塔内部
引き続き、この作品を読んでいただきありがとうございます。
第一調査隊の記録では――
階段は、戦闘の“結果”として現れていた。
一定規模の戦闘。
損耗。
生存。
それらを経て、初めて“次の層への道”が出現する。
だが、今回は違う。
戦闘は続いている。
損耗もある。
だが――
階段だけが、先に存在していた。
「……条件が違うのか、それとも」
ガーランドは、交差する巨大階段を見上げながら呟く。
「最初から“進ませる気”なのか」
答えは出ない。
だからこそ、彼は進めることを選ばなかった。
「上には行かない。予定通り、一階層の完全掌握を優先する」
冷静な判断だった。
未知に対して、段階を飛ばすな。
それが――生き残った者の結論だ。
東西南北の主通路は、すでに制圧されていた。
無限とも思えるセキュリティ・ロボットの波を、圧倒的火力で押し切り、部隊は中心へと到達している。
次の段階。
「各隊、小隊単位に分離。枝道の探索を開始しろ。マッピングを優先、交戦は必要最小限だ」
命令が下る。
主通路から無数に分岐する細い通路――路地。
まるで血管のように広がるそれらに、兵士たちは慎重に足を踏み入れていく。
「……妙だな」
ガーランドは、ある地点で足を止めた。
壁面。
これまでと同じ、滑らかな灰色の構造。
だが――
そこには、わずかな歪みがあった。
焦げ跡。
弾痕。
そして、ほんの数センチだけ、開いている隙間。
「ここ、さっき撃った場所か?」
部下の一人が言う。
「……イエス、少佐」
ガーランドは近づく。
その瞬間。
ギチ……ギチギチ……
壁が、動いた。
まるで生き物のように、破損箇所が内側から盛り上がり、修復を開始している。
「自動修復……!」
兵士が息を呑む。
だがガーランドは、逆に目を細めた。
「違うな」
彼は背負っていた巨大戦斧を、無造作に引き抜いた。
そして――
壁へ叩き込む。
ゴォンッ!!
重い衝撃音と共に、壁面が大きく裂ける。
修復が追いつかないほどの“破壊”。
「開けるぞ」
低く言い放ち、そのまま斧を食い込ませた状態で――
腕を、壁の中へ突っ込んだ。
「少佐!?」
周囲がどよめく。
だが次の瞬間、ガーランドの動きが止まる。
「……そういうことか」
ゆっくりと、腕を引き抜く。
その手には――
まだ形を成しきっていない金属塊。
内部からは、規則的な駆動音が響いていた。
ウィィィン……カチ、カチ……
「……これ」
兵士の一人が、呆然と呟く。
「ロボットの……部品……?」
否。
それは部品ではない。
“製造途中の個体”だった。
「工場だ」
ガーランドは断言する。
「この壁の中……全部、製造ラインだ」
その言葉が、通信を通じて各部隊へと広がる。
塔は、防衛装置ではない。
生産している。
無限に。
敵を。
「――なら、話は単純だ」
ガーランドは再び斧を構える。
「壊せばいい」
再度、壁へ叩き込む。
だが。
ギギギギギ――――……
修復速度が、明らかに上がっていた。
「……学習してやがるな」
彼は一瞬だけ考え――すぐに判断する。
「固定する」
近くの兵士へ視線を送る。
「盾を寄越せ」
差し出された大型の金属製シールドを、ガーランドは片手で受け取る。
そして。
裂け目に――
無理やり突き刺した。
ギィィィィッ!!
修復しようとする壁と、押し込まれた異物が拮抗する。
「閉じさせるな。この状態を維持しろ」
さらに、別の部材を押し込み、穴を“固定”する。
内部が、露出したままになる。
「後続部隊に伝えろ。ここを拠点にする」
ガーランドは振り返る。
「解析班を呼べ。“中”を全部調べろ」
一拍置いて――
「これで、この塔の正体がわかるかもしれない」
その言葉は、静かだったが重かった。
やがて、彼は背を向ける。
「少佐、どちらへ?」
「一度戻る」
短く答える。
視線は、遠く。
交差する階段の先――見えない上層を見据えていた。
「一階は読めた」
だが、その先は違う。
あそこから先は――
「……あの男の領域だ」
☆☆☆
塔内・前線司令基地。
簡易的に構築された指揮所の中で、ガーランドは上官へ報告を行っていた。
「第一階層は“生産層”です。敵は無限ではない、“供給されている”」
映像データが展開される。
壁内部、未完成のロボット群。
「制圧は可能です。だが――」
一瞬、言葉を切る。
「上層は別です」
沈黙。
「……理由は?」
「経験です」
それだけで、十分だった。
第一調査隊を生き延びた男の言葉。
それは、何よりも重い。
「上層攻略には、自衛隊の協力が必要です」
そして、はっきりと告げる。
「あの男を呼んでください」
一拍。
「――赤星帝を」
塔は、まだ終わっていない。
むしろ。
ここからが、本番だった。
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