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声を喰らうもの

読む前に。


世界観:魔法というより「精霊の声と色・音の力」を中心とした異世界。血筋や家柄よりも「能力と信頼関係」が物語の軸


人間の会話「」

人間の本音・心の声:『 』

精霊(妖精)のセリフ:〈 〉

ルミナの心の声: ( )

パパの表向きのセリフ(咆哮):【 】(カタカナと漢字。唸り声も含む)


 北の森は、不気味なほど静まり返っていた。

 森の奥は聞こえるはずの鳥のさえずりも、風に揺れる葉の音も、何もない。ただ、重たい沈黙だけが広がっている。


「……音が、ない」

 ルミナは小さく呟いた。


 肩に乗る精霊たちも、不安そうに身を寄せ合っている。

〈やだ……ここ、怖い〉

〈声が……消えてる〉

 その言葉に、ルミナの胸がざわついた。


 先頭を歩く父ヴィクトルが足を止める。

【……ナニカ来ルゾ】

 次の瞬間だった。

 森の奥から、黒い霧のようなものがゆっくりと流れ出てくる。それは形を持たず、けれど確かな“意思”を感じさせた。

〈……お前の声を、よこせ〉

 耳ではなく、頭の奥に直接響く声。


「ひっ……!」

 一人の騎士が悲鳴を上げる。

 だがその直後、彼の口がぱくぱくと動くだけで、音が出なくなった。

「……あ、あ……?」

 声が、消えている。


(また……“声を喰らう”)

 ルミナは怯える……。


 黒い霧が、ゆっくりとルミナへ向かって伸びてくる。

〈ダメ!〉

〈触られたら、声なくなる!〉

 ルミナの精霊たちが叫ぶ。


 ルミナの足が止まる。

 前世の記憶が、鮮明によみがえる。

 声を奪われ、誰にも届かなかった日々。

(また……?)

 恐怖が喉を締め付ける。


 その瞬間――

【……ルミナ二触ルナ】

 低く、静かな声が響いた。

 ヴィクトルの姿が消えたかと思うと、次の瞬間には霧の前に立っていた。

【咆哮:消エロ】

 圧倒的な覇気が爆発する。

 ヴィクトル公爵の目はいつもよりギラついている。


 黒い霧が弾け飛び、空間が震えた。だが、それでも完全には消えない。

 奥に、小さな“核”が残っている。


(……パパでも、完全には倒せない)


 ルミナは一歩前に出た。

「……返して」

 その声に、精霊たちが一斉に反応する。

 色が、集まる。

 光が、重なる。


「みんなの声、返して」

 ルミナの手のひらから、淡い光が溢れた。

 それは色であり、音であり、言葉だった。

(前は、祈ることしかできなかった)

(でも今は、違う)

「ここにいるみんなの声は――」

「奪わせない」


 光が弾ける。

 黒い核が、ひび割れ、崩れた。


 次の瞬間、世界に音が戻る。

 風が吹く。

 葉が揺れる。

 騎士の声も、戻った。

「……しゃ、喋れる……!」

 その場に膝をつく騎士。


 後ろで、リオが泣き崩れる。

「……言えた……」


 ルミナは静かに息を吐いた。

(これが……私の力)


 振り返ると、ヴィクトルがじっとこちらを見ていた。

【……無茶スルナ、ルミナ】

【咆哮:守レナカッタラ意味ガナイ】

『怖かった……! でもかっこよかった! 俺の娘最強!!そして可愛い』


(パパ、感情が忙しいよ……)

 ルミナは小さく笑った。


 だが、風の奥から、かすかな精霊の声が届く。

〈まだ……終わってない〉

〈これは……ほんの一部〉


 ルミナは空を見上げる。

(北の森の“主”……)

 胸の奥に、静かな不安が残ったまま――それでも、パパとルミナの足は止まらなかった。


私からのお願い。

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