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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第五章・ここから先が大変だと思う。
128/131

第128話 最後まで騒がしい旅行だよ。

 そうして修学旅行の三日目の早朝。

 私達が宿泊する最上階にて、ちょっとした騒ぎが起きた。

 騒ぎの場所は私達が寝泊まりした部屋の洗面脱衣所、


「「…………きゃー!」」

「「うぉ!? 失礼しました!」」


 早朝のジョギングから戻ってきた(あき)君と眠そうな山田君が、朝風呂から出てきたであろう美紀(みき)由真(ゆま)の裸体を拝んでしまったらしい。


「あらら、朝っぱらから二人に絶壁を晒したのね」

「私からはドンマイと言っておくよ。(あき)君は帰り次第、上書きだけど」

「あんな平坦な絶壁でも覚えていられるものなの?」

「記憶力だけは良いからね、(あき)君」

「そうなのね」


 大きな音をさせて扉を閉じた(あき)君達がリビングまで駆けてきた。


「こ、こ、これって、ギルティ?」

「いや、判断するのはあの二人だからな。どちらかと言えば、事故だしな?」

「だよな。洗面脱衣所の鍵がかかっていなかったし」

「だが、それを事故とするか故意とするかは二人次第だ」

「そ、そうか……しかし」


 (あき)君はそれほど興奮していないが、山田君は真っ赤だった。

 私の裸に慣れているから、それほど興奮しないだけ、なんだろうけど。


「あれは絶壁か? (いつき)はただの大胸筋だと思うが、間仲(まなか)は柔らかそうに見え……」

「おい、山田。それ以上、口にするな。怒られるから」

「お、おぅ」


 (あき)君の言う「怒られる」は美紀(みき)に対する大胸筋だと思う。

 するとお茶を飲んでケラケラと笑っていた瑠璃(るり)が質問した。


「ところで二人は何処まで見たの?」

「あー、俺は上半身だけ、だな」

(あき)君、本当?」

「なんで疑うんだよ!?」


 単純に(あき)君よりも興奮しているから?

 女子の裸なんて交際しない限り見られないしね。

 問われた(あき)君は思い出しつつ呟いて、


「俺の位置だと(いつき)間仲(まなか)の側面だけだ。山田はガチで二人の正面が見えていたけどな。下は視線が向かう前に絶叫で隠したから」


 私の隣に座って優しく抱き締めてくれた。

 まさか私の感触で二人の記憶を上書きと?

 一方、山田君は焦ったように自己弁護した。


「それでも上半身だけな! それ以下は見ていないから!」


 そう、大きく両手を振って頭を左右に振って自己弁護していた。

 私も瑠璃(るり)も事故だと思っているし大して気にしていない。

 (あき)君の上書きも完了したようだしね。


「側面ってことは薄い膨らみは見えていたと。体型だけは女子だしね。二人共」

「大体、見られて困るような肉付きでもないしね? 二人共」

「「酷い言われようだ」」


 胸元の肉付きで言えば由真(ゆま)の方が柔らかいのは否定しないけど。

 お尻の大きさも由真(ゆま)の方が大きいし、普通に柔らかそうだしね。

 美紀(みき)瑠璃(るり)はノーコメント!


(あき)君はともかく、山田君はお詫びとして交際してみたら?」

「そうね。ただ、美紀(みき)由真(ゆま)にも選ぶ権利があるけど」

「俺の扱い酷くね? ほぼもらい事故だろ、これ?」

「山田。もらい事故でも男は絶対に負ける。諦めろ」

「マ、マジか」


 但し、(あき)君は除く。

 しばらくすると身体中を真っ赤にさせたジャージ姿の二人が現れた。

 今回は見られた側でもあるから、山田君にどんな判決が下るのやら?


「「……」」


 沈黙したままの二人は(あき)君を見て溜息を吐いた。

 私を抱き締めているから仕方ないと思っているのかも。

 そのまま山田君を一瞥して自身の感情と折り合いをつけているように見えた。

 悶々というか、怒りよりも情けないというか、複雑な心境なのは確かかもね。

 すると瑠璃(るり)が揶揄うように先の事案を口走る。


「D組の覗き魔に見られて、同じ班の男子達に見られて、踏んだり蹴ったりね」

「あー、確かにそうだね。傷はどちらが深いかな?」


 削除したけど映像として残るか、個々の記憶として残るか。

 問われた美紀(みき)は溜息を吐いたのち部屋のベッドに飛び込んだ。

 美紀(みき)は眠って忘れる方法を選んだようだ。

 朝食までは時間があるから、二度寝って感じだけど。

 一方、由真(ゆま)はモジモジしたと思ったら、


「や、山田君、あとで付き合って!」

「つ、付き合う?」

「うん。買い物! それでチャラ!」

「お、おう。分かった」


 妙に初々しい態度でデートの約束を取り付けていた。


「この感じ……由真(ゆま)って、山田君が……って事?」

「そうかもね。そういった恋愛相談は受けた事がないけど」


 年増が大好きな山田君。

 (まき)先生に説教されたり市来(しらい)先生の説教を誘発させたりするが、(あき)君曰く『理想と現実だ。本人は姉御肌が好み』との事で、普段の由真(ゆま)を思い返すと姉御肌な一面があり、相性もぴったりなのかもしれない。

 この二人は普段から一緒に居たりするしね。

 友達関係から恋人同士に変化する的な?


「落とし所としては妥当かもな」

「「美紀(みき)はともかく!」」

『私は陸上競技で頑張るもん!』

「「「「「……」」」」」


 美紀(みき)にもいずれ良い出会いがあると思うよ。

 絶対ではないけど、意中の相手に出会えるはずだから。

 ちなみに、私達がこんな時間から起きている理由は別にある。

 私と瑠璃(るり)は大浴場へと足を運びサウナで汗を流した。

 フロントで湯着を借りて、朝から良い汗を掻いたよね。

 山田君はギリギリまで寝ていて戻ってきた(あき)君が起こした。

 本当は大浴場のサウナで汗を流そうと前日に約束していたのだけど、中々目覚めないから『外を走ってくる』と言って、一人でジョギングに出かけただけね。

 裸を見られた二人は大浴場で懲りたのか内風呂で我慢していたようだけど。

 すると(あき)君が思い出したように呟いた。


「そういえば宿の入口脇の芝生に三匹のゴミが転がっていたな」

「「「「三匹のゴミ?」」」」

「昨晩、夕食を採らずに逃走したゴミだよ。財布も荷物も宿に置いて逃げていたが、忘れ物を思い出して戻ってきていたみたいだな。だが、宿の入口や裏の出入口が閉まっていたから、空腹のままそこで突っ伏したようだ。グーグー腹が鳴っていたから」

「「「「あらら」」」」


 ゴミとは覗き魔として女子に追われる立場にあったD組の男子の事だった。

 あのまま近隣駅まで逃走していたと思ったが途中で戻ってきていたとはね。

 所持金の無い状態で電車には乗れず、宿に戻るしか手段は無いと。


「だから、お義父さんに連絡して警備に捕まえてもらったぞ。不審者としてな。寝転がった状態で『次はもっと上手く撮す』とか『綺麗な大胸筋が忘れられない』とか変態的な言葉を吐いていたから十分……不審者だよな?」

「「「「た、確かに」」」」

『大胸筋って何?!』


 それが我が校の問題児、覗き魔の主犯格、入口脇に突っ伏す時点で客ではないね。

 しかも、いつの間にか父に連絡して、早朝の内にヘリで護送してしまったらしい。

 不審者達の荷物については宿の職員が回収して地元まで配送するのだろう。

 すると私のスマホに父からのメッセージが飛んできた。


「あ、父さんから……問題児共を警察に預ける準備をしたって」

「そのまま警察署に降ろすつもりだろう。宿泊先で盗撮騒ぎを行った学生だからな。宿のオーナーとして動くのは当然か。学校からしたら頭の痛い問題児でしかないが」

「暗闇スカイダイビングをしなくていい分、マシではあるか?」

「そうね。腑に落ちない部分もあるけど、しばらく現れない事を望むわ」

「見られた由真(ゆま)からすればそうかもね。美紀(みき)は大胸筋だけど」

『だから大胸筋って何?!』


 美紀(みき)の鍛え抜かれた胸部の筋肉かな?

 そこに脂肪が載っかればおっぱいだけど脂肪分の形跡すら見当たらないからね。


瑠璃(るり)も人の事は言えないのだけどね)


 何はともあれ、騒がしい覗き魔達は早々に強制送還されたので、


「「「はい?」」」


 朝食に向かった際に、食堂で待っていた先生方へと報告したよ。

 宿の御厚意でお片付けしたも同然だから反応に困っていた先生方であった。

 女子達にも強制送還された旨を伝えたので誰もが安堵していた。

 初日と二日目で暗躍していた不穏な男子達が居なくなったから。

 ただね、彼らが居なくなっても盗撮されるようなイベントは残っていない。

 イベントで言えば飛行機組だけが楽しむ、


「騒がしい修学旅行も今日までだけどな」

「午前中は寺院の見学で午後は電車で帰宅かぁ」

「そういえば飛行機組は何処か行くんだっけ?」

「ああ。時間の許す限りだが、遊園地だな」

「「「いいなぁ。遊園地!」」」


 空港近くの遊園地という娯楽くらいだろうか?

 陸路で戻る生徒達は古都の駅までバスで向かい電車にて地元まで帰る。

 対して飛行機組は空港近くの遊園地を経由して最終便で地元まで帰る。


「それだけ旅費を多く支払っている者達が飛行機組なんだよね」

「飛行機の希望者は旅費を別途追加する必要があったのはそれと」

「遊園地は最初から説明されていたけどね。(あき)君が知らなかっただけで」

「そうかもな。俺の旅費はいつの間にか支払われていたが」

「それこそ、お義父さん達に感謝だね」

「だな。(さき)との思い出作りが出来るから」

「私も楽しみ!」


 先んじて訪れて学ぶだけ学んでレポートを大量に書く事になった私達だが、


「これくらいの息抜きも必要だよな。レポートの枚数は幾らだ?」

「大体三十枚くらい? ま、どれくらい遊べるか分からないけど」

「時間の許す限りだもんな。(あおい)と一緒の時間が取れるからいいけど」

「私も(あかり)君と楽しめるなら何処でもいいですよ?」

「保安検査前には出発だから時間を決める添乗員に期待だな」

「添乗員さんへの期待を爆上げするのは流石に酷だけどね?」


 山田君の言った通り、息抜きが必要だと思う。

 今は交際中と交際未満だけ幸せ一杯なんだけど。


「私も甘やかせてくれる彼氏が欲しーい!」

「私は甘やかせてくれる彼氏に会いたい!」


 但し、揶揄い気味の瑠璃(るり)は除く。


「ぐぬぬ。瑠璃(るり)が羨ましい!」

「ふふーん、もっと羨んでいいのよ!」

「胸を張っても私と大差ないのにぃ!」

「う、うっさいわね! 胸は関係無いでしょ!」

「そうそう、山田君。買い物は遊園地でね?」

「お、おう。分かった」


 由真(ゆま)達のデートは見学ではなく遊園地デートになるのね。

 ただ一人、相手の居ない美紀(みき)の頬だけが膨れそうだけど。

 そんな美紀(みき)には彼氏不在の瑠璃(るり)が相手するかもね。

 アレク君も昨日、私達の地元まで帰ったらしいから。




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