第4幕 鑑賞
様々ことを言い訳にして、更新を3か月近くサボっていました。続きを待っていてくださった方々、本当にすみません。第4話です。自分の文章力が明らかに落ちているのを感じる…
壁に映し出された映像は、ちょうどステージの幕があがるところだった。
幕が上がるのに合わせて小さくピアノのメロディが聞こえてくる。
「これは一昨年の地区大会の映像だよ。」
七海が二人に向けて言った。
「え、演劇にも大会ってあるの?」
湊がびっくりして尋ねる。
「そうだよ。演劇にも、甲子園みたいに、勝ち進むと全国まで行けるような、大きな大会がある。」
その問いに答えたのは、湊の背後で立っている七海ではなく、湊の真隣に座る桃子だった。
「え、朝比奈さん、詳しいね。」
「…まあ、やってたから。」
「「え?」」
湊と七海の声が重なった。
桃子は、しまったと思った。このことは、言わないつもりだったのに。
「…私、中学演劇部だったので。」
どうやってごまかそうか迷ったが、結局諦めて正直に答えた。
「ええ!?経験者~?やっぱり続けたくてここに来てくれたの?
てかずっと気になってたけど、やっぱり桃子ちゃんこの辺の子じゃないよね?どこ中?」
七海が驚きの声を上げ、桃子に近づく。
桃子は再び勢いに押され、黙り込んでしまった。
「姉さんやめろよ。朝比奈さん困ってるぞ。ほら、本編はじまりそうだよ。」
見かねた湊が助け舟をだすと、七海はしぶしぶ定位置に戻り、湊ももう一度映像に向き直った。
幕が上がり切り、ピアノの音が一段と大きくなった。
舞台中央に、学生服を着た男子生徒がしゃがみこんでいる。
そこに、セーラー服の女子生徒がやってきた。
『ねえ、翔太、何を読んでいるの?』
『何って、ただの本だよ。』
『いっつもそんな感じで、何を読んでいるのか教えてくれないじゃない。』
『だって、君に言ったってわかんないよ。』
『ふーん~相変わらず翔太はつれないな~。』
舞台の上の女子生徒は、よく通る明るい声ではきはきと喋り、会話に合わせてくるくると表情を変える。
湊はその女子生徒に強烈な新鮮さと既視感を同時に覚えた。
「…これ、もしかして姉さん?」
「もしかしなくてもその通り。」
七海は満足気に答えた。
舞台の上の七海は普段湊が見ている七海とはまるで別人だった。
少年を見つめる瞳は、好奇心に満ち溢れている。
声もいつもとは違い、腹の底から胸の奥までまっすぐ明るく響いてくる。
一挙手一投足が、意味のある動きだった。
舞台の上には普段の郡山七海とは、全く異なる人物が確かに存在していた。
湊はいつの間にか夢中になって映像を見ていた。
相手役の男子生徒もかなり上手い演技をしていたが、なによりその場の空気を全て自分の世界に引き込んでいくような姉の演技に感動したのだ。
「…姉さんって、実は凄いんだな。」
湊の心の本音がほろっと口をついて出てきた。
「実は、が余計だよ。」
七海は口では弟をからかったが、心ではようやく演技の素晴らしさが弟にも伝わったのが嬉しかった。
しばらくの間、3人がそれそれ真剣に映像を眺める沈黙だけが続いていたが、突然、桃子が今日一番よく通る声で言った。
「私、やっぱりもう一度、舞台に立ちたいです。」
そういった桃子の瞳は喜びに満ち溢れ、輝いていた。
湊はその瞳から、目が離せなかった。
「もっと素敵な舞台に立ちたい、まだここで諦めたくないんです。」
「……よし!そうと決まれば、新生真昼高校演劇部、始動だ!!!えいえい!」
「「おー!!!」」
七海が大きな声を張り上げ、湊と桃子もそれに続いた。
このとき湊は、人生で一番胸が期待で弾んでいるのを感じた。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、全体を三人称に変更しました。
なので公開済みの話もそのうち全てリライトします。
そこまで長い話にするつもりはないので、なるべく11月中、遅くても年内には完結させたい所存です。




