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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
37/52

第37話 もっと春の荒らし

お待たせしました。









この世界って本当にファンタジーだよね

前世でも、この大きさ位なら存在はするさ

しかし、この大きさを維持する為に多くの

食料が必要な筈だ。


アフリカ大陸ならば、この大きさなら

象やキリン等が存在する、しかしそれは

自然環境や生存可能エリアが、大きく

関与して、その体を維持する為の食料が

供給出来て、そのサイズが許される。


北米大陸にも、この大きさのシカがいる

らしいが、それは飽くまで特殊個体だ。

その他の個体は通常よりは、やや大きい

位が関の山だ。


しかし、この世界の出鱈目さと来たら正に

ファンタジーで有る、雑食性の動物でこの

サイズが地球に現存するか?

多分しない、化石になった動物まで拡げて

やっといるかもね?


大体、餌は?生存エリアは?メスは生涯

何頭の子供を出産するのか?

この最適解を見つけないと、このレベルの

サイズは環境が許さない、勝手に滅ぶか

適正のサイズに縮小するだけだ。

(海洋生物?知らんがな!)

しかも、このサイズの動物はまだまだいる

らしい、俺絶対に生まれる世界を間違えて

しまったと思う、確かに人類に魔法がなけ

れば、人類はコイツらに駆逐されていたかも

しれない。


親熊が茂みから完全に姿を表し、子熊の亡骸に

鼻を近付け小さく哭いた。

鼻を擦りつけ、揺すり起こそうとしているが

その子熊は既に事切れている、どんなに哭いて

起こそうとしても、子熊は応えない。

やはり、この様な獣でも子供の死は哀しいの

だろうか?

そして哀しみの深さが深い程に、親熊は俺達を

赦しはしない、その憎しみに満ちた目で俺達を

捉える。


今、この瞬間に此処は、非情な平等が支配する

世界に変わった、貴族も平民も男も女も大人も

子供も全て、アイツの倒すべき敵となりエサ

でもあった。


右手のオーデさんが、槍を構える。

左手には矢の無い弓を携えた、パパンに

拝借したナイフを渡す、っていうか何で

矢を持って来ないのパパン?

三人の中央に位置する俺も再度

威嚇の為のシートを準備する。


流石、御貴族様の奥方や御令嬢だ性根が

据わっている。

後ろの女性陣は静かに息を呑み、事態の

成り行きを正視する。

問題は子供たちや、覚悟が甘い侍女達だ

この場面で騒がれ、勝手に動き出されたら

俺達ではアイツを止められない。


今の俺達に出来る事は、このギリギリの

状況を利用した牽制しかない。

他の手札は、命を捨てた『特攻』だけだ。

ならば、どんなにキツクても『牽制』を

やるしか無い、『特攻』はこの場面では

『無責任』だ、死を覚悟しての攻撃は

勇敢だが、今の俺達は後ろの女性陣を護る

事が最優先なのだ、それは気が狂いそうな

恐怖との戦いだ、恐怖に負けて自爆なんて

「私は怖いから先に逝きます、後は勝手に

逃げて下さい」


そう言っているのと変わらない、それは

余りにも無責任で自分勝手だ。

ほんの少しだけ頑張れば、増援は直ぐ

其所にいるのだ。

増援が来るまでに耐え切れば、俺達の勝利

だ、それまでの辛抱だ。


この状況を崩す為に親熊が、仕掛ける。

立ち上がり、己の巨体を誇示し『咆哮』を

上げる威嚇だ、俺達三人の中で最弱、最小は

俺だ、俺を崩し混乱した後方へ行けば

其処は阿鼻叫喚で血深泥(ちみどろ)の地獄が

この世に現れる。


それだけは頂けない、例え神が望んでも

それだけは頂けない、其れを望む全てを

俺は否定し、三途の川の向こうへ送り返して

くれるわ!


しかし、恐怖に耐えきれなかった誰かが

悲鳴を上げた、恐怖は周りに伝播して

混乱し、恐慌(パニック)になる。

それはダメだ!アイツの思うツボである。


「騒ぐな!静かにしてろ!」


オーデさんが前を睨んだまま、後ろの連中に

大声で叫んだ。

(こうかはイマイチだ!はぁ〜やるか?)


「騒ぐんじゃねぇ!」


騒動はピタリと止まった。

どうよ?3歳児のドスの利いた声!

インパクトでけぇだろ?

(こうかはばつぐんだ!)


『生傷男』オーデが呆れた声で言う。

「珠潰し、オメ〜ホントに3歳か?」

「お父さんに聞いて、多分3歳」

「ハッ!鉄弓!オメェの息子はスゲー肝っ玉

の持ち主だ!」

「そうだろう!俺の息子はスゲェだろう!」

物凄くドヤ顔のパパンに少しイラッとする

大丈夫だ!俺達三人はまだ恐怖に呑まれて

いない、緊張はしているが軽口を言える位は

落ち着いている。


親熊は俺達三人が崩れない事に苛立っている

先ほどよりも強い唸り声を上げ、再び咆哮を

仕掛けるも残念!お前、紅いオークよりも

数段落ちるぞ?気合いを入れて出直して

来やがれ下さい!お願いします!


親熊が痺れを切らし、のそりとこちらに

動き出す「邪魔だ!どけっ!」と言いたげに

唸り、吠えながら前に出てくる。

俺達三人もタイミングを合わせて前に出る!

怖い!緊張に汗が吹き出す、震えてしまい

そうになる、だけどダメだ!気合いを入れろ!

睨み返せ!お前なんか怖くない!

そう思わせ無ければ、ここは簡単に突破され

蹂躙されてしまう。


オーデさんが牽制で槍を振る、親熊の鼻先を

目掛けて、堪らずサイドステップの様な動き

で槍の射程から逃れ、槍が引いたタイミング

を狙い、親熊は俺を狙い前に出る。

それに合わせて、俺も前に出てシートを放り

拡げて威嚇する。

どうだ?純度100%の威嚇だぞ?凄いだろう!

親熊は左前足を逆袈裟気味に上げて、シート

を破る、そこにオーデさんが再度槍を鼻先に

照準を合わせて突き出し、親熊の前進を諦め

させる。


クソッ!俺の純度100%の威嚇が通用しない!

シートを破られた!コレって弁償するのかな?

パパンごめんね?頑張って稼いでね?

「珠潰し、大丈夫か?」

「どうしよう?シート破れちゃった!コレって

弁償しなきゃダメ?」

あっ!しまった!心の不安が漏れてしまった!

僕じゃありません!熊がやったんです!

って、すっとぼけようと決めたのに!

暫く怖い沈黙のあと、オーデさんが豪快に笑う

「珠潰し!オメェ面白いヤツだな!」

失礼な!冗談じゃなく、このシート高そうなん

だよ!パパンを鉱山送りにしなきゃダメかも

知んないんだぞ!

「面白いヤツだな、お前仲間になれよ!」

あん?何を言っとるんだ?この生傷男?仲間?

兵士になれって?そういうのは前世で経験して

います!丁重に拒否してやる!

「僕は猟師の息子だからね、だから猟師に

なるよ、お父さんみたいな猟師に」

この答えを聞いたブロディが豪快に鼻を啜る

汚いなぁ静かにしてよ!鉱山送りの瀬戸際

なんだよ?パパンが

「だとよ!鉄弓!良かったな」

「ふん!自慢の息子だ譲らんよ!」

おっさん2人のやり取りなんぞ聞き流して

俺はオーデさんに聞く。

「増援はまだ?」

「あともう少しだ、気張れよ!」

「気張ったら漏らすよ?僕は3歳だから!」

うんボクみっちゅ!漏らしてもいいんだもん!

堪らず吹き出す生傷男。

「ホントに惜しいな!珠潰しお前あそこの

新兵よりも頼りになるぜ?」

俺は横目で、奥方様を抑える兵士二名を見た。

腰を抜かしたのか?片膝立ちだ、でもそっちも

優先しなきゃいけない、仕事なんじゃない?

この中で一番のVIPなんだから。


「奥様を護るのも立派な仕事だよ」

「つくづく惜しいな!珠潰し!」

皮肉じゃなくて、全うな意見です。

不名誉に見えるけど、非情な判断で3歳の

俺を見殺しにしてでも、やらなきゃいけない

ホントに損な商売だよ、兵隊ってさ。


親熊が焦れている、打開策が思い浮かばない

のだろうか?脆弱と思われた防衛ラインが

思ったよりも強固であると、錯覚しているの

だろう。

うん!ペラペラの紙防御だよ!漏らすギリギリ

で持ちこたえているだけ!

生憎、真相は絶対に教えてやんないけどね?


長い一秒の緊張状態に、やっと終わりが見えて

来る、待望の増援『騎兵隊』の登場だ。

「隊長、お待たせしました」

「隊長!御無事ですかぁ!」

一人は冷静な兵士、もう一人は熱ッ苦しい

熱血漢の兵士が登場だ!

「ラクノー、レーム小言は後にしてやる!

左右にバラけろ!」

「「了解!」」

僅かに防御が厚くなる、後少しの辛抱だ。


「鉄弓、珠潰しこの隙に下がれ」

物凄く魅力的な言葉だ、しかしここは涙を

ナイアガラにして拒否だ、この世界にあの滝は

無いだろうけど。

「まだ、無理!距離が近すぎる」

「すまねぇな!もう少し付き合ってくれ」

冗談じゃない!俺は全うに女の子が好きなんだ!

おっさんなんぞ始めから無いわ!

その後、装備の違う兵士二名が加勢に加わる。

「「助太刀致します!」」

「ご助力感謝致します、座すればヤツの後方

退路を塞いで頂きたい、お頼み申す」

「「承知した」」

生傷男って全力脳筋だと思ったら、案外できる

鬼軍曹なのか?

「珠潰し、オメェ変な事考えてねえか?」

しかも鋭い、無駄に鋭い!脳筋顔の癖に!

「全然!オーデさんって頼りになるなって」

肉壁としてだけどね?

ふん!と鼻で笑いながらニヤる生傷男。

あっ!おっさんのデレは需要有りません!


そんな馬鹿なやり取りの間に、続々と

増援が加勢してくる、生傷男オーデさんが

もう、大丈夫だと判断して下がる様に言う。

こちらも、無理に命の危機に晒される事は遠慮

したいので、その申し出を受けて前を向き

後退りながら、後ろに下がる。

背中を見せたら、一気に此処まで来るからね!


一歩一歩慎重に下がりながら、やっとママンや

マーシャのいる所まで下がる事が出来た。

「マクート」

ママンが俺を後ろから抱きしめ、涙に濡れた

頬を俺の横顔に当てる、マーシャも俺の右腕に

しがみついて震えている。

そうだよな?怖かったよな?俺も今更ながら

腰を抜かして、ママンの膝にお尻を着いた。

生きて帰ってこれた、まだ終わりではないが

俺の役目は終わり、後は大人に任せよう。

「お母さん心配かけてごめんね」

「あなたはもう!本当にもう!本当に!」

言葉にならない叱責だが、それだけ心配され

愛されているのだ、冷たくなり震えている

ママンの指に触れて、大丈夫!安心して!

と落ち着かせる為にタコの出来た硬い皮膚を

摩る、ママンの優しい手、俺の大好きな手だ

俺はやっと、自然に笑う事が出来た。


だから二人とも、パパンにも行ってあげて?

寂しそうな背中が涙で見えないのよ?


家族が落ち着きを取り戻し、若干パパンが

拗ねているが気にしない、マーシャを髭に

ぶら下げれば、一発で機嫌も直るだろう。

そんな俺の前に、元・悪役令嬢セレーヌさん

とソフィアちゃんが侍女を連れてやって来た。

「マクートちゃん有り難う、娘を助けてくれて

本当に有り難う」

セレーヌさんは俺の手を両手で包むように取り

感謝を告げている。

本来、此方から出向いてお言葉を賜るのだが

それよりも、俺に伝えたかったのだろう

感謝の気持ちを、貴族としてはマナー的に不味い

かもしれない、涙で化粧も凄い事になっている。

だけど俺は笑わない、笑えない、体面よりも

娘を、子供を思う親なのだ、其れを嗤ったら

それは人では無い何かだ。

ただ、横にいる侍女さんが冷静に布で涙を拭き

其れを絞るを繰り返すのは止めて?

シュール過ぎて笑えるの!それ!

「マクートちゃん私からも感謝を」

ソフィアちゃんからも感謝の気持ちを告げられる

若草色の瞳が微笑んでいる。

薄茶色の髪はまだ、ドリルヘアーにはなって

いない、是非そのまま成長してください。

切に願わずにはいられない。

俺はソフィアちゃんに微笑みを返して言う

「御礼なら彼女に言って頂けますか?私は

彼女との約束を守っただけなんですよ」

俺の手が示す方向に、震えながらも助けに

行こうとした少女がいた。

「彼女が1番初めに動いたのです、あなたを

助けたいと、私はその代わりですよ」

「シャーリーさんが!本当に?」

「ええ、とても素晴らしい方ですね!そんな彼女

に慕われる貴方も」

そうか、彼女はシャーリーという名前なのか!

聞いて無かったわ!

自分の話題が出た事を察してくれたのか?

シャーリーちゃんがこちらに来てくれた。

「約束は守りましたよ?ヨロシクお願い

しますね?」

俺は笑顔で告げた、どうせ平民と交わした約束だ

反古にされても恨まんし、そんなもんだ。

貴族と平民の友情?そんなもんは物語の中だけ

俺が想像するよりも、この格差は凄まじいのだ

口約束なぞ、鼻で笑われるだろうな。

「ええ、もちろん!でもその前に私の名前は

シャーリー・ジェンシェンですの勇者様の

御名前を教えて下さいますか?」

彼女は綺麗なカーテシーで挨拶をしてきた。

あれ?てっきり反古にされると思ったのに?

カーテシーって、同格とか?目上に対する

挨拶じゃ無いか?ん?こういう時役に立つ

ママえもんはパパンの側だ、どうすれば良い

のだね?3歳児には難問処か習って無いわ!

「教えてくださいませんの?」

アカン!彼女が不安そうに見ている!

その、紺碧の瞳が泣きそうに揺れてる!

よし!ボクみっちゅ!失敗しても良いよね?

「私は猟師の倅ですよ?勇者では有りません」

俺は笑顔で答える。

「いいえ!勇者様ですわ!あの様な恐ろしい

場所へ笑顔で向かわれるなんて!」

んん?本の読みすぎなんじゃございません?

イヤ?マーシャに友達出来たら儲けモノって

考えてはいたけどさ?

「それで、あの、御名前を」

「あぁ、私の名前はマクート、猟師の倅マクート

です、そしてマーシャ!おいで!」

ママンのそばにいたマーシャを呼ぶ

「なぁにお兄ちゃん・・」

ここにいる貴族様を不安に思いながら、俺の

元へトコトコ歩いて来るマーシャは、やはり

可愛い!世界一可愛いぞ!

「紹介いたします、妹のマーシャです」

俺が紹介するとペコリとお辞儀をするマーシャ

偉いぞ!そこまで成長したか!

お兄ちゃんは嬉しいぞ!マーシャ!

「私の名前はシャーリーと申します宜しくね

マーシャちゃん!」

満面の笑みでマーシャに挨拶をする

シャーリーちゃんは本当に嬉しそうだ。

金色の髪を揺らしてニコニコしている。

ちなみに、彼女は金色の髪をボブカット?

いわゆるおかっぱヘアーにしている。

しかし、俺は知っている!その髪型が似合う

女性は間違いなく、美女であると!

シャーリーちゃんは、大人になったら物凄い

美人になるだろう!既に超絶の美少女だ!

「マーシャちゃん私とお友達に

なって下さいな」

うん!キラッキラッの笑顔だわ!スゲェな!

「おちょもだち?」首を傾げるマーシャ。

「ええ!おちょもだち!」更にキラッキラッ

な笑顔のシャーリーちゃん

「あっ!ずるいですわ!私もおちょもだちに

してくださいません?マーシャちゃん」

あれ?領主の娘も参戦してきたぞ?

「いいの?」不安に首を傾げるマーシャ

「「是非!お願いしますわ」」

キラッキラッ過ぎて、眩しいわ!

「うん!おちょもだち〜」

両手を刺しだし、共に握り合う三人の

女の子。マーシャに友人が出来た瞬間で有る。

相手は貴族様だから、持続は難しいだろうが

せめて2年は見逃して欲しい、マーシャに

同じ平民のお友達が出来るまでは。


そんなキラッキラッな、美しい場面から俺は

正面の血生臭い、熊との戦いに目を移す。

命懸けのやり取りは、些細な事から簡単に

ひっくり返ってしまう、未だに油断は出来ない

状況なのだ。

本来ならば、今のうちに、ここにいる俺達を

避難誘導するべきなのだが、未だにその余裕

が生まれない為に、ここに足止めされている


親熊が更に苛立ち、焦れている敵は直ぐそこ

なのに、時間が立つほどに邪魔が増える

そろそろ、何かを仕掛けるタイミングでもある

不用意に仕掛けた、兵士が返り討ちにあい

少し下がって尻餅をつく、不味い!

包囲網は未だに薄い、隙が生まれてしまった!


このチャンスを見逃してくれる程、アイツは

間抜けでも優しくも無い!

来る!姿勢を低くとり今までで最大級の咆哮

を放ちヤツが来る!

包囲の兵を蹴散らして、真っ直ぐヤツが駆ける


「止めろぉ!!」オーデが叫ぶ!

周りは状況の変化を呑み込めていない。

恐怖で思考が止まっているのだ、どうすれば

良いのか?誰も答えられない!動け無い!



「うおぉぉぉ!!!」腹の底から叫び

俺は前に走り出す、世界は驚く程にスローだ

そういえば、帝国騎士を相手にした時も

こんな景色だったなぁ

ほんの少し前の思い出が甦る。


あの後、物凄く美人で優しくて痴女なお姉さん

と友達になったんだよなぁ

また、会いたかったな。

その思い出に俺は笑顔になる。


俺の手には武器が無い、それでも俺は護る。

初めて友達が出来た笑顔の妹を、この世界で

俺とマーシャの家族になってくれた、両親を

愛する家族を護る!お前なんかにやらせない!

熊は口を大きく開けて、俺を喰らおうとする

まだだ、その獰猛な目が俺を捕らえている。

デカイ口は更に近く、俺なんて丸呑みする

事すら出来そうだ、まだだもっと近く!

生臭い息を汚い涎を浴びる、もう少し!

その鋭い牙が俺の顔に触れる刹那。

「ここだぁ!!」


俺は叫びながら放つ!『エルボーバット』を


俺はダイナミックも大好きだが、緑のあの人

はもっと大好きだ。

2代目の仮面を被され、『天才の初代』と

常に比較されて、大人からは馬鹿にされても

戦い続け、選手の大量離脱に所属団体が危機に

瀕しても、寡黙にリングで戦うあの人が好きだ

完全無欠のエースからの猛攻を跳ね返し

『不沈艦』『殺人医師』『人間魚雷』『赤鬼』

そして『皇帝戦士』並み居るスーパーヘビー

から王座を守り切ったあの人が好きだ。

Jr.ヘビー上がりで身体は、スーパーヘビーでは

無くても華麗に跳び、美しいブリッジで投げ

リングで俺を魅せてくれた、あの人が大好きだ

その人が放つエルボーは、力強く輝いていた。


そんな輝きは俺にはない、だけど護りたいんだ

家族を!愛する存在を!お前なんかにやるかよ!

魔力を回し硬くした肘をを熊の下顎に向けて

放つ!骨と骨がぶつかり合う鈍い音が

周囲に木霊する、突然の衝撃に熊は顔を反ら

されて掏れた位置で歯噛みする。

ここは譲らない!ここで極める!

「うおぉぉぉ!!!」

叫びながらエルボーを放つ!

撃つ!撃つ!撃つ!放つ!放つ!放つ!

左右で1-2-エルボー!

くるりと回りローリングエルボー!


その時、俺の敬愛する東洋の大巨人の

言葉が甦る。

「相手に比べて身体が小さいなら動く

んですよ、相手が高いなら跳べば良い

んです、動き続けるのはしんどいでしょう

けども、身体の小さい選手が大きい選手に

勝つには、動くしか無いんです」


そうです!兄貴!俺はまだ逝くんです!


俺は少し距離をとり助走をつけて放つ!

ランニングエルボーバット!

再度、周囲に骨と骨がぶつかり合う鈍い

音が木霊した。

ちくしょう!こんな小さい身体じゃ

極めきれ無い!熊の目はまだ死んでない!

俺をまだ諦めずに喰おうと、憎悪の目で

見ている。

ならば、俺も諦めない!俺が諦めたら

マーシャが!愛する家族が!やらせない!

折れるな!退くな!恐れるな!

左手で熊の毛を掴み、もう感覚を失った右腕

を回そうとした時


「よくぞ持ちこたえた!少年!」


やたらとダンディーな声に振り替える

ことも出来ずに一瞬止まってしまう。

俺に声をかけたダンディーさんは

俺の後ろから回り込み、熊の首に剣を

振り下ろし、一太刀浴びせる。

切り離せなかったが、延髄は確実にやった

熊は俺を睨み涙を流した。

俺も睨み返して見届けた、その最期を。


「マクート君!」

悲鳴に近いその叫びは、増援を呼びに走った

アレサさんだった。

アレサさんは滑りこむ様に両膝をついて

俺を抱きしめた。

こんな美人に心配してもらうなんて!

感激するわ〜前世も含めて感激するわ〜

「少年!妻と娘を護ってくれて礼をいう」

アレサさんに抱かれたまま声の主を見上げると

お前、前世は『ラヴィシング』だろう?な

髭ダンディーがそこにいた。

腰は回すなよ?

くねくね、しなくてもいいからな?


「コンラッド殿!無事か?全く卿は・・

おお!珠潰し!・・邪魔したか?」

遅れてやって来た領主様は、明後日の心配を

している様だ?

後、そのあだ名止めようよ!

「ウェイン殿!この少年が私の家族を此処に

いる、全ての者を護りましたぞ! 珠潰し?」

あっ!ソコは流して下さい!

気にせずにどうぞ?

「おう!またやったか!珠潰し!」

だから!止めろ究極英雄!またもたまも

殺ってねえ!


もう、偉いお貴族様の相手なんかして

やらん!綺麗でイケナイお姉さんの相手

で僕は忙しいの!右手で頭を撫でて

落ち着かせようとしたら、激痛が走った。

「あぁぐぅぅ!」

あまりの激痛に我慢出来ず、呻き声を出して

しまった!

「マクート君どこか怪我したの?見せて」

アレサさんが右手の裾を捲ると、ああやったわ

見事にどす黒く腫れてますわ、骨までやったな

意識しだすとズキズキ痛む、でも泣かない。

精一杯アレサさんの前で、やせ我慢をして

笑顔を見せる。

「アレサさん心配してくれて有り難う」

笑顔でお礼をいう、だって前世を含めて

初めて綺麗な女性に心配して

貰ったんだもん!

アレサさん貴女初めての女性よ?

余りの大怪我に息を飲んだ、アレサさんも

再起動して、呆れる。

「こんなに酷い怪我なのに!我慢しないの!」

綺麗な笑顔で鼻をツンツンされ治療をして

くれた。


もう、春の狩猟会処の騒ぎではなく兎に角

撤収して落ち着こう!と言う話になり。

俺はもう少しだけ、アレサさんから治療を

して貰った。

うん!遠くに人はいるけど見せびらかすの?

そんな趣味をお持ちナノ?受け入れるよ?

よし!やろう!

と、一人で盛り上がっていたら不意に

話掛けられた。

「ねぇ、マクート君私ね?来月結婚するの

良かったら出席してくれない?ご家族には

招待状を送るわ」

えっ!もう結婚するの?いいよ?どんな趣味

でも受け入れるよ?式場も押さえたの?

早いねぇ?そうかドリー兄さんが義理の父に

なるのか?エルボースマッシュでも習うか?

イヤ、スピニングトゥホールドか?

「どうかな?出席してくれる?」

「もちろん出るよ!喜んで!」

そうか〜俺もう結婚するんだぁそうか〜

そんな妄想にニマニマしていたら

爆弾を落とされました。

「良かった!旦那様もその時紹介するわ!」




そうだよね、3歳児と結婚なんてしないよね!

判ってはいたよ!判っては!

でもさぁ、夢位は見せてくれよ!

ファンタジー世界!!




こうして、俺は3歳にして失恋という

前世よりも遥かに早い経験をしてしまった。

ちくしょう!!
















































書きあげてからのエラーって

想像以上に心が折れますね。

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