51.孤児院を救う裏に、何かありそう
アクロイド伯爵夫妻は知り合いに取り囲まれ、どうなっていたのか質問が飛び交う。大量の疑問へ、伯爵は丁寧に答えていたが……途中でにぃにが止めた。
「アクロイド伯爵家の受けた被害は、後日、公式発表として知らせよう。疲れているから、休ませてやってくれ。夫人も一緒に」
にぃにの采配で、あっという間にウィルズ夫人が地下牢へ運ばれる。蓑虫状態で暴れているけど、呻き声の内容は不明なので怖くなかった。
アクロイド伯爵と夫人は、騎士達に支えらえて屋内へ戻る。誠実な人柄を示すように、何度も詫びやお礼を繰り返すのが印象的だった。結局、長年仕えた老執事に「私からお伝えしておきますので」と押し切られた。
当事者が消えると、今度は事情を知っているにぃにへ視線が集まる。だが、さすがに王孫であるにぃにや私に直接聞ける者はおらず、ちらちらと視線だけが飛んできた。執事の指示で淹れ直されたお茶に手をつけるにぃには、お菓子に手を伸ばした私を止める。
「食べちゃダメなの?」
大きめの声で注目を集めた。何やら理由がありそう。
「孤児院の子ども達を見舞おうと思ってな。集まってくれるよう手配した。一緒に食べたらいい」
なるほど。集まった貴族達も後味が悪いだろうし、孤児の様子も確認したいはず。宿屋が密集する一角へ貴族が大量に押し寄せれば、邪魔になってしまう。アクロイド伯爵家は、以前と同じ屋敷と庭を維持している。広い貴族の敷地なら、安心して子どもを遊ばせることが可能だった。
すでにアクロイド伯爵には許可を得たみたい。にぃにの発言から然程待たず、馬車が到着した。乗合馬車のように大勢が乗った馬車から、まず神父様が降りる。すぐに子ども達が現れた。
宿でお風呂を借り、髪を整えたり服を新調している。こざっぱりした身なりの子ども達は、大きな屋敷の前でぽかんと口を開いて見回した。各貴族は心得た様子で、テーブルに子ども達を招く。用意された茶菓子を振る舞い、微笑んで頭を撫でた。
交流の様子を見つめるにぃにが、さらさらと何かを記して騎士へ手渡す。一礼して下がった騎士の厳しい表情から、まだこの国の掃除は終わっていないのだと理解した。
「ねぇね、貴族って面倒だね」
「仕方ないわ。隠すのが上手でなければ、貴族ではいられないもの」
意味が深いな。さっきのウィルズ夫人もそう。隠すのが上手なら、今も貴族としてこの場にいたかも知れない。男漁りも陰ですればよかったし、チャリティーなのに大きな宝石をつけていたのもおバカすぎる。
跡取りだって、こだわらずに親族から選んでおけば良かったのよ。後で交換できるんだもの。空席を作るのは、隙を生む行為と同じよね。
でも、にぃにが孤児院の件だけで動いたのが気になった。騎士に任せても済む話なのに……それに、突然孤児院を訪問しようと言い出したママも。ちらりと見上げた先で、メイベルは微笑んでいる。うん、多分メイベルは知らされてないね。私だけ仲間外れじゃなくてよかった。




