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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第五章・ここから先が大変だと思う。
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第130話 見知らぬ姿にポカンとした。

 修学旅行の翌日の休日。

 この日の私達は午前中だけはのんびりと寝室で過ごして、午後から(あき)君の発案でお出かけすることになった。

 それは修学旅行で買ってきたお土産をお届けするためだったりする。


「ところでお出かけって……自転車で?」

「いや、昨日の今日で疲れが残っているから自転車ではないな」


 そうだよね?

 いつもならサイクルウェアに着替えているのに、今日に限って(あき)君は修学旅行で着たジャケットと色違いのズボン、ブーツを履いて玄関で待っていたから。

 私も今日の装いはスカートではなく動きやすいスキニーパンツを指定されたもの。

 上に羽織っている服は七分袖で桃色のブラウス。

 残暑厳しい季節だから長袖もね? って感じだ。


「なら、どうやって?」

「これを被ってくれ」

「これ?」


 (あき)君は自転車の物とは異なるヘルメットを私に手渡してきた。

 それは顔の前面を透明なカバーで覆うタイプの大きなヘルメットだった。

 対する(あき)君は頭を覆い隠すタイプのヘルメットを持っていた。


「被るのは一階に降りてからな」

「一階?」


 お土産の入ったデイパックを正面に背負った(あき)君。

 私を連れてマンション一階にある駐輪場へと案内してくれた。

 そこは住人達が自動車と共にバイクを置いているスペースだ。

 (あき)君は駐輪場内で大きな乗り物のカバーをガサゴソと剥がしていた。

 カバーが剥がされると、


「はぁ?」


 そこにあったのは側面に〈250〉と数字が描かれた大きなバイクだった。


「これで目的地まで向かうから、ヘルメット、被ってくれよ」

「う、うん……と、ところで、免許は?」

「普通自動二輪の免許なら持っているぞ」

「ふぇ? も、持っている?」


 これには流石の私も目が点だよ?

 だって(あき)君が免許を取得している話なんて聞いたことないもん。


「い、一体、いつ、取ったの?」

「昨年の夏期休暇だ。課題を終わらせて暇だったからな」

「それで取得してきた、と? バイク免許を?」

「そうなるな。ま、自動車を取る時は実地だけになるから楽ではあるが」

「そ、そうなのね」


 聞いていないというか昨年は私もある意味で疎遠だったから知らなくて当然か。

 同じマンションに住んでいたことでさえ、今年の春先に知った話だもの。

 (あき)君はバイクに鍵を挿し、エンジンを始動させていた。


「久しぶりだから、ちと、バッテリーが怪しいな。今日は遠出した方がいいか」


 数回「きゅるるるる」という音をさせながら「ぶるん」という轟音を響かせた。


「遠出?」

「充電も兼ねてな。午後だけだから、そこまで遠くには向かえないが」


 (あき)君はハンドルを数回手前に回して大きな音を響かせていた。


(この場合の遠出って……運転席に(あき)君でしょ?)


 私が座るのは何処かな? 自動車なら助手席が、でもバイクは?

 すると(あき)君がバイクに跨がったと思ったら、後部に左手を置いてポンポンと叩いた。


「俺の後ろ。二人乗りすっから、跨がってくれ」

「!!!?」

「乗ったら、俺の腰に抱き着いてくれよ。土産が入ったデイパックは前に背負っているから気にせずにな」


 そ、それで正面に背負っていたのね。

 何で前にって思ったけれど、そういう理由があったと。

 私は(あき)君に言われるがまま、後部座席へと跨がって座った。


「右のマフラーには触れるなよ。火傷するから」

「う、うん」


 (あき)君に抱き着いて、


「おぉ!」

「ん? あ、おっぱい」


 自身と(あき)君の背中に挟まれる自分の胸に気がついた。


「役得だと思う」

「もっと押し付けていい?」

「好きにしてくれ」


 ヘルメット越しの表情が見えない事が惜しいけど、(あき)君の声音からとても嬉しい感情が読めたので良しとした私だった。

 (あき)君が左のスタンドを跳ね上げ駐輪場から外に出ていく。

 左右確認したのち目的地である本家の邸宅まで速度を上げていった。


「わぁ〜。風が凄い」

「今日は比較的走りやすいけどな」

「そうなんだ」


 本日は日曜日だから両親も邸宅に居ると思う。

 留守だったら家令に預けておけばいいしね。

 別邸となった私の実家に居た家令も両親の引っ越しと同時に本邸へと移ったから。

 裏路地を抜け、徐行しつつ閑静な住宅街を通り、一際大きな門扉前で停車した。


「えっと、こちらが白木(しらき)本邸か。隣が爺さまの邸宅だな」

「本当に隣同士だね? 規模は同じくらいかな?」

白木(しらき)の方が大きいぞ。敷地面積で言えば、だが」

「そういう意味ね」


 邸宅の大きさは同じくらいかと思ったら凪倉(なくら)の方が大きかった。

 庭園があるかどうか、それが二家の邸宅に対する比較なのかもしれない。

 (あき)君はバイクに据え付けたスマホを操作してメッセージを打った。


「しばらく待つ、か」


 そう、発した直後、門扉の周囲で機械音が響き、無人の門扉が勝手に開き始めた。


「ここだけ自動って凄いよな。警備員を常駐させられないから仕方ないが」

「それで? もしかして到着を報せたの?」

「一応、警備のカメラには映っていたと思うが、誰なのか伝える必要があったから」

「カメラ? あ! 防犯カメラ!」

「大企業の本邸だからな。許可無しで入れる場所ではないだろう。(さき)の実家だった別邸からは地続きで出入り出来たが、別邸も同じような設備があったから」

「確かに」


 普段は送迎車か家令の案内で出入りしていたが私の実家も似たり寄ったりだった。

 (あき)君は門扉が開ききる前に間を通り、本邸の敷地内を徐行して走った。

 門扉に向かって振り向くと、門扉は途中で止まり自動で閉じた。


「門扉が閉じた?」

「防犯カメラを通じて目視で操作しているからな」

「それで」


 それはともかく、本邸の敷地は相変わらず広い。

 庭園の間に長い私道がグネグネと曲線を描いていた。

 庭園を魅せるための私道、本邸は更に奥へ控えていた。

 私達が到着する頃には待ち構えていたように家令達が並んでいた。


「「「お待ちしておりました」」」


 こうやって見るとむず痒いね。

 お嬢様と呼ばれたりすると特に。

 いや、お嬢様なんだけどね?

 私は後部座席から降りようとすると先に降りた(あき)君が降ろしてくれた。


(さき)が後ろから降りるのは不慣れだからな」

「なるほど、それで。助かったよ」


 (あき)君は正面に背負っていたデイパックをいつの間にか背中に背負い直していたよ。

 私を降ろす際に邪魔になると判断したのだろうね。

 (あき)君は家令へと問いかけて、エンジンを切ったバイクを脇の駐輪場へと持っていった。


「これが手配していた品と……あとで装着するか」


 駐輪場で何やら呟いていた(あき)君。

 ヘルメットをバイクに置いたまま戻ってきた。


「何かあったの?」

「お義父さんにお願いしていた品が届いていたからな。あとで工具を借りて」

「父さんにお願い?」

「二人乗りも良いんだが、(さき)の安全面を考慮するとどうしても、な?」

「はぁ? 私の安全面?」


 これは一体、どういう意味なのだろうか?

 私はきょとんとしつつ本邸の玄関を開けて入った。

 白木(しらき)本邸は過去に数回、家の事情で入ったが、相変わらず大きいね。


「いや、大きい邸宅だな。マジで」

「だね。私も久しぶりに感じたよ」

(さき)の自室も一応、あるだろう?」

「一応、私の私物が収まっている部屋はあるよ。入った事はないけど」

「無いのかよ」

「だって、マンション暮らしだし」

「それもそっか」


 家令達に案内されるがまま、無人の応接間へと案内された。

 私達は家族だから広間と思ったのだけど違ったっぽい。


「今は来客中?」

「そうなります」

「だから応接間で待っていなさいって事か」

「そうなります」


 (あき)君と家令の会話から察するに予定外の来客があって応対中って事ね。

 応接間に入ってお茶を出された私達は来客が誰なのか話し合った。


「わざわざ広間に案内する相手だから、爺か?」

「いや、爺は本邸内の離れに住んでいるから、客ってわけではないと思う」

「離れ住まいなのか? あの爺」

「うん。離れにある畑を耕しているみたいだよ」

「おいおい。農家の真似事かよ」


 以前の当主がこちらに住んでいた時から離れで生活しているからね。

 祖母もそちらで生活していて、暇さえあれば土弄りらしい。

 後は両親が揃って応対する客となると、


「考えられるのは伯母かな?」

「おば?」

「うん。白木(しらき)ではないけど、関連する家に嫁いでいる伯母が居てね」

「ああ、そういう伯母な」


 それしか考えられなかった。

 なんて話し合っていると何処かで聞き覚えのある声音が響いてきた。


『それが本当ならあの子達も大助かりでしょうね。義兄さん』

『ああ。ご息女……(さき)ちゃんには感謝してもしきれないぞ』

『兄さんにとって大事な子供ですからね。嫁いでくる義兄さんの娘達もそうですが』

『その娘達の性質。我が家の厄介な性質の改善に役立った。あの子は私達の宝だよ』


 その声音と会話を聞いた私と(あき)君は色んな意味で困惑した。


「娘達、厄介な性質、(さき)に感謝?」

「というか、この声音、尼河(にかわ)君のお父さん?」

(あかり)の? なら、スタミナお化けって?」

「スタミナお化けって、どういう意味?」


 私達が応接間で話し合っていると話題の中心である尼河(にかわ)君のお父さんが顔を出した。


「丁度良かった。(あおい)ちゃんから話を聞いたよ。制御法が見つかったそうで」

「誰もが成し得なかった制御だもの。(しゅん)についても分かれば助かるわ」

「そうだな。(さき)、良くやった」


 そこには苦笑する両親も当然ながら居たけども。


「えっと、それは偶々発見したというか」

「その発見に至ったこと自体快挙だよ」

「そうよ。お陰であの子達の延命が叶ったしね」

「これで安心して迎える事が出来る。本当にありがとう!」

「か、身体を張った甲斐はありましたね」


 けれど、沈黙の(あき)君はともかく、私の疑問は何故ここにって事だった。


「ところで、どうして尼河(にかわ)君のお父さんがウチに?」

「あっ。そ、そういえば、説明したこと、無かったかも?」

「そう、だな。義兄さんも滅多に顔を出すことがないから」

「いい機会だから教えてあげるといい。立場は親会社と子会社の経営者だが」


 父が親会社で尼河(にかわ)君のお父さんが子会社だよね?


「実は私の実家が尼河(にかわ)家なのよ」

「「……」」


 え? (あかり)君達もウチの関係者?


「だからスタミナお化け」

(あき)君、今は黙ってて」

「うっす」




そうきたか(´・ω・`)

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