31.自問自答してしまう
ママとパパの話を聞いて、私は複雑な気持ちを抱く。あの時、婚約破棄された直後に押さえつけられ、何も出来なかった。反省も後悔もできない。ただ流れるままに、処断されただけ。
押さえつけられた胸が苦しくて、肩が痛くて、悲しむ家族を安心させたかった。これが私の真実だ。何を言いたかったのか、それすら思い出せない。でも「大丈夫よ」とか「今までありがとう」と言いたかったんじゃないかな。
王城が壊れろとも、誰かが死ねとも思わな……いいえ、違う。メレディスとリリアンに復讐すると誓った。必ず不幸にしてやる、と。強く心に刻んだ。自覚はないけど、生きたいと願ったはず。
王城が吹き飛んだ日、もしママの魔法だけなら……私はそのまま死んでたのかな。悔しい思いを抱えたまま、呪いながら二度と目覚めなかったとしたら。
こうして生きていることを感謝する反面、摂理に反してるよねと悩む。魔法の使えるママがいたこと、私も魔力を受け継いでいたこと。様々な要因があったとしても、許されていいのかな? と不安に駆られる。
「今日は何をしていたの?」
メイベルが穏やかな表情で問う。病んだ時期の暗い部分などなかったみたいに、昔のままに見えた。
「ママやパパとお話ししていたわ」
「そう。私のお部屋が出来るまで、一緒に寝てもいいかしら」
「もちろんよ」
メイベルの細やかなお願いに頷いた。中身が大人なので、乳母の付き添いは不要だ。広い部屋に一人で眠るのだから、友人が増えても問題ない。
「あら、羨ましい。私もお邪魔しようかしら」
ママがそう言い出し、あろうことかパパが便乗した。
「独り寝は嫌だから、パパも混ぜてくれ」
「婚約者と父親が同室はまずいな。一緒に行く」
にぃにがむっとした口調で入ってきて、全員が顔を見合わせた。全員一緒に眠るの? さすがに私のベッドに入り切れないと思う。
「一番広いベッドはどこだ?」
「それより、居間なら全員一緒に寝られるわ」
パパとママが本気で相談を始め、あっという間に話が纏まった。聞いていた執事スチュアートが動き出す。誰も止めないまま、テキパキと指示が出され……着々と準備が進められた。
「素敵!」
ベッドではなく、マットレスを運び込んだ床に寝ると聞いて、メイベルは手を叩いた。我が家の居間はブラッドリー国風で、絨毯を敷いた上に靴を脱いで寛ぐ。このスタイルに、彼女は憧れていたらしい。
マットレスを敷き詰める居間は使えず、食堂でそのままお茶を飲んだ。お風呂に入って、自由に居間へ集まる。私もエイミーに手を引かれてお風呂に向かい、途中で乱入したママに回収されて戻った。
「明日はメイベルと一緒に買い物に出るわ。キースはグロリアをよろしくね」
ぱちくりと瞬く。もしかして、にぃにと話す時間を作ってくれるの? 疑問を浮かべた私に、ママがにっこりと笑った。
「グロリアも一緒に行きましょう」
誘うメイベルに、にぃにが断りを入れる。それらしく聞こえる理由に、彼女も納得してくれた。
でも……いくらなんでも、私に変な趣味があるみたいに言わないで欲しかったわ。虫なんて別に好きじゃないから。




