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女装剤  作者: 嬉々ゆう
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第19話 「ノービス冒険者クエストは大変!」

冒険者になるために、ノービス冒険者クエストを受ける晴蘭達。

だが、そのクエストのクリア条件がなかなかの難問だった。

最初は順調だったのだが・・・



文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。

 


 ••✼••回想••✼••



 俺の名は、好湾(すわん) 晴蘭(せいら)。本名、白鳥(しらとり) 晴蘭(せいら)・・・なのだか、実は数ヶ月前までは、俺は紀州超(きしゅうちょう)イケメン男子(だんし)(自称)、その名も、白鳥(しらとり) 大晴(たいせい)だったのだ!


 だが、今は亡き祖母の蔵の管理を任せれ、夏休み中に蔵の中を物色していたら、不思議な魔法薬を見付けて飲んでしまった。

 するとどうだろう? 俺は女の子に変身してしまったってわけだ。そして今の俺の名は、好湾 晴蘭というわけだ。

 そればかりか、親友の相良(さがら) 義斗(よしと)を巻き込んでしまい、奴も女の子に変身し、今では相良(さがら) 海音(みおと)となっている。

 しかも! 女の子とはいえ、タダの女の子じゃないぞ? 実は俺は、魔法使いなのだ!

 そして親友の海音もまた、魔法使いになっちゃったりしたりする!


 ええーと、それから・・・

 それからと言うもの・・・(以下省略)


 と、言うわけで・・・とまあ、色々あったわけだ。

 

 そんな時、俺達魔法使いにとって、天敵とも言える存在があり、もし捕まると魔法薬や魔導具製造マシーンにされてしまう。

 また、別の勢力もあり、そいつらは異世界の魔物(モンスター)を使役して、どうやら魔法使いだけでなく、この世界(地球)を支配しようと企んでる悪の組織みたいなのがあるみたいだ。

 そんな奴らから身を守るためには、「妖精の力」を借りる方法があるとのことで、 妖精が生まれるという「握り拳大の魔晶石」をゲットするために、異世界ムトンランティアへ行く事になってしまったのだ。



 ••✼••冒険者ギルド••✼••



 剣と魔法のファンタスティックな異世界ムトンランティアの冒険者ギルドにて。



 俺達は今、冒険者の街トスターの冒険者ギルドに居る。


 冒険者になるためのテストを受けて、なんとか「ノービス冒険者」になれたのはいいけど、テストで俺がやらかしてしまい、(ギルドの訓練所の壁などを破壊した)その修繕費を良子さんに立て替えてもらったので、100万Tiaもの借金をする羽目になってしまった。

 まだ中学生にして借金かよ。

 なので、その借金を返すために、先ず仕事をしなければならない。

 でも、俺達はまだ「ノービス冒険者」であり、ギルドからの指示される「ノービスクエスト」を1ヶ月以内にクリアしなければ1人前の冒険者として認められず、一般のクエストを受けられないのだそうだ。


 うわ~~~参ったな。

 どないしょ?

 100万Tiaやで?! 日本円で100万円やで?!

 中学一年生にて、借金ひゃくまんえーん?!

 早く借金を返さないと、俺達には自由が無い!

 くっ 殺せ! どないもこないもできん!


 でも、良子さんが言うには、ノービスクエストを遂行しながら、魔法薬や魔道具を商店に売れば良いと言う。

 それで、「商業ギルド」の名が出た。


 ・・・・・・へっ?!


 魔法薬や魔道具を、冒険者ギルド以外に売れ?

 でも、俺達はノービス冒険者と言えども、一応は冒険者だよね?

 冒険者は、冒険者ギルドを通さずの売買は禁止されているのじゃなかったっけ?

 例えば、狩った魔物の素材とかを、冒険者ギルド以外に売ったりするのん。

 気持ちは解る。

 なにせ、商人によっては、欲しい素材を、冒険者ギルドよりも高めで言い値で買い取ってくれるそうだからな。

「商業ギルド」に加盟していたなら、自由に売買は可能らしいが。


 ・・・・・・はっ!!


 まさか、商業ギルドにも加盟するってこと?


 俺の予想は珍しくも当たってしまったのだった。



「「「商業ギルド?!」」」


「そうじゃ! 商業ギルドに加盟すれば、正式な冒険者じゃなくとも売買ができるからな!」


「「「なるほどぉー!!」」」



 面白くなってきたぁー!!


 冒険者は、冒険者ギルドの規則で、個人で売買はできないが、商業ギルドの商人としてなら、堂々と売買ができるってもんだ!


 じゃあなぜ、他の冒険者達は、商業ギルドにも加盟しないのか?


 一般人は、街に入るときも出るときも、「通行税」を払わなければならない。

 でも、冒険者は払わなくても良い。

 だが、商人は違う。

 冒険者に通行税が要らないのは、この街が冒険者によって大きくなったからだそうだ。

 ところが冒険者だとしても、商業ギルドに加盟していれば、「商人」として扱われる。

 商業ギルドに加盟してる冒険者は、街を出入りするときに、「商人」として「一般人」よりも多く「通行税」を払わなければならなくなるのだ。

 例えば、このトスターの街の一般人の通行税は500Tiaだが、商人は倍の1000Tiaだ。

 また、物品を持っていたなら、「持ち込み税」として、背負子(しょいこ)なら100Tia、荷車は、空なら100Tia、積荷があれば500Tia。

 一頭引き荷馬車は、空なら500Tia、積荷があれば1000Tia。

 二頭引き荷馬車は、空なら1000Tia、積荷があれば2000Tiaと徴収される。

 街の外へ出るならまた同様に「持ち出し税」まで徴収される。

 しかも、冒険者が冒険者ギルドで物品の売買をしても税金は取られないが、商人はどこで売買しても、必ず物品税が徴収される。

 それなら普通に、冒険者は冒険者として、冒険者ギルドに素材や物品を売った方が税金がかからず普通に儲かる。

 だから、冒険者達は、商業ギルドには下手に入ったりしないって訳だ。納得だ。


「餅は餅屋で」


 って事だな。ところが・・・



「商業ギルドに登録するのに、小学生低学年レベルの簡単な計算のテストはあるが、登録料は10万Tia要るぞ?」


「「「じゅ━まんてぃあ━━━?!」」」


「そうじゃ! 10万Tia(10万円)じゃ! 冒険者ギルドとは訳が違うぞ? 商売をこれから始めようって言うんじゃ 儲からんと解ってて商人なんぞになるようなバカな奴なんか居らんじゃろ? そう勘ぐられても仕方ない それに、一応は同盟国や他領地の商業ギルドとも連携はしてはいるが、運営しているのは王家や領主じゃ 色々と世話を焼く代わりに諸々の必要な費用は取るぞみたいな、(もっも)もらしい事をほざいてはいるが、商人から金をむしり取ろうって腹の奴らばかりじゃよ 『我地にて商売をしたいなら商業ギルドに入れ!さもなくば我地にての売買は一切を認めない!これを破った者は何人たりとも召し捕るぞ!』っときた まったく金が絡むと、国も領もよくもここまで金を搾り取る方法を考えるもんじゃな もっと他にやる事があるじゃろうと言いたいわ いったい誰が王家や領を支えていると思っとるんじゃ? 民と商人じゃろが! 民や商人の裾にぶら下がってぬくぬくと暮らせるのは誰のお陰じゃ?ってなもんじゃわい ある意味がめつさに感心するが悪意しか感じんわ!『金は取れる奴から取れる時に取れるだけ取れ!』って訳じゃな! かと言って、商業ギルドに加盟している者は、金さえ払えば、領地や街を優先的に出入りさせてくれる まあ、あまり旨みは無いがな」


「「「 !・・・・・・ 」」」



 ううむ、どっかで聞いたようなセリフだな?

 それより良子は、きっと過去に商業ギルド、つまり王侯貴族と何かあったに違いない。なんかご立腹だし。

 と、そう思った。

 恨み節にしか聞こえない。


 まあ、えっか!

 とにかく、借金の100万Tiaなんて今すぐには払えない。

 だったら商人になって、ガッポガッポじゃ!(皮算用)


 てな訳で、商業ギルドに入ろう!

 冒険者ギルドに目を付けられ、商業ギルドにも目を付けられ、王侯貴族にも目を付けられでは、この世界で活動できなくなる。

 それなら、商人として堂々と稼いでやる!

 はいはい! 誰にも文句を言われないように、売上税も払ってやりますよ!


 こうして俺達は、商業ギルドにも入る事になった。

 でも、また良子さんからお金を借りたので、またまた借金が増えてしまったが。


 でも、堂々と売買できるならウハウハだ!

 この世界でも、魔法薬や魔導具はとても高価な物だ。

 特にユニーク・アイテムは、バカか?と思うほどに高い!


 例えば、「素早さの指輪」は、元々「SPD+2~3」ほどの効果があり、だいたい10000~30000Tia程度だが、「素早さの指輪(移動速度+8%)」は、ユニーク・アイテムとして、10万Tiaにもなる。

 更に、「素早さの指輪(移動速度+8%、攻撃速度+10%)」は、ダブル・ユニーク・アイテムとして、100~200万Tiaにもなる。

 なにしろユニークとは言っても、装備アイテムに相応した魔法やスキルが付与されたユニークなんて、なかなか無いものである。

 だいたいは、まったく関係の無い魔法やスキルが付与されていて、値打ちが無い物も多い。

 そんな、物によっては使えないユニークを、「ゴミアイテム」や、「ゴミユニーク」と呼ばれているらしい。

 それでも、腐ってもユニーク。

 値段は高い。ゴミ要らねー!

 なので、アイテムによって、相応しい魔法やスキルが付与されたユニークほど、値段が高くなる傾向にある。


 同じ品でも、付与されているスキルや魔法によっても、数千万Tiaとか、下手をすると億を超えるほどに、アホげに高くなることもある。


 もっと高額なものの例としては、「魔術師の杖(攻撃速度+8%、魔法効果+5%)」などのように、品種や用途に対して用途に合った魔法やスキルが付与されていると、それはもう天井知らずだ。


 なので、ユニーク・アイテムを自分で作れて売る事ができたなら、それはもう笑いが止まらないほどに儲かるってわけだ!(皮算用Ⅱ)




 ••✼••商業ギルド••✼••



 そして、商業ギルドにて。



「はい これで貴女達は商人です!」


「「「・・・・・・はい」」」


「うん? どうしたんじゃ?」


「ねえ、良子さん?」

 千春が良子に聞く。


「なんじゃ?」


「私ら3人とも、商業ギルドに入る必要あったんですか?」


「うん 俺もそれに今気付いた」


「うん・・・」


「確かにな 商人としての有資格者がグループに1人居れば、普通は十分じゃな」


「「「おお━━━い!!」」」



 ぬわんてぇ━━━!!

 なんで3人とも商業ギルドに入れさせたー?!

 金が勿体無いやないのー?!



「まあ、待て 今は、お前達ポンコツ3人娘は、一緒に行動しているから良いが、魔晶石を手にした後は、きっと個人で動くことも出てくるはずじゃ」


「「「え?・・・・」」」



 ううむ・・・確かに、そうかも知れない。

 でも、今すぐ商業ギルドに3人とも登録しなくても良かったのでは?

 てもまあ、良子んの言い分も解る。

 有資格者が居なくて、動けない!

 なんて事にならない様にとの配慮だろう。


 しかし、この商業ギルド加盟の証となるプレートのデザイン趣味悪っ!!

 手の平を上に向け受け取る手首に向かい合うように、コインを持った手首の絵が掘られている。

 あたかも、「金払えー!」とか、「金取るぞー!」みたいな印象しか受けない。

 なんとも嫌らしいデザインだ。



「有資格者1人に任せる事を続けておれば、有資格者が居ないときに何もできなくなるぞ?」


「「「あ!・・・」」」


「それにな? お前達は、冒険者をしにこの世界へ来たわけじゃない 冒険者になるのは魔晶石を手に入れるために必要な前準備じゃ 解るな?」


「「「はい・・・」」」


「それと、私も毎回毎回こうやってお前達に付き添って来れるものでもない」


「「「はい・・・・・・」」」


「だから、3人揃っているときに、修得できるものは何でも修得しておけ!」


「「「はい!」」」



 んんん・・・

 なんだか、上手く丸め込まれた気がするが、まあいいか。

 それに、3人居ればなんとかなるだろう。

 良子さんが居るときに、できる事をやってしまっておこう。



「商業ギルド」

 商人が売買を行う事で発生する流通や物品の把握や管理そして課税などの処理の一切を受け持ち、また銀行のような業務も行い、他国や他領地の商業ギルドとも連携されていて、お金の入出金もどこの商業ギルドでもできるシステムを構築している組織。

 また、ある程度の実績を積めば、準貴族に近い身分として扱われ、必要であれば「家名」も名乗っても良いらしいし、下級貴族のパーティーなどに招待される事もあるとか?

 まあ、それは別に要らないか。

 悪目立ちして金や命を狙われても、つまらないしな。


 さあ! いよいよ冒険者ギルドにて、「ノービス冒険者クエスト」を受けようじゃないか!



 ••✼••冒険者ギルド••✼••



「こちらが、ノービス冒険者クエストになります」


「「「んん・・・・・・?」」」


「ほほぉ これはまた、面倒なものばかりじゃな?」


「「「ははは・・・・・・」」」



 がぁ━━━ん!!

 面倒なものばかりは嫌だー!!

 ギルドのいじわる~~~!


 ①冒険者ギルド周囲の溝掃除及び草刈り。

 これは、貧民街の人達も一緒にするので大した事ではない。


 ②冒険者が持ち込んだモンスターの解体。

 これは、冒険者たる者、モンスター解体もできないで、どうする?みたいな感じだ。

 幸い自分で狩らなくても良くて、冒険者が持ち込んだものを解体するそうだ。当たり前か。

 冒険者を引退したときに、解体屋さんになる人も居るとか。

 牙ネズミ10体、コッコ鳥5体、牙ウサギ3体。

 牙ネズミや牙ウサギは肉や小物武器の素材に、コッコ鳥は鶏肉や卵だ。

 畜産農業の概念が無いこの世界では、とても需要のあるモンスターだ。

 名前だけ聞くと小さいモンスターなように聞こえるが、実はどれも中型犬くらいある。

 どれも初級冒険者が討伐できるモンスターで、特に持ち込みの多い種類だそうだ。


 ③薬草などのハーブ採集とお使い。

 ラベンダー300株以上、ギネ300株以上、ブキツワ300株以上、マンドラゴラ5株以上、ゴンダイ300本以上、ジンニン300本以上、ガジャイモ300個以上、チャボチャ300個以上、スタレ300個以上、ボンゴウ300本以上、アプルル300個以上、ニチゴ300個以上、ナナバ300本以上。



「どれ? 見して!」


「ほれ!」


「「「 ?!・・・ 」」」



 なん~~~~~~じゃこりゃ?!

 これ、ハッキリ言って、ギルドは合格させる気無いやろ?

 俺達は3人グループで活動できるからいい。

 でももし、女の子1人で受けるとなれば、これはめちゃくちゃ難儀ですわ。

 ノービス冒険者の試験によく女の子が落ちると言うが、たとえ試験に受かっても、ノービス冒険者クエストで落ちるやろ!

 俺達は3人だからいいものの、だいたい、13歳の女の子1人で出来るレベルちゃうぞ!

 魔法薬やユニーク作ってるヒマなんか無い!


『実はこれは、完全に全てを揃えなくても、ある程度持ち込む事ができれば良いのだ。晴蘭達はそれを知らない。』



「「「・・・・・・・・・・・・(汗)」」」


「まあ、頑張るこっちゃな!」


「「「ふぇ~~~ん!!」」」


「これも冒険者として、一度請け負ったクエストを最後まで諦めずにやり遂げる様になるために、叡智を養う意味もあるんじゃろうな」


「言いたい事は解るけど・・・・」


「しかし、どてこい量やなコレ(汗)」


「こんなん1ヶ月で、できんのかなぁ?」


「ま、頑張るこっちゃ・・・(苦笑)」


「「「ええええ~~~~~~ん!!」」」



 いきなり、前途多難ですますだすどす。



「参ったな・・・・・・」


「なあ、一層のこと、マジック・バック作れへんか?」


「「おおっ!!」」


「ほほお?」


「そうやな! 丸玉4mmの魔晶石やったら、家の蔵に、いっぱいあるから!」


「そうなん!!」


「よぉし! そうと決まれば!!」


「やる気が出たようじゃな」


「「「はい!!」」」



 海音の奴、頭いい!!

 そうや! マジック・バックを作れば、搬送に困らない!

 それに、冒険者になってからも、絶対に必要不可欠な魔導具だ!


 こうして俺達は、日本へ戻ったときに、家の蔵なら丸玉4ミリの魔晶石を幾つか持って来た。

 そして、ムトンランティアへ来る前の学校の開かずの間で、海音と千春に魔晶石2個ずつ渡した。

 だが、ムトンランティアへ転移したとき、なぜか海音と千春の持つ魔晶石が消えていた。どこ行った?!

 でもオレの持つ20個の魔晶石は残っていた。

 理由は解らないが、なぜか俺だけが、物をムトンランティアへ持ち込む事ができたから、実験的に余分に持っていたんだ。

 ついでに、みんなのアニマル・ストラップも持って来た。

 もしたかしたら、異世界へ転移するときに、物を一緒に持って転移できるのは、俺だけなのかも知れない。

 とにかく実験は成功だ。

 まあ、今はこの理由を考えるのは後にしよう。


 そして、宿屋の大部屋で、マジック・バック作りを行った。

 出来上がったのは、ボディーバックと呼ばれる袈裟懸けタイプのショルダーバックだ。

 容量は、コンテナーの3分の1くらいの収納ができて、しかも、空間拡張(くうかんかくちょう)キューブ収納魔法(しゅうのうまほう)を施してあるので、水だけなら28トンも入る容量だ。



「なんと! また、どてこいもんを作ったもんじゃな!!」


「「「ええ?」」」


「そーですか?」


「これ、俺と晴蘭で開発したキューブタイプの収納魔法なんやけど」


「へぇ~~~」

 解ってない千春。


「キューブとな?! なんと! あの聖魔女が考案したという、あれか?!」


「「「ええっ?!」」」



 はいっ?! なにそれ? 聖魔女???

 聖魔女って確か、魔法の国を創った魔女だったよね?

 なんだ、キューブタイプってば、既出だったんだ?

 なんだか、ちょっとショック。

 だが、俺達は、ほれほど気にしなかった。

 今は、ノービス冒険者クエストを、クリアする事だけを考えよう。


 先ずは、一番やりたくない①の冒険者ギルド周囲の溝掃除及び草刈り、だな。

 こういう事は、前準備が重要だ。

 親父から聞いた話じゃ、「段取り8分、仕事2分」だと言う。

 段取りさえちゃんとしておけば、仕事がやりやすく滞りなく進められると言う。


 なので、溝掃除に必要な道具類をピックアップ!


 全身タイツみたいな? ウェットスーツみたいな防護服が有ればいいな。

 水も汚れも通さない。完璧!

 んで、悪臭&毒耐性のマスク。

 あと、スコップ(ATK+10)に、手袋(STR+10)に、草苅り鎌(ATK+10、攻撃速度+10%)、土砂の運搬用のマジック・バックタイプの土嚢袋、箒、チリトリ、普通の土嚢袋。


 それらを、たったの1日で完成!


 防護服を着てみた。

 それはまるで、ゲームキャラクターの「ヒックミン」の様だった。

 全身タイツの様なウェットスーツの様な、頭には葉っぱが2枚付いていて、お尻にも葉っぱのシッポが付いている。

 付けたのは、もちろんギャグだ。

 俺が水色で、海音がピンクで、千春が紫だ。

 足にはちゃんと長靴が付いている。



「・・・どう?」


「「あはははははははは!!」」


「あっはっはっはっは!!」


「防水、防汚、防臭、防炎、HPMP回復の、尿パット付き!」


「「「ぷぁあはははははははは!!」」」


「・・・そんなに変?」


「尿パットって・・・」

 呆れる良子。


「うん! 変やし、可愛い!」

 晴蘭の頭を撫でる千春。


「うんうん! それで、冒険者やってもええんちゃう?」

 指を差して笑いながら言う海音。


「あほ言うなよ! こんなん着て冒険者やってたら、ただのアッポケナスカボチャじゃ! それより、お前らのも、あるぞ! ピンクが海音で、紫がチャルじゃ!」


「「ええええ~~~!!(苦笑)」」


「はっはっは! まるで、『おそるべっっ!!!○無○憐さん』みたいじゃな」


「「「だれそれ?」」」


「ん゛ん゛、まあ、ええわい まーとにかく、がんばるのじゃ!」


「「「はい!」」」




 ••✼••どぶ(溝)掃除••✼••



「おい! 晴蘭! 遊んでやんと、ちゃんとやれ!」


「ええ~~~ちゃんとやってるしぃ~~~」


「・・・・・・(汗)」



 溝掃除は大変だ。

 定期的に掃除はしているらしいが、それでも酷い有様だった。

 モンスターの解体で出る血泥や油などもヘドロになる原因なのか。

 晴蘭は、防護服を着て、真っ黒なドロドロのヘドロの中を歩くと、防護服に付与した防汚効果の相乗効果により、へどろが綺麗な真水に変わるのが面白くて楽しくて、びちゃびちゃと大きく足踏みをしながら、溝の中を歩き回っている。



 ぴちゃ! たっぷん! ぴちゃん!


「流石、俺らが開発したした、『ウルトラ・スーパー・キレイキレイピカピカ・スーツ』の効果はバツグンやな!」


「『防護服(ぼうごふく)』ね!」

 千春が呆れた表情で晴蘭に言う。


「なんて? ウルトラスーパー?」

 海音がジト目で晴蘭を睨みながら聞く。


「『ウルトラ・スーパー・アトミック・スペシャル・ダイナマイト・キック・キレイキレイ・ピカピカ・パーフェクト・スーツ』な!」


「ぶはっ!!」


「なんか、いっぱい増えてるしw」


「「「あははははは!」」」


「「・・・・・・」」


「いぇ~い!いぇ~い!」



 とまあ、こんな感じで、溝掃除を続けていた。

 元々の溝掃除の作業員も、そんなスチャラカな晴蘭が可笑しくて可愛くて笑って、怒る気すら起こらなかった。



 ••✼••草刈り••✼••



「っはぁ~~~~~~アチャア!!」


 シャパァン! ショパァン!


「うーん! ええ切れ味!」


「セーラちゃん あぶーなーい!」


「おい、チビ助! 真面目にやれ!」


「あちゃちゃ〜! アチョーあ! とぉ!」


 ジュパパパパパーン!


「「・・・・・・(汗)」」



 晴蘭は、自分の草苅り鎌にだけ(ウインドカッター(小))を付与し、物理的ではなく、魔法で草刈りをしていた。

 遊びながら・・・



「斬鉄剣!!」


 ポカッ!

「あだっ!」


「ええ加減にせ!」


「すまみてん」


「ぷぷぷっww」



 こうして、冒険者ギルド周囲の溝掃除及び草刈りは、3日で終わってしまった。

 冒険者ギルド職員に、今後もお願いしたいと言われたが、丁重にお断りした。

 只今、ノービス冒険者クエストちぅです!

 クエスト終わっても、やんないよー!



 ••✼••解体••✼••



「お゛お゛ゔぉゔぇえぇえぇ~~~(涙)」

 吐き気で解体どころじゃない晴蘭。


「なかなか・・・難しいもんやな」

 真面目に頑張る海音。


「マスクのお陰で流石に臭いはせーへんけど、見た目のグロさには耐性が無いからなぁ~セーラちゃん、だいじょぶ?」

 晴蘭を心配する千春。



 モンスターの解体作業。

 防護服着て、シッカリとマスクはしているが、流石にモンスターの内蔵を見てしまうと、気持ち悪くて吐きそうになる晴蘭。

 ホルモンが食べられなくなりそう。

 これが人型モンスターだったら、間違いなく失神する自信がある晴蘭だった。


 あれこれと言うものの、プロの解体屋さんの指示に従い、着々と作業を進める海音と千春。


 モンスター解体作業では、海音と千春は上手にはできないものの、なんとか7日間でやり切った。

 でも、晴蘭は牙ネズミと、コッコ鳥はなんとか解体と言えるかどうか怪しいが、なんとかやり遂げたが、牙ウサギで一気にスピードダウン!

 結局、10日もかかってしまった



「ごめん・・・」


「しゃーないよ!」


「だいじょぶだいじょぶ!」


「ゔぉえうぉおぅえええ~~~(涙)」


「「・・・・・・(汗)」」



 ••✼••色々採集••✼••



「・・・見るだけで嫌になるなぁ」


「・・・・・・やな」


「さっ! そんなんゆーてやんと、頑張る頑張るぅ!」


「「うぃ~~~」」



 ラベンダー300株以上、ギネ300株以上、ブキツワ300株以上、マンドラゴラ5株以上、ゴンダイ300本以上、ジンニン300本以上、ガジャイモ300個以上、ガボチャ300個以上、スタレ300個以上、ゴンボウ300本以上、アプルル300個以上、イヂコ300個以上、ナナバ300本以上。



「でもこの、野菜とか果物とかは、なんとかなるけど・・・」


「マンドラゴラ・・・か?」


「そう」


「あの、メガネの魔法使い少年の、マネーボッターに出てくる、ギャー!って叫ぶ植物のこと?」


「「そうそうソレソレ!」」



 そう。それは、マンドラゴラ。別名マンドレイク。

 まるで擬人化(ぎじんか)された様な姿形をした植物で、根っこの部分は強力な回復薬の素材になるのだが、地面から引っこ抜くと、物凄い悲鳴にも似た叫び声を発し、それをまともに聞いた者を死に至らしめたとか。

 そのため、採集するときには、犬に引っこ抜かせたと言う。


 ええ~~~犬が可哀想。。。


 こんなの、5も取ってこいってか?!

 アホちゃう!! こんなん、13歳の子供にさせるぅ?!

 死ぬかも知れないのに?!

 自分が死ぬのが嫌やから、冒険者を目指す若者にさせるって酷くない?

 若者が生命を落とす悲劇があまりにも多いって、これが減員なんとちゃうの?なんて思った。



「それより、肝心のマンドラゴラの生息地が分からへん」


「そうなん? 海音やったら、知ってると思ってた」


「知らんがな!」


「んじゃ、冒険者ギルドの2階にある資料室に行って調べてみる?」


「「おお━━━!」」



 と、言う訳で、マンドラゴラの生息地などについて調べるために、冒険者ギルドの資料室へ行ってみる事にした。



 ••✼••冒険者ギルドの資料室••✼••



「あっ! これこれ!」


「「うん?」」


「マンドラゴラ! あったあった!」


「「おお━━━!!」」


「マンドラゴラ、別名マンドレイク 人の様な姿形をして、人の様に歩く ただし、マンドラゴラの発する悲鳴をまともに聞くと、人は発狂して死に至る事もある 主に、薬草の材料として使われ、薬草、解毒薬、鎮痛剤、陣痛薬、幻覚剤、その他様々な魔法薬の材料に使われる」


「「うん・・・・」」


「・・・・・・」


「「・・・・・・え? それだけ?」」


「うん これだけ」


「「はあっ?!」」



 なにそれ! それだけ?! 情報少なっ!!

 まあ、そうかな。


 本来、魔法薬のレシピなんて、師匠が弟子になら有り得るけど、他人においそれと誰も教えてくれないもんだ。

 家庭の秘伝のレシピみたいなものだ。


 「魔女の3大ハーブ」と呼ばれるハーブでさえ、ひとつが「ラベンダー」としか伝わっていない。

 また、女装剤のレシピとして、「ラベンダー」と、「マンドラゴラ」と、「甘い実」としか、他は伝えられていないのに、特に謎の多いマンドラゴラを使った魔法薬のレシピなんて、そりゃ冒険者ギルドの資料室程度の所に補完しているわけがないか。



「こら、ちょっと解らんな」


「・・・せやな」


「ほな、どないすんのん?」


「うん 情報が少なすぎて、探す宛すらないわ」


「「うん・・・」」


「んでな、ギルド横広場で、マンドラゴラについて知ってる1居らんか聞いてみるか?」


「あ、そっか!」


「なるほど!」



 ギルド横広場には、テスト脱落者だけではなく、現役冒険者も来る。

 冒険者達が、市民街の事で知りたいことがあれば、よくギルド横広場に来る子供達に聞いたりするらしい。

 市民街のことなら、子供達の方が知っている場合もあるからだ。

 冒険者に何か情報を得ようとすると、チップを要求される事もあるからな。




 ••✼••ギルド横広場••✼••


 

 俺達は、ギルド横広場にて、集まっている人達にマンドラゴラについて聞いてみた。

 先ずは、1番近くにいた少年だ。



「なあ、ちょっとごめん!」


「なんだい?」


「マンドラゴラについて、何か知ってる人居る?」


「マンドラゴラ? あー! あの、殺人野菜のこと?」


「「「殺人野菜!?」」」



 たはは。 まあ、確かにそうだな。

 でも、マンドラゴラについて名前を知っているのは確かだ。

 それくらい有名な野菜?なのだ。



「マンドラゴラが、どうかしたか?」


「うん 生息地とか知ってたら教えて欲しいな~って」


「ほおー生息地ねえ?」

 手を差し出す少年。


「・・・・・・え?」


「え?って、情報が欲しいならチップチップ!」


「「「ガ━━━ン!!」」」



 コイっツぅ~~! 子どものくせに!

 って、俺達も子供だけど。

 仕方ないので、その子供に100Tiaコインを渡した。



「・・・・・・コレっぽっち?」


「「「 !!・・・・・・ 」」」



 あはは・・・やっぱりアカンか。

 しゃーない!

 俺は、500Tiaコインを渡した。



「・・・・・・はい」


「うん 毎度あり!」


「それで? マンドラゴラについて、何か知ってる事があれば教えて?」


「マンドラゴラは、別名マンドレイクって呼ばれてるよ!」


「うん・・・・それで?」


「それで?って、500Tiaやら、この程度しか教えられないな」


「「「んんん~~~!!」」」




 なんじゃそりゃ?!


 そんな事くらい知ってますぅ!!

 それ以外の事知りたいんですぅ!!

 でも、まだこの少年は何かを知ってるかも知れない。

 仕方なく、もう500Tiaコインを渡した。



「はい!」


「ふふん! 毎度あり!」


「それで! 別名の他には?!」


「うん! ソイツの声を聞いたら死ぬかも?」


「「「んの━━━!!」」」


「もうええわ!!」


「コイツ、ハナから喋る気ないっちゅーか、それ以上知らんのやろ!」


「嫌らしい人やな!!」


「あれ~~~? ボク、ちゃんと話したよね?」


「「「 !!・・・・ 」」」



 やっぱり、コイツはただの金目当てのアホじゃった!

 金返せアホんダラ!!


 これはダメだ。

 次は、女の子に聞いてみよう。

 俺達は、女の子に聞いてみた。



「ねえ、ちょっと!」


「ん? なに? わあー可愛い!」


「はあ?」


「「え?」」


「なに、この() 小っちゃくて可愛い~~~♡」


「ぎゃふ!」



 2人目に話しかけた女の子は、いきなり晴蘭を抱きしめてきた。

 コイツもダメかぁ~~~!

 と、思ってたら、気が遠くなった・・・



「ちょーっと! 私のセーラちゃんを離してぇ!」


「お? あっ! おい!!」


『あれ・・・・・なんやこれ・・・・・』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・



 ••✼••宿屋の大部屋••✼••



「くあはっ!!」


「「あっ!」」


「おー! やっと目ぇ覚めたみたいやな?」


「あ━━━・・・・・・俺・・・」



 どうやら俺また、気を失ったようだ。

 なんだろう・・・こう、何度も気を失うのって。



「セーラ、お前はどうやら、『嫌な事』に出くわすと、心の『ブレーカー』が切れるようじゃな?」


「「「ブレーカー?」」」


「うむ 電気回路の一種なんじゃけどな? 許容以上の電気が流れると、安全処置として電流を遮断するものなんじゃけどな それはつまり、あの時のお前には、何かしら耐えられないほどの何か嫌なことが起きた!っちゅーことじゃ」


「「「 !!・・・ 」」」


「い、嫌なこと?」



 嫌なこと・・・耐えられないこと・・・

 確かに面倒なことばっかり続いてて、嫌だなとは思っていた。

 でもそれが、気を失うほどの事柄か?

 いくら嫌だ面倒だと思ったからと言って、気を失うなんて、我ながら情けなくておかしいとさえ考えていた。

 すると・・・



「晴蘭お前、チビの頃はよく、突然よくひっくり返るように、気を失ってたわな?」


「へ?」


「ああー小学校でもよく、先生によく保健室に運ばれてたなあ?」


「はあ?」



 何をゆってるんだコイツら?

 そんな事なんぞ一度もなかったぞ?

 いったい、何の事をゆってるんだ?

 それとも、自分で気付かないうちに、そんな事があったのか?

 だから、記憶にも無いのか?


 まったくもって、不可解だった。

 時々コイツらは、こういう事を言う。

 晴蘭の記憶では、海音や千春の言うような事は、一度も無かった。


 母親とも、時々過去の思い出に少し食い違う事があった。

 昔の話をした時に言われたのだが、俺は、保育園に通っていた頃に、車に当て逃げされたなんて記憶は無い。

 その時に母親は、俺が大怪我をしたもんだから、「女装剤」を使おうかと迷ったらしい。

 なぜなら女装剤は、どんな怪我も、どんな病気も、一瞬で治してしまうからだ。

 でも結局は使わなかったと・・・

 母親が自分で精製した上級回復魔法薬(通称ハイポーション)を持っていたからだ。


 いやいやいや、知らない知らない!

 俺には、そんな事実など無かった。

 それとも海音や千春の言う様に、俺の気付かないうちに、知らないうちに、俺は気を失って「覚えていないだけ」のだろうか?


 でも、あれこれ考えて手も仕方ない。

 今は、マンドラゴラを入手する方法を調べなきゃ!



「そんな事は今はどうでもええよ」


「うん? ああ、うん そうやな」


「うん」


「とにかく、マンドラゴラの自生場所とか、調べやんと!」


「「お━━━!」」


「ふふふ」



 ちょっと不可解な事はあったが、大丈夫!何も問題ない!


 話によると、俺は2時間も意識を失っていたとか。

 あんなアッポケナスに無駄に金取られてアホみたい!

 あーくっそおー! 時間が勿体無い!

 

 マンドラゴラって、いったい何処に自生しているんだ?

 資料室にも確かな情報は無い。

 他の子供達にも情報は無い。

 そしたらやっぱり、現役冒険者?

 マンドラゴラって貴重なアイテム?

 そんなん教えてくれるだろうか?


 なんて、悩んでいても仕方がない。

 とにかく、現役冒険者に聞いてみよう。



「なあ、教えてくれるかどうかは分からへんけど、現役の冒険者に聞いてみーへん?」


「うーん そうやな!」


「うん! 私もその方がええかも知れへんって思ってた!」


「そーなんか?」


「そらーね! あんまり街の外に出ーへん子供なんかよりも、大人は大人でも、冒険者みたいに頻繁に街の外に出る人の方が、マンドラゴラを見付ける可能性が多いはずやろ?」


「「確かに!」」


「よし! ほな、もっかい冒険者ギルドに行こう!」


「「おお━━━っ!」」


「うんうん 頑張れ」



 よし!

 モチベーション上がってきたあ!

 これこそ、餅は餅屋にだ!良子さんの受け売りだが。


 でも、闇雲に冒険者だからと言って、誰彼なしに聞くのも危険かも?

 ここはやっぱり、なんでも教えてくれそうな、優しそうな女性冒険者に聞いてみよう。



 ••✼••冒険者ギルド••✼••



「なあなあ、女性冒険者に聞いてみーへん?」


「ああーなるほどな!」


「うん! ええかも? 子供相手でも、騙す大人って居るかも知れへんから、女の人の方がええかもね!」


「ぬふふ やろー?」


「・・・セーラちゃん?」


「ん? なに?」


「・・・別に?」


「うん?」



 なんやろ千晴の奴?

 俺、なんか気に触る様なことしたかな?

 まったく、急に機嫌がコロコロ変わるんだよな女の子って。

 女の子って、よく分からん!(お前も女の子でしょ)


 とにかく、女性冒険者のうち、なるべく支援職や回復職の人が良いと考えた。

 なぜなら、前衛などの攻撃的な職の人だと、気が荒いと思ったからだ。(晴蘭評価目線)

 その点、回復職や支援職の方が、人を支援する立場なので、優しい人ってイメージだったからだ。(晴蘭評価目線Ⅱ)


 俺は、特に気優しい性格だと思われる回復職の女性を探した。

 ・・・居たっ!!

 すごい綺麗なお姉さん!

 見た目年齢は20代後半ってところか、

 聖職女性がよく着る、白と水色のスカプラリオの様なローブに、同色のウィンプルの様な帽子を被り、右手には大きな水色の魔石が組み込まれた魔導師の杖を持ち、少し大きめな二重のタレ目で、眉も少しタレ気味で、唇の厚めの優しそうなルックスは、晴蘭にとって、誰に対してでも慈悲の心を持つ心優しい女性に映った。(晴蘭評価目線Ⅲ)



「ねえねえ、お姉さん!」


「え? 私?」


「うん! あのね? ちょっと教えてほしーことがあるんやけど」


「ふんふん 何かな?」


「「・・・・・・」」



 晴蘭は、お腹の前で手を組み、腰をクネクネさせて女性冒険者に声をかけた。

 そんな様子の晴蘭を見て呆れる、海音と千春。



「マンドラゴラって知ってるぅ?」


「マンドラゴラ? マンドレイクのことかしら?」


「うん! そう! ちょっと教えてほしーの!」


「うふふ もちろん知ってるわよ? それで、マンドレイクの何が知りたいの?」


「あのね? マンドラゴラの、あーマンドレイクのね? いっぱい生えてる場所を探してるの! お姉さん知ってるぅ?」


「「・・・・・・・・・・・・」」



 晴蘭は、スカートをつまみながら、左右に身体をクルクル回しがら女性冒険者を見上げて聞く。

 海音と千春は、そんな晴蘭をジト目でくしゃみを我慢したような表情で見ていた。



「うん! そうねえ・・・・・・」


「・・・・・・えっ?」


「「・・・・・・!!」」



 女性冒険者は、晴蘭に手の平を上に向けて差し出す。

 もう、それだけで女性冒険者が、晴蘭に何を求めているのかが理解できる。



「小っちゃな可愛いお嬢ちゃん? 人に情報を求めるときには、それ相応の対価が必要なのよ?」


「え゛っ・・・た、対価って?」


「お金よ! おーかーねっ!」


「んなんっ?!・・・・・・(汗)」


「「はぁ━━━・・・・・・」」



 結局、お金か━━━いっっっ!!


 晴蘭は、白目になった。

 口をパックリ開けて、両腕をダラりと下げて、放心していた・・・・・・


 そこへ、海音が晴蘭の代わりに女性冒険者に幾ら必要なのかを訪ねた。



「こら! シッカリせーよ!」


「ふぇ?! あ、お、おお・・・」


「えっと、幾らでしょうか?」


「そうねぇ・・・マンドレイクは、とても貴重で希少なもの 対価として考えるなら~~~10万Tiaくらいかしら?」


「「「じゅーまんてぃあ━━━?!」」」



 がぁあぁあぁあぁ~~~ん!!


 んがぁ━━━!!

 まったく、どいつもこいつも金、金、金かえ?

 10万Tiaって言ったら、宿屋に20日間泊まれるし、100回飯食えるぞ!!

 まったく、この世界は、どうなってんだ?



 ※日本人が特別と言っていいほど、情報提供や労働について無報酬で請け負う事が多い人種なだけである。


「情報を得るには対価が必要である」

 本来これが当たり前で普通なのだ。



 結局、10万Tiaを女性冒険者に支払う事にした。



 チャリーン!


「うん! 確かに」


「あ、あの、ちゃんと教えてく、くれますか?」

 前回のことがあるので、ビビる晴蘭。


「うん! ちゃんと対価の分は教えてあげるわよ?」


「た、対価の分?」

 ドキドキドキドキ・・・


「マンドレイクはね、静かな場所、あまり日当たりの良くない場所、あと~身を隠す習性があるから~雑草などの多い場所とか探すといいかも! あと、水分の多いコケのよく生えてる場所なんかでも、よく見かけるわね!」


「「「わあっ!!」」」

 パアッ!



 晴蘭達は、一気に表情が明るくなった!

 綺麗なお姉さんの後ろに後光が見えた!気がした。

 初めて、マトモで正確だと思われる情報を手に入れたからだ。



「ありがとうー! 綺麗なお姉さん!」


「あら? 綺麗なお姉さんだなんて、うふふ♡ 嬉しい事言ってくれるわね?」


「えへへ」


「「・・・・・・」」


「じゃあ、特別にもう1つ、良い事を教えてあげる!」


「え? はい!」


「「?!」」


「マンドレイクってのはねぇ、自生地に水分や栄養が足りなくなったら、自分で歩いて良い場所を探して移動するものなのよ!」


「「「ええっ?!」」」


「そ、そーなんですか?!」


「うん! どう? 為になった?」


「はあい! とぉっても!!」


「そう? じゃあ~あ、もう10万Tia頂こうかしら?」


「えっ?!・・・・・・」


「「んなんっ?!」」



 ガガガガが~~~ン!!!!


 女性冒険者は、そう言って、また手を差し出した。

 なんで?! さっき、『特別にもう1つ』って言ったよね?! ねぇ?!

 それでも、お金取るって、「特別」ってなに?!



「じゅ・・・じゅう・・・じゅまん・・・」


「あら? 私はお金を取らないとは言ってないわ さっきも言ったでしょ? 情報を得るには対価のが必要なのよ!」


「!!・・・・・・」


「「・・・・・・・・・・・・」」



 はい。確かに「お金を取らない」とは言ってないね。

  やーらーれーた~~~~~~

 綺麗な顔して、やっぱり女って怖い!(だらか晴蘭も女だって)


 晴蘭は、また白目になって、口をあんぐり開けて、両腕をダラりと下げて、糸の切れたマリオネットの様に首を傾げて、ダー(ヨダレ)をたらして、放心した。

 仕方なく、海音が女性冒険者に、10万Tiaを支払った。



「これで1つ勉強になったでしよ? 情報は金なりよ! じゃーねえーお嬢ちゃん達!」


「「ありがとうございました」」


「・・・・・・・・・・・・」



 はい! とてもベンキョーになりました!

 人を見かけで判断してはいけないと。

 綺麗な花には毒があると!(とげ)か?

 情報を得るには、それ相応の対価が必要だと。


 まだ、放心状態の晴蘭。

 何度も声をかけても、晴蘭は正気が戻らないものだから、海音と千春は晴蘭を抱えて、宿屋の部屋に戻ったのだった。


 一部始終を見ていた良子は、首を振りながら、ふっと苦笑するのだった。




世の中そんなに甘くない・・・

ここは日本へではなく、しかも異世界。

日本の常識は通用しないのだった。


もしかして、1話が長いかな?

どうしても長くなっちゃう(汗)

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