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Warmth Melt  作者: みゅうじん。
秋、帰国~
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ジャーニー 4

 明と携帯番号を交換した担当さんは、すぐに家から出て行った。それを見送った後は、一息吐いて、今日から俺の家となる部屋のドアを1から開けていった。トイレも風呂も綺麗。自分の寝室にはクローゼットが設けられていた。寝室の目の前のドアの中は和室で、そこには荷物も何も置かれていない。

 何だかまだまだ自分の家とは思えないのだが、クレヨンと真っ白な画用紙を渡された幼稚園児のようなうきうきとした気分で、数室ある部屋を全て確認し、俺はまだ窓から外を眺める明に近寄った。

「明。片付けるぞ」

「……おけーい!」

 一瞬嫌な顔をしたのは気のせいか、明は満面の笑みを作って了解した。

「俺の寝室の目の前の部屋、何も置いて無かったから、お前そこ使ってよ」

「まじ? 和室? 和室だった?」

「あぁ、うん。和室」

「了解でっす! とりま荷物運ぶわー」

 うきうきとした軽いスキップは、どう見ても年齢20をとっくに超えた大男がするものとは思えない。痛々しい後ろ姿に目を細めながら、俺も自分の荷物の整理を始めた。

 整理を始めて数時間。色々とやることが多すぎて忘れていたが、俺はある一つの重要な事実を思い出した。

「……眠い」

 完全なる時差ボケだ。

 あら方片付いた部屋。たくさんあるダンボールを片っ端からたたんでいくながら作業で、ようやくそれを自覚した。

 30分程前から自分の荷物を整理する明の方向から物音が一つもしなくなっているのには気付いていた。きっと俺より早くに時差ボケを察知し、片付けも終わらないまま寝てしまったのだろう。ムカつく。

窓の外は綺麗な茜色で程よく焼けている。普通の家庭ならば母親か誰かが美味しい晩御飯の支度をしている頃だろう。羨ましい。

 そんな時間に寝てしまっても良いのだろうか、と考える。

 前に一時帰国した時であれば、たった数日だから時差ボケなんて考えるだけ無駄だった。あっちに戻れば慣れ親しんだ時間が待っていたから。ただ、いまは違う。日本に戻ってきて、これからも住むのだ。当分あちらにいく予定もない。時差ボケははやいうちに治すの良いに決まっている。

 ただ、どうしようもなく眠いのだ。

 そんな気怠い体を一生懸命に引きずって、俺は明に宛てた和室の扉を開いた。

 数時間前と変わらぬダンボール。開けてあるものよりも、開いてないものの方が格段に多くて、なんだか呆れが苛立ちに変わる。

 盛大に吐いた舌打ちは勿論のこと爆睡しているこの大男に聞こえるわけもなく。

 いつもなら何をするでもなくこれで終わっていたが、いかんせん今の自分には強烈な眠気が内に溜まりに溜まっていたので。

「んがっ!? ……」

 俺は明の横腹を蹴りつけて、そのまま自室に戻って寝た。

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