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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
115/131

第115話 一応母校だから動いてみた。

 凪倉(なくら)のお爺さまが手配したリムジンが女子校の敷地。

 学生達や一般人が出入りしない裏門へと入っていく。


「懐かしいね。この風景」

「そうね。雰囲気的に相変わらずって感じがするけど」

「私達は数年ぶりよね」

「そうですね」

「私は最近まで通っていましたが」

李香(りか)さんはそうでしょうね」

「ところで会場って何処にあったんだ?」

「ここからは見えないから後で案内するよ」

「なるほど。会場は表の方と」

「そうそう」


 本来であれば私達も表に向かわねばならないが文化祭のごった返しの中、目を引く大きなリムジンが校門へと向かえば必然的に裏門に回されるのは仕方ない話だった。

 リムジンはお出迎え勢こと急遽寄せられた教職員の列前で停車した。

 運転手が降りてきて私達寄りの扉を開く。


「この場合、ゲストか? ホストか?」

(あき)君が先だと思うよ? 御令息だし」

「やっぱり、俺か」

「私は続けて降りるから安心してね」

「おけ」


 運転手が私達を優先して降ろすのはそうだからね。

 (あき)君と私の後は瑠璃(るり)が降りる。

 (あき)君はともかく私と瑠璃(るり)が降りた瞬間、ざわめきが起きた。


「何故って顔をしている教師がチラホラと」

「これは仕方ないよ。知らない人が多そうだし」

「会長が界隈で有名と言っていたが?」

「上だけなんじゃない? 知らんけど」


 理事長とか上の方なら知っていそうな気がする。

 下っ端教師には教えず自分達だけ準備したりね。

 瑠璃(るり)の後は(あおい)李香(りか)ちゃん。

 副会長と会長の順で降りていく。

 李香(りか)ちゃんと副会長と会長の時点でもざわめきが起きた。

 生徒会顧問は知っていそうな気がするけどね。


「元在校生が五人も居れば驚くのは仕方ないか」

「そうかもね」


 リムジンは私達が降りると近くの駐車場へと移動した。

 すると会長が私達の前に出て令嬢の礼をとる。


「このような形で来訪して申し訳御座いません。私は芦河高校生徒会会長の白木(しらき)李依(りえ)と申します」

「し、白木(しらき)……」


 それはこの学校で学んだ教育の成果でもあった。

 私も久しぶりなので会長を見て思い出したよ。

 パーティーでは頻繁にするけど最近は無縁だったしね。

 次いで副会長が挨拶した。

 私達は本番だけなので後回しになったけどね。

 ここで挨拶とは無関係な瑠璃(るり)だけが、


「お久しぶりです。先生方、私は凪倉(なくら)瑠璃(るり)と申します。母の離婚に際し(かしわ)姓から凪倉(なくら)姓に変わりましたので、この度、母校へと御挨拶に伺いました」


 会長を彷彿させる綺麗な礼をとり、満面の笑みで暴露したのであった。

 ここで母親の離婚を表にしないと(あき)君との関係を疑われるからね。


「それと、この度。私の親友こと白木(しらき)(さき)と婚約者の従兄も顔合わせに同席しておりますので会長達と共に案内して下さると助かります」


 瑠璃(るり)はそう言うだけ言って、令嬢の礼を止めた。


「ということなので、私は文化祭を楽しんできますね。ところで山田(やまだ)先生って何処に居ます?」

「や、山田(やまだ)先生なら、風紀委員室に居るはずだが」

「そうですか。では、私は一足先に失礼します!」


 何時もの態度に戻ったのち、慣れた様子で学年主任を探しに向かった。

 ここでも挨拶したが、あちらはあちらで挨拶して、驚かせるつもりだろう。

 すると(あき)君が困惑した表情で質問してきた。


「つか、山田(やまだ)とか言っていたが?」

「気のせいじゃない? よくある名字だし」

「ああ、そうか。それもそうだな」


 学年主任の名字からクラスの存在がうるさい男子を思い浮かべたようだ。

 流石に名字が同じといっても別だと思うよ。

 あの先生は陰気な性格で、山田君とは大違いだよ。

 仮に弟か息子だとしたら血の繋がりが無いとさえ思えるし。

 ともあれ、私達は教師達の案内で理事長室まで案内された。

 一応、先触れで凪倉(なくら)家の御子息と令嬢が訪れた事が伝わったようで、


「ようこそ、我が校へ」


 私達が入室するや否や、揉手と共にペコペコとした反応を返された。

 流石の(あき)君も頬が引き攣ったよね。

 私が嫌悪するのはこういう態度の大人だから。

 その後は自己紹介と顔合わせを行っていく。

 本日はただの顔合わせ、来期で生徒会役員になれるかどうか不明だが、もし役員になったなら、よろしくと示すために行ったのだ。

 顔合わせ後は校内を見て回る事になり、


「彼は私が案内するので教頭は会長達をどうぞ」

「いやいや、案内は私が行いますぞ」

「そこは空気を読みましょうよ。教頭」

「く、空気?」

「彼は私の婚約者。あとは分かりますよね?」


 揉手の教頭を引き離す事に苦労した。


「あ、そ、そうですね。失礼しました」


 私はともかく(あき)君は男性だからこの学校に編入学は出来ないしね。

 仮に共学化したとしても直ぐに転校は無理だと思う。

 同棲に慣れた途端、男女別の生活を強いられるとか私が耐えられそうに無いし。

 理事長室を後にした私達は事前に決めた時間まで校内を巡る事にした。

 瑠璃(るり)もそのつもりで遊びに向かったしね。


「閉門は午後四時と……おぅ。弱電波」

「そうなんだよね。ここって電波が弱いから」

「最悪、不通になると陸の孤島だな?」

「まさにそれだね。一応、インターネットは繋がっているけど」

「けど?」

「フィルタリングが酷くて授業以外は使えないんだよね」

「マジか」


 (あき)君が驚くくらいの僻地がこの学校のある場所だ。

 ここに最大で六年を過ごし、卒業時には男も知らない百合っ子が溢れるという。


「で、今日から三日間は野郎共が入ってきて」

「唯一の出会いを求めて各所でナンパに励む男性が溢れると」

「それでも限度はあるだろ?」

「あるね。胸を触ったとかお尻に触れたとか」


 私がそう言うと、奥から叫び声が響いてきて、


「「風紀委員です!」」


 警備と共に風紀委員が駆けてきて触られた女子が指さす男達を連行していった。

 彼等は「「やっていない」」と言うが聞く耳を持つ生徒は居ないんだよね、ここ。


「触れたとかになったら、捕まるんだよね」

「おぅ。両手をあげて行動する必要があるな」

(あき)君は大丈夫だよ。私が居るし」

「だが、(さき)が花摘みに行く時は?」

「教員用のお手洗いを借りるから、大丈夫だと思うよ」

「そうなのか?」

「うん。生徒用は女子しかないからね」


 来場する人達も教員用を使う事になっているしね。

 それは男女問わずそうなので気にするだけ損だ。


「そうなのか……だが、俺としては(さき)達だけは生徒用を使ってほしいな」

「ふぁ? な、なんで?」

「俺は別に教員用でもいいが、(さき)達は止めた方がいいと思う」


 (あき)君はスマホを持ったまま心配そうにそう言った。

 私は怪訝になりつつ(あき)君のスマホを横から覗き込む。

 そこにあったのは、


「え? この赤い点って何?」


 不可解なアプリと画面上の赤い点だった。

 数は全部で十一個、それが六カ所に集中していた。

 二つずつ、隣り合う形で点灯している赤い点。

 位置情報は不明だが数から分かるのは教員用のトイレだった。

 一カ所だけは校内を移動しているけどね。


「ここが弱電波だから判明した事だが仕掛けられているぞ」


 仕掛けられている。

 これは一体何を意味するのか?


「異常電波を発する何かとだけ言っておく。今は俺が疑われる可能性があるから言えないがな」

(あき)君が疑われる?」

「一カ所だけは通り過ぎたが、先ほどの事案を考慮すると、どうしてもな?」

「ああ、男性だから信用されないと?」

「そういう事だ」


 どういう代物なのか分からないが、会長達にも何らかの形で報せる方がいいね。


「何か報せる方法はないかな?」

「報せるって?」

「会長達に」


 ここは弱電波の孤島だ。

 こんな時、連絡が付かないのは困りものだよね。

 すると(あき)君が思案気に別のアプリを開いて、


「事前にインストールしたアプリを使うから大丈夫だぞ」


 きょとんとする私にアプリを示した。


「はい? そ、それってリムジンで入れた」

「そうそう。弱電波でも少なからず電波は出ているからな。それを用いて限定的に双方向通信を行うアプリがそれなんだ。俺が作ったから機能面でも問題はないはずだ」

「そうなんだ。ちょっと使ってみるね」

「起動してからメッセージを開けよ」

「うん!」


 アプリを起動してメッセージを開き、(あき)君が発していた不可解な設置物について送ってみた。

 すると無事に送信されたようで、使い方を覚えていた会長達の既読が付いた。

 瑠璃(るり)も同じく既読が付いて、何があるのか問うてきた。


「これって教えた方がいいよね」

「そうだな。身内だけだからいいだろう。俺が打つわ」

「そうだね。それがいい……マジで?」

「マジで」


 ちょっと、これは警備がザルだと言っているようなものだよ?

 それこそ弱電波にすれば安心と思っているなら困りものだ。

 だって、トイレに隠しカメラとか普通に有り得ないからね。

 どうも(あき)君が使っていたアプリは何らかの電波を拾うアプリでもあったらしい。

 それこそ紗江(さえ)さんが絡んでいそうな気がするよ。

 探偵が使うような道具そのものだしね。


瑠璃(るり)が動いたな」

「動きもするでしょ。学校の信頼を揺るがす代物だもん」

「会長達が教頭にお知らせしたか」

「大っぴらに動くと騒動になるから粛々と片付けそうだけど」


 私達の目と鼻の先でも警備と風紀委員が突撃して、


「確保したな。何処にあったのか知らないが」


 黒い鞄を二つ拾ってトイレから出てきた。

 教員用は男女兼用だからどうしても隙が生まれると。


「ところで動いている点は?」

「操作側している犯人って事だろう」

「操作というと遠隔操作?」

「そうそう」


 遠隔操作でカメラを動かして撮影と停止を繰り返しているのかもしれない。

 私は位置情報が不明だが(あき)君に追跡を願い出た。


「場所って分かる? 可能なら捕まえたいのだけど」

「場所か? そうだな」


 (あき)君はアプリの点をタップして現在地からの距離を表示した。


「およそ百メートルか」

「意外と近いね」

「そうだな。こちら側が俺達で」

「こちらに寄ってきてる?」


 距離が近づいてきて数メートルで見覚えのある男性教師が目に留まる。

 (あき)君は私達と赤い点が重なったところで会長へとメッセージを送った。


「猫背、白衣の男性、疑いあり……っと」

「あれ、学年主任なんだけど?」

「マジで?」

「マジ」


 まさか犯人が、あの学年主任とはね。




きな臭くなってきましたよ(´・ω・`)

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