表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
104/131

第104話 騒がしい空気と夜中の空気。

ギックリ腰が辛い(´・ω・`)

 痛そうに腰を押さえた会長が自身の家に帰ったあと、


「このアイス美味しいですね」

「これなら何杯でも食べられそうです」

「いつの間に用意していたの? このアイス」

「カキ氷を仕込む時にな。前々から(あかり)に願われていたから」

「そうなんだ。というかこの風味、覚えがあるよ?」

「先日飲んだ補給食でもあるから知ってて当然だろ」

「あの時の美味しいやつ? ウチが製造している?」

「それな」

(あかり)君、あとでくわしく?」

「お、おう。あとでな」


 褒美として用意していたアイスクリームを(あおい)達にも振る舞った。

 会長は満腹だったそうで名残惜しそうに帰ったが姉妹と兄弟は引き続き残った。


「それはともかく、過去に食べたどのアイスよりも美味しいですね」

「だろ? (あき)のアイスは絶品なんだよ」

「俺も先日の練習で兄貴から貰った時、はまったもんな」


 本来であれば(あかり)しか知らないアイスだった。

 何故か(ひかり)までも知っていて、


「騒動の前に作ったアイス。部活に持っていったのか?」


 俺は訝しみながら(あかり)に問うた。

 これは(あかり)から願われて渋々用意したアイスだ。

 自分だけで楽しむからと一リットル分だけ作ったのだが持っていったようだ。


「もち! 保冷剤を大量にぶち込んで持っていったぞ」

「男バスのメンバーも美味い美味いって食べていましたよ」

「そうか。そのうち、親父さんから製品を紹介しろとか言われそうだな」

「! その手があった!」

「親父に紹介しても? 学食のメニューに加えてもいいかも」

「良くやった! これで気兼ねなく食える!」


 これは俺好みのプロテインを複数合成したアイス原液で出来ている。

 元々は練習後に飲んでいたプロテインを親父に飲まれてしまい、美味いと判明してから製造元である白木(しらき)の工場へ持ち込まれ製品化してしまった代物だ。

 後日、アンチドーピング認定を取得したと聞いた時は驚いた。

 企業努力、恐るべし、だな。

 それはともかく。


「「お買い上げ、ありがとう」」

「「「「お買い上げ?」」」」

「「なんでもない」」


 それをバスケのイベントで提供してからというもの、(あかり)から何度も請われて作る羽目になった。

 無駄に火照った身体が冷える。

 糖質で頭が冴える、食後に筋肉も付く。

 三拍子揃っているからか定期的に摂取する(あかり)であった。

 夏季限定と思いきや冬場でも願ってくるからな。

 最近では材料費だけ貰って作ることしばしば。

 すると会話を聞いて沈黙していた(なごみ)(ひかり)に物申す。


「何それ、聞いてない!」

「言ってないし」

「私もこんなに美味しいなら食べたかった!」

「そうは言うが、女バスは準決勝の最中だったろ?」

「うっ。あ、あの時なの? 男バスだけ先に帰った」

「敗退したからな。やっぱ、全国の壁は厚いわ」

「応援席で見ていても、そう思ったし」


 インターハイは男バスがベスト八入りののち敗退した。

 女バスは準決勝敗退となった。

 それこそあと少しって感じだな。

 それでも目を見張ったのは、個人技能の優れた点だった。

 男バスなら(あかり)が、女バスなら(なごみ)が。

 赤点さえなければ(ひかり)も良いところまで行くだろう。


「で、でも、このアイスはズルいと思う!」

「まぁまぁ。(なごみ)、落ち着いて」

「姉さん」

凪倉(なくら)君、あとでレシピを」


 教えてくれだろ?

 俺は仕方なしで席を立ち、


「どうせなら、今から作り置きを用意するから見て行くか?」


 エプロンを身に着けてキッチンから(あおい)に向かって手招きした。


「是非!」


 (あおい)(あかり)の食生活を管理しているしな。



 §



 俺は(あおい)の見ている前で計量しつつアイスを仕込んでいく。


「最初は何かと思いましたが、プロテイン入り?」

「プロテイン入りの原液だ。攪拌用の乳製品が八割必要だが、容器に記された分量を入れるだけでいい」

「なるほど。これはどちらで購入されたので?」

「近所のスーパーマーケットだ。歩く街宣車が働いているが」

「歩く街宣車?」


 俺が発した渾名にきょとんとする(あおい)

 補足を入れたのは興味深げに覗き込んでいた(さき)だった。


瑠璃(るり)だよ。(かしわ)瑠璃(るり)

「えっと……あの超音波の声音で有名な?」

「「そうそう」」


 割と有名だよな。

 (かしわ)の声音。

 なお、超が付かない声音は(いつき)雲母(きらら)先輩だ。

 似ていると思ったが超音波になるのは(かしわ)だけだったな。

 すると(さき)が遠い目をしながら呟いた。


「でも、あの瑠璃(るり)も普通に喋れば高音にならないけどね」

「「は?」」


 これには俺も(あおい)も目が点だ。


「じゃ、じゃあ、何か? あの声音は……自発的に?」

「ううん。興奮した時だけ高音になるかな。大人しい時は普通の声音になるよ」


 興奮時だけ超音波。

 普段は問題ない声音と。


「それを知ると(かしわ)は常に興奮状態ってなるような?」

「ですね。興奮状態が続くって凄まじいですが」


 ある意味での特技にも思える。

 寿命的にどうなんだとも思うが。


「一度だけでいいから、まともな声音を聞いてみたいな」

「それは私も思いました」

「機会があれば聞けると思うよ? ずっとあの高音だと妹達が常に耳を塞ぐしね」

「「あっ」」


 なるほど、普段の地声は妹達の面倒を見ている時に出ると。


「近所だし、何かのきっかけで聞く事も出来るか」

「そうですね」


 もしかするとアレクなら聞いていそうな気もするな。

 (かしわ)の事は置いといて話題は本題へと戻った。


「あとは冷凍庫で三時間置きに攪拌して半日置けば完成だ」

「意外と簡単なんですね」

「定期的に攪拌する時間が必要だけどな。これが業務用なら冷やしながら混ぜるから直ぐに出来るだろうが」


 なお、完全に凍らせる前に容器に移せば飲むジェラートとして持ち出しも可能だ。

 補給食とした時もそうやって持ち出したからな。


「ところでこの作り置きって?」

(さき)のデザート」

「私の! 嬉しい!」

「お、俺のは?」


 なんで(あかり)が欲するよ。

 俺は溜息を吐きつつ嫁に指さした。


(あおい)に作ってもらえ」

「帰ったら私が愛情込めて作りますね」

「よっしゃー!」

「な、(なごみ)さん?」

「私に謝ったら作る」

「ごめんなさい!」

「良し、作ってあげる」


 普段は夫婦漫才な二人だが家では(なごみ)が強いのかもな、きっと。

 何はともあれ、作り置きを冷凍庫に片付けた俺は不意に会長の言葉を思い出す。


「未確定……? あれはなんだったんだろうな」

「どうかしたの? (あき)君」

「いや、ジェネリック陽希(ようき)の件で会長が何か言ってただろ」

「ああ、あれかぁ」


 (さき)も思い出したのかスマホを取り出してメッセージ欄を見た。

 メッセージ欄では相変わらず炎上していて、涌田(わだ)に対する女子の罵詈雑言が数えきれないほど書き込まれていた。

 男子達は静観していて関わっていないが。


(かしわ)に対して行う理由が不可解だろ」

「うん。もしかしてこれが私達の平穏を壊す害意かな?」

「会長が未確定と言っていたからな。何かしらの行動を起こしていたのか?」


 すると俺達の会話を聞いていた(あおい)が思い出したように語りだす。


「それって、臨時株主総会のあった日が関係するかも?」

「あの日に何かあったのか?」

「私はクラス違いなので正確な事は分かりませんけど」


 何でも、俺達が休んだその日にA組の教室と生徒会室で騒ぎが起きたという。


「分かるのは生徒会室だけですけど、その日も覗き見がありましてね」

「「覗き見?」」

「会長が気づいて問いかけたんですよ。反対側の扉を開けて背後から近づいて」


 問いかけて何をしているかと問えば、


(さき)さんが居ないから気になって訪れたと言っていましたね」


 不可解な答えを返したという。


(さき)が居ないから?」

「わ、私が? 教室に居ないからって生徒会室には居ないでしょ。休んでいたし」

「会長も欠席理由を知っていたので問いには応じなかったそうです。作業中に覗き見するような男子生徒に本当の事を教える理由がありませんからね」


 その時の会長の判断は正しいと思う。

 (さき)には陽希(ようき)というストーカーが実際に居たからな。

 同じように追いかけ回すなら出る所に出てもらうが。


「そうなると、生徒会室でそれがあったなら、教室では?」

「もしかすると、瑠璃(るり)が何か言ったのかも」

「俺達の予定は明かしていないよな?」

「何処から情報が漏れ出るか分からないから急用とだけ伝えたけどね」


 急用で俺と共に休んだ。

 (かしわ)だけがそれを知っていた。

 そこから何かしらの騒ぎが起きた?

 他クラスにまで聞こえるような騒ぎ。

 花火大会までの間に沈静化したが涌田(わだ)は受け入れる事が出来ず一方的に(かしわ)を陥れようとした。

 悪手も悪手……陽希(ようき)の真似をして。


「これって本人に何があったか聞けないか?」

「聞こうと思えば聞けると思うよ?」


 (さき)はそう言いつつ暗くなった窓の外を見つめた。

 つまり、夜分遅くに失礼しますって事か。



 §



 (あおい)達が自分達の家に帰ったあと、


(かしわ)の家ってマジで近いな」


 俺と(さき)は玄関を施錠して階下に降りる。

 コンビニへの買い物も兼ねて(かしわ)家の目前を素通りした。


「コンビニに併設されたアパートだからね」


 コンビニの二階にあるアパート。

 そこから可愛らしい声音が響いている。

 (かしわ)っぽい声音だが、超音波ではないな。


「このコンビニが大家か?」

「どちらかといえば瑠璃(るり)のお母さんが店長かな」

「は? 店長? だ、だが、あいつがバイト三昧なのは?」

「人通りの関係かな? そこまで利益が出ていないから」

「まさかと思うが、赤字店舗か?」

「そうなるね。マンションが建った事で利益が出れば恩の字って感じみたい」

「恩の字ね。全戸が埋まった訳ではないから、直ぐに盛り返すか微妙だな」


 マンションは最上階が埋まっただけだ。

 一階から三階は少しずつ入居者が入ってきている。

 三階以上は分譲なので状況は読めていないがな。

 俺と(さき)はコンビニへと入店し、商品を物色する。


「俺としては困った時に購入が可能になるから助かるが」

「それって……アレのこと?」

「アレだな。まだ使ってすらいないが」

「そ、そうだね」


 後の事を考えて篭に入れておいた。

 (さき)の頬は引き攣っていたが不用意に子供を作らないための代物なので持っておいても損はないだろう。


「アイスは食ったから、飲み物と菓子を何点か買うか」

「もしかして、買い占める気?」

「そこまではしないぞ」

「それって何用で?」

「来客用だな」

瑠璃(るり)対策って事ね」

「分かっているなら聞くなよ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ