71.復讐を終えたら御祝い事を!
最後の復讐を終えて一年――ようやく準備が整った。
「グロリア、お願いね」
「任せて!」
控室を出るメイベルのヴェールを両手で掴む。ヴェールを掴む私の隣は、緊張しまくりのアビー。メイベルの前を歩いて花を散らす係は、孤児院出身の侍女モニカが担当する。
アビーと私は同じ桜色のドレスを着て、モニカはミント色で同じデザインだ。一緒に祭壇の前まで進む予定だった。裾を踏まないように気をつけながら、顔を上げて歩く。隣をチラリと伺えば、アビーは必死だった。顔が引き攣っている。転ばないと良いけど。
私は笑顔を振り撒きながら、白い花びらが撒かれた赤い絨毯の上を歩いた。途中で顔見知りに挨拶し、ママやパパの隣を胸を張って通り過ぎる。最後にじぃじの脇を抜けて……祭壇の前に着いた。ここで私達のお役目は終わり。
アビーの手を握り、反対の手をモニカと繋いで脇に引っ込んだ。ヴェール持ちと花撒きはここで終わりだけど、私はもうひとつ役割がある。大急ぎでママからクッションを受け取った。中央には指輪が二つ、リングピローというの。
神様とお互いのために愛を誓うにぃにとメイベルの声を聞きながら待った。メイベルはすごく綺麗、銀髪と白いドレスはまるで神様のお使いみたい。
青い瞳に合わせて、透き通った大粒の蒼玉を首飾りに仕立てた。ブローチになりそうな大粒だから、周囲を真珠のベルト状にしている。首の幅分、しっかり巻かれていた。その真珠に質のいい蒼玉を混ぜて、肩まで広がるお飾りは、単純に首飾りと呼んで良いのかどうか。宝石の襟に似ていた。
交換する指輪は蒼玉だ。にぃにの目も色が薄いけど青いからかな。落とさないように気をつけながら、合図を待つ。キースにぃの正装は、軍服っぽい。肩に金の房が付いて、勲章らしき飾りが胸元にいっぱいだった。
愛していると告げるにぃにの目が、とろんと柔らかい。受けるメイベルは頬を染めながら、同じように愛を誓った。ここでようやく私の出番だ。ママの合図で、足を踏み出した。リングを落とさない、転ばない、笑顔を心掛ける。
「にぃに、ねぇね。幸せになってね」
これで正式にホールズワースの一員だ。微笑むメイベルへピローを差し出した。二人が指輪を一つずつ手に取り、互いの指に嵌める。終わった途端に、歓声が上がった。
結婚式の参加者は身分も立場もまちまちだ。にぃには騎士団の仲間を呼んだし、メイベルは街の孤児院の子を何人も招待した。平民も貴族も王族も関係なく、わっとお祝いの言葉を投げる。お礼を言いながら教会を出た二人に、さらなるお祝いの声と花びらが贈られた。
「これでやっと隠居できる」
「まだよ。グロリアの結婚まで頑張って頂戴」
パパとママの会話に、じぃじが笑いながら口を挟んだ。
「良いじゃないか。グロリアは王家から嫁に行けばいい。じぃじと暮らそう」
途端に、パパとママが引退すると宣言を始める。お祝いの席で何やってるのよ。
「パパ、ママ、じぃじも! 今日は結婚式だから、それ以外のお話はダメ!」
ぴしっと言い渡した私を、じぃじが肩に乗せた。幸せそうなにぃにとメイベルを見つめ、私は嬉しくて泣いた。




