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女装剤  作者: 嬉々ゆう
77/91

第76話 「ひとみちゃん⑦『犬と犬飼さんと魔法使いと』」

仁美と和美の住むオンボロアパートに新居者?


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。




 ・⋯━☞次の週のハナキンの夜☜━⋯・


 ••✼••アパート仁美の部屋••✼••



 世間は、ハロウィン風の飾りがチラホラ。

 いよいよ、10月も終わりか。

 和美のお陰で、新しい季節服も入手して、今週は風邪の心配もなく過ごせて普通に勤務できたので、本当に和美には感謝感謝の雨あられだわ。


 しかし、なんで俺よりも後に女になった和美の方が女らしくて、女性ものファッションにも目が利くんだ?

 掃除炊事洗濯などの家事全般なんてなんのその、オマケにお世話好きときたもんだ。

 将来、良いお嫁さんになるとは思うが、できる事なら離したくない。


 何なんだこの気持ちは?!


 恋人・・・とは違うし、親友・・・とも何か違う?

 好き?・・・なのは好きだが、正直どういう好きなのか自分でも解らない。

『一家に1人の便利な人?』みたいな存在でもないし。

 ベタベタネチネチと離れたくないような重い関係でもないし、居なきゃ居ないでソワソワするし寂しいし・・・

 パートナー的な存在には違いないが、今の俺と和美との関係を明確に表現できる言葉が見付からない。


 だが、これだけは言える!


 もし、俺か男なら、絶対に求婚していると思し、もし和美が男のまんまなら、結婚しても構わない人だとは思う。

 それくらい、『大切な人』なのだと思う。



「仁美さん、晩御飯ができましたよ」


「おっ! おうおう! さぁ~んくす!」


「今夜は、若鶏の唐揚げと、豚汁(とんじる)と、ほうれん草のおひたしと、五目ヒジキですよ!」


「ほほお!・・・あり? なんか、唐揚げ少なない?」


「これで、いいんです!

 そして、お茶碗は、今日からこの小さいお茶碗で、ご飯を食べてくださいね?

 お代わりは、一杯までですよ!」


「えっ・・・」



 和美が出てきたのは、可愛いニャンコの絵が描かれた、とても可愛らしい茶碗だった。

 まるで、お子様用のような・・・



「お茶碗、ちっさ!! なんとまあ、アニメチックな(汗)

 なあ、和美・・・俺、子供とちゃうで!」


「また、そんな事を言う!

 今の仁美さんは、女の子なんですよ?」


「女の子って!・・・まあ、うん・・・身体は、そうかな(汗)」


「でしょ? 筋肉バカの脳筋独身ニヒル野郎の頃のように、ハードなトレーニングは、もうしないんだから、高カロリーな物はできるだけ控えてくださいね」


「言い方っ! でも、トレーニングは続けてるぞ?」


「確かにそうですけど、男の頃みたいには、いかないでしょ?」


「はあ、まあ・・・そうですね・・・」


 パチン!



 そう言って話しを終わらせるかのように、パチン!と手を合わせる和美。

 そんな和美を見て、渋々納得いかない顔をして仁美も手を合わせる。



「はい! では、いただきます!」


「いただきます・・・」



 まるで、躾役のお姉ちゃんみたいだ。


 仁美は、何時もよりも少なくなった唐揚げに、小さくなったお茶碗を見て、しょんぼりして下唇を突き出して食べ始める。

 確か和美は、上に2人の姉が居たと聞く。

 一番下の弟だった和美は、何時も2人の姉を見て育った。

 きっと、今の仁美と和美のような会話をしていたのだろう。


 

 と、こんな風に、和美は今では寝る時以外は、俺の部屋で過ごし、俺の世話をしてくれている。

 まるで、仁美の奥さんのように。



「ふふふ・・・」


「!・・・なんですか? 急に笑い出して気持ち悪い」


「ああいや、なんか俺らって、夫婦みたいやなってな?」


「えっ?・・・そうですか・・・

 何を恥ずかしくなるような事を言ってるんですか(照)」


「・・・はは」


「・・・・・・(照)」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・(照)」


「・・・・・・・・・・・・・・・って、おい!

 何か()えよ! 俺まで恥ずかしくなるやんか!

 なんとか()うてくれよ!」



『夫婦みたい』

 そんな言葉に、和美は顔を赤くする。

 そう言って黙り込まれると、仁美も恥ずかしくなる。



「そ、そん、な、なん、なんなんですか!?

 仁美さんが急に変なことを言うから、恥ずかしくて何も言えなくなったんですよ!」


「あははっ! そうかそうか!

 いやあ、なんか和美ってば、俺のために色々世話を焼いてくれるから、なんとなく・・・(汗)」


「・・・もお(照)」


「ふふん 和美は、良い奥さんになるわなぁ~~~」


「奥さん・・・ですか」


「おう! もし、俺と和美とが結婚したらな?」


「ええっ?! 僕が奥さんなんですかあ?!」


「ええっ?! 当然! 和美が奥さんやろう!!」



 仁美と和美も今は女なのに、なぜだか男女の夫婦関係としての前提で話す。



「いやですよ! 僕が旦那で、仁美さんが奥さんでしょう?」


「はあい?! いやいやいやいやっ! その解釈おかしい!

 お、俺が旦那やろがよ? 歳上やし?」


「歳なんて関係ないですよ!」


「関係あるやろお!!」


「関係ありませんってぇ!!

 僕の理想は、姉さん女房でありながら、普段はシッカリしてるようで、実は2人で居る時はポンコツで、守ってあげたくなるような、そんな仁美さんが好きなんですよ!」


「なん~~~じゃソレ? その外弁慶な女上司みたいな設定!!

 お前にとって俺は、どんな女なんじゃよ?!」


「だから! 外では仕事もできてしっかり者なのに、家ではポンコツで僕が居ないと何もできないような、甘えん坊で可愛い仁美さんがいいんですぅ!!」


「ひどっ!! 言い方っ!! どうせ俺はポンコツじゃよお!

 普通、男より女の方が良く出来るもんやろ!!

 だから、何でも良くできる和美が嫁さんになるべきやろがえ!!」


「そんなの、偏見ですうっ!!」


「ちゃうちゃう!! ほんなら、もし俺と結婚するとなったら、俺の花嫁姿なんか見たいか? そんなゲテモン見たくないやろ!!」


「見たいですう!! きっと、とっても綺麗で可愛いはずですう!!」


「はあ?! お前、頭だいじょぶかあ?!

 俺みたいな筋肉お化け野郎の、何処がええんなよ?!」


「ほおらっ! もう自分が女だって事を忘れてるう!!

 もう今の仁美さんは、女の子なんですよお!!」


「おんっ・・・・・・あ、そっか マジ忘れてたわ(汗)」


「はあい?!・・・ちょっと、仁美さんこそ頭は大丈夫ですかあ?

 なんだったら、今ここで思い出させてあげましょうか?」


「な、なんよ? 何を思い出させるってゆーんなよ?」


「だから、仁美さんが女だってことをですよ!」


「ど・・・どうやって?」


「そんな事を僕に言わせるんですか? 解ってるくせに!」


「へあっ?!・・・・・・・・・け、結構で御座いますぅわあ!

 わたくし、ちゃんと女だと自覚はできていますもの!

 ごめんあそばせ! おほほほほはほほほほほほっ!」


「・・・今、仁美さんのお尻を、思い切り引っ(ぱた)きたくなりました」


「ごめんなさあい・・・(凹)」



 結局この日の夜に仁美は、和美に3回も失神させられた・・・。




 ・⋯━☞翌朝☜━⋯・



 突然、和美が仁美の部屋にやって来た!

 そのあまりの騒がしさに仁美は飛び起きる!



 ドンドンドン!!


《仁美さん! 大変ですぅ! 仁美さぁん!!》


 ドンドンドン!!


 ガバッ!!


「ふわぁはっ!! なん、なんや?」


 カチャ!・・・バタァン! バタバタバタバタッ!



 和美は、玄関のドアを開けて部屋へ入ると、荒々しドア閉めて突進する勢いで仁美に迫る!!

 そして、布団の上に座る仁美に向かって正座でスライディング!



 ズザザザザ━━━ッ!


「仁美さん! 大変です!! 僕達の平穏な生活の危機です!!

 はあっ!⋯はあっ!⋯はあっ!⋯」


「なんやなんや藪から棒に!! 落ち着け!

 ってか、土足!! セッタを脱げ! セッタを!!」



『セッタ』とは、和歌山の方言で言う『草履(ぞうり)』の事である。

 例えば、『ビーチサンダル』の事を、和歌山では、『水セッタ』と呼ぶのだ。


 それはまあ、今はそんな事など良しとして・・・


 突然朝っぱらから、和美が仁美の部屋に大騒ぎしながら飛び込んで来た!

 こんなに取り乱した和美を見るのは初めてだったので、仁美も何事かと身構えた!



「なんなんよ! 何があった?!」


「もし、この話しが本当なら、今後僕達は、風紀を乱す事ができません!!」


「落ち着けって! 今、お前が()ってる事が乱れてるぞ?」


「実は・・・」



 和美の話しでは、仁美と和美が住んでいるアパートに、新しい入居者が増えるかも知れないと言う。

 

 確かに・・・風紀云々と言うのは置いといて(いいのか?)、仁美と和美にとっての平穏な生活に終わりが来るかも知れない?

 仁美と和美にとっての平穏とは如何に・・・?


 仁美達が住むアパートは二階建てであり、1階は向かって右側から①②③⑤号室の全室空き部屋で、2階は向かって右側から⑥⑦⑧⑩号室となっており、仁美が⑦号室で、和美が⑧号室で、今現在は仁美と和美しか住んでいない。

 しかも、周りには竹藪だらけだし、裏手は墓地だし、周囲数キロ範囲には廃墟しかない地域なので、どんなに騒いでも近所迷惑にならないので、やりたい放題だった。

 なのに・・・



「ぬわんてよぉ?! それは一大事やんか!!」


「そうなんですよ!! 今しがた電話が来まして」


「は? 俺には来てへんぞ?」


「仁美さん、スウェットと一緒にスマホを洗っちゃって、壊れたまんまじゃないですか?」


「あ、そうでした・・・(汗)

 今、金無いからスマホ復活は無理!

 んで、その新しい入居ってのは、いつからなんや?」


「今日からだそうですう!!」


「はあい?! 今日から???」



『聞いてない!

 いきなり今日って、それはないやろ!! 前もって言え!

 教育委員会わなにしてんねん!!』



 和美から聞くところによると、仁美達の住むアパートとは、一応『教職員住宅』に指定されてはいるものの、管理も教育委員会ではなく、他所の管理会社なんだとか。

 要するに、このアパートは、俗に言う『お化け屋敷』や、『曰く付き物件』や、『事故物件』などと呼ばれる類の売れ残り物件みたいな類の1つである。

 一般の人がなかなか入居してくれないので、仕方なく『教職員住宅』にしちゃったのでは?と思われる。

 そりゃあ、裏手が墓地だわ、周囲にはおどろおどろしい竹藪しかないわ、近くにスーパーやコンビニも無いわ、アパートはボロボロだわ、心霊スポットみたいな噂があるわで、誰が住みたがるかっちゅーねん!ってな物件だ。


 なにしろ、仁美がまだ、全身ムッキムキの筋肉お化けのアラサー独身野郎だった頃に、仁美の留守中に中学生くらいの男子達が数人仁美の部屋に不法侵入した事があった。

 その頃の仁美の部屋は、荒れ放題の散らかり放題だった。

 知らない人が見たら、廃墟と思われても仕方がないかも。

 すると丁度その時に、出掛け際に玄関の鍵をかけ忘れた事を思い出して家に引き返した仁美と不法侵入した中学生達とがかち合わせた!

 不法侵入の中学生達は大パニック!!

 そりゃあ、空き家だと思っていた部屋に住居人が帰って来たのだから!

 そして現れたのはムッキムキの筋肉お化けの大男である!

 中学生達は皆、殺されると思ったそうな。


 だがその後で、仁美は中学校達に、1時間もこんこんと説教をたれた後に、一人一人に缶コーヒーあげて帰してあげたとか?

 根は優しい仁美である。


 それほどに、見た目は廃墟に見えるほどのボロアパートである。


 それでも仁美が住む訳は、家賃が月1万5千円と、めっさ安いからだ。

 しかも今時、1LDK・バス・トイレ・エアコン・ネット&CSチューナー付きの、外見の見た目とは裏腹な快適環境で、しかもトイレは洋式水洗トイレでシャワー付き!

 ネットやCS放送の料金だって含まれているのか?

 これで、月1万5千円なんて事故物件⋯いや、安物件なんて他に絶対に無いぞ?

 なので仁美は、取り壊すから出て行け!と言われるか、よほどの嫌な奴が入らない限りは、このアパートを出るつもりなどない。


 しかし、新入居者が当日来るぞ!って報告は如何なものか?


 普通一般の入居者多数のアパートやマンションなら、知らない間に入居人が居なくなったり、いつの間にか空き室に誰かが住み始めたりするのも良くありありだが、たった2人しか住んでいない、こんなショボイちっぽけなアパートの入居者の情報くらい、サクサク通知されても良いはずなのに。

 当日なんて、有り得ない!


 そんな事をグルグルと考えていたら、今日から入居すると言うその人はもう来ていたのだった!



 コンコンコン!


「ひゃあ!「きゃあ!」


《あの~失礼致します!》


「「はあい!!」」


《あ! あの、えっと、わたくし、この度、管理会社から、このアパートの管理人を押し付けられ・・・いえ、命令され・・・ああいえ! 拝命いたしました、犬飼と申します!》


「「はあ?!」」


何言()ってんの?」


「・・・さあ? 余程、ここに来んのが嫌やったんかな?」


「犬飼さん?・・・女の人?」


「・・・みたいやな?」


《ワウッ! ヲウッ!》


「「はぁい?」」


「犬・・・?」


「犬飼さん・・・だけに?」


「ぶふぉっ!・・・ぷぷっ・・・(笑)

 クスクスクスクス・・・ま、まあ、とにかく出て!」


「ああ、はいはい!」


 カチャ!・・・


「「?!・・・」」



 和美が玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは、まだ成人したばかりくらいの、若い女性とデカイ犬だった!

 しかし、なんとまあ地味な身なりと言うか服装と言うか、髪も三つ編みのツインテールだし、黒縁メガネかけてるし、まるで絵に描いたような『地味子さん』だった。

 着飾れば、それなりに可愛いくなるとは思うが。

 まあ、そんな感じ。

 


『ってか、それより犬っ?!・・・なんで?』



 そして連れている犬は、ゴールデンレトリバー? レトリーバー? という名の犬種だったか分からないが、人懐っこそうな大型犬だった。

 介助犬でよく知られるワンちゃんだと思う。

 舌を出して、ハッハッ!と笑ってるようにも見える。

 大人しげな、ワンちゃんではある。

 でも実のところ、仁美と和美は、猫派である。

 正直犬は、苦手とまではいかないが、得意でもない。

 

 彼女は、このアパートの管理人を拝命したとか言っていた。

 それより、犬を連れているが、このアパートは犬を飼っても良かったのだろうか?

 普通ならアパートで動物を飼うのは難しいはず。

 と言うか、普通はダメでしょ?

 それより、犬飼さんは、こちらの反応を待っている様子だ。



「ええと・・・は、初めまして!

 俺・・・ああいや、私はこの7号室に住む、大川 仁美と申します」


「あ! 私は、隣の8号室に住む、新谷 和美です」


「あ、はい! 伺っております!

 確か以前は、お二人共、男性だった・・・んですよね?」


「?!・・・」



 なぜ、知っている?!

 だが、もう知られているのなら、今更隠しても誤魔化しても意味がないだろう。

 後々に知られてから大騒ぎされるよりはマシか。

 そう思った仁美と和美だった。



「「・・・はい(汗)」」


「実は、私も一月ほど前までは、男性だったんですよ?」


「「はあいっ?!」」



 なにそれ?! なにそれ?! なにそれええええ?!

 今目の前に居る、犬飼という女の人も、一月前は男だった?!

 なんだこのアパート! このアパートは、男から女に変身した奴等が住むアパート? そういう場所なのか?

 ってか、いやいや、そういう場所にされてしまったのか?

 などと、またグルグルと考えてしまった。



「あ、では、改めまして!

 わたしく、このアパートの管理人を拝命致しました、犬飼(いぬかい) 真心(まこ)と申します」


「拝命ねえ・・・」


「はあ・・・」


「えっと、マコの漢字は、『真心(まごころ)』と書いて、『マコ』です!

 以後、よろしくお願いしたいます」


「「ああ、はいはい・・・」」


「そして、この子は、私の家族のリリーちゃんです

 今年で2歳になる男の子ですよ!」


「え? 男の子なのに、名前がリリー?」


「リリーって、『百合の花』って意味でしたよね?」


「はい! リリーです!」


「「ああ、はい・・・(汗)」」


「ワフッ!!」


「ひゃあ!「きゃあ!」



 リリーと呼ばれる大型犬は、仁美に飛びかかろうとしたのか、両前足を上げて立ち上がった!

 

 デカイっ!!


 立ち上がったリリーは、魔法使いになった仁美と和美の今の身長よりも高かった!

 それに、犬にしては不相応なくらいに、立派なモノをお持ちで。

 もしコイツが戦闘態勢になったなら、一体どれほどの大きさに変貌するやら・・・って、今はそんな事などどうでもいい!

 正直、怖い・・・(汗)

 マコは、慌てて一歩下がって、リードを引っ張った!

 超ビビった! 食われるかと思った!



「あっ! 大丈夫ですよ! 絶対に人を噛んだりしません!

 それに、この子は男の子なので、女の子が大好きなんですよ!」


「「はあ・・・・・・(汗)」」



 なんか、癖のありそうな人が来たな・・・

 オマケに、飼ってる大型犬のリリー?まで癖がありそう。

 しかし、このアパートで、こんなにデカイ犬を飼うつもりなのだろうか?



「あの・・・その犬は? このアパートで飼うんですか?」


「ふんふん!」


「あ、はい! あ、ああ~~~実は、本当ならば男性限定のアパートへ入居する予定だったんですが、女性になってしまったって事もあり、護身も兼ねてこの子を飼い始めたのですが、なぜだかこのアパートの管理人を押し付けられまして、私はもちろん最初は拒否したんですけど、私が女になってからと言うもの、今までパワハラなコンチクショウ上司が急に優しくなったかと思えば、やたらと関係を求めてくるパワハラセクハラ上司に変貌したので、部署の移動を願い出ましたら、また急に風当たりが悪くなりまして、そのアッポケパワハラセクハラ上司からの命令とか圧力がなかなか強くてでしてね、それなら『飼ってる犬も一緒に!それでもダメなら仕事は辞める!』と、ゴネましたら不思議と移動が通っちゃいまして、その代わりこのアパートの管理人を押し付けられちゃいまして、仕方なく今こうして、どんなアパートなのか確認に参りました次第です」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」」



 彼女のマシンガントークが、まったく頭に入って来なかった。

 なんだか、結構大変だったのはなんとなく分かるのだが、言っている事が支離滅裂だ。

 彼女がここへ来たのが極めて遺憾である事だけが、よおく伝わってきた。

 何なんだこの状況?

 面倒な日々が始まる気がしてならない。

 毎日、誰にも気兼ねなく、和美とキャッキャウフフな、好き勝手なやりたい放題な暮らしも終わる・・・?



 ズウゥウゥウゥウゥウゥ~~~~~~ン・・・


「「・・・・・・・・・・・・il||li(沈)」」


「・・・・・・(焦)」



 たぶん、今の仁美と和美は、この上なくこの世の終わりみたいな顔をしていただろう。

 マコ自身も不本意な押し付け管理人にされて、このボロアパートに住む事になってしまったのを悔やんでいる様子。

 でも、決まってしまった事なので、もう諦めているようだ。



「あの・・・取り敢えず、好きな部屋を選んでも良いと言われていますので、部屋を見させてもらっても良いですか?」


「あ、はい どうぞ?」


「・・・」


「では・・・失礼します」


「「?!・・・」」



 マコは、そう言って仁美の部屋に上がり込もうとする!

 はあい?! 何考えてんだ!!



「「・・・・・・はあ?!」」


「・・・え?」


「え? じゃあ、ありませんよぉ! この部屋は俺の部屋ですからね!

 他の部屋を見てくださいよお!!」


「ふんふん!」


「・・・そうですか?」


「「・・・(汗)」」



 なんなんだこの人お~~~?!

 ちと、世事に疎い人なのか? 世間知らず?

 これはまた、面倒そうな人が来たものだ・・・

 マコは、そう言ってリリーと共に、下の階へ降りて行った。

 

 その後、マコから聞いた話しでは、1階の全空き室も、1LDK・バス・トイレ・エアコン・ネット&CSチューナー付きの、外見の見た目とは裏腹な快適環境だそうだ。

 しかも、2階の両端の空き部屋も同じだそうだ。

 ただ、1階の1号室と、2階の6号室は他の部屋よりも少し広いのだそうだ。

 

 すごっ!! ってか、勿体なっ!!


 この物件、裏手が墓地で、周囲は竹藪で、しかもこの建物自体が心霊スポット的な噂持ちの事故物件・・・もとい、安物件ではあるが、家賃は安いし、快適だし、実際に事件や事故があった訳でもないし、お化けとか出た事ないし、外見の見た目がボロボロの木造建築のお化け屋敷みたいに少々、いやかなり悪いだけで、本当は超優良物件なのでは?


 何はともあれ・・・


 マコの部屋は1階の1号室に決まり、数日後には家具や荷物が搬入されて、いよいよ3軒入居のスタート!

 まあ、マコは1階に住むって事で、そうそう干渉しに来たりはしないだろうと思っていたのに、マコは頻繁に仁美の部屋に訪れるようになった。




 ・⋯━☞数日後☜━⋯・


 ••✼••アパート仁美の部屋••✼••



 コンコン!


《大川さん ちょっと、いいですか?》


「はい! どうぞ~~~」


 カチャ・・・パタン!


「どうしました?」


「・・・?」


「実は、お2人にお願いがあるのですが・・・」


「「お願い?」」


「はい ちょっとこのアパートを改装したいなと考えているのですが・・・」


「アパートの改装?!」



 マコからのお願いとは、これから少しずつアパートの外見を良くしていきたいと言う。

 外壁の張り替えだの、屋根の補習だの、この3人でやりたいと言う。


 仁美と和美は、教員である。

 建築関係の知識は全く無しの、DIYもした事ないし、ハッキリ言って『ど』の付く素人である。

 マコも素人考えだろうけど、簡単に言うよなあ・・・


 どうせ、元男の仁美と和美を戦力に考えているのだろうけど、DIYなんてからっきしダメな女2人に何ができると言うのか?

 それに、外壁の張り替えとは言うが、このアパートの外壁はモルタルだ。

 ネットで調べてみたが、外壁のモルタル仕上げの塗装だけでも200万近くかかるし、その前に足場の組み立て解体費も20万くらい別途要るとのこと。(ネット調べ)

 どんなに抑えても、単純計算で最低でも220万要る。

 だから、出費は材料費だけで、作業は仁美達に手伝えと言うのは、たとえ見返りがあったとしても、まず技術と知識面とやる気無しで無理!!


 どないせっちゅーねん!


 だったら、魔法を使うしかないでしょう!

 だって、仁美と和美は魔法使いだから!!


 なにせ、今の仁美と和美は、そこそこレベルは上がってる。

 早速、この日の夜にムトランティアで色々考えた結果、【錬金術スキル】を応用して、【外壁美化スキル】なるものを開発。

【外壁美化スキル】とは、古い外壁を細かなガラに変換して剥がしてしまい、『白野菜』を使って新しい壁を作り貼り付けるというもの。

 素人考えだが、これがムトランティアでは、思いの外上手くいった。

 このスキルが、日本ではどれくらい通用するのか?




 ■===========■

 ・⋯━☞STATUS☜━⋯・

 ■===========■

 名前 ひとみちゃん

 性別 女

 年齢 28

 種族 女性魔法使い

 職業 魔法使い見習い

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 状態

【健康】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 LV 180

 HP 280

 MP 346

 STR 87

 ATK 75

 DEF 71

 INT 36

 SPD 92

 LUK 170

 EXP 769301

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得魔法

【ヒールLv4】【オール・ヒールLv2】【アンチ・ポイズンLv2】

【ハイ・ヒールLv2】【オール・ハイ・ヒールLv1】

【サンダーLv1】【シールドLv1】【バリアLv1】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得スキル

【魔力制御Lv4】【魔力操作Lv4】【魔力量計測】【鑑定Lv3】

【パワー・アップLv3】【ディフェンス・アップLv3】

【スピード・アップLv3】【魔法薬精製Lv1】【錬金術Lv4】

【衣服脱Lv4】【クリーンLv4】【御用だ!Lv4】【外壁美化Lv4】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 装備によるスキル

【変身ミサンガ】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 称号

【姉御肌】【淫乱】【百合予備軍】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 資格

【中学校教諭第1種】【原動機付自転車】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 ■===========■




 ■===========■

 ・⋯━☞STATUS☜━⋯・

 ■===========■

 名前 かずみちゃん

 性別 女

 年齢 22

 種族 女性魔法使い

 職業 魔法少女見習い(光)

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 状態

【健康】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 LV 112

 HP 212

 MP 378

 STR 64

 ATK 55

 DEF 53

 INT 28

 SPD 67

 LUK 122

 EXP 258327

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得魔法

【ヒールLv3】【地属性魔法Lv2】【水属性魔法Lv2】

【火属性魔法Lv3】【風属性魔法Lv3】【光属性魔法Lv4】

【ピュリフィケーションLv3】

【ライトニング・キラキラ・ダイヤモンドダスト・シャワーLv2】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得スキル

【魔力制御Lv3】【魔力操作Lv3】【魔力量計測】

【錬金術Lv3】【外壁美化Lv4】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 装備によるスキル


 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 称号

【ひとみちゃん大好きっ()】【百合予備軍】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 資格

【中学校教諭第1種】【原動機付自転車】

【普通自動二輪車】【普通自動車(AT車限定)】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 ■===========■




 ・⋯━☞週末の休日☜━⋯・


 ••✼••アパート前••✼••


 週末、いよいよボロアパートの外壁と屋根の美化当日。



「さあ、やってみますか!」


「はい! やってみましょう!」


「あの・・・道具も何も無しで、こらから何を始める気なんですか?」


「え? アパートの外壁と屋根の貼り替えですよ?」


「うんうん」


「!・・・そうですか???」


「キュウン・・・キュウン・・・」


「「・・・ん?」」



 マコは、手ぶらでアパート前に立つ仁美と和美を見て、ただただ不安な様子。

 愛犬のリリーも、不安げにキュンキュン鳴いてた。

 だが、そんなマコとリリーに構う事なく、仁美と和美は作業を始める。


 仁美と和美は、念の為に剥がして破棄する外壁を仮置きする場所に人が入らないようにバリケードを設置し、新しい外壁になる白野菜をマジック・バッグからすぐに取り出せるようにし、魔法を発動する準備をする。

 そしてこの日の為に、リオリオから貰った『白野菜』をアパートの敷地内に植えて増やしていた。

 白野菜は、みるみる内に育って、1万個を超える数にまで増えた!



「ほな、やるぞ?」


「はい!」


「「外壁美化スキル発動!!」」


 ガリガリガリガリバリバリバリバリ!!



 仁美と和美が、両手を前にしてパッ!と広げて突き出すと、スキル発動の合言葉(スペル)を叫んだ!

 ちと、久しく眠りについていた『厨二病精神』が、(くすぐ)られる思いだが・・・

 すると、仁美と和美の身体が青白く光り輝き、その光は手の平へ集まり(ほとばし)り、オンボロアパートを包み込む!



「きゃあ!! なになに?!」


「あっ! 危ないから近寄ったらアカンよ!」


「えっ?!・・・あ、はい(汗)」



 仁美は、マコが外壁が魔法で剥がれる大きな音に驚いて、何事かと近くで見ようと1本踏み込もうとしたので、顔をぶんぶん振ってマコを静止させる。


 仁美と和美の『外壁美化スキル発動』の合言葉(スペル)を発した瞬間に、アパートの外壁がまるでジグソーパズルがバラバラに剥がれるように砕け散ると、仮置き場に向かってビュンビュン飛んでいく!

 そして、全ての外壁が剥がれると、今度は仁美のマジック・バッグから飛び出した白野菜が次々と新しいクリーム色の外壁に姿を変えて、まるでトランプのようにパタパタとアパートの壁に張り付いていく!

 そして最後の1枚の新しい外壁が張り付くと、今度は屋根の瓦が大きな音を立てて、まるで台風でめくれ上がるように、瓦がバラバラと飛んでは仮置き場に落ちていく。

 全ての瓦が剥がれ落ちると、また仁美のマジック・バッグから白野菜が飛び出し次々と新しいピンク色の瓦に姿を変えて、またトランプのようにパタパタと下から順に張り付いていく!



 ガラガラガラガラガラガラガラガラ!!

 バラバラバラバラバラバラビラバラ!!


「きゃあああ~~~!! すごおおおお~~~!!」


「ふぉわおん! ふぉわん! ふぉわん! ふぉわん!!」



 まるでCGアニメーションのように、目の前のアパートが姿を変えていく様子を見ていたマコとリリーは、終始驚きの声を上げていた!


 あれよあれよ言う間に、外壁と屋根は綺麗に貼り代わり、オンボロだったアパートが、見た目はそれはそれは可愛らしい新築のアパートのように姿を変えてしまったのだった!

 仁美と和美は、互いに手を合わせて叩き合って、完成を喜び合った!



「「ぷわあはぁ━━━っ!」」


「はぁ~! はぁ~! はぁ~! 疲れたぁ~~~!」


「ふぅ~! ふぅ~! ふぅ~! でも、やりましたね!」


「おうよ! 和美お疲れっ!」


「仁美さんもねっ!」


 パチーン!


「「いぇ━━━いっ!!」」


「ぇえええええええええ━━━~~~!!!!」


「わわわわわん!! ふぉわお~~~ん! わんわん!!」


「アパートちゃんの、お化粧直し~~~終わり!!」


「よお━━━しっ! よおおお━━━しっ!!」


「所要時間わぁ~~~約5分! 改築費は実費0円っ!!」


「はやいっ!! すごい!! かんぺきぃ!!」


「すごぉ━━━いっ!!」


 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!



 まるで、プロジェクションマッピングを観ていたかのような楽しい時間はあっという間に終わり、辺りは何も無かったかのように静まり返ったていた。

 そしてアパートは、新築のように綺麗な姿へ。

 だが、予想以上の魔力消費だったので、仁美と和美はヘトヘトになるほどに疲れきっていた。

 やり遂げた!と達成感で気分は良かったが、操り糸の切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちるようにへたり込んでしまった。



 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


「凄い!凄い!凄い!凄い!凄い!魔法みたい!!」


「「魔法です!」」


「本当に凄かったあ! ありがとう~~~!」


「いやはは・・・どういたしまして(汗)」


「あ~~~ん! もう立てない~~~・・・(汗)」



 仁美と和美は、もう魔力枯渇寸前だった。

 魔力切れ症候群1歩手前で、全身が正座で痺れた足みたいになって力が入らず動けなくなっていた。

 こうなるともう仁美と和美は、『サリバドール・ダルの絵画』の歪んだ時計みたいなっていた。



「今度は? この後は、何処を直すの?!

 あ、そうだ! ピンポンでも付ける? インターホンがいい?」


「「もう無理ぃ~~~~~~~~~!!」」


「えええ~~~?」


「きゃわわん!!」



 無邪気に笑いながらそう聞くマコに、土下座する仁美と和美だった・・・



 すると、リリーが突然走り出して、リードがマコの手からすっぽ抜けた!

 そしてリリーは、仁美に目掛けて突進!!



「あっ! リリー!!」


「「へえ?」」


「はおぅわん!」


「ええっ?! な、なに?!」


「えええええ~~~!!」


「なにぃ~~~?! 何がどうなってんのお~~~?!」


「仁美さんが、リリーに犯されてるぅ~~~!!」


「えええええええ━━━っ?! いやあああああああ~~~!!」



 なんと! 突然、リリーが仁美に向かって走り出したと思ったら、尺取虫(シャクトリムシ)みたいに、うつ伏せにお尻を突き出す姿勢で動けない仁美の上に乗り掛かり、腰を使っていたのだ!



「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」


 パタパタパタパタパタパタパタパタッ!


「だっ、ダメ! リリーちゃん!

 大川さんは、女の子の犬じゃないからぁ!!」


「いやあああああああ~~~何コイツぅ~~~!!」



 この日からリリーは、仁美から『ファック・リリー』と呼ばれるようになった・・・



新しい入居者の女性も、元は男性だった?

日本での大魔法ご披露いたします!

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