おまけ
ギ―さんに「甘いものは好きか」と尋ねられました。
大好きです!
頷くとギ―さんの部屋に呼ばれ、椅子に座ったところでほわんとおいしそうな匂いのする紙袋を渡される。彼の手に比べると随分つつましいサイズの紙袋はほんのりとあたたかい。
「街で買ったものだ。食べるといい」
「……あの、どうしてですか?」
嬉しいけれど、なぜでしょう?
首を傾げると、「毎日頑張っているからな」と言われて、胸をくすぐる嬉しさに頬がゆるんでしまった。
袋の中からお菓子を取り出すと、砂糖のついたドーナツっぽい揚げ菓子だった。さっそくかぶりつく。
おいしい~!!
落っこちはしないかと思わず頬を押さえるレベルかも。癖のない砂糖の甘さの後に、きつね色に揚がった外側のさっくりとした歯ごたえ、バターと卵をたっぷり使ったらしい生地は甘すぎず、どこか懐かしい味がした。
ひさしぶりの甘味に夢中で食べていると、向かいで頬杖を突いて見ていたギーさんに「美味いか?」と聞かれた。
「とってもおいしいです! あっ、ギーさんの分!」
ひとりでパクパク食べてしまったと焦っていると、「お前に買った菓子だ。俺はいらん」と断られた。
でも、本当においしかったからギーさんにも味わってほしいな。
子供っぽい真似をして怒られるかもしれないとドキドキしつつ、お菓子をひとつつまんで口元に差し出す。
「何だ?」
「お、おひとつどうぞ!」
金褐色の眼が驚いたようだった。
はい、あーんだなんて、やっぱり駄目だよね……。
後悔して手を引こうとしたとき、ギーさんが一口でお菓子を呑み込んだ。わたしの指に残っていた砂糖をザラリと舐めとると、鼻面に皺を寄せて唸る。
「……甘い」
喋るとひよひよと触れる髭がくすぐったい。
――虎さんは甘いものが苦手のようです。