魔鉄鉱石がある感じだ。
スキル容量が少しずつ大きくなってきてある時を超えると魔鉄鉱石が出てくるなんて想像していたが実際には本当に突然、スキル容量が大きい塊がぽつんと出てきてそれで終わりだ。
その周りに固まっていっぱいあるとかそういう事は一切なかった。
かなり入念にこの部屋の壁をスキル容量が大きい順に削っていきその先を確かめていったがある場所を境にどんどんスキル容量は減っていくのだ。
この部屋のすべてのスキル容量が高い場所周辺を探してみたがこれ以上極端に高い場所は見つからなかった。
この部屋以外にも発掘ポイントは2か所あり、そこではまだ発掘していないためそこでこの作戦をやってもいいが今の手ごたえだと無理だろう。
つまりこのスキル容量を辿っていく作戦は失敗と言う訳だ。
しかし俺は諦めない。
魔鉄鉱石ざっくざっくを俺は諦めないよ。
今までの作戦はガチャで言えば更新直後に引くと当たりやすいとか単発で引くと当たりやすいとかそういった類の作戦だ。ゲームのルール内でやる工夫とも言える。
しかしよくよく考えれば俺はチート持ちだ。限られたルール内でなんとかやりくりしている奴らをしりめに上限無視の魔法のカードを使って当たるまで引くような能力を持っているはずなのだ。
だから今度はもっと発想を変えて『スキル強奪』の力を使った方法で行こうと思う。
この1週間で掘り当てた魔鉄鉱石は1つは売ったがそれ以外は全て売らずにとってあり全部で塊で3つほどある。
これをどこかに埋めてダンジョンの特性により増やそうと思う。
名付けて魔鉄鉱山作成計画だ。
回復ゴケ農場計画の2番煎じとも言えるが実績のある計画とも言える。
問題は2つあって、1つは魔鉄鉱石は生き物ではないので『繁殖』を植えても増えないかもしれないという事だ。精製した魔鉄鋼に『繁殖』が付いていても嫌だしね。
もう1つの問題は増やすために埋めておく場所を探さなくてはいけないことだ。
この今の採掘場はみんな鉄鉱石や魔鉄鉱石を目的に掘りに来ているため埋めている間に誰かが掘ってしまう可能性もあるのだ。
だから誰も掘りに来ないような場所に埋めておいて経過を観察しなくてはならない。
問題1については今すぐ解決方法が思いつかないので保留。
だからまずは問題2の解決をしようと思う。
回復ゴケの時は何も考えず人が来ないところで決めてしまったが今回は場所選びをちゃんとしたい。
まず最初の条件としてはスキル容量が高い場所に埋めようと思う。
なぜならこの採掘部屋は壁のスキル容量が2.2~2.4と高く一番高い所で2.6あり、これはこの採掘部屋を出た時点でかなり下がり1.5くらいになる。
これにより鉄鉱石の発掘ポイントにはスキル容量が何らかの関係があると思うので場所決めの最初の条件とした。
次に考える条件は簡単に人に掘られないところに埋めたい。
この採掘部屋みたいに広く人に知られているところだと何時誰かが来て掘り返されるか分からないので普通の部屋がいい。
出来る事なら回復ゴケのように人通りが低い部屋が一番いいがスキル容量の件が優先なので最悪人通りの多い部屋でも妥協しよう。
あとの条件は今のところ思いつかないので思いついたら追加しよう。
とにかくこの条件で探してみる。
まずは現在、2階で行った事がある部屋を中心に壁や床を見てスキル容量が高い所を探していくことにする。
このスキル容量を見るというのは簡単そうに出来そうに思えるが実は時間が掛かる。
スキル容量はかなり注視しないと見えない上に壁や床なんかのつながっているような物はそこの範囲に対して焦点を合わせるようなイメージで見ないと見れないのだ。
例えるなら本屋の本棚から本を探すのだがその本棚がジャンルとか出版社とかがバラバラに並べてあるところで本を探すイメージだ。
いちいち立ち止まりながら注意して一冊一冊タイトルを確認していかないと見落としてしまう感じ。
決してざっと見回してあるかどうか分かる感じではないのだ。
そんな感じで2-1の部屋から隈なくスキル容量の値を見ていく。
この一週間はほとんど鉄を掘っていたので2階の探索はほとんど行っていないため、行った事あるのは最初にいった2-1、2-2.2-3と発掘部屋の通り道である2-4と発掘部屋である2-5の5つしかない。
ただ2-5の発掘部屋は除外なのでとりあえず4つの部屋に対して調査する。
ここになかったら別の未知の部屋に行くつもりだ。
どこも1.5~1.7くらいしかない。
ただあの発掘部屋と違うのは壁も床も同じくらいで逆に床の方が高い所があるくらいだ。
そして案外早くスキル容量が高い場所が見つかった。
他の部屋の床や壁の感じからするともっと時間が掛かるかと思った。それこそ2階を全部回るくらいの覚悟はしていた。
それは2-3の部屋の隅にある床で表面が2.0あり少し掘ると一番大きいところで2.2あった。
そして発掘部屋に行く際に毎日通る部屋の片隅で実によく知っている場所だった。
毎日移動中や帰りや発掘に飽きたタイミングでゴブリンとか大岩ガエルなんかの魔物を狩っていた。
最初のうちはいちいち狩るたびにその辺に穴を掘って埋めていたのだがいちいち掘るのが面倒くさくなったので狩った魔物はそのまま死体ごと部屋の隅に積んでおいてダンジョンから帰る最後に穴を掘ってすべての死体を埋めていた言わば墓場というかゴミ捨て場というかそんな場所だった。
普段は気にしていなかったから見ていなかったがここはこんなにスキル容量が高い場所だったんだな。
たまたま偶然スキル容量が高い場所に捨てていたなんてすごい偶然だな。ラッキーラッキー。
てそんな訳ないか。
いつも大量の死体を埋めているのに次の日、同じところを掘り返しても骨とか歯とかすら綺麗さっぱりなくなっているから不思議だな流石ダンジョンとか思ってたけどこれダンジョンが吸収しているんじゃない?
魔物を吸収することで魔力とかダンジョンポイントとかなんかそんな感じの物がいい感じで蓄積しているんじゃなかろうか。
それがある一定の値を超えると何かに変換されるとか何かが増えるとかそんな感じで魔力とかダンジョンポイントとかそんな感じのものが消費されているのではなかろうか。
つまり今この地面には大量の謎ポイントが溜まっているのでそこに魔鉄鉱石を入れておけば魔鉄鉱石が増えるのではなかろうか。
期せずして問題2だけではなく問題1も解決してしまうとは俺は天才ではなかろうか。喝采せよ喝采せよ。
とにかくこの推論を検証すべく実験を行ってみる。
掘った穴の一番スキル容量が高い地面に魔鉄鉱石を3つ全部埋めて土をかぶせれば完成。
意味があるか分からないけど前回の回復ゴケ農場の時にまいた『繁殖』スキルを1.0入れた水をまいておく。
あとは魔物の死体を入れておくとスキル容量というか謎ポイントが増えるかもしれないので今のところに魔物の死体を埋めよう。
それとは別に近くの地面にも埋めてみてスキル容量が上がるか見てみよう。
と言う訳で適当にゴブリンや大岩ガエルを倒して埋めていく。
なんか久しぶりに思いっきり狩りをしたので楽しい。やっぱ冒険者は狩りをしてなんぼだよな。壁を掘ってばかりとか偽ハンターだよ。
次の日、ワクワクしながら魔鉄鉱石を埋めた場所をみにいく。
地表のスキル容量は1.9になっていた。
急いで掘り返して魔鉄鉱石の様子を見てみる。
魔鉄鉱石は3つの塊であったはずだが一つの塊になっていた。
そして大きさは・・・。うん、なんかで測っていた訳ではないので分かんないよね。
大きくなっていて欲しいが回復ゴケの時の感じで言えば小さくなっているはずだ。
とにかくその辺にあった大きい石を当てて端のとこで砕いて同じ大きさの石を作った。
今度からはこれで大きくなったか確認しよう。
前の日にスキル容量の増減確認のために魔物を埋めた箇所は地表は変わっていなかったが中は1.6に変化していたので魔物の死体がポイントに変わる事は確定でいいと思う。
と言う訳でスキル容量が減っているという事は謎ポイントが減っているという事なので魔物の死体をいっぱい埋めて補充しよう。
後は回復ゴケの時のやり方で言えば回復ゴケを補充していたが今回は魔鉄鉱石を補充するのは止めておく。
魔鉄鉱石を手に入れようと思ったら相当、採掘部屋の壁を掘らなきゃいけないからだ。
ぶっちゃけもう壁を掘るのは飽きた。
諦めて見切りをつけるのが下手くそな俺が1週間で例の作戦を失敗扱いしたのも飽きてもう掘りたくなかったからだ。だからもう掘らない。
と言う訳で今回は魔物の死体を埋める作業のみ行う。
まずは今の魔鉄鉱石を掘り出してもっと深い穴を掘る。
そこにスキル容量が高い土を埋めて更に魔鉄鉱石を入れていく。
これはもっと大量の死体を入れておくために穴を大きくしたのだ。
誰かに掘り返されないように深くしたというのもある。
とにかくこれで準備はできたのでこの周辺の魔物を狩って狩って狩りまくってやる。
とくに大岩ガエル。
あいつらは図体がでかいからきっといい肥料になるだろう。
あいつらは倒すと持って帰らなきゃもったいないような気がするのだが持って帰るのが大変すぎたのでなんかあんまり数を倒す気にならなかった。
だがこれからは肥料にするという大義名分があるので思う存分倒して肥料にしてやる。
それから魔物を狩って肥料にすることを行い続けて5日経った。
結論から言うと大成功だ。
推論通りスキル容量というか謎ポイントは魔物死体で増えそのポイントを消費して魔鉄鉱石は増えていく。
魔鉄鉱石の端っこの方が鉄鉱石になる事なく純度100パーセントのまま面積は増えていく。
昨日確認した限りでは最初に計測した石の倍くらいの大きさになっている。
完全に魔鉄鉱石の養殖は成功したといっていい。
このままほっておいたらどうなるか分からないから魔物埋めは継続していくがこのペースで行けば5日で3つの塊分の魔鉄鉱石を採掘できることになる。
10日間掘り通しで4つに比べれば早い。なによりずっと掘らなくていいのが大変良い。
まだ増えた分を取るのは止めていて経過観察中だがもう大成功という事で今日はもうご褒美として魔鉄鋼製の剣を買ってきた。お値段400万だ。
魔鉄鉱石を売らないのになぜ買えたかというと毎日の回復薬の利益と鉄鉱石を売った利益とカエルを売った利益で貯めた分だ。つまり魔鉄鉱石の養殖は関係ないやつだ。
だがもう魔鉄鉱石の養殖は軌道に乗ったので後は待つだけでいくらでも儲ける事が出来るのだ。だから贅沢してもいいのだ。
決して後先考えずに欲しいものを買っている訳ではないのだ。
そもそも魔鉄鋼製の剣を買うためのお金儲けの手段としての魔鉄鉱石の養殖だ。
最近忘れていたが目的はあくまでも魔鉄鋼製の剣なんだからお金の目途が立ったら買ってもいいに決まっている。というかお金が貯まったら即買うべきだったのだ。
ようやく今日起きた時に思い出した。危なかった。何が鉄鉱石ガチャだ馬鹿馬鹿しい。
さて魔鉄鋼製の剣を買ったら後はお楽しみの『剣術』スキルの授与だ。
ワクワクしながらダンジョンに入って直ぐの所で『剣術』のスキル石を入れていく。
ゴブリンを沢山倒したので全部で『剣術』スキルは9.6のスキル石がある。
まずは1.0に分けて入れてみる。
入ったが剣の『剣術』スキルは0.3だ。
なるほど3分の1パターンね。
という事で次は2.7のスキル石を作って剣に入れる。
狙い通り『剣術』スキルは1.0となった。
残りのスキル石は6.6、今までの経験からすると1.0から2.0に上げるときは倍の値が必要となる。
そのため6.0のスキル石を作り剣に入れる。
これで魔鉄鋼製の剣は『剣術』2.0となった。
今はこれ以上『剣術』は上げられない。だがこれでもう俺の剣の『剣術』スキルは2.0だ。つまり俺の『剣術』スキルは2.0という事だ。
早速、剣を持って自己流の魔力を流すイメージをしながら力を込めて剣を振るう。
なんかいつもより鋭く振れている気がする。
気のせいだったら嫌だから前の剣で比較することはしない。
けど明らかにおそらくきっと鋭い剣筋だ。
前に同期の奴らを見た時はみんなスキルを1.0以上に上げていて焦ったがこれで追いついた。
というか追い越したろこれ。
ようやくだ。なんか寄り道もいっぱいしたがようやくこれで俺も冒険者として強くなる道筋が出来た。
これでようやく俺が夢見た無双への道が開けた、そんな気がした。
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第4章はこれにて終了です。
次話は他人視点の話でその次が続きとなります。
いつもならこのタイミングで2話更新していましたがストックがなくなってきたので1話ずつの更新にさせていただきます。
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