第1部ー7
あくまでも、私が全て終わった後になって、伯父ウォルター皇帝陛下から聞かされたことが大部分なので、いろいろ実際とは違っているのかもしれない。
エドマンド義兄さまには、事が事だけに直接は聞けずじまいになった。
イザベラ皇女殿下は、頭のお弱い方なので、どこまで正確に覚えていて、私に話して下さったのやら。
歳月が経つにつれて、以前にご自分が話された話と食い違う話をする始末で、私が指摘すると、今回の話が正しいと言い張られる始末だった。
ともかく、エドマンド義兄さまが、事実上の婚約者であるイザベラ皇女殿下と勝手に関係を持ってしまったのは間違いないことだった。
皇帝陛下等がおられる宮殿の警備が甘すぎ、と(前世の記憶持ちの)私としては、声を大にして言いたいが、この世界では、宮中女官や宮殿で仕えている侍女が、秘かに恋人(愛人と言うべきか)と関係を持つのは、暗黙の了解になっている。
結婚を前にして宮中女官を辞任した、とある男爵家の令嬢が、予定通り、婚約者の男爵と結婚したが、結婚後、すぐに娘を産んだ。
とある侯爵家の長男と宮中で関係をもって妊娠してしまったので、慌てて本来の婚約者と結婚した。
本来の婚約者も侯爵家とコネができるのなら、と了解してしまった。
その娘は、侯爵家の孫娘に違いない、という噂が公然と流れる世界だ。
だから、宮中女官等に貴族の男性が通うのを、警備の騎士が見つけた場合には、黙認するのが正しい態度とされている。
そういった宮殿の警備の甘さを悪用して、イザベラ皇女殿下は、秘かにエドマンド義兄さまを誘い、何度か関係を持ったらしい。
ウォルター皇帝陛下が、姪である私に頭を抱え込みながら、半分独り言で言ったのだが。
「傷心の婚約者を体で慰めて、どこが悪いの」
とその意味が本当に分かっているのか、分かっていないのか。
実父のウォルター皇帝陛下の、今回の一件に関する詰問に対して、イザベラ皇女殿下は、開き直ってそう返答したらしい。
ともかく、その結果はえらいことになった。
イザベラ皇女殿下が懐妊してしまったのだ。
未婚の皇女が懐妊する。
前代未聞の大醜聞だった。
しかも悪いことに、慌ててエドマンド義兄さまとイザベラ皇女殿下を結婚させて、早産で子供が出来たと取り繕うには遅すぎる時点で発覚してしまった。
皇室関係者は極秘で緊急打ち合わせを開くことになった。
イザベラ皇女殿下と、エドマンド義兄さまと個別に話を聞き、それぞれから事情を聴くにつれ、ウォルター皇帝陛下以下、皇室関係者はますます頭を抱え込んだらしい。
どう考えても、イザベラ皇女殿下の軽率な行動が全ての発端だったからだ。
とりあえず、2人共、病気にかかったことにして、共に謹慎させたが、子どもの始末に頭を抱え込むことになった。
娘が産まれたならまだしも、息子が産まれたなら、立派な皇位継承者になるからだ(帝国の皇位継承は、男系の男子に限られるため)。
ウォルター皇帝陛下から聞かされた話だと、こんな感じで、話は進んだらしい。
「ともかく、イザベラは子どもが生まれ次第、罰を兼ねて、修道院に生涯、閉じ込める。問題は、エドマンドだ。どう処分すべきかな」
ウォルター皇帝陛下は、他の皇族に問いかけた。
「息子のエドマンドを修道院に入れるのはやぶさかではありませんが、人の口に戸は立てられません。それに私は事実上皇位継承から除外された身。エドマンドまで、修道院に入れては、アーサー皇太子殿下に言うべからざること(薨去されること)が起きた時に困るのでは」
「そうだな」
ドミニク父さんの返答に、ウォルター皇帝陛下は肯いた。
「こうされてはいかがで」
ドミニク父さんの提案に、皆は驚いた、が納得もした。




