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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第五章・ここから先が大変だと思う。
122/131

第122話 何事も無ければ万々歳だね。

 とっても清々しい修学旅行二日目の朝。

 いつもより早く目覚めた私と(あき)君は内風呂へと二人で入り、


「ところで本日は一日中、自由行動、だったか?」

「違うよ。午前から昼まで自由行動。午後はバスに乗って南部にある県に向かうの」

「南部の県、か。そうなると手荷物はどうすればいいんだ?」

「部屋から持ち出して、バスに預けておけばいいみたいだよ」

「なるほど。なら、この宿に泊まるのは本日限りなんだな」

「そうなるね」


 揃って私服に着替え、荷造りを済ませたのち、部屋の外へと向かった。

 私の私服は淡いピンクのワンピースにジーンズ、いつものスニーカーを選択した。

 (あき)君はジーンズに黒Tシャツ、淡い青色ジャケット、革靴を選択した。

 昨日とは違う装いだが、これも旅行の醍醐味だね。

 その分、手荷物が大きくなるから困りものだけど。


「バス移動のあと、南部の県で泊まって……って、旅のしおり読んでいないの?」

「……」

「読んで、いないんだね?」

「す、すまん」


 (あき)君は休む気で居たらしく、しおりを読む手間を惜しんだようだ。


「私のしおり。貸してあげるから食後にでも読んでおいてよ?」

「助かる。俺のしおりは家に忘れてきたからな」

「はぁ? しおり、持ってきていないの?」

「チラ見で覚え……いや、うろ覚えだから」

「そ、そうなのね。だから聞いてきたと?」

「ああ。しっかり者のクラス委員長にお任せ、的な」

「お任せ、ね。まぁいいや、ここは素直に任せてもらうよ」

「よろしく頼みます。委員長殿」


 すると隣部屋の扉が開き、瑠璃(るり)がアレク君を伴って出てきた。


「続きは帰ってからね」

「うん。瑠璃(るり)も旅を楽しんでおいで」

「うん、ありがとう」


 扉前で濃いキスして、エレベーターに向かうアレク君に笑顔で手を振っていた。

 そんな出会い頭、とても熱い光景を魅せられた私達。


「あ、(あき)君?」

「ああ。朝からお熱いことで」


 朝から混浴を選択した私達が言うことでもないが、


「……」


 これには隣室から出てきた(あおい)も真っ赤であった。

 (あかり)君まで目撃していたら、(あおい)のスイッチを押してしまっていたかもしれないね? 朝食へと向かう前に廊下で目覚める(あおい)の獣。

 間一髪、大荷物を持った(あかり)君も出てきて、きょとんと呆けていた。


「どうかしたか? (あおい)?」

「う、ううん。なんでもない……よ?」

「そうか? 顔が赤いが」

「大丈夫だよ」


 ここで(あおい)が私達に気づきお辞儀してきた。


「あ、(さき)さんおはようございます」

「おはよう、(あおい)


 とってもお熱い瑠璃(るり)はエレベーターホールで私達を待っていた。

 部屋の鍵を閉めていた(あかり)君も(あき)君に気づいて鍵を持つ右手を頭上にあげていた。


「はようっす、(あき)

「おはようさん、(あかり)


 皆が皆、手荷物を持ってエレベーターに乗り込み、渡り廊下のある階に向かった。


「ところで自由行動の移動手段はどうするの?」

「無難に公共交通機関だろうね。地下鉄に乗って向かう手もあるけど」

「確か、最初の目的地は飛び石のある場所だよな?」

「そうだね。亀の石がある川だけど」

「なら、レンタサイクルを使う方がいいかもな。時間通りに進むとは限らないし」

「「その手があった!」」

「私達はどうする?」

(あおい)とはクラスが違うからな。適当なところで合流してもいいかもな」

「やっぱりそれしかないよね。駅で待ち合わせでもする?」

「だな。それが無難だろう」


 エレベーターを降りて渡り廊下を進むとチラホラと各クラスが集まってきていた。

 それでも参加している人数からすると、半数にも満たない人数しか居なかったが。

 そうして五人で大広間に入ると、美紀(みき)由真(ゆま)が待っていた。

 揃って眠そうな顔でスマホを弄っていたけどね。


「「おはよう、美紀(みき)由真(ゆま)」」

「「おはよ〜う。(さき)瑠璃(るり)」」


 朝食の準備も少しずつだが整っており、思い思いに座って班員を待つ子達も居た。

 私達も美紀(みき)達の座る席に移動して、背後へと手荷物を置いて座った。


「昨晩はよく眠れた?」

「バッチリよ。今日は化粧のノリがいいし」

「私も元気一杯だよ。朝風呂にも入ったし」

「「いいなぁ」」


 男子の班員である山田君はまだ大広間には居なかった。

 (あき)君と(あかり)君達は昨晩と同じ席に座り、朝食開始を待った。


「朝飯は味噌汁と焼き魚とご飯か。日本の朝の食卓って感じだな」

「ところで、この、焼き魚……白味噌だよな?」

「そうだな」

「これ、めっちゃ甘いんだよな。白身魚は美味そうだけど」

「おいおい。そこで好き嫌い、言うなよ」

「そうですよ、(あかり)君。美味しそうなのに」

「いや、俺は……辛い味噌の方がいいな」

「辛い味噌って。甘い菓子は好きなのに?」

「味噌は別だ!」

「さいですか」

「困った(あかり)君ですね」


 というより男子は(あき)君と(あかり)君以外、集まっていなかった。

 男子達は一体、何をしているのやら?

 すると遠い目をした美紀(みき)が、誰かさんを一瞥しつつ呟いた。


「私達なんてさ、歯ぎしりで寝られなかったよ。落ち着いたのは三時だったし」

「「は、歯ぎしり?」」

「うん。雨音(あまね)さんの歯ぎしりね。歯を悪くしてなければいいけど」

「ああ、雨乞いのね。あの子、ストレスでも溜まっていたのかな?」

「溜まっていたのかもね。きっと」


 ああ、雨乞いの歯ぎしりか。

 それはなんていうか酷な話だよ。

 ちなみに、昨日の大部屋ではちょっとした騒ぎがあって、私と瑠璃(るり)達が最上階の部屋へと向かったあと、本来と違った部屋の再割り当てが行われたそうだ。

 それは誰の発案か知らないが、クジ引きで決まった新しい部屋割り。

 担任達も仕方なしと受け流し、美紀(みき)達は雨乞いと同じ部屋に泊まった。

 それを知ると、私達だけは他の子達よりも良い思いをした一泊だったね。

 次の宿では爺の干渉がないことを祈るばかりだ。

 しばらくすると男子達が寝癖を残したままのジャージ姿で大広間に顔を出した。


「「「間に合ったぁ!」」」


 これは間に合ったのかな?

 先生方も自分の席に座って戴きますをする直前だったのだけど。

 焦った顔の山田君は(あき)君の隣に座り、


「悪い悪い。どっかのバカが責任者のアラームを切っていたみたいで」


 ジャージの上半身だけ脱いで旅行鞄に片付けていた。

 おそらく食後、トイレに移動して着替えるつもりなのかも。


「どっかのバカって?」

「犯人はD組の覗き魔だ。うるさいからって勝手にオフにしていやがったんだ」

「「あらら」」


 D組の覗き魔。

 男子も部屋割りが変更されたようで山田君は覗き魔と同じ部屋になったらしい。

 (あき)君と(あかり)君の二人が大部屋から居なくなったくらいで、変更も何もないと思うけれど。


「というか、うるさいからってオフに出来たのか?」

「いや、数個の目覚まし時計を持ってきていたらしい。起きられないと困るから」

「それでか。でも、朝食の時間は決まっているから、遅れるのは不味いだろう?」

「そうなんだが……実は、な?」


 すると山田君は周囲をキョロキョロと見回した後、私達や(あおい)に聞こえない声量で、(あき)君達に何らかの話を打ち明けていた。


(あれは一体? 何があったの?)


 山田君から聞いた(あき)君達は信じられない表情に変化していた。


「「はぁ?」」

「ほぉ。それはまた」


 だが、(あおい)の地獄耳に引っかかってしまい、


「あっ。も、もしかして?」

「ええ、聞こえていました」

「おぅ……南無」


 青白い顔に変化した山田君は胸の前で十字を切って拝んでいた。


(十字の後の仏教かぁ)


 それこそ冥福を祈る的な態度に変化したので、D組の覗き魔達がとんでもない行いをやらかしたと察した私であった。

 食後、しおりを読む(あき)君に問いかけると反応に困る一言を聞かされた。


「マ?」

「証拠品はそいつらのスマホだから(あおい)の密告で回収されるだろうが」


 (あき)君から聞いた山田君の密告。


(女子校の誰かを……盗撮かぁ。例の件があってから全員が敏感になっている時に)


 変態教師の行いが無くなった直後の出来事に私は頭を抱えてしまった。


「それで被害者は? その時間帯に入った子って分かる?」

「詳しくは分からない。事態が事態だから先生方の謝罪は確定だろうな」

「そっか。相手が分かれば、私が対応に出るのに」


 またも御櫃を空にした食後の(あおい)が、(あかり)君と一緒に担任の下へ向かった理由は、その事案の密告にあったようだ。

 昨晩も実施しようとして女子の総スカンで捕まった男子達。

 懲りずに先生方が寝静まった頃合いに行ってバレるというね。

 肝心の男子達は生徒指導の先生に捕まって別室へと案内されていた。

 密告者は誰なのかと騒いでいたが、先生の拳骨を喰らって沈黙した。


「校内の性犯罪者が全然減らないね」

「減らないな。もしかすると舎弟共がまだ残っていたのかもな」

「ああ。あの一族の舎弟共、か」


 親玉達は警察に捕まり、子分だけが校内に残る。

 大人しくすればいいものを一向に大人しくならない。

 今回の一件、学校の知名度を落とすためだけに行ったのなら、始末が悪いね。


「これってさ? 腹いせではないよね?」

「腹いせ?」

「うん。あの兄弟の退学宣告とか、捕まったこととか」

「ああ、その線か……それは、あり得るな」

「でしょ? 金庫の件も裏サイトに退学者が投稿していたし」

「そういえば、それもあったな」

「先生方の事なかれ主義が要因だけど」

「だな」


 捕まって部下に命じて周囲の印象を低下させようとする。


(もしかすると私達の代の定員割れも……それらが関係するのかも?)


 ともあれ、その後の覗き魔達は宿の一室へと軟禁され、バスの出発時間まで反省文を書かせることになったらしい。奴らの監視役は担任と生徒指導。

 この件は女子校には伝えず、学校に戻り次第だが校長先生と相談するようだ。


(今回は事が事だけに現場判断は出来ないよね?)


 先生方も旅行を楽しむことが出来ず頭を抱えていた。


「「「はぁ〜」」」


 先生方、ドンマイです。



 §



 先生方の宿待機はともかく。

 私達はバスに手荷物を預けたのち班毎の自由時間を開始した。

 当初の予定では公共交通機関を使う予定だったが、


「持ってて良かったスパッツ!」

「「「「「……」」」」」


 例の警備員を避けるため(あき)君の提案で自転車を借りた私達であった。


(正面から丸見えの瑠璃(るり)の黒いスパッツか)




サブタイトルに他意は……ある(´・ω・`)

地震恐い。

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