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48話 アディアとリィン

 激戦の一夜を明けてからの村の診療所にて。


「その話、謹んでお受けします」


 迷いなくそう答えたのは、診療所のベッドに腰をかけるリィン。彼女はアディアと魔王からの共に“勇者へ復讐する”という協力要請を驚く程にあっさりと了承するが、逆にそのあっさりさに不安を覚えた魔王は再度確認。


「なぁリィンその……こちら側から誘っておいてアレなんだが、もう少し考えてから返事をしてもかまわないんだぞ?」


 これにリィンは、不思議そうに首を傾げて聞き返す。


「どういうことです?」

「いや、正直に言って勇者は間違いなく強敵だ。何せ一度は、余を倒しているくらいだからな」

「それは存じてます」

「だったら……」

「あの、魔王様?」

「な、なんだ?」

「我は魔王様にこの命を捧げる身です」

「……」

「それに、勇者への復讐はいずれ果たしたと心に決めてました」

「そ、そうか……」


 自身の意志をはっきり主張するリィン。彼女はもう一人の人物へ視線を向ける。


「アディアさん、お話をよろしいですか?」

「え、私に? い、いいわよ」


 急に話を振られ、アディアは少し驚く。


「かつての勇者パーティーの一員であったアナタに確認です。あの日、魔王城への襲撃を決めたのは誰ですか?」

「え? 誰って……どうしてそんなことを訊くの?」

「……もしそれがアナタ達()()の総意だったとすれば、必然的にアディアさんも我の復讐対象になるからです」

「……!」


 アディアは迷った。確かにリィンの推察通り、その日に行った魔王城への襲撃は他の者達と同様に自分も同意していた。ただそれをリィンに伝えたら反感を買うのは必然。

 でもだからといって下手に曖昧な形で誤魔化そうものなら、せっかく仲間になろうとしてくれる彼女の気持ちを裏切ることになる。


 よって、悩めるアディアの下す決断は?


「アナタの言う通りよ。あの日の襲撃は私達が全員で決めたわ!」


 事実をありのままに告白し、せめてもの誠意を示すことを選択。そして、対するリィンの反応は?


「……そうですか。正直に答えてくれてありがとうございます」

「え?」


 意外にも好意的に受け止めてくれるものだった。


「もしアナタが下手に事実を隠したり、誤魔化したりしていたら、我はアナタを見捨て、魔王様と二人だけで勇者への復讐を果たすつもりでいましたよ」

「じゃあ……」

「ハイ。真実を話してくれたアナタを我は信用します」

「リィン……」


 安堵してると、そこにある質問が投げかけられる。


「ところでアディアさんは、どうしてかつての仲間であった勇者へ復讐を?」

「ああ、それね……」


 アディアは自分がそうなった理由を説明する―――説明終わり。


「ひ、ひどい! じゃあ勇者はアナタを裏切って他の女との結婚を選んだのですか!?」

「そうなのよ! しかも、私が散々請われて筆下ろしまでしてやったのによ!!」

「嘘でしょう! そこまでやってもらいながら、なんて薄情な……そんな勝手過ぎる男、絶対に生かしておけませんよ!」

「まったくその通り! だから私はね―――」


 この後、彼女等による勇者への罵詈雑言は続き……


「ありがとう……ありがとうリィン……私のために……そこまで親身になってくれて……ううう……」

「いいんです。いいんですよアディアさん。お辛かったんですね……グス」


 最終的には何故か二人は十数年来の親友の如く打ち解け合い、号泣して抱き合う始末にまでなっていた。


 尚、この様子を部屋の片隅で遠巻きに眺めていた魔王はというと?


「女というものは、わからん」


 目の前で繰り広げられる理解不能なやり取りに呆れ、生暖かい目で見守り続けるのであった。

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