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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第五章・ここから先が大変だと思う。
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第125話 反応に困る会話はマジ困る。

 目的の県までの移動中。

 会長の依頼で作ったカード端末を出した事で、


「そんな事も出来るのかよ」

「現状はメモアプリとメッセージアプリ、未完成のスケジュールアプリだけだがな」

「「使ってみたい!」」


 (さき)達が使ってみたいと言ってきた。

 元々、スケジュールアプリを作成するために持ち込んでいたカード端末。

 一応、予備機を一台だけ持っていたので(さき)の学籍番号をノートパソコン経由で登録して手渡した俺であった。


「私の顔写真まであるぅ!」

「これって今の? レタッチまでされてるしぃ! 瞳が大きい!!」

「所属を生徒会庶務に変更……え? クラス委員長まで選べるしぃ」

「それって(さき)のための登録項目じゃない?」

「そ、そうかも?」


 これは一応、俺と(さき)のような特殊な事情で兼任する者が居るかもしれないから用意しただけで、本来なら不要なのでクラス委員以外では選択出来ないのだ。


「これって更新機能もあるのか?」

「パソコンの専用アプリを使えば更新可能だ。アップデートは自動更新になるがな」

「へぇ〜。まさか、それも込みで?」

「そうしないと全校生徒に回らないだろう? 更新機器だけは既存品でいいが」

「ああ、それで見たことのある機器が?」

「カード内部に収めているんだよ。今は電子決済アプリも承認待ちだ」

「承認待ち!? す、凄いな、おい!」


 普通の学生では出来ない事でもあるからな。

 俺が例外なだけで本来は専門職が担う仕事だ。


「あっ! 通知が入った?」

「予約投稿だよ。直前に俺の端末から送信しておいたメッセージだ」

「予約!? 会議、場所、時間、必要品? こんな事まで載っているんだ」

「あとは個人間でのやりとりも可能だが、画像の共有は出来ない。カメラが付いていないから、出来なくて当然だが」

「「なるほど」」

「でもさ? これって、カンニングで使われないか? 小さいから答案で隠れるし」

「ああ、カンニングかぁ」

「確かに隠せそうだね?」

「いや、その点も考慮済みだ」

「「「考慮済み?」」」


 山田の想定通り、答案用紙で隠してチラ見で書くなんて事もあり得るだろう。

 だが、試験期間を登録すると該当時間は生徒手帳の画面以外は施錠されるのだ。


「試しに試験期間を通知して、今の時間が試験時間と指定するな?」

「う、うん……あっ! 画面が切り替わらない? メモ帳も開けない?」

「自動的に施錠されて時間が過ぎたら元の画面に戻るんだよ」


 ほんの数分間だけ試験時間としていたので即座に直前の画面に戻った。


「本当だ。メモ帳に戻った!」

「流石だな。これが生徒手帳になるなら」

「ええ。重たい紙の生徒手帳ともおさらばになるわね」

「なら、校則は何処に載るの?」

「メモ帳の最終ページだ。現状は我が校の校則が記されているぞ」

「「本当だ!」」

「え? こんな校則あったのぉ!? 髪を染めてはいけない」

「プリンには酷な校則だな」

「し、知らなかった」

「「「おいおい」」」


 校則はメモ帳の最終ページ、削除出来ない項目だ。

 校則の更新については生徒総会で承認後、追記する流れとなる。

 消える校則もあったりするから更新の行い易さで助かるだろう。

 既存の印刷会社が食いっぱぐれしてしまうだろうがな。

 そんな俺達が自分達の席でカード端末を操作していると、


「なんて会話をバスの中で行っているのよ」


 疲労困憊の担任が声をかけてきた。

 俺はパソコン画面を見つめながら担任に応じた。


「スマホの持ち込みが出来なくなると聞いて」

「まぁ、ね。今回のとんでもない事案が発生した以上は、どうしようもないわ」


 担任も覆そうにない状況だと理解しているようだ。


「それよりも、先生! これ、凄いですって!」

「チラホラと聞こえてきたから知っているわ」


 聞こえてきたからと言って、全てを知っているわけではないが。


「いえ、生徒手帳が薄くなって、一枚で済むって凄いですよ?」

「それは、そう、なんだけど、ね……私の口からは何とも言えないわ」


 先生方からしたら未承認の品物を出されても困るって感じか。


(担任も急な変化は戸惑いでしかないって事、なのかもな?)


 我が校は公立高校で教育委員会なり校長なりの承認が必要だから。


「これはあくまで見本ですよ。仮に承認されたとしても、俺達の世代か、次の世代から持たせることになるでしょうし」

「「「次の世代」」」


 直ぐに直ぐ全校生徒へと配られるわけではないのだ。

 一括購入するにせよ、大きな金が動くのは確かだから。


「そう。理解しているなら助かるわ」

「但し、カード端末の扱いはリース品ですけどね」

「リース品ですって?」

「ええ、定期契約で賄えるでしょ。一括購入の総額が幾らになるんだって話ですし」

「それもそうね」

「「「リース品って?」」」

「卒業または退学となったら学校に返却しないといけないんだ。仮に思い出を残す前提なら卒業時に内容の印刷くらいはさせてもいいかもな? 勿論、卒業生の自費で」

「「「そこで自費」」」

「オプションって事ね」


 それくらいの拡張対応は必要だと思う。

 この辺は会長とも相談だから、今はまだ決定事項ではないが。

 なお、会長曰く『関係者には明かしても良い』事になっていたので、今回の会話は守秘義務違反にはならない。

 無関係な添乗員とバスの運転手も居たが、伝わるものでもないので無視だよな?

 地域が違えば、依頼なんて入るわけがないから。

 仮に入っても学校関係者以外には提供しないが。


「その見本はともかく、もうすぐ到着よ」

「それでこちらに顔を出したと」

「話に夢中で気づいていなかったからね」


 担任から言われた通り、窓の外を見れば高速道路を降りていた。

 という事はもう直ぐ二日目の宿が見えてくると。


「こちらでは予定通りの部屋割りであって欲しいけどね」

「そうですね。家の事情なので私からは何とも言えません」


 それは白木(しらき)家の事情。

 宿屋を多く経営する企業体だからな。

 勿論、お義父さんの会社って意味で。

 宿に到着し、荷物を下ろして、入口で待つ。


「……」


 フロントで困惑する担任の表情を見るに、またも干渉があったようだ。


「や、宿の御厚意により……」

「「「またぁ!?」」」


 二日目はA組の一班と(あおい)

 彼氏の(あかり)のみに変更されていた。

 俺達の部屋は別館の最上階。

 元々泊まる別館の上階だった。


(あり得ないと叫んでいた者達が居たが……あれは明らかにD組の男子か)


 それはともかく、俺は事情を知っていそうな経営者の娘に問いかけた。


(さき)、お義父さんに伝えたのか?」

「つ、伝えたって……二人のこと?」

「ああ。被害に遭ったのはあの二人だからな」

「いや、伝えて、いないけど……」

「伝えて、いない? なら……内部調査した、か」

「おそらく、不審な動きを示した学生が防犯カメラに映っていたからだと思う」

「それに気づいて直前の映像から判断した、か」


 女湯に入っていく姿を確認して(さき)の友達だと判断した。

 お義父さんと顔見知りというわけではないが相手の調査はするよな。

 愛娘と懇意にしているクラスメイトだ。

 但し、山田についてはオマケだと思う。

 一人だけ省くのは悪いとの判断かもな。

 羽目を外しすぎないよう注意を受けたあと、


「「「凄い!?」」」


 最上階の部屋へと入室した。

 俺達の部屋は複数の個室を有したスイートだった。


「窓際、廊下側、大きな寝室が一つ、か」

「俺は廊下側でいいぞ」

「「「私達は窓際で!」」」


 瑠璃(るり)も今回は空気を読んで(いつき)達と同じ個室で寝るようだ。

 内部を覗くとベッドが三つ並んでいたしな。

 そして廊下側の一室はシングルだった。

 いや、ツインを無理矢理シングルにした感じだ。


「大きな部屋に一人きり、か」

「でも、俺はこの方が気が楽だな。夜更かし出来るし」

「その代わり、寝坊するなよ?」

「気をつける」


 ちなみに、(あおい)(あかり)はツインのスイートだったらしい。

 これは下手な同衾はさせないってことなのかも。

 教師の手前、羽目を外す事と同義だからな。


「というか(さき)は大きな寝室よね?」

「うんうん。蹴りが入るし」

「下手すると極められるし」

「ぐ、ぐぬぬ」


 大きな寝室もツインだったが、普通に片方だけ使いそうな気がする。


(ここは空気を読んで一緒に寝るけどな)


 室内には内風呂もあり、大きな湯船が癒やしの空間に思えた。

 今回に限って混浴はせず、同性で風呂に浸かった。


「デ、デッカ!」

「何処見てる!」

「すまん」


 俺と山田の事は置いておくが(さき)達の方でも騒ぎがあった。

 俺と山田が風呂からあがると、


「「えー!?」」


 先に風呂へと入って寛いでいた四人の内、例の被害者達が大声を張り上げていた。


「この感じは伝えたのか?」

「おそらくな」


 ソファには困り顔の(さき)が座っていた。

 騒ぐ二人の対面には瑠璃(るり)が座って茶を飲んでいた。

 

「そ、それってD組の?」

「あ、あの、変態共が?」

「証拠映像は(さき)が消したけどね」

「残せないよね。断崖絶壁と剃毛中の二人の姿とか?」

「「見られてたぁ!?」」


 なんか聞いては不味い一言が聞こえた気がする。


「俺、自分の部屋に戻るわ」

「俺も部屋に入りたいが素通りしないと無理なんだよな」


 山田の部屋は脱衣所に近いため直ぐに隠れられたが俺はそうはいかなかった。

 意を決し、素知らぬ顔で(さき)の背後を通ると、


「剃毛は私が行ったところではないよ? 太腿に残る産毛だし」

「……」


 俺に気づいた(さき)がとんでも発言を繰り出した。


(さき)の行ったところというと日に日に薄くなっている箇所だよな?)


 俺の友人が作った毛根を根絶する除毛クリームを毎日塗っているからな。

 塗ってしばらくして洗い流すだけで弱った毛根がポロリと抜ける代物だ。

 ハゲ散らかした男が塗ると辛い現実を味わわせるが。


「「そうだった! あのクリーム売らないの?」」

「ク、クリーム? 何の事だ?」

「「除毛クリーム!」」

「……」


 俺は状況が読めず(さき)に視線で問うとそらされた。


(さき)さん?」

「ごめん、バレた!」

「……」

「「それで売らないの!?」」

「いや、売ってはいるが、転売ヤーの所為で高いぞ?」

「「い、幾らなの?」」

「一つが三十万な。脱毛費用よりは安いが」

「「「「高っ!」」」」


 そんなもんだよ、現実なんて。




また毛の話してる(´・ω・`)

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