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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
105/118

第105話 驚き過ぎて本題を忘れた件。

 コンビニのレジにて支払い中、奥から一人の女性が顔を出した。


「あら? (さき)ちゃんじゃない。久しぶりね、元気してた?」

「あ、お久しぶりです。おばさん」


 その女性の名札には役職と(かしわ)という名字が記されていた。

 つまりこの女性が(かしわ)の母親と。

 顔立ちは何処となく娘と似通っているが声音は普通だった。

 体型もジロジロ見る訳にはいかないが似通っているな。

 まさしく親子と呼んでも差し支えない容姿であった。

 今は(さき)の呼び方でショックを受けているが。


「おばさん。そ、そうよね。おばさんよね」


 おばさんには変わりないが妙齢な女性に言っていい言葉ではないか。

 この人はこれでも三人の子持ち。

 全員が女で一番下が小学四年生という。

 次が中三、長女が超音波で有名な金髪プリン。

 母子家庭な割に年の差のある姉妹。

 母子家庭になった理由は不明だが、一人で三人を育てるのは大変だろうな。


(さき)、ショックを受けているがいいのか?」

「あ、すみません。えっと……翡翠(ひすい)さん」

「よ、呼ぶなら私の本名じゃなくて、もう一つでお願い」

「あー。翡翠(みどり)さん、でしたね。すみません」

「そっちの方が嬉しいわね」


 俺はこの人が滅茶苦茶面倒な人に思えた。

 翡翠(ひすい)なんてキラキラネームでもなんでもないのに。

 言い換えを求めるって……そういう人だよな。

 母方の身内にも一人居るが。


(本物の叔母なのに、叔母と呼ばせず名前呼びさせる、某叔母みたいな)


 それで娘は瑠璃(るり)ときて、次女と三女も宝石繋がりに思えた。


「それよりも、今日はどうかしたの?」

「普通に買い物に来ただけですけど?」

「買い物? あ、こんなに買ってくれたのね。ありがとう!」

「い、いえいえ」

「え? ゴムも?」

「それは見なかった事にしてください」


 とりあえず、客のプライバシーは守ろうな、店長さん。

 従業員は慣れているのか、無視して袋詰めしているが。

 すると(さき)は丁度良いと思ったのか店長に問いかける。


「それはそうと、瑠璃(るり)居ます?」

瑠璃(るり)? 家に居るんじゃない。今日はバイトも休みだし」

「居るんですね。伺ってもいいですか? 時間が時間だから、ご迷惑」

「構わないわよ。琥珀(こはく)の受験勉強も今日はお休みみたいだし、瑪瑙(めのう)ちゃんももう寝ていると思うしね」


 うわっ。姉妹揃って同系統の名前かよ。

 末っ子なんて難しい漢字過ぎてひらがなが必須に思える。


「分かりました。では少し寄って行きますね」

「ところで(さき)ちゃんの家はここから遠かったような? 大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。今は目の前のマンションで暮らしてますから」

「!!? 目の前って、ここ? そこのマンション?」

「は、はい。そうですけど?」


 暮らしていると知った途端、何故に驚くのか疑問視するな。


「そ、そうなのね。オーナーさんによくしてもらっているの?」

「え、ええ。まぁ……」

「そう。それは良かった。でもね、決して、怒らせたらダメよ?」

「それは大丈夫だと思いますが」


 この感じは爺さまと何らかの確執でもあるのかね?

 怒らせて何かした的な?


「大丈夫?」

「ええ。私はわりと気に入られている方なので」

「そう、なのね。でも、気を緩めたらダメだからね? あの人はそんな甘い人ではないから」


 やっぱり爺さまと確執があるな、この人。

 一体、何をやらかしたんだか?


「そんな不安になる事を言わないで下さいよ。私にとっても祖父同然なんですから」

「祖父? 今、祖父って言った?」

「ええ。それが何か?」


 えらい食いついてくるな。

 大丈夫か、この店長?


(幸い、客は俺達以外は誰も居ないからいいが)


 店員も慣れているのか無視して奥に引っ込んだ。

 店長に「あとはお願いします」と言ってな。

 これはおそらく、休憩に入ったのかも。


「祖父って、ど、どういう?」

「どうと言われても、将来結婚するからとしか」

「結婚!?」


 なんだ、この驚きようは?


「え、えっと……長男って結婚したの?」

「長男? それってどの長男ですか?」

「オーナーの」


 これって親父の事を問うたのか?

 (さき)は引き攣り笑いで答えた。


「あー。はい」


 こんなの要領を得ない質問でしかないよな。


「そう。結婚、出来たのね」

「何か失礼じゃありません?」


 (さき)にとってはそう思うよな。

 俺の親父で(さき)にとってはお義父さんだから。


「ごめんなさい。晩婚だったから」


 親父が晩婚だった事、なんで知ってる?

 実際は母さんと熱愛して同棲期間が長すぎただけだが。


「そういう翡翠(みどり)さんはどうなので?」

「数年前までは幸せだったわよ。あの人が女を作って失踪するまでは」


 えっと、何気に重い家庭なのか?

 柏餅(かしわもち)


「それなら離婚しようとは思わないので?」

「してもいいけど駆け落ち婚だしね。勘当同然だから許してくれるかどうか」


 なんていうか苦労しているんだな、この店長。


「相手が逃げたのなら離婚すればいいのに」

「そうなんだけどね。子供を三人産んで育てているし、今更実家に戻って名字が変わると困るのはあの子達だもの」

「いえ、親権は父親にあるのでは? 普通に考えれば、ですけど」

「どうかしら? 私の父が親権を欲する可能性があるしね。あの人も娘達への愛着がないから放棄する可能性もあるし。現に瑠璃(るり)が中学に入る前に失踪しているしね」


 相当に難儀な家を出て駆け落ち婚したのか。

 それなら勘当同然にもなるか。

 つか、愛着はないがやることはやるってクズじゃないか、(かしわ)父。


「私も家を飛び出して十六年以上経っているけど、まだ許してもらっていないしね」


 本当に重い家だな、ここは。

 というか本題を聞く前に(かしわ)家の話で留まり過ぎだと思うのだが。

 店が暇過ぎて客を捕まえておかないといけない質なのか?


「時々、兄さんが会いに来てくれたけど、今は国外だし」

「そうなんですね」


 俺はこの瞬間、妙な勘が働いた。

 爺さまとの確執、駆け落ち婚、勘当、兄、国外。


(そう言えば、親父に妹が居たよな? 何処の馬の骨とも分からない婚約者なんて嫌だって言って、馬の骨同然の苦学生と駆け落ちした……)


 しかも、名前がどういう訳か、目前の店長と同じだった件。

 つまり、


「叔母さんかよ!」

「おばさん!?」


 爺さまが許していない末娘ってことで繋がったわ。

 あっちの叔母とこっちの叔母。

 妙に似通っているのはそれと。

 俺が叫んだ事でショックを受けているが、知るか!


「おばさん、おばさん、おばさん……」

(あき)君? どうかしたの?」

「今日ほど(えにし)が恐ろしいと思った事はない。地頭がいいのはそういう」

「どういう事?」


 俺は(さき)の問いかけに対し、


「後でな」


 (さき)の口元に右手人差し指を押し当てた。

 確認すべき事が先にあるから。


「ところで父親は娘達の事、知っていますか?」

「え? えっと……知らないけど? 会わせてもいないし」

「では、兄は娘達の事を知っていますか?」

「一応、教えているわね。会わせてはいないけど」


 親父の元で留めて爺さまは知らないと。

 おそらく欲する可能性を考慮してか。

 相手が決まった長女はともかく、あとの二人は甘やかすよな。


「ど、どうかしたの?」

玻璃(はり)

「え?」

「聞き覚えないですか?」

「聞き覚えもなにも、兄の」


 やはりな。

 それは親父の名前だ。

 俺や母さんは一般的な名前だが、父さんは宝石由来の名前なんだよな。

 凪倉(なくら)玻璃(はり)、年齢不詳というか忘れた。

 海外ではハリーと呼ばれているが、名前の傾向から察してしまうのは仕方ないか。

 俺はスマホを取り出して、親父相手にメッセージを飛ばす。


「バレたか、じゃねーよ」


 近場に叔母が居た事を問い質すと「てへぺろ」しやがった。

 ホント、イラッとする親父だわ。


「どうしたの? (あき)君」

「確証が得られたから教えるが、この人は叔母だ」

「おば……また言われた」

紗江(さえ)さんと同じ反応するよな。この人も」

紗江(さえ)さん……紗江(さえ)さんも(あき)君の叔母」

「叔母と聞いておばと反応するのは同じと。遠縁でも反応は同じだな」

「遠縁……え? じゃ、じゃあ、瑠璃(るり)(あき)君って」

「俺はこの人の甥っ子。親父にとって瑠璃(るり)は姪っ子だ」


 もう、名字呼びとか渾名呼びが出来ないな。

 こうなると普通に呼び捨てになるよな。

 気にする必要がないから。


「また現れたし。隠れ関係者」

(あおい)達に次いで、だけどな。ところで瑠璃(るり)は知っているので?」

「知っているって?」

「母方の実家ですよ」

「えっと、言ってはいないわね」

「教えていない理由と離婚しない理由は噂が原因ですか?」

「えっと、そうね。あの子が帰ってきて何度か叫んでいたから」


 それは言いたくても、言えないわな。

 現状は回復しているから構わないが。


翡翠(みどり)さんもある意味で被害者?」

「被害者だろうな。この店が繁盛していない理由もそこにあるだろう」

「あー、我起(わだち)の影響下だったから?」

「おそらくな。本当に迷惑極まりない家だったな」


 現状は仕方ないが、この店も追々繁盛するようになるだろう。

 すると親父経由で爺さまからの連絡が入る。


「えっと、翡翠(みどり)……さん」

「な、何かしら?」

「離婚するなら、許すって言ってますが、どうします?」

「ゆ、許す?」

翡翠(みどり)さんの父親が、です」

「え?」

「今の(かしわ)姓が嫌悪の対象なので離婚するなら気にしないそうです」


 仮に孫娘がそいつの血を引いていても、名字から離れるなら気にしないとある。


「単純に、白木(しらき)爺とやり合えるようになるからではないかと」

「あ、そういう?」

(さき)は分かったな」

「孫娘だからね。お爺さまには(あき)君しか居なかったから」

「同じような孫娘が数人居たと知って狂喜乱舞していそうだわ」

「人数的にウチの方が多いけどね」

「一番若いので小四だから、高一よりは自慢しそうだが」

「あぁ、そういう意味かぁ」


 末の孫娘。

 小四で、一番可愛い盛りと。

 絶対に甘やかしてしまいそうな気がする。

 祖母が呆れて尻に敷く姿まで想像出来た。


「で、どうします?」

「えっと、娘達と相談してからでもいい?」

「それでいいと思いますよ? というか俺達の用事は長女にあったけど」

「あ、そういえば話し込んでいて忘れていたよ」

「本題がそちらなのにな。何やっているんだか」


 こうして俺達は本題を思い出したのちコンビニから外に出た。

 時刻は補導ギリギリの時間帯。


「まだ起きているよな」




またも関係者が増えたね!

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