47話 魔王の気遣い
夜空に放った銃弾一発で場を静めた魔王。彼は何食わぬ顔でアディア達がいる場所にまでへ歩み寄ると、まずは負傷していたリィンの前で足を止めて声をかける。
「大丈夫か、リィン?」
「ハ、ハイ……問題ありません」
聞かれた彼女は視線を逸らして答えるが?
「嘘を言うな。余の目は誤魔化せんぞ」
「…………」
魔王からはお見通しだと指摘され、申し訳なさそうに顔を俯かせる。
「やれやれ……」
魔王は彼女の強がりな態度にタメ息を吐くと、側にいた背の高い魔族の男へ訊ねる。
「オイ、そこの男。この村に治療ができる施設はあるか?」
「ハ、ハイ! ち、小さいですが、診療所が一軒ありますデス!」
突然話を振られた背の高い男は、戸惑いながらも素直に回答。
「よし。ならば急いでリィンをそこへ連れていけ」
「か、かしこ参りました!」
男は魔王から指示を受けると、リィンに肩を貸して移動しようする……が?
「待って! 一度、魔王様と話をさせて」
魔王との謁見を希望ということで、やむを得なくその場に留まる。
「あ、あの魔王様、我は……」
「何も言うな。それよも早く傷を治すことを考えろ」
「……ハイ」
ただ魔王はリィンが何かを言いたそうなのは理解するが、彼女の容態を気遣って短いやり取りだけで済ませて診療所へ向かわせた。
そして、残った者達はというと?
「さて、本来ならここで何があったか事情を知りたいところだが……さすがにもう遅いだ。さっさと各々の家に帰って休め」
「「ハ、ハイ!!」」
早々に帰路へ着かせ、最後は自分とアディアの二人だけになったところで彼女に声をかける……
「―――もういいだろ?」
その瞬間、彼女はニヤリと笑みを浮かべたと思ったら崩れるようにその場へ座り込んだ。
「ふぅ……よ、よくわかったわね。私か限界だったことが」
「まあな。あのリィンと戦って平気であるはずがない」
「ふ~ん、ずいぶんと彼女を信用してるのね」
「当然だ。何せ余の教育係だからな」
「教育……ねぇ。一体何を教育されていたんだか?」
「茶化すな。性格には多少の難はあっても、アレはアレで優秀なんだ」
「はいはい……それは実際に戦った私でも知ってるわ」
「そ、そうか、そうだったな」
ここでアディアは、少し間を置いて尋ねる。
「ところで一つ提案があるんだけど、いい?」
「何だ?」
「現実的な問題として、私達二人だけでギルハートへ復讐するには無理があると思わない?」
「何だ、泣き言か?」
「んなわけないでしょ! 他にも仲間が必要って言いたいのよ。かなり腕が立つね」
この言葉を聞いて、今度は魔王が間を置いて口を開く。
「……心当たりはあるのか?」
「もちろんあるわ。それに、その人も勇者に復讐するだけの十分な動機があるはずよ」
「ふむ……それなら心強いな。っで、そいつはどこにいるんだ?」
アディアはあっけらかんに答える。
「この村にいるわよ」
「この村……って、まさか!?」
「そのまさかよ!」
魔王の顔には明らかな動揺の色が見える。
「リィンなのか!? リィンを仲間にする気つもりなのか!?」
「その通りよ。私は彼女も勇者へ復讐するに相応しい人物だと確信してるわ!」
「な、なんだとぉぉぉぉーーーーーー!!!」
驚愕する魔王! 彼はアディアの提案に対し、身体全体を震わせるのであった!!




