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【完結】攻略対象×ヒロイン聖女=悪役令嬢  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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29/72

29.灰色と赤に塗り潰された日――SIDE父

 宰相として国を支えてきた。王族の尻拭いをしながら、民からの陳情を聞く。上と下から突き上げられる立場は、うんざりするほど仕事量があった。


 隣国から迎えた美しく強い妻は、夜会前に王妃殿下に会いに行った。少し遅れると連絡が入る。そのため、私は先に会場内へ足を踏み入れた。優秀な息子はまだ婚約者を定めず、娘は第二王子と婚約している。


 世間的に見れば、宰相職も合わせて成功者に見えるのだろう。私にしたら、大失敗だった。可愛い小さなお姫様は、第二王子メレディスには勿体無い。常々そう思ってきた。今日だって、私達の愛娘のエスコートをしない。代わりに息子キースが、可愛いグロリアを伴って入場した。


 あんな男に最愛の娘を取られるのか。そう思うと、いっそ義父の治める隣国へ移住するのも悪くないと思う。いや、その方がグロリアも幸せなはずだ。王妃殿下と話し合いに出向いた妻クラウディアも、同じ考えだろう。


 ワイングラス片手に、宰相職を辞する手筈を考える。辞意表明より先に、後任を選定しよう。ある程度力のある貴族を選べば、王族も無理な引き留めは出来ないはず。そこで義父殿の力を借りれば、婚約解消も可能だった。


 頭の中で組み立てたスケジュールは、一ヶ月。最短での予定を組み上げた私は、目の前で起きている事件にようやく気づいた。グロリアが、床に……押さえつけられて?


「これは……何が……」


 理解できない光景に、呟きが掠れた。気の毒そうに近くの伯爵夫人が語ったのは、第二王子と聖女リリアンが最愛の娘を貶めた現状だった。聖女リリアンとグロリアの間に接点などない。王子妃教育に忙しい娘が、聖職者をどうやって虐めるというのか。


 それ以前に、第二王子メレディスに腹が立った。これは立派な浮気ではないか! グロリアのどこに不満があるのだ。詰め寄ろうとした私の目に、振り上げられた剣が映る。磨かれた銀の刃は、恐ろしいほど美しかった。


「やめろ……私の娘だぞ!」


 この国の文官トップである宰相の娘であり、侯爵令嬢だ。たとえ王子妃候補から外されようと、こんな扱いを受ける謂れはない。ましてや殺そうなどと……そんなはずが。許されないぞ。そう叫んだ私へ、苦しい体勢のグロリアが顔を向ける。


 涙はないが、痛みを堪えるように歪んだ。唇が震えながら動き、何かを伝えようとして。


 ――ざん、と。乾いた音が聞こえる。その後、世界は真っ赤に染まった。


 色が消えていく。赤以外の何も見えなくなり、他の景色は灰色に沈んだ。鮮やかな命の色が失われていく。押さえつけた男達を振り払えたのか。動くようになった両手両足で、必死に近づく。


 転がった娘の首を、灰色に染まった妻が抱き締めた。唇を噛み締める。息子キースの叫びや周囲の悲鳴も聞こえたが、ひどく音が遠かった。涙を流すクラウディアの周囲が、黒く澱んでいく。濁る色は魔力だ。扱えずとも魔力が見えるから、私は妻と出会えた。


 見えるだけの能力だが、だからこそ濁って色を変える様子は恐ろしい。このままでは妻も失う。そう感じて手を伸ばした。


 頼む。この命を差し出してもいい。妻と娘を返してくれ。優しい妻と愛らしい娘、優秀で優しい息子――この小さな家族を守って欲しい。初めて、形のない神に祈りを捧げた。

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