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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第四章 | 【Forth Story of the Babies:《我等、人類を守る盾となり》】

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Episode 46 :【好物と、ゴーグルと、仲間の過去】

「――うん! いつも変わらず、この店のイチゴ大福は美味い!」


「うんうん! うまいうまい!

 あー美味しいなー! 1人で食べても美味しいなー!」


「……なんか当てつけのように聞こえるんですけど」


 最初は落ち込んでいた、雨津星《あまつぼし》さんと鳳紫《ほむら》さん。


 だけど、手元に持っていた大好物を食べ始めたら、すぐに復活してくれた (内心ホッとしたのは、ここだけの話だ)。


「まあ、っていうのは冗談やけど……。

 ナッチャンは、何か好きなもんとかないの?」


「……あまり、思いつかないですね。食には、そんなに興味がない方なんで」


 ……半分は本当だが、半分は嘘だ。


 俺の一番の好物――それは、母さんが作ってくれる、だし巻き卵。


 だけどもう、何年も食べていないので、味も忘れてしまった。


 母さんがいなくなってしまった今、二度と食べることもできない。


 だから……俺に、好物と言えるものは、もう存在しない。


「ふーん、そっかー。

 これから長い付き合いになるかもやから、色々とナッチャンのこと知りたかったんやけどなー。残念、無念」


「まあ、焦る必要は無いさ。

 今は、新たな仲間の加入を、純粋に祝おうじゃないか」


「……仲間……」


 イチゴ大福を飲み込んだ雨津星さんが、何気なく口にした「仲間」という言葉。


 その言葉に、胸が温かくなる……と同時に、一つの疑問が浮かび上がる。


「そういえば……さっきこの部屋にいたゴーグル男って、〈A.E.G.I.S(イージス)〉の構成員なんですか? お二人と同じバッジを付けていましたが」


 先程の男――額のゴーグルと眼鏡が特徴的な白衣の男。


 彼もまた、俺の予想通りなら、仲間と言える存在のはず。


 だからこそ、そんな男の詳細を、2人に尋ねてみる。


「ゴーグル男……? ああ、センマン殿《どの》のこと?

 なんや、妙な呼び方するから、一瞬 誰のことかと思ったわ」


「……センマン殿?」


「本名は、鶴亀《つるかめ》怜仙《れいせん》。〈A.E.G.I.S〉が誇る、天才科学者やで。

 特殊構成員になるには、戦闘部門か技術部門、どっちかの選抜試験をクリアしないとアカンのやけど……それをストレートで合格した、唯一の逸材なんやで」


 ポテチをパリパリと食べながら、そう解説する鳳紫さん。


 そんな彼女に続いて、雨津星さんが口を開く。


「表立って戦場に出ることは少ないが、〈A.E.G.I.S〉が戦闘組織である以上、彼の支援や技術力は、なくてはならないものだ。

 組織における重要性で言えば、主任の俺よりも、圧倒的に彼の方が上とさえ言えるな」


「……そうなんですか」


 ――鶴亀怜仙。


 猫背で弱々しい風貌《ふうぼう》とはかけ離れた、やたら縁起の良さそうな、物珍しい名前。


 どうやらそれが、双眼鏡男の正体らしい。


 試験の内容は分からないので、それを一発合格したという事実に関しては、いまいちピンとは来ないが……。


 それでも、雨津星さんや鳳紫さんが、真剣な面持ちで評価していることから、その頭脳や技術力は本物なのだろう。


 ……まあ、それはともかく。


「ところで、俺の〝ゴーグル男〟よりも、鳳紫さんの〝センマン殿〟の方が、よっぽど妙な呼び方だと思いますけど……」


「えっ、そう?

 まあでも、『鶴は千年、亀は万年』って言うし? 縁起ええ感じするじゃん?」


「……それが由来なんですね」


 「リュウさん」や「リンリン」とは、ネーミングの法則が変わっている気がするが……。


「でも、ああ見えてセンマン殿、元々はリュウさんと同じ、警察官やったらしいんやて。

 確か、サイバー犯罪対策課、やったっけ?」


「メインは、だな。

 実際には、その頃から博識《はくしき》多才《たさい》な故に、八面《はちめん》六臂《ろっぴ》の活躍をしていた。

 人付き合いが苦手で、気難しい性格ではあるが、その根の善良さは、元相棒の俺が保証するぞ!」


(※「八面《はちめん》六臂《ろっぴ》」→仏像などが、8つの顔と6本の腕を持っていることから、多方面で目覚ましい活躍をすること)


 《《あの鶴亀》》が、元警察官だという事実。


 それには驚かされたが、雨津星さんもまた警察官だったという事実には、どこか納得できる自分がいた。


 あの鋭い洞察力《どうさつりょく》や、《HERO(ヒーロー)》を前にしても動じない強靭《きょうじん》な精神力は、警察時代に培《つちか》われたものだった……ということか。


「あ、ちなみにウチは、元陸上自衛官! 

 スカウトされてから、選抜試験を受けて、それからも紆余曲折を経て、今現在に至るというわけやで~」


「……そうなんですね」


 そうなると、もしかすると、あの鳴宮《なるみや》も、何かしらの特殊な経歴の持ち主なのかもしれない。


「ちなみに、彼が着けているゴーグルは、少々特殊なものでね。 

 機械化した両目と組み合わせることにより、対象を視認するだけで、スパコン並みの演算処理能力による識別を、可能にしているらしい!」


「よーやるよなぁ、目ぇにメス入れるなんて。おぉ怖っ! ウチなら絶対ムリやわぁ~。

 やっぱウチみたいに、機械化するんなら胃やろ、胃! 鉄の胃袋って言葉があるくらいやしな~」


「……そういうノリで機械化するもんなんですか?」


 雨津星さんの両腕、鳳紫さんの胃 (?)、鶴亀の両目――。

 

 そうなると、鳴宮も、肉体のどこかを機械化しているのだろうか。


 思い当たる節はある。


 鳴宮はあの時、投げ飛ばした俺を瞬時に追いかけ、そして俺が反撃するよりも先に、間合いに入ってみせた。


 あそこまでの俊敏《しゅんびん》さは、ただ跳躍力《ちょうやくりょく》を鍛えるだけで繰り出せるものじゃない。


 おそらく、鳴宮が機械化しているのは――両足。


 そう仮定すると、前述の俊敏《しゅんびん》さだけでなく、蹴《け》り技《わざ》主体の奴の戦闘スタイルの説明にもなる。


 ……まあ、だから何だと言えば、それまでなんだけどな。


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挿絵(By みてみん)

(鶴亀(つるかめ) 怜仙(れいせん))


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<次回予告>


≪突然、喧(けたた)ましいアラーム音が、治療室に鳴り響く。≫


『緊急速報……。

 〈アフターエリア〉から、夥《おびただ》しい数の《ネスト》が、お引っ越ししてきたよ……』


「……《TYPE(タイプ):D(ディー)》?」


次回――Episode 47 :【翼竜(ドラゴン)、襲来】

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