Episode Prologue :【目覚め】
――「光あれ」。
この世界は、そんな神様の言葉をきっかけに生まれた――そう言われている。
ある日、神様は再び、「光あれ」と、創世の言葉を唱えた。
すると、世界は、目が眩むほどの激しい閃光に包まれた。
――こうして、古き世界は生まれ変わり、新たな世界が誕生した。
逃げ惑う人々。
泣き叫ぶ幼子。
焼け焦がす熱波。
吹き荒れる爆風。
崩壊する建物。
朽ち果てる死体。
その全ては――人智を超越した異形の怪物・《ヒューマネスト》の魔の手によって、齎されたものだった。
神様が、どうして今になって、世界を創り変えようと思ったのか……それは誰にも分からない。
しかし、神様の気まぐれで創り変えられた世界は――地獄と呼ぶことすら生温いほど、どこまでも惨たらしく、残酷な光景だった。
……父さん……母さん……俺は――――。
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――ピピピピピ……ピピピピピ……。
――〝Future-Phone〟(この時代の携帯電話端末)のアラーム音が、夢の世界から現実へと、俺を引き戻した。
もう何年も見ていなかった……いや、見るはずのなかった、あの向こう側の世界。
そこで広がる景色は、やはり変わらず、反射的に吐き気で噎せ返りそうなほどに、リアルなものだった。
あの嫌な焦げ臭さすら、鼻の奥にまだ残っている感じがする。
(……本当に夢であってくれれば、よかったのにな……)
一般的に夢とは、潜在意識に刻まれた記憶や体験を、脳が処理して生まれるもの……らしい。
つまり、俺が見ていた惨劇は、夢物語などではなく――ただ、《《事実を忠実に再現しただけのもの》》なのだ。
「…………行くか」
悪夢という名の過去の記憶に魘されていたせいで、あまりにも気分が悪い。まさに最悪の目覚めだ。
けれど、俺には立ち止まっている時間はない。
『俺は、この残酷な世界を変えるために、強くならなければならない』。
そう自分に言い聞かせるように、両手で顔を何度も叩く。
そうやって、まだ朧げな視界と意識を叩き起こした俺は、ベッドを離れる。
最低限の身支度を終え、自動で開かれる鋼鉄のドアを抜けた。
その瞬間、未来へと繋がる今日という時間が、始まりを告げた――。
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