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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第五章・ここから先が大変だと思う。
124/131

第124話 想定の斜め上だと認識した。

 集合場所の宿に戻った私達。


「なんかさ? 集合時刻を大幅に超えたみたいだね。先生方が凄いイライラしてる」

「みたいだな。これも他校との時間が被った所為かもな。どうして被ったんだか?」

「幾重にも警備が必要な女子校の生徒を自由に出歩かせるから、こうなるのよ!」

「まぁまぁ。瑠璃(るり)落ち着いて」


 外で待つと日焼けするので、宿のロビーにて寛いでいたのだけど、幾ら待っても自由行動に出たはずの各クラスの班員が、宿へと戻ってくる気配が感じられなかった。


「私達とC組の一班だけが戻ってきていて、他はお出かけと」

「何処で道草を食っているんだか? (あおい)達は……徒歩移動中と」

「あっ。他の班は商店街で道に迷っているみたいだ。地図を開けって教えたわ」

「土地勘の無い場所で迷ったなら道を聞けばいいのに。誰も教えてくれないの?」

「いや、住人に聞くと知っているよね? って感じで住所を教えてくれるらしいぞ」

「「「「「マ?」」」」」


 集合時刻は十三時三十分。

 そこから点呼して出発する予定だったのだが、自由行動の時間が他校と丸かぶりした所為でバスに乗るための渋滞やら何やらで予定通りの行動が出来なかったらしい。

 試しにメッセージでクラスメイトへ問い合わせると現在地から戻るバスが無く、


「あの子達もタクシーを拾っているって。乗ろうと思ったバスが満員で……」


 ワリカンでタクシーに乗って戻ってきているそうだ。

 下手な場所からだと出費が酷い事になりそうだね、これ?


「うへぇ。バスが満員ってことはアレだよね?」

「うん、アレだね。女子校の生徒が乗り合わせていて」

「警備員の大所帯が陣取って乗れないと?」

「近隣住民に迷惑かけてどうするよ?」


 しかも、バスに乗ろうとしたら入口の警備員に追い払われたらしい。

 最初からそのような手段を採るなら、バスを貸し切ればいいものを。

 あの子達も急な予定変更で国内旅行になったとは言っていたが、


「例の件で男性教諭の同伴が不可能になって、人数を減らした結果がこれと」

「だからって海外から国内へ変更しなくてもいいのに。近場にもあるでしょ」

「おそらくだけど、女性のみで行動する前提だと、国内が安全なのかもね?」

「それで警備員まで女性で統一って何なのだろうね?」

「何か、バスに乗ろうとしたら男性はダメですって言われたらしいぞ?」

「「「「マ?」」」」

「おいおい。バス会社にまで迷惑をかけてどうするよ?」


 地元民や赤の他人に迷惑をかけてしまうのは流石にどうかと思う。


(さき)? 何て言ったらいいか分からないけど、白木(しらき)警備、大丈夫なの? 周囲の印象、悪くなってない?」

「わ、私の立場では何とも。これ自体は爺の指示だろうから」

「ああ、引退しても口利きが出来る権力は健在と」

「あのクソ爺も役員の一人だからね」

「前々当主をクソ爺と言えるの(さき)くらいじゃない?」

「そうかもね」


 他校に所属する立場から見ると本当に異常だと思えるよ。

 急な予定変更で国内旅行となった女子校はともかく、我が社の女性警備員の暴走については父にメッセージを飛ばし、内々で処すことになった。

 企業イメージの低下が各所で起きていればどうしようもないよね。

 

「あの警備員達、看板を背負っている自覚が無いのかもな」

「自覚が無い、か。確かにそうかもね」


 彼女達を指揮している部署は別の意味で大騒ぎになるだろうが。

 しばらくすると複数台のタクシーが宿の前に集まった。

 タクシーから降りてきたのはA組の二班と三班。

 他の班も後続のタクシーに乗っていた。


(全員、タクシー移動を選択したのね?)


 担任は宿に入ってくる二班の班長達に声をかけていた。


「どうしたのよ? バスには乗れなかったの?」

「はい。色々あって、タクシーを拾いました」

「「「色々?」」」

「出かける前のバス停で察して下さい」

「「「あっ……ああ」」」


 そう、言うしかないよね。

 バス移動を選択してどうにか乗ったと思ったら、宿に向かう帰りのバスへと女子校の面々と警備員達が乗っていて、乗るに乗れなかったと。

 男子も班員の中に居るからね。


(女子だけの班はD組くらいかな?)


 覗き魔の男子達が不在の班、その子達だけはバスに乗ったようだ。

 どうにか全生徒が集まったところで本来のバス移動を開始した。

 すると高速道路へと向かう道中、歩道を歩く友達の姿に気がついた。


「あっ。あの子達……」

「おいおい。徒歩移動しているのか?」

「ズラズラと警備員を引き連れているし」

「少々、ご令嬢ですよって雰囲気を示し過ぎじゃない?」

「襲って下さいって雰囲気が出ているわね」

「襲っても女性警備員が護るだろうけど」


 あの子達はこのまま古都で一日を過ごし明日には帰省する予定だろう。

 私達のように各所を巡る行程ではないみたいだから。

 私達の乗るバスは高速道路に入り、目的の県まで向かったのだった。

 今回のとんでもない遅れで本来の予定が消化出来なくなったが、


「本当に、とんだ一日だったな……流石の俺も疲れたぞ」


 どうにか目的の移動が叶ったので良しとした。

 (あき)君も何処か他人事のように遠い目だけどね。


「だね。夜中にお風呂に入った誰かさん達にとっても同じ認識になるかも?」


 私がそう、誰かさん達を思い浮かべていると(あき)君がきょとんとした。


「は? 誰か、さん、達? わ、分かったのか? 被害者が?」


 実は待ち時間が無駄に長引いたので、覗き魔達の件を先生方に問い合わせたのだ。

 (あき)君には「トイレに行く」と言って席を立ち、証拠映像を見せてもらった。

 私なら女子校の被害者が分かるかもしれないと先生に口添えしたうえでね。

 で、私が見てしまった盗撮映像には、


「被害者は女子校の生徒ではなかったよ」

「「え?」」


 大変見覚えのある絶壁が二つ映っていたから。

 補助席で舟を漕いでいた山田君まで反応して起きたし。

 (あき)君達はきょとんとしているが、被害者を知って、ある意味安心した。

 そもそも色々厳しい女子校の生徒が夜中に露天風呂に入るなんてあり得ないのだ。

 寝ぼけた男子達からすれば夜中に入る女子が女子校の生徒と誤認するかもだけど。


「撮された被害者は美紀(みき)由真(ゆま)だったよ」

「「ふぁ?」」


 とっても身近なクラスメイトが被害者だった件。

 撮影された当人は私の背後で眠っているけどね。


「おそらく、雨乞いの歯ぎしりで寝られないから、少しでも寝られるように」

「ああ、風呂に入って眠気を誘発しようとした、か」

「でも、それで撮影されたなら、酷過ぎね? 知らぬ間に見られたんだから」

「酷だと思う。美紀(みき)達の素肌が映っていたからね。上から下までくっきりと」

「「うわぁ」」


 すると補助席に座っていた瑠璃(るり)の耳に入ってしまい、


「ちょっ! (さき)、それって、マ?」


 急に発せられた超音波に(あき)君達も耳を塞いだ。


「あ、ああ、うん。瑠璃(るり)、声のトーン、抑えて」

「ご、ごめん。ほ、他の子が起きると、不味いもんね」


 現在、私達を除いて周辺のクラスメイト達は疲れから眠っている。

 唯一、起きているのは私達と最前列の椅子に座っている担任だけ。

 瑠璃(るり)も直前まではアレク君とメッセージを打ち合っていて会話に参加していなかったが、私の発した「美紀(みき)達の素肌……」に反応したようだ。


「そんなワケで、証拠品に映った女子達は我が校の生徒だったってことで」


 先生方としても件の女子校へと謝罪行脚に行かなくて済んだ。

 犯罪行為には変わらないが、我が校の内部だけで処理出来る案件だったから。


「な、なんていうか、酷ね。この子達にとっては、だけど」

「となると、D組のバカ共は無期限反省文コースが決定か?」

「いや、可能なら地元に強制送還して停学が無難に思えるぞ」

「どちらかと言えば、初犯ではないから退学だと思うよ」

「「マ?」」

「まさか、複数件あったのか?」

「うん」


 映像そのものは残しておくと種々の問題となるので私の手で削除しておいた。

 当然ながらバックアップまで残っていたので、それもごっそり消しておいた。

 何処にデータが隠れているか(あき)君に詳細を聞いていたから助かった。

 流石に撮された女子生徒の名前だけは記録しておいたけどね。


「女子更衣室のシャワー、部室棟のシャワー、他にも見覚えのある場所が沢山だよ」

「「マジか」」

「あの変態共、本格的な常習犯だったのね」

「お陰でスマホの持ち込みが厳しくなる一方だよ。先生方も厳しくするって」


 そう、言っていたんだよね。


「緊急時の連絡手段はどうするんだ? 学食の電子決済もそうだが」

「連絡手段は学校を介して行えばいいって感じみたい」

「「ああ、昔ながらの方法か」」


 スマホの校内への持ち込みが厳しくなると連絡を取り合うことも難しくなる。

 生徒会としても各委員会とのやりとりではメッセージを多用しているから。

 すると(あき)君が思案しつつ、懐からカード(・・・)を取り出した。


「電子決済なら駅の定期券でどうにかなりそうだが?」


 駅の定期券。

 それらは従来の電子決済のカードって事ね。

 私達が駅の定期券を使う事はないが、人によっては使うから。


「各委員会への連絡方法はカード型端末の生徒会アプリを使わせる手しかないな」

「「「カード型端末?!」」」

「実は会長の依頼で作った端末で、生徒会アプリも各委員会への連絡用で区分けしているんだよ。こんな感じで」

「「「!?」」」


 端末は白い画面のような代物だった。

 それこそ生徒手帳を模した外観。

 校章印の生徒会アプリもあった。


「これのアカウントは学籍番号だけだ」

「「「す、凄い!」」」


 生徒手帳と同じ項目が記されていて所属する委員会が選べた。


「今は圏外になっているが、これはローカル環境で使える端末なんだ」


 ようは学生向けのネットワークを用意する事で利用可能になるらしい。

 国の承認も直前で得られたとの事で使おうと思えば使えるらしいが、


「あとは上役次第だな」

「そうなんだ」

「「……」」


 私達が理解出来たのは、会長が卒業後を考えて用意した代物だった事だ。

 これを導入するには教育委員会との商談。

 生徒総会の承認を得ないといけないらしい。

 それは初めての試みだから(あき)君も自信が無いようだ。




斜め上(´・ω・`)

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