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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
38/52

第38話 濃いの嵐

お待たせしました。








知ってる?初恋ってさ、10歳以下が

大半らしいんだ、3歳が24歳の女性に恋

したって良いんだよね。

ただ、絶望的なまでに報われる事はあり得

ないけどね?


よく、愛に年齢は関係無いって言うじゃん?

そういうヤツってさ、2通りに分かれるん

だよね!


年齢差の重みが判らないヤツと

年齢差の重みが判っているけど

止まれ無いど阿呆!


いいか?良く聞け?

若い内は、口では幾らでも威勢良く行けるさ

たがな、冷静に考えろよ?

10年後のその相手を、愛せる自信はあるか?

20年後もその相手を、愛せる自信はあるか?

30年後もその相手を、愛せる自信はあるか?

生きている限り、更に続くぞ?


さて、何年後でちょっと考えた?

考えた時点でもう終わり、諦めろ。

ソコに未来はない、待っているのは

無間地獄だ


立場を逆にして見れば判りやすい。

24歳の俺が、3歳のアレサさんに惚れたら

一発でアウト!ブタ箱遺棄だ!


俺の初恋をダークに語っていたら、朝の日課

『お姉さんに貰った卵に魔力注入』が終わって

しまった。


しかし、いつになったら雛は孵るのだろう?

冬の間にマーシャの情操教育の一環で、雛を

育て母性を育んで欲しかったのに、春が来て

しまったではないか!


青い空の元では、春の使者「雲雀」が可愛い

鳴き声で(さえず)り、長閑な春の1日を

演出していた。


ピーチチチピーチチピーチピーチチチ?

(ひば子俺との事は考えてくれたかい?)

ピーチピーチチチピーチチチピーチチチ?

(そんな私にはビバリーZがいるのよ?)

ピーチチピーチチチピーチピーチチピーチチ

(ビバリーZなんて関係ない俺はグレートだ)

ピーチチ!ピーチチチピーチピーチチピーチチチ

(駄目よ!私はビバリーZを裏切れないわ)

ピーチチピーチチチピーチピーチチピーチチチ

(これからグレートがひば子を幸せにする)

ピーチ!ピーチチチピーチ

(駄目!それ以上近づかないで)

ピーチチピーチチチピーチチチピーチピーチチ

(俺のグレートはもう止まれ無いんだひば子)


「消え失せろ!ど阿呆!!」


「マクートどうしたの?大声出して?」

「あっ!お母さんごめんね雲雀が煩くてさ」

ホントに春の長閑な1日を返しておくれ!

「それよりも、マクートちょっと来て」

素敵な笑顔でママンに呼ばれたら、行くしか

無いじゃない、また変な手料理を作ったの?

ちょっと待ってね?解毒剤を飲むから。

「マクート?どこ行くの?」

「あっ!ちょっと、そのね?」

「いいから、早く来て!マーシャの分もある

んだから!」

ママンに半目で睨まれたら逝くしかないか。

マーシャ、兄ちゃん先に逝くぞ達者でな。

ドナドナとママンの元へ逝くと、回れ右を

させられ、現在縫い直している服のサイズを

確認させられた。

な〜んだ!早く言ってよぉ覚悟したじゃない!


「もう、来週には結婚式なのねぇ」

そう、来週はアレサさんが結婚するのだ。

「マクートはもうお祝いの歌を歌えるの?」

「うん!シスターローザから心を込めて

声を出さずに歌いなさいって言われた」

「そ、そう、頑張るのよ?マクート」

うん!頑張るよママン、挫けない様に

「マーシャはもう歌えるのかしら?」

「シスターローザからは凄く誉められて

いたよ!マーシャは歌が上手いからね!」

ホントに何処で差がついたのだろう?

「はい!終わり!マクート、マーシャを

呼んで来てくれないかしら?」

「は〜い」


外からは、マーシャの愉しそうな笑い声

が先ほどから聞こえていたので、外に出て

玄関の脇を見ると、デッチの膝に乗り魔法の

実演を見せて貰い、実践するという魔法教育

を何時の間にかマーシャは始めていた。

って、言うかいつの間にかデッチはマーシャ

の友達で、魔法の師匠ポジションをゲット

してやがった!

「マーシャどうだ?順調か?」

「あっ!お兄ちゃん見て見て!ほらぁ!」

うん!マーシャの指先が明るく光っている。

この様に、安全で魔力暴走の心配の無い

魔法をデッチから、実践形式で教わっている

のだが、『無詠唱』って大丈夫なのか?


とにかく、俺はマーシャをママンの所へ送り

出して、デッチに訪ねる。

「旦那の魔力操作は別格として、妹君の操作

も悪くはないですぜ?」

『森の賢者』の御墨付きか?

「今まで、魔力暴走の度に旦那が魔力操作で

解放してやしたからね、頭より体で覚えたん

でしょうよ、あっしが見せたらトントン拍子

で覚えて、後は基本を刷り込みの徹底で十分

ですぜ?」

スマトラオランウータンの見た目で江戸前口調

の森の賢者を俺は信用しない!何故なら絶対に

トンでもない所で、ポカをするからだ!

「所でさっきマーシャが無詠唱で指先を光らせ

てたけど、良いのか?アレ?」

デッチは機能停止みたいに止まり、頭から

華厳の滝が如く汗が流れる。

「デッチく〜〜ん!!!」

とりあえず、フェイスクラッシャーはして

おいた。

新たな問題発生に頭痛が痛いが、先ずは

『春のママン魔法教室』でマーシャの出来は

世間のどの辺りのレベルなのか?を確認して

から対策する事に決めた。

やらかして無い事だけを祈る!


さて、我が家に時限爆弾がセットされようが

情け容赦無く時間は過ぎ、アレサさんの結婚

当日となった、ちなみにアレサさんは一人娘

なので、お婿さんがやって来る訳だ。


この辺境領で、重要な砦を任す未来の司令官

なので、その人の人柄よりも先ずは何処の家の

人間か?指揮能力や作戦立案、自制心の有無

等が問われ、人柄なんざ良ければ儲けモノ。

それが貴族の結婚で有る。

そんな貴族の結婚に、我が家の様な訳有りの

平民がノコノコ出向く事は、あり得ない事

なのだが、花嫁一家と花婿一家からの熱烈な

御招待を受けて、この場にいるのよ?

普段の数倍!良い服を着ているが、それでも

浮いちゃう我が一家!だって!『ブロディ』

がいるんだもん!そら浮くわ!

そんな『ブロディ』を目印に、花嫁の父が

我が家に挨拶にやって来た、大丈夫なのか?

貴方は貴族よ?

「先輩!お待ちしておりました、此方へどうぞ」

それって、執事さんの仕事じゃ無い?

「折角の招待なので、昔の服を取り出したが

可笑しくは無いか?」

大丈夫、アンタはどっから見てもオカシイから!

「懐かしい格好ですね、皆、喜びますよ!」

パパンは昔の軍服?の様な格好をしていた。

ホントに我が家の何処にあったの?

昔を思い出したのか?懐かしいそうに微笑む

グレッグさんからのエスコートを受けて

普段は街の人達が使う葬祭式場を、VIP専用

控え室となった場所に通される。


場違い感が半端無い我が家を、領主から兵士

まで、男衆が取り囲み歓待する。

「来たな!『熊止め』待っていたぞ!」

『熊止め』?何ですかそれ?

また変なあだ名を貰ったなぁ、3歳児にそんな

大層なあだ名は要らないよ!

領主様に抱っこされて、回りを見渡すといた!

アノ熊に止めを刺した、髭ダンディーの

『ラヴィシング』ジェンシェン男爵がいた。

こんなに濃い筋肉密度の中にいたら、ママン

とマーシャが汚されてしまう!と、思ったら

二人とも、お子様、ご婦人エリアへ避難済み

だった!良いなぁ俺もそっちに行きたいなぁ。


「『熊止め』よ暫くであったな!」

『ラヴィシング』事、髭ダンディーの

ジェンシェン男爵から声を掛けられる。

「お久しぶりでございます、この様な格好で

よろしいのでしょうか?」

俺は暗に、おろせ!究極英雄!と告げる。

二人は顔を見合せ、豪快に笑った後笑顔で

告げられた。

「お主は子供故な、構わぬよ」

「それにな、そなたの妹と私の娘のシャーリー

が友達になったと、喜んでおったわ!」

ほれ!と指差した方向を見れば、笑顔の妹と

シャーリーちゃんと領主の娘、ソフィアちゃん

が、キラッキラッの笑顔で談笑していた。

「あぁ、私の娘のソフィアも喜んでいたぞ?」

うん!キラッキラッの笑顔だね!

髭ダンディーは顔を近づけ、静かに伝える。

「それでな『熊止め』そなたの妹は文字を

もう、覚えたか?」

「ええ、簡単な読み書きなら出来ますよ?」

「ならば、娘に『手紙』を書いてはくれぬか?

アレは家に戻ってから随分と寂しがっていてな?」

はは〜ん!究極英雄は髭ダンディーと組むのね?

意味有りの笑顔で、究極英雄を見れば向こうも

意味深な笑顔で頷くので、決まりだね?

「まだまだ、習って間もないので簡単な事しか

書けませんが、宜しければお送りしますよ?

あっ!『返信用』も一緒に送りますか?」

「ウム!宜しく頼もう!」

「そうだな、『手紙』は一度、我が屋敷に届け

ると良いな!私が責任を持って送ろう!」

「では、ソフィア様にも『手紙』と『返信』用

も届けましょうか?妹は、ソフィア様とも仲良く

させて頂いてますので?」

「フム!良いな!実に良い!」ニヤル究極英雄

「ウム!それで頼もう!」ニヤニヤ髭ダンディー

「判りました、妹も喜びましょう!」ニヤリ俺

華やかな場所なのに、俺達三人はどす黒い

笑顔で話を進めた。

あれ?俺は猟師の息子なのに『越後屋』ポジ?


欲望と野望が渦巻く、どす黒いオーラを抜け

筋肉の壁をスルリと逃れ、やっとマーシャと

ママンを見つけたのに、今度はドリー兄さんに

捕まってしまった!

グレッグさんに抱っこされて、顔を見れば

それは、それは、素晴らしい笑顔で感謝を

されてしまった。

「マクート君、君のお陰で娘もやっと結婚する

事が出来たよ!本当にありがとう!」

なんの事?訳が判りません!と、首を傾げて

いたら、テキサス魂の実兄が横から解説して

くれた。

「アレサちゃんはね、父親に憧れて軍属に

所属したんだ、希少な回復魔法の適正も有ったし

本人も努力したんだがねぇ」

そう、アレサさんは凄く努力をしていた、女性

の指が剣ダコだらけになるまで、剣を握るのは

相当の覚悟が有った筈なんだ、だけどそれを

知らない、知ろうともしない奴らは、一言

『司令官の娘だから』で済ます。

しかし、そんな事を知らない俺が

『この手大好き!努力してる優しい手!』

なんて、言ったもんだから思わぬ所から

自分を認めてくれる発言を聞いて、涙腺が

崩壊したんだよね、いや!アレはビビる!

美人なお姉さんの涙は、罪悪感ハンパねえ

「娘がな、君が帰ってからポツリと呟いた

のだよ『君のような子供が欲しい』とね」

ええ!俺なら旦那様にもなりますよ?

「ちょうど、ジェンシェン男爵の下の息子

さんが婿入り先を探していてね?後は今日

まで、トントン拍子だよ!」テキサス兄が

笑顔で続ける。

「それで、春の狩猟会にお見合いも兼ねようと

男爵家族を招待したら、お婿さんがアレサちゃん

に一目惚れしたらしくてね?」

「何でも、君を一生懸命治療している姿に

惚れたらしい、優しく素晴らしい女性だとね」

ドリー兄さんは、自分の娘の自慢話に照れ気味

「一番末っ子の娘さんは、行き遅れの外れ女

との話を壊してやる!ってエライ勢いで来たん

だけどね?」

シャーリーちゃんは、そんな理由でいたの?

俺は不意に、気になった事を尋ねてみた。

「相手のお婿さんは何番目の息子さん何です?」

「確か〜六男いや、七男?」テキサス魂

「いや、確かはち」イケナイ!ドリー!

「判りました!結構です!」

アブねぇ、一通の流れ星がこの世界を破滅に

導く所だったぜ、髭ダンディーあんた子沢山

なんだな!


筋肉の波を掻き分け、やっとたどり着いたよ!

本日の主役の御二人様の所へ、そして思う

綺麗で、優しく、危ない&イケナイお姉さんが

結婚して、誰か他の人と一緒になるって、残る

俺にとっては、寂しいモノなんだな。

赤い髪に純白のシルクのウェディングドレスが

映えて、素直に言える『綺麗』だと。

アレサさんが、俺を見つけて手を振っている。

「マクート君来てくれてありがとう」

本当にこれから幸せになることを、微塵も

疑わない、美しく強かな笑顔で俺に言う。

「アレサさん、結婚おめでとうございます」

在り来たりな言葉しか出て来ないや。

「君がマクート君かい?妻から良く君の話を

聞いてるよ!来てくれてありがとう」

金色の癖の無い髪に、裏の無い笑顔で俺に

右手を差し出す、好青年?いや少年か。

彼は16歳なんだそうな、この13歳差が絶望的

に遠かったんだよなぁ。

旦那さんの差し出した右手を、見つめながら

考えていたら、怪訝に思われたみたいだ。

「マクート君?」

不安そうなアレサさんの声に、我に帰る

俺は笑顔で、彼の手を握りアレサさんに

謝罪する。

「ごめんなさいアレサさんが遠くへ行くんだな

って、思ったら寂しくなっちゃった」

アレサさんは、俺の言葉に優しく微笑み

諭す様に丁寧に伝える。

「貴方は私の恩人で大切な友人よ!だから

私に貴方の成長を見届けさせて?私は貴方の

側にいるわ、そして大切な人が出来たら私に

教えてね?約束よ?」

はは俺の初恋はここでピリオドだ、この先は

もう、友達でしかない寂しいけれど受け入れ

よう、彼女が好きだから、幸せになって欲しい

から友達でいよう。

俺は、新郎の手を強く握り返して宣言してやる

「彼女は私の大切な友人です、泣かせるような

事をしたら、骨の30本は覚悟して下さいね?」

此くらいの強がりは見逃せよ?新郎!

「ウム!息子が死ぬな!心せよ?レスター」

いつの間にか、新郎の父髭ダンディーがいた

「全く、冗談に聞こえないね?」

花嫁の父ドリー事グレッグさん

「彼は実績なら、うちの兵士を越えるからね?」

テキサス魂カール兄さん

「花嫁の騎士の座は遠いぞ?レスター君?」

究極英雄の領主までいた。

「肝っ玉の据わりは勝負になりませんよ?」

生傷男のオーデさんまで加わる!未来のあんた

の上司だよ?大丈夫?

いつの間にか出来た、筋肉の壁が湿気た空気

を霧散させ、暑っ苦しくも朗らかな空気に

変わる。

うん!笑顔が引き吊っているぞ?新郎!

まぁ、こんな空気にさせた罪滅ぼしはするよ!

アレサさんの為に、俺はエライ人達にお願い事

をする、不思議には思ってるが不信とは思わず

協力してくれる事になった。

日頃の行いの成果で有る。やったね!


厳かな空気の中で、結婚式が始まる。

それと同時に会場が暗くなり、招待客たちが

驚きざわめく、結婚のお祝いの歌が流れ花嫁

がヴァージンロードに足を踏入れる、俺は

魔力をヴァージンロードに流して

魔力の煌めきを銀河に見立てて、膝の高さ

に調節して、花嫁を闇から浮かび上がらせる

その美しさに会場から感嘆の声が挙がる。

花嫁が1歩進む度に、流れ星が流れ

彼女が進む先には、新郎が闇から照らし

出されて2つの星が1つになる、その星は

光輝く祭壇に繋がる様に、魔力を流し誓いの

場所へ導く。

「珠潰し、オメェ粋な事するな!」

俺の隣で、生傷男オーデさんが感心している。

まぁ、俺が失敗した時のお目付け役?

みたいなモノだ!

初めての演出で、不安に思っていたんだろう


だけどさぁ、生傷男よ俺のあだ名

それで固定?


順調に式が終わり、俺の演出が好評な様だ

ふふん!アレサさん限定の演出だからね?

俺から、大好きなお姉さんへのお祝いだから

他の人は勘弁してね?

因みに、アレサさんからは泣きながら感謝を

されてしまった!イヤ泣かないで?笑って

欲しくてしたのよ?あたふたしてる俺を花嫁の

両親が、暖かく見守ってくれたのが救いだよ。

「珠潰しオメェ詰めが甘いな?」

豪快に笑う生傷男、3歳児に詰めを期待するな

大人がやれよ!それくらい!


そんなトラブルも有りつつ、会場は

領主様の屋敷の庭に移る。

やはり、究極英雄は髭ダンディーと強固な

同盟を望むのだろう?

俺からは、税金の納付の免除とマーシャの

将来の勤め先を確保してくれたら、あとは

ママンにお任せするよ!と、伝えている。

大事だよね!納税って!3歳児からは絶対に

出ない言葉になんだけどね?聞いたママンが

ビックリしてたもん!

「それだけで良いの?」って!

イヤ、マーシャの将来の確保よ?大事でしょ?

俺はほら!ブロディから狩りを教わるからね!

食いっぱぐれはないよ!

ママンは今頃、究極英雄領主と髭ダンディーを

相手に交渉しているんだよなぁと、考えて

いたら不意に呼ばれる。

「おい!熊止め!勝負しろ!」

カール兄さんの息子のトーマス君が、俺に

何かを投げて寄越す。

俺は考えもしないで、投げられた手袋を

拾ってしまった。

あれぇ?コレってヤバいヤツちゃうん?

和やかな、披露宴の会場が騒がしくなった。


俺のせいじゃ無いよね?


華やかで、和やかな空気は霧散して

騒然とした空気が、会場を包む。

3歳児同士でも貴族にとっては『決闘』は

遊びでは絶対にやらない事なのだが、その

絶対が起こってしまった!

自分の息子が、俺に決闘を申し込んだ事に

目眩を起こし、倒れるトーマス君の母親

シャリアさん。

息子がトンでもない事をしでかし、叱る

父のテキサス魂カール兄さん

絶対にお前の入れ知恵だろう?

ケイシャちゃんは兄ウォルド君に詰め寄り

執事のバスチャーは奥様を支えて、指示を

出している。

うん!一言で言えば『カオス』だね?


「珠潰し、受けちまったのか?殺すなよ?」

イヤ?待て!俺は平民で、貴族の作法等

知らんがな!だが、男同士の決闘には

身分なんて関係無く、男の意地が優先される

らしい?

ソフィアちゃんまで、トーマス君をなんて

軽はずみな!と叱責している。

「だって、このままだとソフィア

お姉ちゃんがアイツに取られちゃう!」

泣きながら、今回の決闘の動機を語る

トーマス君、イヤイヤ待てよヲイ!

俺は平民で猟師の息子だぞ?

どうやったら!貴族で辺境伯の領主の

娘と付き合えるのさ!教えてプリーズ!


周りの大人は動機を知り「あぁ〜」と

俺とトーマス君を、痛いモノを見る様な

なんとも言えない目で交互に見ていた。

イヤ!俺はとばっちりだよね?

そんな中で異変を感じたママンや

究極英雄と髭ダンディー序でにブロディ

が会場に入り、理由を知ると。

あっ!ママンが倒れた!支えるブロディ

少しは役に立つ様になったな?

「お前の側は退屈しないな珠潰し?」

イヤ!当事者の俺は絶賛パニック中だよ!

生傷男!新郎新婦を脇に寄せて俺が話題

独占って、許されるならば裸足で逃げるわ!


「マクート君大丈夫かね?」

俺の周りには、生傷男しかいないことを

哀れに思ったのか?新婦の両親がやって来た。

「マクートちゃんそのぉ穏便に出来ない?」

俺も出来れば、無かった事にしたいです。

俺が困ってます!の目で二人を見れば

向こうも、そだねーの視線を返す。

「闘いは避けられんぞ?熊止め」

髭ダンディーもいつの間にか来ていた!

「アノ、マクート君が強いのはここにいる

全ての人が知っているので、棄権は出来ない

のですか?」

シャーリーちゃんも来てくれたんだ?

うん!棄権!いいね!棄権って手が有ったか

「それでは彼の心が死ぬぞ?シャーリー」

あっ!棄権は駄目っポイ!

「あの子も見ていたのだ『熊止め』たる

所以をな!」

イヤ!熊止めはやめよう?絶対に変な尾鰭が

付いて、面倒な事になる未来しか見えない!


そんな中で、カール兄さんとシャリアさんが

俺の前にやって来た。

ケイシャちゃんは、兄ウォルド君を見事な

『地獄突き』で締め上げている。

アレをほっといて良いのか?

「マクート君、父親して情けない事だが

穏便に闘う事は出来るかね?」

「マクートちゃん本当にごめんなさい

でも、私もあの子を喪いたくは無いの

お願い、私に出来る事なら何でもするわ

だから・・・」

シャリアさんは言葉に詰まり、カール兄さん

に寄り掛かる。

イヤ!シャリアさん俺がトーマス君を

殺す前提で話をしないで?

俺だってやだよ!


仕方ない、働いて貰うぞ?生傷男!

俺は、棒二本とヒモを一本用意して貰い

ヒモの両端に棒を結び付け、コンパスに

して、円を描く。

そう!我が前世の国技、相撲で有る。

まぁ、お互い3歳児なので、打撃なし

噛みつき、金的、目潰し無し、足の裏以外

の体の一部が地面に着くか、円から出たら

負け!のルールを行司役の生傷男に話す。

「珠潰し、オメェ金的しねぇのか?」

オイ!こら!人を何だと思ってやがる!

何その、自分からハンデ背負うのか?

みたいな顔はなんだ!

断固抗議するぞ?こら!


そんな訳でどんな訳何だか?大相撲

ファンタジー場所が開幕した。

俺とトーマス君は、上半身裸でお互いに

ポッコリお腹がセクシーな体型で有る。

俺は土俵の外で四股を踏み、雲龍型で

土俵入りをする。

その、ユーモラスな動きに女性陣は笑うが

男性陣は数人、感心の声を挙げる。

そう!この動きは、関節の柔らかさ

特に下半身の関節や足首等柔らかい

けど、力強さも併せて持ってます。

実戦向きの良い足腰を持っている

でしょ?をアピールする型でもある。

一方、そんな事を知らないトーマス君

が馬鹿にされたと勘違いをして、突進

して来たが、生傷男に割って貰う。

「両者ルールは覚えたな?」

二人とも無言で頷く。

「では良いな?」

「ア!ヴォマス!(位置について)」

俺は股を割り低く構え

「レジィー(用意)」

手を土俵に着けて三点姿勢

「ゴウ!(スタート)」

瞬発力勝負、一気に前に出る

一方、相撲がどんなものか?判らない

トーマス君は棒立ちで、俺の突進を

モロに受けて、お尻を土俵に着ける。

この時点で俺の勝ち!だが当然物言い

が入る!

「卑怯者!ちゃんとやれよ!」

トーマス君、負け犬の遠吠えって

知ってる?

まあ、初体験なんだから?

三本勝負にしておいたよ?

コレで言い訳は出来ないよ?

生傷男はトーマス君を諌め

俺に対して「良い性格してるぜ」

と、言いたげな顔をしてやがる!

さぁ、最終ラウンドだ!コレで終らせる


「ア!ヴォマス!(位置ついて)」

「レジィー(用意)」

「ゴウ!(スタート)」

運命の2本目今度はトーマス君が前に出る

腰の位置が高いよ?トーマス君!

俺は股を割り、低い姿勢で突進を受け止める

トーマス君は必死に俺を押しだそうとする

けど、ビクともしないんだわ〜これが!

前世の日本でさ、国技って割に廻しを着けて

相撲を取った人って、多分多く無いと思う。

でもさぁ、海上自衛隊って何故か相撲が

護身術の一環で、やらされるんだぜ?

細身の体に廻しって、恥ずかしいよね?

旧海軍の伝統なのかね?

全裸に踏ん張って、廻しを皆で付け会うから

腐った女性にはパラダイスかもね?

俺は断固拒否だ!死んでも拒否だ!

そんな前世の黒歴史を、思い出しながら

現在進行形で黒歴史生産中のトーマス君を

見る。

顔を真っ赤にして、何としても勝つ!

その意地と情熱は買うよ?でもさぁ!

周りの人の迷惑も考えて行動しろ?

両親は泣いていたぞ?

結婚披露宴を壊されたアレサさんは?

ソフィアちゃんが好きなのはわかった!

でもさぁ、彼女の気持ちは?

自分の事だけで、彼女の心に傷を負わせ

るのか?

お前の好きはその程度なのかね?

そんなヤツには絶対に負けてやらん!


その時、俺の脳裏に東洋の大巨人の

言葉が甦る。

「勝負事に同情は絶対に禁物ですよ!

そんな事をしたら、同情された選手は

2度と立て無くなります、力に差が

有るのなら、今は負けても明日勝つ

明日負けても、明後日に勝てば良いん

ですよ!今出来ないからと投げずに

続けた者が勝つんですよ」


そうです!兄貴!俺は逝けんです!


トーマス君!お前は基本からみっちりと

やり直しやがれ!

右手は股下に入れ、左手は相手の右肩を

がっちりホールド!そして一気に掬い投げる!

『ボディスラム』プロレス技の基礎中の基礎

世界中のプロレスラーが体得している技で有る。

実はこの技、相手の勢いや下半身の瞬発力を

使うので、腕力は然程使わない。

ハイアングル形式や、ゴリラスラム形式は

腕力を使うけどね!

この基礎の技にレスリングの真髄が詰まって

いるのだ!

『相手を良く見る』これは相手の力がどの

方向で作用しているか?を見極め、流れを読み

そして、その流れを掴み技を極める。

タイミングが決まれば、美しく投げる事が

出来るのだ、そして投げられたら受け身を取る。

受け身も基本、基礎中の基礎で有る。

綺麗に受け身を取らないと、衝撃は体の中を

波紋の様に拡がり、全身隈無く拡がり深い

ダメージを負うことになる。

美しく投げ、綺麗に受けるコレが出来て

初めてリングに立てるのだ!

トーマス君!君は戦う準備を何もせず!

激情のままにリングに上がったな!

それは、リングに対する冒涜だ!

俺はそれが一番許せない!

足元では、あまりのダメージに

トーマス君がのたうち回る。

生傷男から勝者を告げられる。


あっ!いっけね!ここ土俵だったわ!

そこはごめんね?トーマス君。

イヤ!ホントにゴメンって!


俺は這いつくばる、トーマス君に寄せて

据わり目線を近付ける。

「トーマス、君はまず両親に謝罪をしなさい

そして、この披露宴を壊した事を新郎、新婦

その両親にも謝罪しなさい、最後にソフィア

さんに謝罪をしなさい、貴方がソフィアさん

を好きなのは判りました、でもソフィアさん

の気持ちは確かめましたか?君の一方的な

思いだけで、彼女の迷惑も考えましたか?

己れの愚かさを心から恥じて、謝りなさい

それが済んだら、また挑戦しなさい!

私は逃げも隠れもしませんよ?戦うなら

最低限の準備をしてから、挑戦しなさい

勝者として私は、貴方に以上の事を望みます」


俺が言いたい事は全部言った、後は皆さんに

丸投げしても良いよね?俺3歳だし?

脱いだ服を(おもむろ)に掴み会場を出る

ここまでは、かっこ良く極めたよな!

でもさぁ、一人で服を着るのは苦労する

んだぜ?3歳だし!あとご飯食べたいなぁ!

折角の披露宴なのに、アレサさんに

おめでとうのプレゼント渡して無いよ!


「おう!珠潰し格好良かったせ!」

何だ!生傷男が冷やかしに来たのか?

「オーデさん丁度良かった!手伝って!」

立っているなら、生傷男だろうが、かかし

でも使ってやる!

「あん?何をだ?」

「俺は3歳だから、一人で服を着れないの!」

異様に長い沈黙の後で、豪快に笑う生傷男。

「そうだよなぁ!まだお子ちゃま

なんだよな?」

何を当たり前の事をほざくのだ!この男は

「俺は3歳だからね?お子ちゃまだよ!」

生傷男は、ドツボに嵌まったらしく地面を

バンバン叩きながら大笑いだ!

涙を流しながら笑う、キモいおっさんに

手伝って貰いながら服を着る。

「しかし、オメェと居ると年齢を忘れるな」

「オーデさんもうボケたの?」

「ハッ!その口だよな!その口!」

生傷男が俺の頬っぺを、ムニムニ引っ張る。

「自慢じゃねぇが、砦じゃこんな風に話し

かけるヤツは居ねぇんだよ!」

「えっ!オーデさんボッチなの?」

更にムニムニされて、痛いんだけど?

「オーデひゃんいはい」

「珠潰し、オメェはホントに変わってるな?

俺の様な男は怖く無いのか?」

「俺が?オーデさんを?何で?見た目の怖さ

なら、お父さんの方が上じゃない?」

だってブロディだしさぁ!

「あぁ、鉄弓が親父だからなぁ」

判ってくれた?見た目のホラー度数は段違い

だよ?

「それにオーデさんは優しい事を知ってるし」

「俺が?優しい?何処がだ?」

「何時でも、弱い立場の人達を気に掛けて

いるじゃん!熊の時だって、前に出て

くれたし!」

「ありゃ、任務だからな?」

「でも、熊が俺に来ないようにしてくれた

事は忘れないよ」

「それに『珠潰し』って言ってくれてるのも

僕を守る為でしょ?お父さんは軍人さんに

人気がある、有名人だけど僕は只のガキ

だもん!でも、そんな僕をアダ名で呼ぶのは

コイツも凄いぞ?って周りの人に教えている

からだよね?気にしなければ、ただ『小僧』

って呼べば良いだけだからね」

あれ?ソッポを向かれたけれど、顔赤いよ?

熱有るの?

「鉄弓!オメェガキにどんな教育してんだ

調子が狂うじゃねぇか!」

生傷男が、後ろを向いて大声で話す先には

パハン、ママン、マーシャの三人にアレサさん

までいるよ!

うわぁ〜恥ずかしいぞコレぇ!

「言っただろう?家の息子は凄いぞ!

ってな」

めちゃくちゃ良い笑顔だね?パハン?

「マクートお腹空いたでしょ?ご飯に

しましょう?」

うん!でも作るのは僕だよ?ママン!

「お兄ちゃん帰ろ?」

そうだねお家に帰ろうか?マーシャ

「マクート君本当に有り難う、忘れられない

思い出だわ」

そうだね、トーマス君には物凄い黒歴史だよ!

「だからね?もう少しだけ一緒にいてくれ

無いかしら?」

うわぁ、アレサさんその笑顔は反則ですよ!

断れ無いじゃん!

マーシャがトコトコ俺の所までやって来て

笑顔で俺に伝える。

「みんな待ってるから行こう?」

「みんな?」

「うん!ソフィアちゃんもシャーリーちゃん

もお兄ちゃんとお話したいんだって!」

俺と同じ、小さな手が差し出される。

参ったな!マーシャの手を拒む事は俺は

出来そうに無いな!

「んじゃ行こうか?マーシャ」

「うん!」

マーシャの満面の笑みを見れるなら俺が

恥を掻くくらい幾らでも来やがれ!



こうして、俺は最後迄披露宴を楽しむ

事が出来た。

トーマス君は残念ながら暫く謹慎らしい。

御両親には物凄く謝られたけど、この一家

毎回俺に謝って無いかしら?

































1日1本を目指してはいるんです。

でも、仕事が忙しいんです!

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