ケイタくんからバイトの誘い
【ミナミside】
「いいお天気~」
窓を開けてミナミは外の新鮮な空気を部屋に入れる。
雲ひとつない青空、絶好の洗濯日和だ。
ベッドの布団を抱えて、ベランダの柵にかけた。
洗濯物を洗濯機にほおりこみ、掃除機のスイッチをいれる。
失業して、二週間がたった。
今日は月曜日。
世間では今日から一週間が始まる曜日。
でも、今のミナミは毎日が日曜日。
午後になってふとんを取り込むと、そのままふとんと共にベッドにダイブする。
太陽の匂いをいっぱい吸い込んだふとんはとても気持ちがいい。
そうしているうち、いつの間にかうとうとしてしまった。
そして、ふいに鳴ったチャイムの音で目が覚めた。
「あ……眠っちゃったんだ」
欠伸をしながら窓の外をみると、もうすっかり暗くなっていた。
さらにチャイムが鳴った。
「ミナミさん、お願いがあるんですけど」
ミナミの部屋の斜め上に住んでいる、専門学生のアカリちゃんだ。
最近、上に住んでいる美容師さんと付き合うことになったと言っていた。
「ハルヤさんが、友達も呼べって言うんです~。お願い、ミナミさん来て?」
ハルヤの友達が来ていて、みんなで飲み会をすることになったらしい。
「同じ美容室のケイタさんってひとなんですけどー、カッコイイですよ。ハルヤには劣るけど」
どうせ明日も何の用事もないのだ。
「うん、参加する」
ミナミはアカリのお願いに応じることにした。
自己紹介をしあって、飲み始めて、そして……。
ん……誰かに抱きかかえられている?
身体がゆっくりベッドに沈む。
……誰かがミナミの髪の毛に触れる。
「だれ……?」
うっすらと目を開けるけれど、電気の明かりが逆光になって顔が良く見えない。
「俺、ケイタ。大丈夫? ミナミちゃん飲みすぎて倒れちゃっただろ」
そうか。
だからケイタが介抱してくれているってわけだ。
「仕事探してるんだって?」
そういう話をしたっけ。そうだ。失業したんだって愚痴った気がする。
「うちの美容室でさ、バイト募集してるんだけど、ミナミちゃん来ない?」
「……私、髪の毛切れないよ」
「掃除は出来るだろ? 床に落ちた髪の毛を掃いたり、タオルの洗濯とか受付とかやってくれる子を探してるんだ。髪の毛が切りたいんだったら、バイトしながらでも学べるよ」
別に美容師になりたいわけじゃない。
だけど、バイトの誘いは魅力的だった。
それに、優しく微笑むケイタの笑顔はもっと魅力的だった。




