56.にぃには王妃様候補だった?
「頭の上を飛び越して、王命が出た。それも自分に恥をかかせた母上の子が、未来の王妃だ。いろいろ思うところはあっただろう」
うんうんと頷くにぃに。私とメイベルは同時に反応した。
「未来の王妃?」
「第二王子が、ですか?」
第二王子メレディスには兄がいる。二人とも王妃殿下の子だったし、問題行動もなかった。逆にメレディスの方がやらかしてたのに? 優秀な兄を飛び越す理由って何だろう。
「あっ!」
察した様子でメイベルが私を見る。……あれれ? もしかして、私と婚約したから?
「察したようね。その通りよ。グロリアを娶るから、第二王子が王太子になる予定だったの」
その割に大事にされなかったなぁ、なんて現実逃避してみる。
「おかしいじゃない。だったら第一王子の婚約者にしてくれたら良かったのに」
そこでメイベルが意味ありげに視線を伏せた。ママもにぃにも、言いづらそうに目を逸らす。しんとした部屋の中に、空気を読まず飛び込んだのはパパだった。
「お仕事終わったよぉ! おいで、小さなお姫様。パパのお膝に乗るといいよ」
部屋の様子を気にせず、靴を投げるように脱いだパパは手を伸ばす。素直に抱き付いて、パパのお膝に移動となった。固まった三人を眺めながら、パパに事情説明を頼む。
「あのね、パパ。どうして私はバカな第二王子の婚約者だったの? 第一王子の方が良かった」
「仕方ないよ、あの方は男色家だから」
暖色? いけない、また現実逃避してしまった。えっと、恋愛対象が男性な男性だよね? じっくり考えて、ぱちくりと瞬いた。理解した、大丈夫。
「にぃになら王妃様になれた?」
「ん? 好みと違うから無理だろう。第一王子に補佐としてついた、ぼさっとした若者がいただろう。子爵家の次男だったか。彼のような男が好みらしい」
こくこくと頷くにぃにの顔が、やや青ざめていた。この様子だと、国王陛下にお願いされたんじゃない? 第一王子の妻になってくれって……で、第一王子に好みじゃないと断られた。そんな経緯もありそう。どちらにしろ、年齢が釣り合う令嬢が生まれたので、私は第二王子の婚約者にされたわけだ。
「この辺の話は、その……国家機密だったのよ」
「わかる気がする」
メイベルは公爵令嬢で従姉妹だから、あれこれ裏話を耳にしたのだろう。パパやママは調べただろうし、にぃには婚約打診された側だし。
男同士でも婚約でいいのかな? でも結婚は教会が認めないから、結婚の約束に該当しないよね。
「とにかくだ、そういうわけで第一王子は新国王の補佐に回る予定だった。そこで婚約破棄騒動を起こせば、分かるな?」
「メレディスの王位継承権がなくなる」
にぃにの確認に頷いた私の答えは、ちょっと的を外したらしい。微妙な顔をされてしまった。
「それもそうだが、グロリアは別の王位継承者の婚約者にされただろう」
そっちか。誰もメレディスのその後はどうでも良かったみたい。ちょっと間違えちゃった。




