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女装剤  作者: 嬉々ゆう


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第20話 「冒険者始めました」

晴蘭達は、いよいよ最後のクエスト素材のマンドラゴラを集めに森へと向かう。

だが、なかなか上手くいかない、見付からない。

そしてとうとう、お金が無くなってしまう。

晴蘭達は、無事にノービス冒険者クエストを完遂できるのか?


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。

 



 ••✼••宿屋の部屋••✼••



 晴蘭達は、宿屋の部屋に居た。



「ふぅ・・・一進一退やね」


「まったく・・・」


「「はぁ━━━・・・・・・」」


「しくしくしくしくしくしく~~~(涙)」



 晴蘭はベッドで不貞寝(ふてね)だった。


 海音と千春は、そんな様子の晴蘭を見て、深く溜息をつくのだった。



「今、アッチ(日本)では何時ごろかなあ?」


「ん? えーっと、たぶん土曜日の深夜0時過ぎかな?」


「ほな、しばらくはコッチ(ムトンランティア)で居られるね」


「ま、そーやな」



 今回のログインは、金曜の夜からだった。

 なので、コッチでの活動は、最長連続でも2週間は大丈夫だ。



「ってことは、最長で2週間はだいじょぶやね?」


「そーやな」


「丁度、クエストの期限も2週間やから、コッチでぶっ通しでする?」


「ああ、オレはかまへんよ でも、コイツはどうかな?」


「コッチでも、アッチでも、どこに居ても一緒ちゃうかなぁ?」


「まあ、そーやろなあ?」



 海音と千春が、そんな事を話していると、晴蘭がベッドからのそのそと起き上がる。



「ん?」


「あ・・・」


「2人とも・・・・すまん」


「はは・・・しゃーないよ」


「うん 上手くいかん事もあるって! セーラちゃん気にしすぎ!」


「うん・・・なんか俺、ホンマに考えが甘かったわ」


「「うん・・・」」


「なんか、なんちゅーか、このムトンランティアも、ゲーム感覚やったってゆーか」


「「うん・・・」」


「でもここは現実で、他の奴らはNPCじゃなくて、ちゃんと意思がある現実の人であって・・・」


「うん・・・」


「え? ねえ、ミントちゃん えぬぴーしーって?」


「ゲーム用語で、ノン・プレイヤー・キャラクターつって、ゲームん中の人物の総称の事でな、コンピュータが動かしてるキャラクターで、意思がなくて決まった動きしかせーへん奴らの事やな」


「うん? よく分からへんけど テニスゲームの相手選手みたいなのん?」


「ま、そんなとこ」


「ふぅ~~~ん・・・」


「・・・だから、俺が話しかけると、相手は俺の質問に必ず答える訳じゃない 俺を何も知らない子供なのを良いことに、騙して金を取ろうと考えて答えてくる ちゃんと生きてる人間やったっちゅーのがショックやったってゆーか・・・」


「「うん・・・」」


「やっぱし、ここは現実世界なんやなぁ」


「「・・・うん」」


「俺、この世界の人らに対して、めっちゃ失礼な、イヤな奴やったんやな」


「「・・・・・・」」



 ムトンランティア。

 剣と魔法のファンタスティックな異世界。

 地球によく似た環境で、文化レベルは地球の中世時代程度。

 この世界には、この世界に適応した人々が住んでいる。

 ちゃんとした、現実世界であり、そこへ住む人達も現実の人達である。


 晴蘭、海音、千春、良子こそが異物であり、異世界人であり、この世界にとって得意な存在なのである。



「よぉしっ! そうと解れば、そうとして対応すればええんや!」


「「ニッ!」」


「海音、あと何日残ってる?」


「え? あーえーっと、じゅう・・・12日か」


「12日か・・・まあ、3人でやれば、なんとかなるやろ」


「おぅ! そーやな!」


「セーラちゃん、やる気になった!」


「おぅよ! 海音! チャル! 一気に、やってまうぞ!!」


「「おお━━━!!」」



 俺達は、ノービス冒険者クエストを、続行した!



 ••✼••トスター街の外••✼••



「「「おおお~~~!」」」


「そー言えば、初めて街の外に出たな?」


「そーやな」

 少し目が泳ぐ海音。


「うわぁ~すんごぉーい広ぉーい!」


「「お━━━っ」」



 トスターの街の外壁を抜けたら、そこは大自然の大海原だった。

 トスターの街は平地に作られた街で、街から遠目で見ると、そこには、盆栽を地球規模の巨大アートにしたような景色が広がっていた。

 盆栽の木となるのが、くっそ巨大で霞んで見えるほどの山のような巨木。あれは世界樹だろうか?

 山や谷を縫うように川が流れ、そして森林が盆栽のコケのように見えた。


 そんな地球規模の巨大盆栽に、白い蛇がうねり横たわるように、わだちのついた道が遠くまで続いていた。



「さて、街の外に出たはええけど、どこを探す?」


「ははっ まあ、森ん中かな?」


「ですよねぇ~」


「ほな、一番近い森から行ってみよか」


「「おお━━━!」」



 こうして俺達は、マンドラゴラを探しに、トスターの街から一番近い森へと向かった。

  そこは、トスターの森と呼ばれていて、駆け出しの冒険者達もよく行く森のひとつだ。

 トスターの街から1kmほど、俺達の足でも20分ほどで森の入口へ到着した。


 冒険者に登録する事ばかりを考えていて、「妖精の卵」となる「魔晶石」を見付けるためにムトンランティアへ来た事をすっかり忘れていたが、トスターの森を抜けた奥に、良子さんが言っていた「廃坑」がある。

 とてもとても、遠くだ。

 かつて「魔晶石」が採掘されていた鉱山、トスター鉱山だ。あまりに遠くで霞んで見える。

 直線距離でも、十数kmは離れている。



「この森の向こうに、魔晶石のある鉱山か」


「うん でも、既に採掘し尽くしたって、聞いたけどな」


「でも、良子かんが言うには、まだ奥へ掘れば採掘できるって」


「おう それに、鉱山の麓に、ドワーフ達の鍛冶屋の村があるってよ!」


「おおっ! ドワーフ! 異世界名物! でも、採掘量がちょっとやのに、まだそのドワーフの村ってあるんかな?」


「うぅむ ちょっとだけやったら、見付かるはずって事よな それにドワーフって、鍛冶屋やろ? 魔晶石だけじゃなくって、鉄鉱石も採るやろ! だからまだ、その村あるんとちゃう?」


「なんなそれ? 確実じゃないんや?」


「ちょっとってゆっても、あの山全体から比べて「ちょっと」やで? その比率を考えたら、1つの国が作れるほどは有るやろ」


「なるほど! ぜんっぜんピン!とこんわ」


「あはは・・・」



 海音と千春が話し合うのを、晴蘭は黙って聞いていた。

 まあ、ドワーフや人族みたいに、ただ力任せに掘り進めるだけやったら見付けるのも難しいやろうけど、俺達の様なエリート魔法使いが発動させる検索魔法やったら、魔晶石の魔力にすぐに反応するやろう。


 実際、今も俺の肌には、遠く霞む距離にある鉱山に眠る魔晶石の魔力をピリピリと感じるんだから。

 過去に、このトスターに街を築いたというドワーフ達が採掘した魔晶石群は、今は採掘し尽くされたとされ、魔晶石の採掘作業はまったく行われておらず、今ではトスターは冒険者の街として栄えているが、過去に採掘したのは、ほんの一部であり、氷山の一角。

 本当は、昔採掘した総量の数千倍もの魔晶石がまだ眠っている。

 それほどの量でなければ、この距離にて、これほどに魔晶石の魔力を感じるはずがないのだ。



「どないしたん 遠くなんか見て」


「うん・・・今からあの山に行けたらな~~~ってね」


「山? ああ、鉱山か」


「トスター鉱山? ホンマに魔晶石なんか残ってるんかな?」


「残ってるよ たん~~~まりと」


「「えっ?!」」


「セーラちゃん! それ、ホンマ?」


「たんまり?」


「うん たぶん、世界最大級ってゆっても過言じゃないほどにね」


「「ええー?!」」


「マジか!!」


「そーなん?!」


「うん 今ここに立ってるだけでも、あの山に眠る魔晶石の魔力波を感じるもん」


「「マジか?!」」


「うん すんごいよ? モンスターの索敵に邪魔になるくらい!」


「?!・・・それはまた」


「・・・・難儀やね」


「まったく」



 そうなのだ。

 魔法使いが行うモンスターの索敵は、魔力を感知するのが基本だ。

 なので、晴蘭の感知する魔晶石群は、スフィンクスの数倍ほどだ。

 そんなクソデカい魔晶石の塊の魔力発信源から、これほどの魔力波を垂れ流ししているのだから、微少なモンスターの魔力だと、かき消されてしまって感知できない。

 だから、マンドラゴラの魔力も感知できないのだ。



「なぁあんてよぉ!! 索敵ができへんてか?!」


「ええええ━━━?!」


「そうなんじゃよぉ~参ったわホンマに」


「ほいじゃあ、モンスターが近づいて来ても分からへん!」


「索敵? それって、セーラちゃんしかできへんの?」


「まあ、そうかな?」


「ほいだら、私らも覚えた方が良かったとか?」


「いやいや、この魔力波の中や 誰が覚えてたとしても、結果は同じやから」


「あ、そっか」


「うん でも、幸い強いモンスターは、この魔力波を避けて離れるはずやから、この森には中級クラス以上のモンスターは居らへん」


「そーなんか?」


「そーなん?」


「うん 強いモンスターほど、自分より強い魔力を放つモンスターと対峙するのを避けるからな まあ、単独でポツポツとは居るみたいなけどな!」


「「へぇ~~~」」



 そうなのだ。

 低級モンスターは、ただ本能的に他の動物を食料として捕食するだけだが、レベルの高いモンスターは意志を持ち、高い大きい魔力は強いモンスターの存在だと認識しており、余程の事がなければ自ら近付いたりしないのだ。

 これは晴蘭自身が索敵魔法を完全にマスターするために繰り返し使った時に学んだ結果だった。

 特に大きな反応同士は、どうやら近付き過ぎるとお互いに警戒し合って離れるようだ。

 なので、モンスター達も鉱山の奥底には魔力黙りがあるのを知っていて、魔晶石から発する魔力を強力なモンスターだと認識(勘違い)して近付かないのだ。



「へ~そーゆーことなんや?」


「そう! だからもし、鉱山にはまだまだ魔晶石が眠ってる事を、このトスターの領主に教えたら、きっとたんまり報酬もらえるかもね?」


「う~ん でも、俺らはそんな暇ないな」


「そーやね」


「うん 俺らはとにかく、マンドラゴラを獲るのを優先せんとな!」



 トスターの街周辺の森に、中級クラス以上のモンスターが居ないのは、鉱山から発せられる膨大な魔力のお陰だ。

 そのため、トスター周辺の森は、駆け出しや初心者冒険者にとって、比較的入りやすい森だと言える。


 でも、稀に頭の良いモンスターがやって来る事もある。

 「ネームド」と総称されるモンスター達で、長年生きたモンスターであり、冒険者達からも恐れられる存在で、種族名ではなく、強さのあまりに付けられた「固有名詞」で呼ばれる「名前付き」である。

 有名なものでは、「黒のチョッパー」などだ。

 成体で体長3メールもある大型モンスターの「ビッグ・フォレスト・オーク」は、返り討ちにした冒険者のチョッパーソードや、バトル・アックスなどの大きな武器を好み装備する。

 その中でも黒のチョッパーは、他のオークよりも身体がデカく強力で、レベルも「オパール級」に匹敵すると言われている。

 トスター付近では幸いにも見たと言う報告はない。

 奴らは長年生きてきた経験から、鉱山からの膨大な魔力を感知していても、魔力源がまったく動かないと知っているので、警戒しながらも近付いて来る。


 でも、今の晴蘭達なら、黒のチョッパーに出くわしても一撃で倒せるが、他の駆け出し冒険者達には為す術は無いだろう。

 なにせ晴蘭達は、レベルは初級者冒険者並だが、実力は「アクアマリン級」である。

 それを晴蘭達は知らないし、無自覚である。

 なぜならこの世界の殆どの魔法使い達は、魔石に頼る魔法使いであり、保持魔力も10~20程度である。

 しかも、晴蘭達の様に、四大元素の概念、つまり地球の化学や物理の様な概念が無いので、 上手く力を発揮できないからだった。


 例えば、「熱は熱い」というだけで、「温度、膨張、発光」などという概念が無い。

「風は流れる」というだけで、「気圧や真空や熱による膨張」などという概念が無い。

「水は飲み物、流れる」というだけで、「水圧、蒸発、水蒸気」などという概念が無い。

「地や土は、大地、育む」というだけで、「重力や惑星」などという概念が無い。

 また、それらを掛け合わせることによって起きる、物理的な現象の基礎知識的な概念がほとんど無い。


 この様に、この世界の人々には、地球でなら当たり前に誰もが普通に習い知る、既成概念、既有概念が無いのだ。


 従って、晴蘭達の様に学校で習う程度の知識があるだけでも、この世界の魔法使いとの実力の差は多大であるのだ。


 晴蘭達は、トスターの森へと向かった。



 ••✼••トスターの森••✼••



 トスターの森は原生の森である。

 森の外側には、比較的細い木があるのだが、森の奥へと行くと、地球のジャングルなどでは比較にならない程のドデカい大木ばかりだ。

 大人が50人手を繋いで囲んでも届かない程の太さがある巨木が幾つもある。

 それらの巨木は、森の中を歩くのに、都合の良いハンドマークになっていた。


 そして晴蘭達の首には、「ヘッドホン」のような魔導具が掛けられていた。

 マンドラゴラの声を防ぐためだ。

 装着すると、まったく音が聞こえなくなる魔導具だ。



「森に入るんは、あのクソでかい『千年木(せんねんぼく)』までにしとこか!」

 海音が指を差して言う。


「あの、ポコ!って頭出してる木か?」


「そうそう!」


「なんで、千年木なん?」


「ギルドの受付嬢さんが言ってた なんでも千年は生きてる木やらかやって!」


「「へぇ~~~」」



「千年木」と呼ばれる巨木は、もう数千年もそこにある巨木で、森の中を散策するのに丁度良い目印になる。

 また、トスターの街の住民が切り開いた道もあるので、まず迷わない。

 少し高い丘に登るだけでも見えるので、トスターでは「千年木」や、「森の守護神」と呼ばれ親しまれている。


 晴蘭達は、トスターの森の中へと入った。

 すると、いきなり牙ネズミがエンカウント!



「ちゅきゃ!きゃ!」


「あ! でた!」


「いやあ! ネズミネズミ!」


「ほな、俺が・・・ウインドカッター!」


 ズバアッ!!


「ちゃわっ!!」


「「「あっ!・・・」」」



 海音は、牙ネズミに向かってウインドカッターを放ったのだが、牙ネズミを外して、太さ1.5メートルほどの木の根元を切り裂いてしまった。

 そして・・・・・・



 ギリギリギリギリ・・・ガリガリガリ


「・・・・・・やば!」


「「にげろ━━━!!」」


 バキバキバキバキ! ドス━━━ン!


「「「!!・・・・・・」」」



 海音が切り裂いた木は、根元からキレイに切れて、ぶっ倒れてしまった!



「ははは・・・すげぇ(汗)」


「すげぇちゃうわアホぉ!!(焦)」


「ひ、し、し、死ぬかと思った! ボス級モンスターよりも怖い(半泣)」


「すまんすまん! まさかここまでとは」


「「はは・・・・・・(汗)」」



 晴蘭達は、改めて自分達の実力を知るのだった。



「弓矢とか武器持ってた方が良かったんかなあ?」

 晴蘭が言う。


「うぅ~~~ん」

 腕を組み考える海音。


「でも私らって魔法使いじょなあ?」

 自分を指差していう千春。


「うん 魔法使いに弓矢は変か?」

 弓を射る姿勢で言う晴蘭。


「変やけど、別に構わへんのとちゃう?」

 Why?の姿勢で言う海音。


「うん でも、牙ネズミに、ウィンドカッターはやめとこ?」

 晴蘭が海音に言う。


「そやね! それに私らはまだ、正式な冒険者とちゃうから、モンスターを討伐したらあかんのやろ?」

 手を腰に当てて言う千春。


「うぅん! 討伐したらアカンのじゃなくて、討伐しようとしたらアカンのじょ」

 屁理屈を言う海音。


「なにそれ、どーゆーこと?」

 晴蘭が海音に聞く。


「ノービス冒険者や駆け出し冒険者は、モンスターの討伐はアカンけど、モンスターに出くわして返り討ちにした場合はだいじょぶ!」

 更に屁理屈を言う海音。


「「ええ~~~」」


「とにかく、モンスターが出くわした場合はしゃーないから倒そう! でも、なるべく自分から探して倒すのは、やめとこう?」

 指を立てて言う晴蘭。


「「うん・・・」」


「それとついでに、力を抑えて魔法を発動する練習もしとこ!」

 ガッツポーズで言う晴蘭。


「「はーい!」」



 なんだか、ノービス冒険者の言うセリフではなかった。


 森に入ってから3時間。

 なぜか、牙ネズミや、牙ウサギや、コッコ鳥などが、わんさか出てくる出てくる!

 晴蘭達は、仕方なく倒すのだが、力を抑えて魔法を発動する練習もしていたので、また新しい魔法を編み出していた。



「エア・バレット!」


 スパァン!

 海音が放つ。


「茨のムチ!」


 スパァーン! シパーン!

 千春が放つ。


「かんしゃく玉!」


 パァ━━━ン!

 晴蘭が放つ。


「「「完璧っっっ!!」」」



 海音は、指先に圧縮した空気の塊を生成して拳銃の様に放つ、「エア・バレット」を開発していた。

 細い木なら貫通し、岩には穴が空いた。


 千春は、拾った木の枝で魔力のムチをイメージして、モンスターを引っぱたいていた。

 それが「茨のムチ」となった。

 小さな岩なら真っ二つに割り、細い木なら切り倒すほどの意力だった。


 晴蘭は、魔力で「かんしゃく玉」をイメージし放ち、対象に当てるか、対象の間近で破裂させていた。

 コッコ取りは羽が吹き飛び、牙ネズミや牙ウサギは、吹っ飛んでいた。


 晴蘭達の開発した、力を抑えたはずの魔法は、とんでもない威力だった。

 それなのに晴蘭達は、「一番弱い魔法」という位置付けだった。

 この世界の魔法使いにとって魔法の開発とは、何十年も研究して、やっとできるもの。

 たった数時間で魔法を開発していまう晴蘭達は、まさに規格外だった。



「おい ちょっとモンスターを倒しすぎちゃうか?」

 海音が2人に聞く。


「そんなんゆーても、しゃーないやん! アッチから襲ってくるんやもん!」

 千春が口をとんがらせて言う。


「あはは まあ、そうよなあ でもこれ、まさに死屍累々(ししるいるい)やな・・・」

 後ろを振り返って言う晴蘭。


「「・・・・・・(汗)」」

 後ろを振り返る海音と千春。



 後ろを振り返る晴蘭達が見る光景は、森の中に横たわる小型のモンスター達の無惨な姿だった・・・



「でもこれでもまだまだ、抑えきれてないな?」

 腕を組み顎に手を当てて言う海音。


「あははは! 確かに! 牙ネズミなんか、身体半分吹っ飛んでたで! 千春なんか、牙ウサギを真っ二つにしてたもんなあ?」


「だって、襲ってくるんやもん しゃーないやん?」

 また口をとんがらせて言う千春。


「うん そーじょなあ ま、とにかく、もっと弱い魔法を作りながら、マンドラゴラ探そ!」

 海音が言う。


「「うん!」」



 結局、6時間経っても、マンドラゴラは見付からなかった。

 でも攻撃魔法をあれこれ試しながらだったので、諦めて森を出る頃には、また新しい魔法ができていた。


 海音は、「串刺し」。

 土魔法で作った割り箸ほどの串を、高速で飛ばす魔法だった。

 魔力1で最大連続50本まで飛ばせた。まさに「串刺し」だ。


 千春は、「スターダスト」。

 水魔法で生成した無数の砂粒ほどの小さな氷の粒を、対象に向けて放つ。

 広範囲の数体の牙ネズミや牙ウサギは毛皮がはぎ取られ、コッコ鳥は羽がむし取られた。


 晴蘭は、「地水火風ちすいかふうショットガン」。

 専用のスクリーンで照準を表示させ合わせて、地水火風様々な属性魔法の弾丸で遠くの標的を確実に仕留める。



「なんか、みんな開発したのん逆に威力増してない?」

 晴蘭が海音と千春に聞く。


「お前に言われたないわ! なんなんじゃあの威力!? 空飛んでた遠くのワイバーンを一撃で撃墜してたぞぉ!!」

 海音が呆れ気味に晴蘭に言う。


「ミントちゃんこそ! 何アレ? 串刺し? こわっ!! あんなん、ビッグ・フレスト・ベアでも1回で倒せるよ!」

 千春も呆れ気味に海音に言う。


「チャルには言われたくない! チャルこそ、スターダストってなにあれ!? あんなん逃げられへんやん! 必殺技やん!」

 海音がWhy?みたいな仕草で千春に言う。


「「「・・・・・・・」」」




 結局3人とも、威力を抑えて新しく開発したはずの魔法は、どれも「必殺技」レベルだった。




 ••✼••宿屋の部屋••✼••



 宿屋に帰って来て、3人で話し合った。



「今日は、マンドラゴラ1個も見付からんかったね」


「うん まあ、こんな時もあるよ~」


「う~む でも俺ら、なんか忘れてない?」


「「えっ?」」

 海音に言われて考える晴蘭と千春。



 マンドラゴラは、マンドレイクとも呼ばれ、静かな場所を好み、水分と栄養分が少なくなったら、自分で移動する・・・



「「あっ!・・・・・・」」


「今日みたいに、モンスターがぽんぽん出てくる場所には、マンドラゴラって居てへんのとちゃう?」


「「確かに・・・」」


「明日は、もっと静かな場所を探してみよ?」


「「うん・・・」」



 俺達は、先ずは、マンドラゴラが好むという自生地を探す事を忘れていた。

 この日はマンドラゴラの捜索を諦めて、宿屋に戻った。




 ••✼••次の日の朝••✼••



「おはよー! 朝やでー!」


「ううん・・・ん゛ん゛~~~」

 寝ながら伸びをする晴蘭。


「んんんん~~~」

 うつ伏せで、尺取虫(ひゃくとりむし)みたいな格好の海音。


「ねえ、今日はもっかい冒険者ギルドで、話聞いてみーへん?」


「「ふぇ?」」


「だって私ら、マンドラゴラの好む場所は聞いたけど、肝心なその場所が()()()()()()までは聞いてへんかったやろ?」


「「あ!・・・・・・」」


「ね?」



 はい。確かにそうでした。

 マンドラゴラの好む場所は聞いた。

 でも、マンドラゴラの好むという場所がどこにあるのかまでは聞いていなかった。

 盲点だった。


 しかし、それよりも、重大な事を忘れていた!!



「ねえ、みんなあと幾ら持ってる?」

 千春が聞く。


「え? 俺、もう1文無しやで?」

 晴蘭が言う。


「えっ?・・・・・・」


「俺も、鉄貨数枚 もう飯代も持ってないよ?」

 海音が言う。


「えっ?!・・・・・・・・・・・・」

 一気に青ざめる千春。


「「・・・・・・まさか?」」


「私も、もう殆無いよ? 今夜の部屋代の3人分で終わり」


「「ええええ━━━━━━?!」」



 そうなのだ。

 晴蘭達は、もうお金が無かったのだ。

 明日からの宿屋代どころか、食事代すら無かった。


通貨=ティア(Tia)

1円=1Tia

100Tia以下は四捨五入で使用されない

鉄貨=100Tia

銅貨=1000Tia

銀貨=10000Tia

金貨=10万Tia

白金貨=100万Tia

大金貨=1000万Tia(一般庶民には出回らない)



 昨日までは、良子が食事代を出してくれていた。

 でも今日からは、食事代も自分達で出さなければならない。

 なぜなら良子は、昨日からしばらくコッチへ来ないからだった。



「うっわぁ~~~どないすんのぉ?!」


「どないっしょぉ~~~!!」


「どないもこないも、稼ぐしかないやろぉ!」


「あうう~~~みんなごめん! 俺のせいや」


「うん? うん まあ、こうなってしもぉたんは、しゃーない!」


「・・・え?」


「うん しゃーないよ セーラちゃん とにかく、稼ぐ方法考えよ? じゃないと、今夜からの宿屋も代も食事代もないから」


「・・・・・・否定はせーへんのやね(汗)」


「ほらほら、なにか考えて!」


「えっ?! お、俺っ?」


「当たり前やろ! お前やったら、すぐ売れるもん思い付くやろ!」


「思い付くって、んなもんマジック・バッグくらいしか思い付かへんけど?」


「「それー!!」」

 指を指して言う海音と千春。


「ひゃあ?!」



 ってな訳で、急遽マジック・バッグを作る事になった。


 先ず、マジック・バッグに使用する素材だ。

 革製品と言えば、蛇とかワニ皮とか?

 そういえば、森の奥の奥で、ダッシュ・バイパーを見たという報告がある。

 確かダッシュ・バイパーの皮とかは凄く高価らしく、たまたま通りかかった革製品の店では、たばこケースほどの小さな小銭入れでも、200万Tiaって表記されていた。

 手っ取り早く稼ぐ方法のなら、ダッシュ・バイパーを討伐すれば良いのでは?と思った。

 ダッシュ・バイパーなら、1匹分の皮だけでも、かなりの額になるはず!


 あーでも、子供がダッシュ・バイパーの皮とか持ち込んだら、流石に怪しまれるか?

 子供とはいえ、商業ギルドの加盟しているのだから、別に悪い事をしている訳ではないのだが、高ランク冒険者が持ち込むのならまだしも、子供じゃあ不自然だしな。


 だったら、最低ランクの最安の革製の鞄を購入して、それに空間拡張魔法を施し、そして別の店に転売する!

 もちろんそんな事をすれば、俺達は商業ギルド加盟者なのだから、すぐに足が付くだろう。

 だから、街の外壁付近に開いている、商業ギルドに加盟していない野良の露店に売り付ける!

 当然、露店になんか適正価格での取り引きは望めないが、そこは妥協するしかない。

 背に腹はかえられぬ!

 でも、それなら10日くらいの宿泊代や飯代くらいは、すぐに稼げるはず。


 よし! では先ずは、皮の調達だ!

 適当な中クラスモンスターの皮を幾つか売れば、最安の鞄を幾つか買えるはず。



「よおし! それでいこう!!」


「「おお━━━!!」」




 こうして俺達は、トスターの森へ、金になるモンスターの素材集めに向かった。

 移動は、晴蘭が母親から教わった移動系の魔法、「1馬力」だ。

 それを海音と千春に教えていたので、3人は 時速60kmで森まで走った!

 初めて1馬力で走ったが、上手く走ることができた。

 でも、人の足は2本しかないので、走り方は馬というより、カンガルーだったな(汗)

 そして、あっという間に、森に着いた。




 ••✼••トスターの森••✼••



「何を狩るん?」

 千春が聞く。


「そうやなあ? 革製品になるモンスターって、何やと思う?」

 晴蘭が海音に聞く。


「う~~~ん やっばし、ボア系、オーガ系、バイパー系、ドラゴン系・・・・」

 海音が答える。


「オークはアカンの?」

 晴蘭が聞く。


「オークは『肉』!!」

 海音がニヤリと笑って人差し指を立てて答える。


「「確かに!」」

 ニヤリと笑ってダー(ヨダレ)を垂らす晴蘭と千春。



 もやは晴蘭達にとって「オーク」とは、「肉」以外の何者でも無かった。



「特にブラック・オークの肉は最高なーんよなー!」

 頬に手を当て、昭和の少女漫画のようなキラキラした目でウットリする晴蘭。


「セーラちゃん、オークばっかり食べてたら(ふと)るで?」


「ブタる、ゆーな!」


「でも、もちょっと豚ったセーラちゃんも、プクプクして可愛いかも♡」


「やめて~~~(汗)」


「ほらほら、アホゆーてやんと、さっさと行くぞ!」


「「はいはい」」


「とりあえず、狩るのは『ボア系』にしよう!

 ボア系(猪系)も肉になるけど、皮は硬くて防具なもなるからな!」


「「了解!!」」

 敬礼する晴蘭と千春。



 晴蘭達は、ボア系(猪系)のモンスターを探しに、森の奥へと入って行った。


 小型のモンスターを倒しながら40分ほど進んだ森の奥で、早速フォレスト・ボアを見付けた!


 くっそデカい!!


 サイくらいデカい!!

 でも、海音が攻撃魔法を放つと・・・



「見付けた!!」


「あホンマ! って、大きい!」


「まあ、俺にまかいとけ! 先手必勝!! エア・バレット!」


 スパァーン!!


「ごふぁ!!」


 ドスン!


「ふん! かーんたん簡単!!」

 得意気な海音。


「「はぁ━━━~~~」」

 呆気にとられる晴蘭と千春。


「ぃよぉしぃっっっ!! さ、血抜きして解体しよ!」


「「はいはい」」



 海音は、フォレスト・ボアの頭にエア・バレットを命中させた!

 フォレスト・ボアは、悲鳴も上げることなく、その場に倒れた。即死だった。

 海音は、倒したフォレスト・ボアを浮遊魔法で浮かび上がらせ、晴蘭がウインドカッターで首を切り裂き、血抜きをする。

 血を抜き切ったら、千春の解体魔法で、素早くパパパッと片付け、フォレスト・ボアは、あっという間に、皮と肉と骨と内蔵とその他へと分別された。

 そして、予め取っておいた大きな植物の葉で肉を包み込み、皮を絨毯の様にクルクルと丸め、ツルでロープ代わりに縛った。

 他の部位は地面に掘った穴に埋めてしまった。

 そして、皮は晴蘭のマジック・バッグに、肉は海音のマジック・バッグに、牙や(ひづめ)は千春のマジック・バッグに収めた。

 フォレスト・ボアを狩ってからの、ここまでの要した時間は、たったの8分!



「はっはぁー!! すげぇ!! あっという間やったあ? これでカバン買えるな?」

 晴蘭が満面の笑みで言う。


「アホ言うなよ こんだけやと、2~3万Tiaくらいにしかならへんぞ?」


「「やっすぅ!!」」


「当たり前やぃてよ! ボア素材は、どこでも手に入る素材やからな それほど高値にはならんぞ」


「「がぁ━━━ん!!!」」



 そうなのね・・・・・・

 知らなかったわん(涙)

 海音によると、肉屋で聞いたという話しでは、ボア肉は1頭分で、約2万Tia程度、牙2本で5000Tia、蹄1頭分で1万Tia、骨はタダだそうだ。やっす!

 しかも、俺達は正当な売買をする気がないので、野良の露店で売ったなら、更に安くなるとのこと。

 おう~まぃ~がっ!!

 ま、仕方ない。

 もっと、ボア系を狩るか、他の金になりそな別の何かを狩るしなかない。



「ほな、他にもっと金になるやつって?」

 晴蘭が海音に聞く。


「そらぁやっぱし、ドラゴン系やろな!」

 海音が答える。


「「ドラゴン系?!」」


「で、でもミントちゃん ドラゴン系の素材なんか持ち込んだら怪しまれるんちゃうん?」


「だ・か・ら! 野良の露天で売るんやろ!」


「「あ、そっかあ」」



 なるほどなるほどである。

 俺達は今、正規の流通経路での売買は出来ない。

 いや、やっても良いのだが、まだモンスター討伐もできないのに、どこからそれ程の素材を入手したのかと問い詰められたら答えられない。

「俺達が討伐しましたー!」なんて言ったら、何を言われるか分かったもんじゃない。

 だから、野良の露天、つまり裏ルートで売買するのだ。



「よし、今度はオーガ系か、ドラゴン系のモンスターを探そう! たぶん、アイツらは単独で行動するから、倒しやすいはずや」


「「はーい!」」



 俺達は、オーガ系か、ドラゴン系のモンスターを探した。

 もう晴蘭達には、モンスターへの恐れなど無かった。

 すぐに見付けた! ワイバーンだ!



「おい! 上見てみ!」

 海音が空を指さし言う。


「「あ!・・・」」


「晴蘭のショットガンでやってくれ!」


「あいよ! まかいて!」



 晴蘭は、右手の親指と人差し指をL字の鉄砲にして、空に向かって腕を伸ばし、ワイバーンを狙撃!



 タァ━━━ン!


「ギャッ!」


「やった!」


 ドスン!


「落ちた!落ちた!」


「よし! 取りに行くぞ!」


「「はーい!」」



 アッサリ命中!

 ワイバーンは、悲鳴をあげたら、マンションから落ちた毛布のように、翼を絡めながら落ちていった。

 俺達は、ワイバーンが落ちた場所へ向かった。

 ワイバーンは、まだバタバタしていたが、海音がウインドカッターで、首を切り落とした。

 そしてボアの時と同様の工程で、あっという間に、最大級の翼竜「ケツァルコアトルス」の倍の大きさのワイバーンを解体してしまった。

 この時の要した時間は、たったの12分。

 普通の冒険者では考えられない早さだ。

 でも、晴蘭達には、そんな自覚などまったく無い。



「フォレスト・ボアと、ワイバーンか これやったら、50万Tiaくらいにはなるやろ」

 海音が言う。


「これでも、50万Tiaか・・・・」

 晴蘭が、うんこ座りで言う。


「セーラちゃん! セーラちゃあん!」


「え? なに?」


「パンツ見えてるで! そんな座り方せーへんの!」


「別にかまへんやん! 誰も居てへんし それに見られて減るもんじゃあるまいし」


「あかんよぉ! ちゃんと女の子らしくやらな、こんなんは積み重ねやで? よしよし」

 晴蘭の頭を撫でながら言う千春。


「チャルは、俺の おかん みたいな事を言うんやな?」


「え? セーラちゃんのお母さん?」


「うん いっつも、そんな風に言われるわ」


「・・・・・・やろね?」


「・・・・・・」


「はいはい! そろそろ露店に売りに行くぞ!」


「「はーい!」」



 こうして俺達は、フォレスト・ボアの素材と、ワイバーンの素材を持って、トスターの外壁付近に開いてる露天へと向かった。



 ••✼••露店••✼••



「よう! 金髪の嬢ちゃん! また来たな!」

 露店のオジサンが海音に向かって手を挙げて言う。


「「え?」」


「おう! また、素材持って来たから、見てくれる?」


「「ええっ?」」


「ほお? 今日は、なんの素材なんだい?」


「「え? え?」」


「今日は、フォレスト・ボアと、ワイバーンやね!」


「ほお! それは、有り難いな! ワイバーンかよ! おーい! 今日は、ワイバーンだってよー」


「「へ?」」


「ワイバーンだってえ?!」

「おおー! そりゃあ、すげぇ!」

「マジか! ワイバーン?!」

「おいおい! 俺にも分けてくれよ!」


「「ええー?! えええ~~~?!」」



 なんだなんだ?! いったいこれはなんの騒ぎだ?

 声をかけた露店のオジサンとは、以前から海音と取り引きしていた様子が伺える。

 どーゆーこと?

 しかも、他の露店のオジサン達も集まって来た!



「み、海音! これは?」


「ああ、前回森に入ったときの小型のモンスターあったやろ?」


「「うん・・・」」


「あの素材を幾つか、ここの露店で売ったったんよ!」


「「えええ━━━?!」」


「あんまり、ええ金にはならんかったけどな? ま、露店のオッチャン達とは、それからの付き合いかな!」


「「えええええ━━━!!」」



 なんと海音は、先日の何の収穫も無かったあの日の倒した小型のモンスターを密かに集めていて、ここの露店で売ったというのだ。


 いつの間に?


 それからの付き合いで、今後も何か収穫があったなら、ここで取引きしたいと話し合っていたのだと。

 流石は、闇市! 深くは散策しない。


 知らんかった・・・・・・


 そして俺達は、露店でフォレスト・ボアとワイバーンの素材を売ると、そのお金で小物入れのバッグなどを数点購入した。

 初級冒険者や、金の無い冒険者達がよく買う収納具らしい。


 結局、腰のベルトに着けるタイプの収納バッグ5個と、ショルダーバッグを2個、魔石を7つ購入して、残りは2万Tiaほどだった。

 これでも、3人一晩の宿代と、1回の飯代はあるが、これだけではクエスト終了までは持たない。

 余裕を持って、せめて1人50万Tiaくらいにならないと。


 俺達は、街の外壁付近で目立たない場所を探して、早速マジック・バッグの生成を始めた。

 あまり収納量の大きな物は作らない。

 なぜなら、極端に優れた性能の魔導具をホイホイと売買してしまうと、俺達の身が危ないからだ。

 ベルトに着けるバッグには、3m×3m×2mの収納可能なマジック・バッグに、ショルダーバッグには、3m×3m×3mの収納可能なマジック・ショルダーバッグに生成した。

 そしてそれらを、街の反対側の露店で売り捌いた。

 ベルトに着けるタイプは1つ50万Tiaに、ショルダータイプはひとつ100万Tiaになり、全部で450万Tiaになった!


 本来なら、この10倍にはなるはず。

 でも売買したのは、野良の露店だ。

 堂々と正規の流通はできないのだから、文句など言ってられない。


 お金が増えた事で気が大きくなり、露店で売っている質はあまり良くないが、ラベンダーなどのクエストに必要な野菜やハーブ、鉄鉱石やら、白野菜やら、甘い実などを大量に購入した。


 「白野菜」とは、この世界に存在するするカブに似たハート型の葉を3枚付けるソフトボール大の白い「根菜」で、主に物作りに使われる。

 収穫しても根さえ残れば20日後にはもう生えているような、非常に繁殖力の高い魔導野菜(まどうやさい)である。

 魔力補充のために食べる魔女や魔法使い達もいるが、めっさ不味い。

 そのまま食べられない訳では無いが、そのまま食べると非常に不味い!とにかく不味い!思わず吐き出してしまうほどに不味い。

 料理に使うと怒られるほどに不味いのだ。

 なので、食べ物などに使われる事はほとんどなく、魔導具作りによく使われる野菜だ。

 

 魔法薬や魔導料理などには、「甘い木」と呼ばれる林檎の木に似た木になる、桃色の林檎に似た硬さで桃の味のする「甘い実」呼ばれる木の実が良く使われる。

 女装剤やポーションの代表的な魔法薬の材料のひとつでもある。

 そのまま食べて良し。

 魔導料理に使っても良し。

 魔法薬に使っても良しの便利な果物だ。

 魔力が豊富に含まれるので、動物やモンスターも好んで食べる。

 見渡せば、街道沿いにも、どこにでも、チラホラと立っている。


 これらは、きっと今後は必要になると思ったので、購入した。


 よし、これでクエストクリアまでの宿屋代と、飯代は確保できた。


 あ! 良子さんに返す100万Tia。

 忘れてた・・・ま、いっか!また今度で。




「よし! 今日はもう宿屋に戻って寝るぞ」


「「はぁ~~~い」」



 疲れた・・・・・・

 めちゃ、ごっつう、どてこい疲れた!

 こんな事なら、ポーション類も作っておけば良かった。

 この日の晴蘭達は、久しぶりに、ぐっすりと眠れた。



 ••✼••トスターの森の奥••✼••



 そして次の日。クエスト終了まであと5日を期限の日。

 俺達は、トスターの森の奥に居た。


 随分と、森の奥へ来たからか、水の匂いがした。

 どうやら近くに川がありそうだ。

 と、言うことは、マンドラゴラの好む自生地があるかも知れない。


 ・・・・・・あった! 本当にあった!

 本当に、マンドラゴラを見付けた!



「やった! 見付けた!!」


「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、

 なな・・・・・・7つ!」


「すごいすごい!」


「しっ! 静かに!」


「「 !!・・・ 」」



 俺達は、ヘッドホンを着けて、マンドラゴラにそぉーっと近付き、3人同時にマンドラゴラの葉っぱを掴んで一気に引っこ抜いた!



「ぴぎゃあぁあぁあぁ~~~!!」

「ぎゃわあぁあぁあぁ~~~!!」

「ぐぉおぉおぉおぉお~~~!!」


「「「 くっ!!・・・・ 」」」


「あっ! セーラちゃん!」

 千春が手をパタパタして晴蘭に知らせる!


「えっ?! ああっ! 海音、アイツら逃げるぞ!!」

 ヘッドホンで聞こえないので、晴蘭は必死に海音に、身振り手振りで知らせる!


「くっ! 御用だ!御用だ!御用だ!御用だぁー!」

 逃げ出したマンドラゴラに気付いた海音は、姉の虹音から教わった「晴蘭ちゃん捕まえよう魔法の『御用だ!』」を発動した!


 バシバシバシバシッ!


「ぐえっ「きゃ「ぎゃあ「くぇええっ!」


「「「よぉ━━━し!!」」」



 やった! ついにやったあ!!

 マンドラゴラを、同時に7つも確保した!


 そして、この日の残りの時間は、ゆっくりと過ごし、宿屋で早い時間からゆっくりと眠った。




 ••✼••冒険者ギルド••✼••



 そして、次の日の朝、冒険者ギルドにて。


 俺達は、ノービス冒険者クエストの完遂の報告をした。



「はい お預かりしますね 確認してきますので、しばらくお待ちください」


「「「はい・・・」」」



 そう言って受付嬢は、他のギルド職員とともに、俺達の納品したクエスト素材を持って、受け付け奥の扉から、ギルド奥の部屋へと入って行った。



 遅い・・・・・・

 もう、3時間は待たされている。



「どないしたんやろ?」


「・・・遅いな」


「なんか私ら、ミスでもしたんかなあ?」


「いや、そんなはずは・・・・・・」


「まあ、あれだけの数やもん! 数えるだけでも時間かかるんちゃう?」


「「確かに・・・・・・」」



 と、その時!

 受付け奥の扉から、受付嬢が四角い受け皿に何かを乗せてやって来た。



「きた!」


「「 !!・・・・」 」


「お待たせしました 確認いたしましたところ、何も問題なく、クエスト素材は全て合格基準を満たしていることが確認できました おめでとうございます! これが、クリスタル級冒険者の証となるプレートです どうぞ、お納めください!」


「「「おおおっ!!」」」



 ギルド受付嬢から受け取ったのは、クリスタルがかしめられた小さな銀製のプレートだった。

 クリスタル級冒険者の免許証のようなものだ。

 これを持つ者は、クリスタル級冒険者として、活動が認められるわけだ。



「ほ、ほな?」


「おめでとうございます! 貴女達は、今日から正真正銘の冒険者です!」


「「「やったぁ━━━!!」」」

 3人とも飛び上がって喜んだ!


「ひやっほぉ~~~!!」


「やった! 長かった!」


「うんうん! 長かったぁ~~~!」


「うむ よう頑張ったな ポンコツ3人娘達」


「「「良子さん?!」」」


「実はな、陰からお前達ポンコツ3人娘達をずっと見ていたんじゃ」


「「「ええっ?!」」」


「そーなん?!」


「うっそ?! マジで?」


「そんなぁ? もう見棄てられたんかと思ったぁ~~~ん」


「バカを言え! そんなわけがあるかいな!」


「「「うわぁ~~~ん!!」」」


「おおお! おいおい」



 晴蘭達は。一斉に飛び掛る様に、良子に抱き付き泣いた!



「おお、よしよし! よお、頑張った! よぉ、頑張ったなあ」


「「「ふぇえぇえぇ~~~ん!!」」」



 こうして晴蘭達は、クエスト期限の4日を残して、晴れて駆け出し冒険者となった。


 その後、ノービス冒険者クエストでの野菜などの全てを指定量以上を集めなくても、ある程度集めることができたなら、合格できたらしい。

 それを聞いて晴蘭達は、その場に糸の切れたマリオネットの様に崩れ落ちた。




やっと、冒険者の仲間入り!

これからが、ムトンランティアへ来た本当の目的である、「魔晶石」を探しに旅立つ事になるのだが・・・

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