85話 仲間
今回は、ちょっとだけ長めです!
不覚にもバグタスの圧倒的なパワーによって戦闘不能に陥ったアディア。この状況を危険だと判断した魔王は、彼女を守るように前に立ち塞がると、銃をかまえて咆哮する!
「余は偉大なる魔王……絶大なる力をもって、お前を葬ってくれるわ!!」
小さい身体ながらもはっきりと戦う意思を表す魔王に対し、バグタスは不気味な笑みを浮かべて言う。
「オレ様を葬るか……正気か小僧?」
「正気だ! 余はお前を葬る!!」
銃を向けたまま明確に答えた魔王を見て、バグタスは顎を撫でながら興味深気に訊ねる。
「葬る……ねぇ。ところで小僧、その手にしてる玩具は、もしかして“銃”ってヤツか?」
「そうだが……知ってるのか?」
「昔ちょっとだけ興味を持ったことがあってな。少しだけそれ調べたことがある」
「……ふむ。ならばコイツがお前を殺せる武器であることくらいは知ってるわけだ」
「さぁ、それはどうだろうな?」
バグタスは周囲に立つ騎士を眺め回しながら続ける。
「確か銃は、弾を真っ直ぐに飛ばして相手を倒す武器だったはず。周りにいるコイツ等ならまだしも、オレ様には通じねぇと思うぜ?」
「ずいぶんと自信たっぷりだな。試してみるか?」
「ハハハ、やめとけよ。そんな無駄な……」
パァン!
発言の終わりまで待たず、魔王はバグタスの眉間を狙って引き金を引くが!?
「なっ? 通じなかっただろ?」
彼には弾は当たらなかった。何故なら彼は……
「あ……あぁ……」
何故なら彼は、仲間である騎士の首根っこ掴んで盾代わりにしていたからだ!
「仲間を盾に……外道め!」
「おいおい、ひでぇ言われ方だな。オレ様は優秀な仲間に守ってもらってるだけだぜ?」
もっともらしく言ってるが、魔王は当然それを“良し”とはしない。
「ふざけるな! お前は自分がやってる意味をわかってるのか!?」
人の道を疑うような問いに、バグタスは悪びれるもなく答える。
「もちろんだとも。オレ達騎士は運命共同体、仲間のためになら喜んで命くらい投げ出すさ……こんなふうにな!!」
そして、耳障りなセリフを吐き終えた途端、盾代わりにしていた瀕死の騎士を躊躇なく投げつけた!
「こ、この男どこまで……!」
咄嗟に横へ跳んで避けた魔王は、すかさず銃を連射!!
「ハッハーーー! そんな無駄撃ちをしても無意味だぜ! 何せこっちには、優秀な仲間が何人もいるんだからな!!」
一方バグタスは、辺りにいる騎士を長い腕で捕まえて新たな盾と攻撃手段に利用して対抗!!
「くっ、この外道が!」
仲間を道具のように扱う行為を憤る魔王は、取り憑かれたように撃ち続ける!
「無駄だ!無駄だぁーーー! そんな直線的な攻撃くらいではオレ様に傷一つ………ぐぉっ!」
バグタスは突然地面に転倒し、何事があったのかと自身の身体を確かめる。すると……
「なっ、ななななっっ!! オ、オレ様の足が……痛ぇぇぇーーーー!!」
足……いや、正確には両膝にはおびただしい出血があることに気づく!
「そ、そんな……小僧の攻撃はちゃんと防いでいたはず……いつの間にこんな!?」
状況を把握できなくて混乱してるところに、魔王は先程までと違った冷淡な様子で声をかける。
「バカめ。防げていなかったからそのザマなんだ。それくらいはわかるだろ?」
「うぐっ! し、しかし……オレ様は確かにテメエの攻撃を……」
「わるいな。お前が防いでいたのは、あくまでも直線的な攻撃だけだ」
「ど、どういう意味だそれは!?」
「直線以外の攻撃は当たっていたということだ。こんなふうにな」
パァン!
そう言ってあさっての方向に発射された弾丸は、見事な曲線の軌道を描いてバグタスの右足へ命中!
「ぎゃあああーーーー!!」
「どうだ? これで理解できたか?」
「ひっ、ひぃぃ! オ、オレ様を殺すのか!?」
移動の自由奪われて敗北を悟るバグタス。だが、魔王は何故か彼にとどめを刺さずに銃を下ろす。
「な、なんだ!? オレ様を殺さないのか!?」
「お前には殺す価値すらもないからな」
「か、価値だと!? ハハハ……バ、バカだぜテメエは! 今オレ様を殺らないといずれ……」
「勘違いするな。余に殺す価値がなくとも、他の者には価値があるということだ!」
「へっ? 他の……」
「周りを見てみろ」
バグタスが周囲を見渡すと、彼が“仲間”だと言っていた騎士が怒りに満ちた表情で取り囲んで立っていた。
「お、お前等……ま、まさか!? や、やめろ!!」
制止を聞かずに近づく一人の騎士が、無言でバグタスの身体へ剣を突き刺す。
「があっぁぁ……そ、そんな……仲間なのに……」
続いて今度は別の騎士が剣を突き刺す。
「ぐがぁ! な、何故……なか……ま」
続いてまた別の……
「…………!」
続いてまた……
「…………」
何も言わなくなったバグタスに次々と剣が刺されていく光景を眺め、魔王は何の感情もなく呟く。
「憐れだな。仲間に復讐されて迎える最期というものは」と……




