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No.23-03「1時間ライティングチャレンジ」





 新たな仲間を加えた翔人一行は、町から町へと渡り歩き続け、襲いかかる怪物や魔物達を次々となぎ倒し、徐々に暴君への足がかりを掴みかけてきた。



 その頃になると、翔人の名前はライトイニング中に知れ渡ることになり、民衆はそんな彼を「勇者」と讃えるまでに至った。



 そして時は経ち、美貌と鞭捌きのレイ。クリーチャー変化のミレイ。予言者ミズタニ。圧倒的魔力のパメラ。そして時間操作の勇者ショート。彼ら五人はとうとう暴君のアジトを突き止め、いよいよ明朝に攻め込もうと準備を進めていた。





「勇者様。緊張してる? 」



「まぁね……時間操作の力があったとしても……俺自身が真っ先に殺されてしまったら元も子もないからね。責任重大だよ」



「大丈夫。あなたのコトは私達がしっかり守るからね、勇者様」



「うん。ありがとう……それにしても……」



「それにしても? 」



「その勇者様ってのは……やめてくれよ……パメラ」



「いいじゃないの、翔人は私の命を救ってくれた勇者なんだから! それとも……こんな風に呼ばれたい? 例えば……『あなた』って」



「……か……からかうなよ! オレはそんな意味で言ったワケじゃ」



「私たち、せっかく結婚したんだからもうちょっとそれらしいことしましょうよ」



 翔人とパメラ。彼らは旅を続けていく内にお互いに心を誓い合う仲にまで進展していた。



 そしてとうとうこの前日に、教会で簡素な結婚式を行い正式に夫婦となったのだ。



 お互いにいつ命を落とすか分からない危険な旅路。悔いが残らない方がいいとのことで、ミレイ達の後押しもあって急遽決めた婚姻だった。



「ねえ勇者様? そろそろ聞いてもいい? 」



「ん? なんのことだ? 」



「とぼけないでって。あなたがこの世界に来る前のこと……聞いておきたいの」



「それか……」



 翔人は今に至るまで、レイ達とは違って頑なに過去を語ることはなかった。それについては彼にとって、あまり良い思い出ではなかったコトを意味していて、だから他の仲間もしつこく聞き出すことはしなかった。



 しかし、夜が明ければ命がけの戦いに挑む今、妻となったパメラからの願いとなれば、翔人もさすがに黙っているままにしておくことは出来なくなっていた。



「分かった……教えるよ……オレがここに来る前のこと」



「いいの? 」



「ああ、特別だ」



 翔人は粛々と妻に語った……





 オレは、前の世界……地球にいた頃はロクな人生を送っていた無かったよ……



 幼少の頃は両親に虐待されててね……毎日殴られたり背中にタバコを押しつけられたりと散々だった。



 で、確か……10歳くらいの頃だったかな? オレはとうとうこれ以上理不尽な目に遭いたくないと、両親を殺す決意を固めた。



 学校の帰りに、あらかじめ隠しておいた工具や鈍器をありったけ鞄に詰め込んで家に帰り……そのままの勢いで親を撲殺しよう……そうしよう! そう考えていた……



 けどね……それは結局やらなかった。



 一人の……公園で出会った不思議なお姉さんが、オレに気づかせてくれたんだよ。



 彼女はオレと同じく両親に虐待されていた。そしてその時、まさしく親を殺してしまった直後だったらしいんだ……お姉さんの服は返り血で真っ赤に染まっていた。



 お姉さんは僕を抱きしめてくれた……その時感じた体温が……僕の殺伐とした心を溶かしてくれたんだ。



 結局彼女は自分から罪を公に告白しに向かったよ。オレはそんな彼女を見て、親殺しを止めて他の大人に助けを求めた……そのおかげでオレは最悪な両親の元から引き離されることになった。



 そして……何年か経った後にね。オレはあの時公園で出会ったお姉さんの行方を探ったんだ。その当時の新聞だとか、その時の関係者に話を聞いたりしてね。で、ようやく彼女を見つけることが出来たと思ったら……



 こんな酷い話はあるかい? 



 オレが彼女に会いに行こうとした、ホンの一時間前に……



 死んじまってたんだ……不慮の事故でね……



 あと一時間……! あと一時間早ければ! 



 その時ほどオレは自分自身を恨んだことはない。なんで一時間早く家を出なかった? なんでもっと早くに行動しなかった? 



 そう思い続け、自責の渦が頭の中でぐるぐると回り続け……そのうち目の前が真っ暗になって……



 気がついたらオレは……この世界、ライトイニングに呼び込まれていたんだ。



 一時間早く……



 その想いが形になったのかもしれない。オレに備わっていた特殊能力は「一時間だけ過去からやり直せる」というモノになっていたのは。



 それからオレはあらゆる危機に対してこの能力を使って乗り越えてきた。



 失敗したら一時間前からやり直し……また失敗したらまた戻し……と……毎回毎回が枝分かれした行動ルートの中から、生存への道を選び抜き、未来を書き直す挑戦だった。



 そうしてこの能力を使い続けていく内に……オレは自分のなかでこの力をこう呼ぶようになっていたよ……









『1時間ライティングチャレンジ』ってね。





THE END

この話の結末は No.06「エゴのカタチ」にて語られます。


ということで一時間ライティングチャレンジはおしまいです。

ここまで読んでいただいた方には感謝致します!本当にありがとうございました!

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