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殺し屋の私が愛してしまったのはターゲットのポンコツ王子でした  作者: 焼きそばこっこ


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***

心地よいオーケストラの音色が広間を包み込む。中央ではこの国で一番大きい、まさに権力を象徴するかのようなシャンデリアが輝く中、貴族達は舞踏会につくや否やこのパーティーの主役達に挨拶をしに行った。


「オースティン殿下!お誕生日おめでとうございます!王国の神童と呼ばれていた貴方がもう成人なさるとは…感無量でございます!」


「ありがとう。カールズ伯爵。祝いの品も昨日届いた。まさか悪徳商人達の密輸経路情報とは。またこの世界の悪を一つ消せそうだ」


空を切り開くような透き通る声と共に人当たりの良い爽やかな笑顔を浮かべたのは、この国の第一王子、オースティン・ヴァレンティア。眉目秀麗、文武両道、それでいて品行方正な、まさに完璧な‘主人公’。


「エリオット殿下ぁ!ほんっとうにお誕生日、おめでとうございますぅ!ささやかではありますが、誕生日プレゼントでございますぅ」


「おぉ!この…平民が食べるパンよりも小さい箱に一体何が入って……ん?なんだ。ただの青い宝石か」


「い、いえ殿下、こちら希少なブルーダイアモンドをふんだんに使ったブレスレットでございますぅ。アクセサリーですが、シンプルなデザインですしぃ…正直、真っ黒な黒髪の第一殿下より、エリオット殿下の素晴らしい黄金の髪によく合うと思いまして」


「ふーん。まさに僕にぴったりの宝石ってわけだ。」

そう言ってまんざらでもない顔をしている第二王子、エリオット・ヴァレンティアは、そんな完璧な兄とは正反対で、無知蒙昧、浅学非才、一生黒星、赤点常連。顔こそ王家の血筋らしい金髪碧眼の整った顔をしているが、それ以外の全てにおいて彼は双子の兄オースティンに完全敗北していた。


「…モブリーノ・マベンダ侯爵令嬢!およタダーノ・パンピール侯爵令息!」

まだ舞踏会は始まったばかり。フットマンによって粛々と貴族達の名前が呼ばれ、王宮の広間へと足を踏み入れていき、時間が経つにつれ会場のざわめきは大きくなっていった。


しかし。


「…り、リゼリア・フロイス伯爵令嬢!」

その名前(リゼリア)を呼ぶ声が会場に響いた途端、そのざわめきが一瞬にして消える。

王家を滅亡寸前まで追い詰めた稀代の悪女リゼリアの名を口に出すことはタブーであった。ましてや人の名前につけるなど。

冷たい汗をたらりと流して、全員がドアのある方に目を向けた。


ギィィィィ  

  コツ コツ コツン…


静寂の中、軽やかな足音が近づくと同時に現れたのはまさに女神であった。

皆、リゼリアがどんな女を意味するのかも忘れて、ただ彼女をじっと見つめる。所々から、ワイングラスの割れる音までした。

光に照らされてより輝く銀髪も、新雪よりも白い肌によく合った真っ赤なドレスも、全てが、神秘的だった。

彼女は、サファイアを溶かしたような瞳で辺りを見回して小さな口をゆっくり開く。


「…あら。とても静かですね。ちょうどいいですし、ご挨拶させていただきます。この度、フロイス伯爵家の養子となりました、リゼリア・フロイスでございます。オースティン・ヴァレンティア第一王子殿下、エリオット・ヴァレンティア第二王子殿下、お誕生日おめでとうございます」


そう言って細い体をしなやかに傾け美しいカーテシーを魅せる。

ゆっくりと上げられた、言葉では形容し難いその異次元の美しさにその場にいる全員が息を忘れた。

挨拶を終えた後、彼女は迷いなく壁の隅に佇み、ただ微笑んでいた。誰もがその視線が自分のために向けられているように感じるようなそんな眼差しだった。


我に返った指揮者がまた指揮棒を降り始める。それと同時に会場のざわめきも徐々に元に戻っていった。

しかし、二人の男が彼女の元へと歩み寄る。


「リゼリア・フロイス嬢。良ければ俺と、一緒に踊らないか?」

オースティンが完璧な身のこなしで、膝をつき、手を差し出す。まるで恋愛小説のヒーローのように。


「おいおい、待ってくれよオースティン。…ゴホン!リゼリア、僕も、まるで蚕のように白い君と、一曲踊りたい!」

エリオットは緊張しているのか、差し出す腕も、床につける膝も、令嬢にかける言葉も全てを間違えている。恋愛小説のヒーローは愚か、序盤で消える当て馬でも、もう少し上手なダンスの誘い方だ。


誰もがリゼリアが選ぶのはオースティンだと考えていた。エリオットさえも、心の裏側にどこか諦めている感情があった。

けれど、前述した通りこの物語の主人公は、オースティンではない。


「ダンスのお誘いありがとうございます」


彼女、リゼリア・フロイスが手を取ったのは、


「エリオット殿下」


他でもない、ポンコツ王子、エリオット・ヴァレンティアであった。

横目でその現場を見ていた貴族達も、オースティンも、そしてエリオット当の本人もまさか自分が選ばれるとは夢にも思っていなかったもので、間抜けな顔をより間抜けにして、言葉を詰まらせる。


「え…?あ、ぼ、僕?僕でいいのか?」

「はい。エリオット殿下」


そう言って、女神の微笑を浮かべる彼女、リゼリア・フロイス。


(まずはターゲットとの接触クリア。この様子なら記念すべき100回目の暗殺も…ちょろいわね)


どんなターゲットも女の武器とその脅威的な暗殺技術をもって確実に殺す。

そしてこれが彼女の100回目の暗殺にして、最大の仕事。暗殺対象はこの国の第2王子、


エリオット・ヴァレンティアであった。


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