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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
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第116話 星の下と言われたらつらい。

 犯人と思わしき人物とすれ違った俺達は会長達と合流して尾行を続ける。

 会長達は俺と(さき)の背後を進んでいるがな。


「まさかあの先生が設置していたとはね」

「昔から陰気だとは思っていましたが」


 李香(りか)(あおい)が会長達の背後を進み、


「陰気でも授業は真摯でしたけど?」

「見かけによらないとはこの事ね」

「本当に犯人なら死ねばいいのに」

(あおい)、その単語は不味いって。教頭が顔面蒼白だから」

「おっと失礼しました」


 沈黙の教頭と瑠璃(るり)、警備が殿を務めていた。

 案内する流れだったのに学校の汚点となるべき問題が噴出したからな。

 教頭と一緒に巡っていた警備の無線から報告が入り、案の定の現物が見つかった事も分かった。


「これって(あき)君のお手柄なの?」

「たまたま、飲兵衛から開発を頼まれていたアプリの試験を行っていただけだしな」

「あ、やっぱり紗江(さえ)さんが絡んでいたんだね」

「やっぱりって、まぁ一応な」


 俺がこのアプリを開いて見ていた時から(さき)は誰の依頼か気づいていたようだ。

 通常ならば微弱電波を拾う事は不可能だ。

 今回、試験も兼ねてスマホ端子に専用機器を取り付け、それを用いて拾っていた。

 機器は国の審査を通った品物だったが、機器を動かすアプリがボロボロで新規で作って欲しいとの依頼を受けたのだ。

 ついでだからと文化祭の下見にて試験を行い、間が悪く異常な電波を拾ってしまっただけという。

 まさか本当にあるとはな。

 依頼を受けて正解だった。


「そうなるとお手柄は紗江(さえ)さんなのかな?」

白木(しらき)の顧問弁護士の依頼が問題を拾い上げたのは偶然だろうけどな」

「その偶然のお陰で被害が出る前に確保出来たのだから」

「面倒な事になる前に片付いて良かったとも思えますね」


 現状、確保したカメラはそのままの状態で天井を映しているという。

 ここで操作している人物に感づかれると逃走を図る恐れがあるからだ。


「ところで(あき)君?」

「なんだ?」

「そのアプリって何処まで拾えるの?」

「何処までって……無線資格で扱える範囲だな」

「無線資格? まさか、持っていたの?」

「一応。持っていないと面倒になるから」

「そうなんだ」


 俺も飲兵衛ほどではないがそれなりの資格を有している。

 流石に実務経験が必須の資格は取得していないが。

 今の年齢で取得可能な資格だけは網羅している。

 自動車も成人後に取得する予定だが、実地のみなので色々と楽なのは嬉しいよな。

 所持していても他者にひけらかす真似はしないけど。


「現状、受信しているのは前方の不審者だけだが」

「不審者っていうか学年主任だけどね?」

「怪しい電波を発して歩いている時点で不審者よ」


 会長がそう言うと苦笑する(さき)を除いて全員が頷いた。

 すると前方の不審者がポケット内に右手を入れてゴソゴソと動かした。

 よく見ると奥に教員用のトイレがあり、直前で女性が入っていく姿もあった。


「定期的に彷徨いて見つけ次第、操作していると」

「じゃあ、出てきたら停止させると?」

「その可能性はあるな」


 しばらくすると女性が出てきて外で待っていた友達と校内巡りに戻っていった。

 不審者は再度ポケットに右手を入れて何事も無かったかのように歩き始めた。


(これはオカズ集めと思うしかないか。そうなると教職員の隔離生活は悪手だよな)


 男性教師ならば特に厳しい生活を強いられるってことだからな。

 色々萎れてしまい性欲が湧かない教頭や学校長はともかく、若い教師に耐えられる空気では無いだろう。

 男も知らない女子中高生を相手に聖人君子で居続ける精神力は見習うべき話だが。

 それでも何れは限度が訪れるから、こういった悪事に手を染めてしまうと。


「回収済みの情報だけは渡していないから、引き続き要監視だな」

「そうだね。これが証拠にもなるし」

「五カ所の確認が取れた時に動いてもらいましょうか」


 まだ一カ所の確認が終わっただけだ。


「というか文化祭を楽しもうと思った矢先に不審者に出くわすって何なのだろうな」

「そういう星の下に生まれたと思うしかないね?」

「面倒事に振り回される運命とか皮肉過ぎるわね」

「全くだ。ようやく片付いたと思ったら他校まで」


 俺は(さき)瑠璃(るり)の言葉に同意しつつ大きな溜息を吐いた。

 一方、副会長達は苦笑しつつ口走る。


「お陰で私達は映されずに済みましたけどね」

「そうね。一番、映されたくない状況だしね」

「とはいえ午前中に被害者が出ているのは確かですから」

「あれの監督責任は重いでしょうね。教頭先生?」

「面目ない」


 責任問題は追々でいいが、あまり大声で映すとか言わない方がいい。

 俺達の会話では怪しい電波と不審者しか口に出していない。

 周囲の女子生徒に聞かれると怪訝な視線を向けられるから。

 それからしばらくして、


「で、ここが最後と」

「他校の女子高生が入ったね」

「このまま変態行動に出るか否か、か」

「ここで動いたら教え子に顔向け出来ないわね」

「ですね。私達も教え子でしたけど」


 俺達の目前で不審者が立ち止まった。

 これだけ堂々と尾行されているのに気づかないのは、鈍感が過ぎるが。

 すると李香(りか)が動きに気づき、教頭達も捕縛の準備を始めた。


「あ、右手を見て下さい!」

「準備はいいな?」

「はっ!」


 女子高生が出てきて友達と奥に消えていく。

 直後、教頭が「確保」の一言を呟いた。

 教頭の背後に居た警備が責任者のようで前方に向かっていき声をかける。

 

山田(やまだ)教諭、少し宜しいですか?」

「どうしたので?」

「風紀委員から呼び出しがかかっています」

「風紀委員から? 分かった、直ぐに向かう」

「いえ、私達も同行します」

「私、達? そんな大がかりな人数を割くのか?」

「急ぎとの話ですから」


 上手く誘導して風紀委員室まで連れて行くと。

 ここで大げさな動きを示すと生徒達から何事と思われるからだろう。

 大多数の警備が動くだけでも十分思われるだろうが、仕方ないよな。

 逃がさないよう周囲を取り囲んで向かっていった。


「逃げ道を塞いでやがる」

「風紀委員の顧問がやらかしたものね」

「顧問だったのか……ん? 顧問?」


 俺は瑠璃(るり)から聞いた顧問の一言に疑問を持つ。


「顧問というと警備計画も?」

「詳しくは知らないけどそうだと思う。会長?」

「警備計画は警備部門が作るけど、配置図などは共有するわね」


 配置図、あるいは警備員の交代時間の情報も共有する?

 俺はスマホの画面を見つめ、赤い点が無い事に気づく。

 そこで思いつくまま機器を操作するとあまりの状況に絶句した。


(は? な、なんだよ、これ!? 酷すぎだろ?)


 あまりの状況に怒りが噴出しかけたが、冷静を装って質問した。


「質問を変えますが、普段の警備も関わっていますか?」

「どうなのかしら? 教頭?」

「詳細は部外者には示せませんが、仰有る通り関わっていますね」


 詳細は求めていないので問題ないが関わっているとなると確定するよな。


(これはどうするべきか。めっちゃ殺したい気分に駆られる。だが、それは(さき)の望まない未来だし、どうすればいいんだ? 放置するか? いや、被疑者が増えるか。でも表沙汰にすると(さき)も傷つくな。怒りと迷いでごっちゃだわ)


 俺が一人で苛ついていると(さき)が心配そうな様子で左腕を引っ張る。


「あ、(あき)君? どうかしたの?」


 俺は(さき)のその表情を見た瞬間、意を決して振り返る。


「いや。教頭先生、少しよろしいですか?」

「ん? 何かあったので?」


 そして会長の脇を通り、教頭の隣に立って耳打ちする。


「元在校生と現在校生の耳に入ると困る情報が得られましたので、ご相談を、と思いまして」

「耳に入ると困る情報?」


 これが聞かれると瑠璃(るり)が甲高い声で大絶叫すると思うから。


「俺は少し、教頭とお話してくるから、(さき)は会長達と回ってくれ」

「あ、(あき)君? 何かあったの?」

「詳細はあとで語る。今は場所が不味いから」

「う、うん。分かった」


 (さき)はしょんぼりしたが、今回は仕方ない。

 すると空気を読んだのか微妙なところだが、


「私は我が校の責任者でもあるから(あき)君に付いていくよ。(ゆう)が私の代わりに(あおい)さん達を案内してくれ」

「分かりました。会長」


 会長が副会長に命じて付いてきた。


「会長」

「私には知る権利も守る権利もある」

「そうですか。分かりました」


 心強い味方ではあるか。

 俺一人だと罪を押し付けられる恐れがあるし。

 本当なら(さき)と楽しむ文化祭だったんだが、なんでこうなった?

 俺は(さき)達と一旦別れて教頭の案内で会議室に向かうのだった。



 §



 会議室に到着した俺は教頭に許可を得てプロジェクターにスマホを繋げる。


「こちらが耳に入れては不味い情報です。会長自身も被害者かもしれませんが」

「「こ、これは!?」」


 プロジェクターから出力された映像はリアルタイムで発信する隠しカメラの電波を示す赤い点だった。

 各階毎に数は異なるが一部に密集するそれがとんでもない代物だと分かるよな。

 密集する赤い点、俺は教頭から受け取った校内図と重ねてみる。


「な、なんだと!」

「ひ、酷いわね、これ?」

「耳に入れたくない理由、分かりましたよね」

「これは暴動どころではないわね。学校を維持するどころの話ではないわ」


 もうな、密集した場所が不味かった。


「更衣室、大浴場、トイレ、寮の談話室も設置済みって」

「個室は数が寄せられなかったのでしょうけど」

「生徒会役員の部屋だけは設置済み、みたいね」


 一方の教頭は混乱が表情と態度に出ている。


「こ、これは刑事告発? いや、それをすると」


 表向き、処理の難しい案件だからな。


「例えるなら地雷原みたいな物でしょうか?」

「地雷原? い、言い得て妙ね」


 学年主任が卑劣な犯罪に手を染めていたから。

 すると心配気な会長が困惑する俺に耳打ちした。

 

凪倉(なくら)君。白木(しらき)のお爺さまに動いてもらいましょうか」

「やっぱりそれしかないですよね」


 経営から引退しても教育関係の繋がりが太い爺だ。

 俺は会長の言う通りメッセージ経由で願い出た。


「とりあえず、秘密裏に処理する流れになりましたね」

「これは助かったので?」

「そう思っておきましょう。白木(しらき)家は役員でもありますし」

「そうですね」


 あらら、爺は女子校の役員でもあったのか。




起爆したらあちこちに傷を残すから(´・ω・`)

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