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塩対応のクラス委員長が俺の嫁になるらしい。  作者: 白ゐ眠子
第四章・隠れ〇〇が多すぎると思う。
102/118

第102話 準備を口実にイチャつけた。

 臨時株主総会から数日後、地域で催される花火大会の当日を迎えた。

 この日の私は(あき)君と早朝から準備を始めていた。


「お風呂掃除終わったよ〜」


 準備はあくまで口実で入居してから数週間。

 忙しすぎて滞っていた室内の大掃除を敢行しただけだけどね。

 私が風呂場を掃除して(あき)君がトイレを掃除した。

 今回は数名だが家にゲストを呼ぶ予定だ。

 汚いままゲストを出迎えれば、母さんの抜き打ちチェックで不合格が出てしまう。

 私は本年度から本家の娘になったのだから。

 掃除に夢中でずぶ濡れとなり、


「終わったならせめて、パンツくらい穿けよ!」

「あ、忘れてた。ごめんごめん」


 裸で出てきて(あき)君から注意されたけど。


「流石にブラは付けなくていいよね」

「ノーブラは見慣れたからいいぞ」

「いいんだ」


 それはそれで少し複雑だけど。

 私は手持ち無沙汰となったので何をすべきか問いかけた。


「それで次は何したらいい?」


 (あき)君は廊下の水拭きをしつつ、スマートグラス越しにメッセージを開いて答えた。


「夕方に浴衣が届くみたいだから、(さき)の部屋の畳を軽く拭いてくれ」


 作業しながら器用だよね。

 私は言われた通り自室に向かおうとした。

 だが、その存在理由が急に気になったので問いかけた。


「畳だね! りょー……あの畳ってなんのためにあるの?」


 (あき)君はきょとんとしつつも入居前の説明を掃除しながら語ってくれた。


「畳か? なんでもこの最上階は御嬢様向けの部屋でもあるそうだぞ」


 御嬢様向けの部屋で人によっては茶道や華道。

 踊り等を家で練習するそうで、そのために用意されているという。

 仮に私の利用法を想定すると、こたつを置いて冬場だけここに居座るこたつむりになりそうだけどね。

 私って令嬢でも令嬢ぽくないから。


「それで畳部屋が窓際にあると」

「布団を敷けばベッドにもなるんだと。おそらく(さき)の寝相を思って用意したんじゃないか? 寝相はほぼ治ったけど」

「そういう用途もあると。私達の寝室がなかったらここで寝ていたかもね」

「寝ていただろうな」


 ちなみに、私達の部屋は間仕切って使っているが、ここは将来の子供部屋でもあったりする。

 間仕切った反対側には(あき)君の自室が存在しており、秘蔵品と呼ばれる趣味の品物がかなりの本数、隠されている。

 私自身、見て見ぬ振りをしているけれど。

 それらは私か(あおい)に似ている女の子。

 怒るだけ無駄だと判断した。


(触れられない浮気に目くじらを立てても仕方ないもんね。触れたら怒るけど)


 自室に移動して畳みの上を拭いていく。

 何気に埃が溜まっているよね。

 ここでの寝起きはせず、勉強で一人になりたい時。

 私服に着替える時、制服に着替える時しか出入りしていないのに。

 そうか、出入りだけでも外から埃が入ると?


(時々、(あき)君の部屋から聞こえるドタバタ音は掃除をしていたのかもね)


 あとで何の掃除か問いかけたら(あおい)を例に出されて反応に困ったけど。

 昼食と残りの掃除を済ませた私達は夕方に届けられた浴衣を自室に拡げて選んだ。

 本来はゲストの(あおい)達に選んでもらってからとも思ったのだけど、ホストが着飾り過ぎてもよくないと判断して、地味なデザインの浴衣を選んでいたのだ。

 (あき)君は普段から紺色の作務衣なので浴衣を着る事は無さそうだけど。


「この色とかどうかな?」

「それぞれの好みの傾向から察すると、もう少し地味目がいいな」

「やっぱりだめかな? 濃すぎるから?」

「ああ。先ず、ゲストの好みから想定するが」

「好み?」

「分かっている範囲でだが、(あおい)は名前からも連想出来るくらい、寒色系を好むよな」

「そうだね。筆箱とか下着とか青系統が多いかも」

「最初に見た下着もそうだったしな」

「そ、そうだね」


 汚されてはいたけど水色だったもんね。


「次に(なごみ)は派手系統、暖色系を選ぶと思うんだよ」

「姉妹なのに好みも正反対だもんね」

「身に着けているアクセサリーは明るめが多いしな」

「確かにそういう傾向はあるね」


 夏場限定で身に着けているピアスとかネックレスとかね。


「最後に挙動が分からない会長は、大人系を選びそうだよな」

「普段からシックだもんね。行けたら行くって言っていたけど」


 今日は実家から呼び出しをうけていて李香(りか)ちゃんと帰省中だ。


「この中からだと、どれを選びそうだと思う?」

(あおい)は群青色、(なごみ)は緋色かもな」

「群青色はワンポイントでマリーゴールドが描かれている奴ね」

「今回に限って花言葉は考えないように」

「う、うん。ピッタリ過ぎて恐いもんね」

「緋色は白い胡蝶蘭が良いだろうな」

「そうなると会長は?」

「紫色で白いアスターかな」

「ピッタリ過ぎて恐い」

李香(りか)が来るなら、菫色の市松模様だな」

李香(りか)ちゃんは花ではないんだ」

「花柄は少ないからな」

「そういえばそうかも」


 最後に私が着る浴衣は桜色、花が咲くという意味で名前から連想したらしい。

 柄はなく純色とグラデーションだけを楽しむ浴衣だった。

 私が濃いめのデザインを選ぶと首を横に振っていた(あき)君。


(さき)に柄は不要だ。(さき)そのものが活かされないからな」

「そ、そう? ありがとう」


 (あき)君の見立てに、この時ばかりはとても嬉しかった私だった。



 §



 私達の家にゲスト達が訪れる一時間前。

 (あき)君はバルコニーに出て何やら組み立てていた。

 それは浴衣と共に届けられた大荷物だ。


「たまには休憩してよ。熱中症になったら大変だから」

「ああ。麦茶、サンキュー」

「ところで、これ何?」


 私の目の前には気の所為か屋台っぽい代物が鎮座している。


「先日、雰囲気でも味わいたいから、たこ焼きと焼きそばを作るって言ったろ?」

「うん。それでウチには無い道具を寄越して欲しいって、父さんにお願いしたね」

「その結果がこれとこれになって届いた」

「か、家庭用を願ったのになんで業務用?」

「俺もどうしてこうなったのか分からないが、屋台特有の雰囲気を味わえってことなのかも。作る俺からすれば練習が必要な道具でしかないけどな。火加減とか難し過ぎるだろうに何を考えているんだか。お義父さん」

「娘ながら分からない父だよね。こういう所は」


 それを(あき)君が一人で組み立てて、使える状態にしていた。

 食材等は掃除の後に下拵えしたので問題ないが、


「練習を含むと材料が足りなくなりそうだな」

(あき)君は未経験なんだね」

「普通、経験するような代物でもないだろ、これ?」

「えっと、私は文化祭で経験があるけど?」

「……」


 問題は触れた事がない(あき)君にあった。

 文化祭の準備は全て欠席、当日も休んでいた。

 その結果がこれ?

 父さんは何を考えているのか?


「家庭用ならどうにでもなるが」

「あれなら教えるよ? 私が」

「頼めるか?」

「勿論!」


 結果的に私が触れた事のある道具だったので火加減等を教えていった。


(さき)の手料理が美味い。何杯でも食べられる」

「そ、そう? 誰でも作れる、焼きそばだと思うけど?」

「これは(さき)が作るからいいんだよ」

「そうなんだ」


 美味い美味いと食べてくれる(あき)君が微笑ましく思えた私だった。

 もしかすると父さんがこれを寄越した理由はそれにあるのかも。

 普段は(あき)君が料理するが、私が彼のために料理する事はほとんど無い。

 出来なくはないけど(あき)君の方が上手いから。


「もし、あれなら時々作ろうか?」

「むしろ、普段から一緒に作ってくれる方が俺は嬉しいな」

「そ、そう? じゃ、明日の朝から作ろうか?」

「今晩からじゃないのかよ?」

「今晩は浴衣を着るし、借り物だから汚せないしね」

「そういう事か。なら、仕方ないか」


 そんなに私の手料理を欲していたのね。

 それを知ると素直に嬉しいね。

 なお、たこ焼き作りは(あき)君が上手かった。

 

「飲兵衛に頼まれて家庭用で何度か焼いたからな」

「そうなんだ。あ、ウィンナーとチーズもある!」

「それは会長用だな。あの人、タコアレルギーだから」

「会長にもアレルギーなんてあったんだね」

「完璧超人の弱点だよな。軟体生物も苦手らしいが」


 その際に会長の弱味を知ったので兄さんにも教えようかと思った。

 意外と知っていそうだけどね。


「練習用は俺達の夕食だからさっさと食おう」

「そうだね。小腹が空いたらまた作ってくれる?」

「材料が残っていたらな。大食らいが来るから残るか不安だが」

「大食らい。(あおい)が居たね。おっぱいに栄養が偏っていそうな従妹が」

「尻にも偏っていそうだけどな。身長に向かえばいいものを」

(あおい)の偏りはどうしようもないよ。盛大に揉まれた結果だし。お尻は遺伝だろうけど」

「そ、そうだな。本人に聞かれると後が恐いから程々に」

「今はまだ大丈夫だと思うけど?」


 直前まで不在と聞いたので私達の会話を聞かれる心配はないしね。

 私達が夕食を食べる時間はまだあると思うんだ。

 すると玄関のチャイムが鳴り、


「まさか? 噂をすれば?」

「ち、ちょっと出てくる」


 私がリビングに戻って確認すると玄関先に怒れる(あおい)が居た。

 流石に帰宅が早すぎないかな?


『誰のおっぱいが何ですって?』

「なんで私達の会話を知っているの?!」

『バルコニーで洗濯物を取り込んでいたら聞こえてきたので』

「気づいているならそこでツッコミを入れてよ!」

『美味しそうな匂いが染みつく前に取り込んだだけです!』

「あっ。ごめんごめん」


 インターホン越しに目の笑っていない笑顔の(あおい)

 隣には苦笑する(なごみ)、背後にはスマホを触る会長が居た。

 李香(りか)ちゃんは実家に置いてきたのね。


「え、えっと、どうぞ」

「「「お邪魔します」」」

「ところで尼河(にかわ)君達は?」

「「お義父さんからの呼び出しです!」」


 呼び出しなら合流はもう少しかかりそうだね。

 私達が着付けている間に合流するかな?


「そうなんだ。会長、李香(りか)ちゃんは?」

「母方の祖父母が来日したから、そのお相手ね」

「来日ですか。会長は良かったので?」

「嫁いだ長女はさっさと帰れって父に言われたからさっさと帰ってきたわ」

「それは、なんというか?」


 反応に困るやりとりだよね。


「気にしなくていいわ。挨拶だけは済ませたし」

「そうなんですね」


 白木(しらき)とは考え方からして違うのかもね、きっと。


「浴衣の用意は出来ているのでどうぞ」

「「「お邪魔します」」」




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